2021.07.27
2年ぶりに開催される全国高校総体(以下、インターハイ)の陸上競技が7月28日~8月1日の5日間、福井市の福井県営陸上競技場(9.98スタジアム)で行われる。2年前の沖縄大会と同様に、男女41種目(男子21種目、女子20種目)が実施。ここではエントリー選手を元に、男子の見どころを紹介していく。
トラック
100mに注目選手そろう
中長距離では佐藤の29年ぶり快挙に注目
陸上競技の花形種目である100mには東京五輪の4×100mリレー補欠に選出されている栁田大輝(東農大二3群馬)が出場する。自己記録の10秒22は、サニブラウン・アブデル・ハキーム(城西・東京/現・タンブルウィードTC)に並ぶ高校歴代2位タイ。日本選手権で2年連続入賞した実績を引っ提げ、初の高校タイトル獲得と、桐生祥秀(洛南・京都/現・日本生命)の持つ高校記録(10秒01)にどれだけ近づけるかに注目が集まる。
栁田大輝(東農大二3群馬)
このほかにも東北大会準決勝で10秒36、決勝で追い風参考ながら10秒17(+4.1)で走った佐賀陽(田名部3青森)、南関東大会を制した10秒38の守祐陽(市船橋3千葉)、10秒43の久保井颯(鳴門渦潮3徳島)ら注目選手がそろい、栁田のVに待ったをかけられるか。
200mでは絶対的な優勝候補が不在。そのなかでも横山大空(比叡山3滋賀)と舘野峻輝(中京大中京3愛知)が21秒18でランキング1位で並ぶ。舘野は6月のU20日本選手権で高校生最上位の2位に食い込んでおり、勝負強さも併せ持つ。その下に市船橋コンビの山下遥也(2年、21秒19)と守祐陽(21秒21)、21秒23の吉木翼(東葛飾3千葉)、馬場隆旗(島原3長崎)と続く。実力伯仲なだけに、決勝にどれだけ調子を合わせられるかが勝負の分かれ目となる。
400mも同様に混戦模様となりそう。南関東大会で同着優勝となった林武広(富里3千葉)と小山蓮(西3東京)が47秒14でランキングトップに立つが、U20日本選手権で3位の森本錬(比叡山3滋賀)も47秒19と大差はない。今季は47秒41にとどまっているものの、昨年の全国高校大会4位の実績を持つ鈴木大翼(新潟明訓3)は3月の左ハムストリングスのケガから復調途上。本調子であれば、昨年マークした自己記録47秒26を大きく上回ってきそうだ。優勝には最低でも46秒台突入が必須か。
今季勢いがあるのが800mだ。地区大会を終えた時点で1分50秒切りが過去最多の4人。そのうちU20日本選手権を高校歴代7位の1分48秒87で制した後田築(創成館2長崎)がランキングトップに立つ。昨年の全国高校大会でも2年生以下トップの4位に入っており、2年生優勝の可能性が高まっている。1分48秒91の兵藤ジュダ(東海大翔洋3静岡)は今季複数回1分50秒切りを達成して安定度が光る。順当ならこの2人が優勝争いの中心になりそう。1分49秒台のベストを持つ久田朔(桜宮3大阪)と前田陽向(洛南3京都)はどこまで2人に食い下がれるか。
1500mは7月に日本歴代3位、高校新となる3分37秒18をマークした佐藤圭汰(洛南3京都)が頭ひとつ抜けた存在。自らハイペースに持ち込むレーススタイルで、18年間破られていない大会記録(3分40秒21、2003年)の更新がターゲットか。メダル争いでは3分45秒19の間瀬田純平(鳥栖工3佐賀)、3分47秒17の兵藤ジュダ(東海大翔洋3静岡)らが軸となりそう。特に兵藤は800mのスピードを武器にU20日本選手権を圧勝しており、佐藤が本調子でなければ切れ味鋭いスパートで頂点に届く可能性を秘めている。
佐藤圭汰(洛南3京都)
5000mでは2年前まで留学生が27連覇中。今季も13分22秒80のC.ムワンギ(世羅3広島)、13分28秒11のE.キプチルチル(倉敷2岡山)ら強力選手がそろい、レースをリードしそうだ。ここに対抗できそうなのが、1500mで優勝が濃厚な佐藤圭汰(洛南3京都)だ。4月に高校歴代4位の13分42秒50をマークし、同レースではムワンギに中盤まで食らいついた。2日目の1500mで優勝していれば、日本人では1992年以来29年ぶりの中長距離2冠も射程圏内に入る。入賞争いは13分46秒95を持つ山口智規(学法石川3福島)ら13分台ランナーで争うことになりそうだ。
