2021.08.01
◇福井インターハイ(7月28日~8月1日/福井・福井県営陸上競技場)
インターハイ4日目。男子5000m決勝のスタート時刻、19時を回ってもなお温度計は28度を示していた。バックストレートは2m前後の向かい風となるコンディション。5人のケニア人留学生は前に出ず牽制し合う。入りの400mが64秒、800mが2分11秒と、暑さも相まって予想外に落ち着いた出だしとなった。
レースが動いたのは1000mを2分43秒で通過した直後。1周66秒前後に落ち着ていたペースを、4月の織田記念でシニア勢を抑えて13分22秒80をマークして優勝していたコスマス・ムワンギ(世羅3広島)が62~3秒にペースアップする。その仕掛けに反応したのはイマヌエル・キプチルチル(倉敷2岡山)、キンヤンジュイ・パトリック(札幌山の手3北海道)ら留学生のみ。打倒、留学生を目指していた佐藤圭汰(洛南3京都)らは、それには対応せずペースを守り、徐々に追い上げる作戦に出る。
留学生の集団から5秒後ろを佐藤が引っ張り、吉岡大翔(佐久長聖2長野)、綾一輝(八千代松陰2千葉)らが食らいつく縦長の展開に。3200mを過ぎた辺りから先頭集団のペースがやや落ち始め、ムワンギに代わって先頭に立ったジョセフ・ムイガイ(青森山田2青森)が4000mを11分03秒通過した時には、先頭集団と佐藤が引っ張る日本人集団との差は僅かに2秒。そこから佐藤が集団から抜け出しトップグループに追いついた。
勝負は残り1周までもつれたが、それを800mのレース並みの55秒でカバーしたムワンギが13分34秒63で優勝。2位のパトリックも13分35秒57と2003年にジョセファット・ダビリ(流経大柏・千葉)が作った大会記録(13分36秒14)を18年ぶりに更新した。3位にはキプチルチルが13分37秒94で入った。
1500mの高校記録を持ち、5000mでも世代トップランナーの佐藤。最後まで粘り、13分41秒72の日本人トップとなる4位。高校歴代4位の自己記録(13分42秒50)はわずかに更新したが、第46回大会から続くこの種目の留学生の連勝を止めることができず「負けたくはなかったですが、まだ力不足でした。この悔しさを忘れず、これからも取り組んでいきたいです」と唇をかんだ。
3分41秒26で制した1500mの疲れがあったことも事実。それでも1500mに続きこの5000mでも第57回大会に佐藤悠基(佐久長聖、現・SGHホールディングス)がマークした13分45秒23の日本人インターハイ最高記録を更新して実力を示した佐藤。「チームとしてインターハイと駅伝を目標にしています。総合優勝を目指すなか、長距離主将として少しでも多く得点できたことは良かったです」と激闘を振り返る。5000mのメダルは逃したものの、間違いなくインターハイ史に刻まれるパフォーマンスだった。
この佐藤に最後まで食らいついた2年生の吉岡が6位(日本人2番手)と力走。「調子もよく、思ったより前半のペースが遅かったのでいける感覚がありました。佐藤悠基さんの日本人最高を破るのが目標だったのでもう少し粘りたかったです」と、13分48秒19の高2歴代2位の好タイムにも悔しさをにじませた。
後半追い上げた菅野裕二郎(学法石川3福島)が13分51秒18で7位。吉岡とともに佐藤を追った綾も「残り1周で2人に抜かれ入賞を逃したのは悔しいです」と9位だったが、同校の先輩・羽生拓矢(現・トヨタ紡織)が持っていた千葉県高校記録(13分52秒98)を更新する13分51秒61の高2歴代6位と力走した。
留学生5人を含めて9位まで13分台、11位まで14分10秒を切るハイペースなレースだった。
その他では、佐藤と同じ洛南の2年生、宮尾真仁(洛南2京都)が男子三段跳で高2歴代3位の15m73(+1.3)で優勝。800mは1500mで2位の兵藤ジュダ(東海大翔洋3静岡)が1分48秒26の大会新で制した。女子棒高跳は2年生の村田蒼空(前橋女2群馬)が4m00の大会新で日本一に輝いている。
◇4日目の優勝者(一部優勝コメント)
●男子
200m
田中翔大(佐賀工3佐賀) 20秒84(+3.1)
800m
兵藤ジュダ(東海大翔洋3静岡) 1分48秒26=大会新
5000m
コスマス・ムワンギ(世羅3広島) 13分34秒63=大会新
三段跳
宮尾真仁(洛南2京都) 15m73(+1.3)
「最後は強い気持ちでいった。8点を獲得してチームに貢献できてうれしいです」
●女子
200m
佐藤美里(常盤木学園3宮城) 23秒71(+2.2)
「決勝は支えてくれた仲間のことを思いながら自分の走りに集中できました」
800m
青山理奈(中京大中京3愛知) 2分07秒76
走高跳
岡野弥幸(埼玉栄3埼玉) 1m76
「大舞台で久しぶりに優勝できてうれしいです」
棒高跳
村田蒼空(前橋女2群馬) 4m00=大会新
「1位を狙っていたので、気持ちでポールを曲げました。久しぶりに4m00を跳べてうれしいです」
やり投
村上碧海(西条農3広島) 53m07
「ここで満足して終わらないように、次の全国大会でも頑張ります」
七種競技
中尾日香(長田2兵庫) 5085点
文/花木雫
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