東京五輪もまもなく折り返し。明日7月30日からついに陸上競技がスタートする。「東京五輪見逃し厳禁種目」で紹介(詳しくは関連記事をチェック!)した種目以外にも、注目のアスリートたちが国立競技場でハイパフォーマンスを見せてくれる。
厳選に厳選を重ねて、ほんのごく一部になるが世界のトップアスリートたちをピックアップした。
史上最強・最速のランナー・キプチョゲ
札幌で行われるマラソンで最も注目を集めるのは五輪連覇を狙うエリウド・キプチョゲ(ケニア)で間違いないだろう。
2003年パリ世界選手権5000mを17歳で優勝。マラソンに挑戦したのは2013年で、以降は14戦12勝を誇り、2戦目の13年ベルリンで2位になってから昨年10月のロンドンで8位に敗れるまで10連勝と無敵を誇った。
もちろん、記録面でも圧巻。18年ベルリンでは2時間1分39秒の世界新記録を樹立した。それだけではなく、人類初の“2時間切り”を目指し、非公認レースでチャレンジを重ね、17年に2時間0分25秒、そして19年10月に1時間59分40秒2と「2時間の壁」を突破した。
36歳になったが、今年4月のレースでは2時間4分30秒で優勝。限界説を一蹴して東京五輪に乗り込んでくる。過去マラソンの連覇はアベベ・ビキラ(エチオピア/60年ローマ、64年東京)、ワルデマール・チェルピンスキー(東ドイツ/76年モントリオール、80年モスクワ)の2人。史上3人目の快挙を達成してまた一つ伝説を刻む。
110mH世界王者ホロウェイ
男子110mハードルのグラント・ホロウェイ(米国)が連戦連勝を重ねている。フロリダ大ではサニブラウン・アブデル・ハキームの1学年先輩(※現在はともにプロ転向)の23歳。19年ドーハ世界選手権王者で、今年は室内(60mハードル)5戦無敗、4月以降のシーズンは7戦無敗とまさに現役最強のハードラーで、全米五輪選考会の準決勝では世界記録に0.01秒に迫る歴代2位の12秒81(+1.8)をマークした。
高校時代は陸上と並行してアメリカンフットボールのワイドレシーバーとして活躍していたが、「ケガのリスクが高い」と陸上に専念。その身体能力はハードルだけにとどまらず、走高跳2m16、走幅跳8m17の記録を持つ。人類初の12秒7台が見られるとしれば、この男だろう。
やり投のフェッター世界新なるか
ヨハネス・フェッター(ドイツ)も注目の一人。男子やり投で昨年9月に世界歴代2位の97m76をマークし、ヤン・ゼレズニー(チェコ)の世界記録98m48に迫っている。今季も4月以降は7試合すべて90m超えで“水物”と言われるやり投にあって抜群の安定感を誇る。これまで世界大会の優勝は17年ロンドン世界選手権だけ。「風がよければ100mを超えられる」と絶対の自信を持つフェッターが、東京の空にどんなアーチを描くのだろうか。
400m世界記録保持者にノーマンが迫る
4年前のリオ五輪男子400mで43秒03という衝撃的な世界記録を出したウェイド・ファン・ニーケアク(南アフリカ)だが、翌年にエンジョイでラグビーをしていた際に右膝を大ケガ。今季ようやく44秒56まで復調してきた。
そんななか、この種目で優勝候補筆頭に上がるのがマイケル・ノーマン(米国)。母は元スプリンターの斉藤伸江さんで、母の祖国で大舞台を迎える。早くから期待されてきたスプリンターで、100m9秒86、200m19秒70、400m43秒45と圧倒的な力がある。全米五輪選考会も44秒07で完勝。ドーハ世界選手権は脚の不安で本来の走りができなかったが、東京五輪で念願のタイトルを取るチャンスがやってきそうだ。
走高跳バルシムが悲願のV狙う
男子走高跳で地元ドーハ世界選手権を制したムタズ・エッサ・バルシム(カタール)が、悲願の五輪初優勝を狙っている。押しも押されもせぬ世界トップジャンパーとして君臨してきたバルシム。13年に初めて2m40をクリアすると、翌年には世界歴代2位となる2m43を跳んだ。18年に足首を手術したが、19年世界選手権で見事な復活V。これまで五輪ではロンドン、リオと連続2位。今季は2m30が最高だが、悲願達成へ視界は良好だ。