110mハードルも注目種目のひとつ。13秒93の小池綾(大塚3大阪)がランキングトップに立つが、西徹朗(名古屋3愛知)が14秒00、樋口隼人(松山3埼玉)が14秒06、松本望(洛南3京都)が14秒09と僅差で複数の選手が続く。ジュニア規格(高さ99.1cm/インターハイは高さ106.7cm)で行われたU20日本選手権は西が高校生最上位の2位。松本が4位、小池が5位と続いた。そこに東海大会で西を退けた高橋遼将(中京大中京3愛知)も加わり、複数人が13秒台に突入する史上最高レベルの争いになりそうだ。
400mハードルは今季50秒台をマークしている中島陽基(東福岡3)と110mハードルとの2冠を狙う高橋遼将(中京大中京3愛知)による一騎打ちとなりそう。昨年からの大会実績では全国高校大会6位、U20日本選手権2位で現役高校生最上位を占めた中島に軍配が上がるが、高橋は1年時からインターハイ決勝を経験し、今季はケガからの復調途上で50秒65をマークするなどポテンシャルが光る。インターハイでは大会記録(50秒27)更新はおろか、49秒台突入を見据えたスーパーバトルが繰り広げられそうだ。ランキング3位で51秒38の殿山凌平(旭川大3北海道)は50秒台に突入して2強に食い込めるか。
3000m障害は今季だけで8分台が10人と盛況。その中心にいるのが黒田朝日(玉野光南3岡山)だ。6月に高校歴代2位の8分39秒79をマークし、三浦龍司(洛南・京都/現・順大)が持つ高校記録まであと0秒42まで迫っている。黒田の優位は動かないが、8秒51~53秒台を持つ大沼良太郎(鹿島学園3茨城)、山口翔平(西京3山口)、B.ムテチ(仙台育英3宮城)、山崎颯(埼玉栄3)らも力があり、簡単に黒田の独走とはならないだろう。7位までが8分台だった2017年大会を上回るハイペース合戦となりそうだ。
黒田朝日(玉野光南3岡山)
5000m競歩は昨年の全国高校大会で20分19秒台の好タイムをマークして3位、4位を占めた近藤岬(十日町3新潟)、奥野達(清風3大阪)に、20分32秒75で今季ランキングトップの片山蒼大(岡山商大附3)を加えた三つ巴となりそう。近藤は女子で優勝候補の山岸芽生とのアベックVが懸かり、北九州大会優勝の古賀文也(大牟田3福岡)は4年前にこの種目を制した兄・友太(大牟田、現・順大)に続く兄弟制覇を目指す。
フィールド&混成
走幅跳は過去最高レベルの争いに期待
走高跳は2m14でランキングトップに立つチュクネレ・ジョエル優人(八千代松陰2千葉)と、高校生最上位の2位となったU20日本選手権を含めて2度2m11に成功している桃田三四朗(四学香川西3)によるバトルとなりそう。北九州大会で2m10をクリアした城崎滉青(小倉工3福岡)はさらなる自己新に成功できれば優勝が見えてくる。
棒高跳はランキング2位以下に大差をつける5m31(高校歴代5位)を持つ原口篤志(王寺工3奈良)の1強か。3月に5m15、4月に5m21と順調に記録を伸ばしており、本番では江島雅紀(荏田・神奈川/現・富士通)が2016年に樹立した大会記録5m43の更新も視野に入る。メダル争いは7月に5m15を成功した松井楓雅(南陽工3山口)、5m02の篠塚浩斗(成田3千葉)、5m00の小暮七斗(樹徳3群馬)、菅野航太(黒沢尻北2岩手)、宮地築(高松工芸3香川)あたりに絞られそうだ。
走幅跳は今季7m50超えが8人と過去最高水準となり、予選からハイレベルな争いが繰り広げられそう。なかでも高校歴代3位の7m89を持ち、今季も7m78でトップに立つ舞永夏稀(太成学院大3大阪)がV争いの筆頭。そこに7m81の北川凱(3年)、7m72の深沢瑞樹(2年)の東海大翔洋コンビ、7m66の吉良龍星(八幡浜3愛媛)らが加わり、メダル争いは7m70超えとなる可能性を秘める。ビッグジャンプの応酬の末に、高校生では2人目となる8mジャンプも見られるかもしれない。
舞永夏稀(太成学院大3大阪)
三段跳は15m60の自己記録を持つ渡辺多瑠嘉(北稜3京都)が頂点にもっとも近い位置にいる。そこに走幅跳との2冠を目指す15m41の北川凱(東海大翔洋3静岡)が迫り、15m25の郷原拓海(鹿児島南3)とともにメダル争いをリードしている。島田ジェイチーマ(大阪2)、白濱稔也(板橋3東京)ら15m00~15m10台に6選手がひしめき、入賞争いも熾烈を極めそうだ。
砲丸投は全国高校大会(4位)、U20日本選手権(2位)で現役高校生最上位につけ、16m62でランキング1位に君臨する小森直吏(身延3山梨)が優勝候補筆頭と言える。ただし実力的にずば抜けているわけではなく、16m台の渡辺豹冴(開志国際2新潟)、山田暉斗(法政二2神奈川)にも2年生優勝のチャンスがある。