ロシア(個人参加)のI.イワニュクやベラルーシのM.ネダセカウらが有力だが、注目してほしいジャンパーがもう一人いる。それが米国のジュボーン・ハリソンだ。今季5月に2m36を跳んでいる大学生。実はハリソンは、全米学生選手権、そして全米五輪選考会と走高跳・走幅跳(ベストは8m47)の2冠を達成している。
まったく異なるジャンプ種目で超ハイレベルの記録を持つハリソン。米国代表としてこの2種目で代表となるのは1912年のジム・ソープ以来109年ぶりだ。もし五輪で2冠となれば、1896年の第1回アテネ五輪エラリー・クラーク(米国)以来の快挙となる。まだまだ伸び盛りで、一躍、スーパースターの仲間入りを果たす可能性は十分だ。
KINGはマイヤーかワーナーか
キング・オブ・アスリートの称号を得る十種競技は、世界記録保持者のケヴィン・マイヤー(フランス)とダミアン・ワーナー(カナダ)の一騎打ちになるか。
マイヤーは18年に9126点という驚異的な世界記録を樹立。だが、ドーハ世界選手権は途中棄権し、その後はなかなか本調子とはいかない。一方、100秒で10秒12、110mハードル13秒27の自己記録を持つなどスピードが武器のワーナーは、今季8995点でリストトップ。選考逃げきりを図るワーナーをマイヤーが後半に追い上げる展開となるか。五輪初の9000点台も視野に入れた戦いとなる。
前回1500m女王キピエゴン連覇なるか
女子1500mの前回優勝者フェイス.キピエゴン(ケニア)に注目。リオ五輪、17年ロンドン世界選手権を制しているキピエゴンは、今季も3分53秒91の自己新をマークしている。
だが、その同じレースで3分53秒63を出して勝ちきったのがシファン・ハッサン(オランダ)。10000mの前世界記録保持者でドーハ世界選手権覇者だ。ハッサンは1500m、5000m、10000mに登録しているが1500mにも出場すれば当然、キピエゴンとの一騎打ちとなるだろう。
中距離でもう一人注目なのが800mのアシング・ムー(米国)だ。19歳の新鋭で全米五輪選考会では1分56秒07の世界リストトップで優勝。室内でも1分58秒40のU20世界室内記録を作っている。
女子マラソンはケニア勢強し
男子マラソン同様、女子マラソンも世界記録保持者が登場する。ポーラ・ラドクリフ(英国)の世界記録2時間15分25秒を、19年にブリジッド・コスゲイ(ケニア)が2時間14分04秒まで一気に短縮。五輪、世界選手権は初出場となるが、どんな走りを見せるか。ドーハ世界選手権優勝のR.チェプンゲティチ、ペレス・ジェプチルチルでケニア勢表彰台独占なるか。
女王ロハスが三段跳世界記録に肉薄
女子三段跳で世界記録更新に期待が寄せられているのがユリマール・ロハス(ベネズエラ)だ。17年ロンドン、19年ドーハと世界選手権を連覇。今年は15m43の室内世界記録を樹立すると、屋外シーズンに入ってからも5月に15m43(+0.7)をマークし、世界記録(15m50)にあと7cmに迫っている。長い手足を生かした大きな跳躍は迫力満点。世界記録更新のアナウンスが国立競技場に響くかもしれない。
母になったアリソン、5大会連続五輪
日本でもおなじみのアリソン・フェリックス(米国)が5大会連続のオリンピックに挑む。
世界デビューは2003年パリ五輪で当時は17歳。35歳になった今季も健在で全米五輪選考会400mでは2位に食い込んだ。18年11月に長女カムリンちゃんを出産。今季は2月に室内で200m22秒59をオリンピックに合わせるように調子を上げてきた。
世界選手権では女子最多9個の金メダルを獲得。オリンピックでは個人の優勝はロンドンの200mだけだが、4×100mと4×400mの両リレーで08年北京、12年ロンドンと連続2冠で合計5個の金メダルを獲得している。
陸上界を代表するレジェンドも「五輪は東京が最後」と明言。400mの他に、女子・男女混合のマイルリレーにも出場する可能性がある。その勇姿を目に焼き付けよう。
陸上ファンの中には「この選手のほうが注目!」という声もあるだろうが、ここに紹介したのは“ほんのごく一部”の超人たちだとご承知いただきたい! オリンピックの花形といえる陸上競技のハイパフォーマンスに酔いしれよう!
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