円盤投は49m52の山口翔輝夜(社2兵庫)、49m48の森戸純(鉾田二3茨城)が2強を形成する。U20日本選手権では5位の森戸が8位の山口を抑え、先輩の意地を見せた。メダル争いは48m33の佐藤ロバート・スティーブン(星槎国際湘南3神奈川)、47m99の山田暉斗(法政二2神奈川)、47m34の小宮路大隼(生光学園3徳島)らの争いとなりそうだ。
ハンマー投はU20日本選手権で高校歴代7位の66m82をマークした小河彪(久居3三重)が一歩リードしている状況。東海大会(2位)とU20(5位)で小河に次ぐ順位を占めた63m27の小島諒大(名古屋大谷3愛知)、南関東大会覇者で62m58の今村天春(保善3東京)、61m97で四国大会王者の喜多翼(生光学園3徳島)らがメダル争いの中心となるだろう。
やり投は本命不在の混戦模様で、65~66m台に4選手がひしめく。そのうちトップが近畿大会で66m53を投げた井上堅斗(久御山3京都)。3年前の砲丸投王者で、それ以来となる全国制覇を目指す。U20日本選手権で自己新の66m11を放って高校生最上位の4位を占めた横井太翔(中京大中京3愛知)も勢いがあり、65m24の須藤勇大(前橋育英3群馬)、65m04の清川裕哉(小山3静岡)は自己記録を上回る快投を見せれば頂点が見えてくる。
八種競技も絶対的な優勝候補は不在で、ランキング1位は5545点の遊佐祥太(利府3宮城)。そこにルーキーの高橋諒(桐朋・東京)も5484点で迫っており、この種目では初となる1年生優勝も現実味を帯びている。5400点台の小林宏輔(鳥羽3京都)、津山将汰(市船橋3千葉)も頂点が見える位置につけており、勝負は最終種目の1500mまでもつれる可能性が高い。
リレー
4継は中京大中京が一歩リード
マイルは東福岡、成田、新潟明訓がV候補
4×100mリレーは、40秒00を筆頭に今季40秒台前半を連発している中京大中京(愛知)が他校をリードしている。2年前のインターハイと昨年の全国高校大会を制しており、全国大会3連覇と39秒台突入がターゲットだ。40秒35の大阪、40秒39の洛南(京都)ら近畿勢も強力で、40秒55の明星学園(東京)、40秒56の宮崎工、40秒57の白鴎大足利(栃木)、40秒59の市船橋(千葉)、皇學館(三重)ら40秒5~6台に7校がひしめく。決勝進出を懸けた準決勝から激しい争いになること必至だ。
4×400mリレーは7月に3分10秒68をマークした新潟明訓が一躍ランキングトップに躍り出た。北信越大会では400m47秒26の鈴木大翼を外して3分13秒台で走っており、総合力が高い。福岡県大会、北九州大会で3分11秒台を連発した東福岡、激戦の南関東大会を制した成田(千葉)らも全国の頂点を目指しており、上記3校はどこが勝っても初優勝となる。そこに3分11秒台を持つ大阪、比叡山(滋賀)、決勝常連の相洋(神奈川)、洛南(京都)らが加わり、大会最終種目となる決勝はラストの直線まで勝負がわからない大混戦となりそうだ。
トラック 100mに注目選手そろう 中長距離では佐藤の29年ぶり快挙に注目
陸上競技の花形種目である100mには東京五輪の4×100mリレー補欠に選出されている栁田大輝(東農大二3群馬)が出場する。自己記録の10秒22は、サニブラウン・アブデル・ハキーム(城西・東京/現・タンブルウィードTC)に並ぶ高校歴代2位タイ。日本選手権で2年連続入賞した実績を引っ提げ、初の高校タイトル獲得と、桐生祥秀(洛南・京都/現・日本生命)の持つ高校記録(10秒01)にどれだけ近づけるかに注目が集まる。


フィールド&混成 走幅跳は過去最高レベルの争いに期待
走高跳は2m14でランキングトップに立つチュクネレ・ジョエル優人(八千代松陰2千葉)と、高校生最上位の2位となったU20日本選手権を含めて2度2m11に成功している桃田三四朗(四学香川西3)によるバトルとなりそう。北九州大会で2m10をクリアした城崎滉青(小倉工3福岡)はさらなる自己新に成功できれば優勝が見えてくる。 棒高跳はランキング2位以下に大差をつける5m31(高校歴代5位)を持つ原口篤志(王寺工3奈良)の1強か。3月に5m15、4月に5m21と順調に記録を伸ばしており、本番では江島雅紀(荏田・神奈川/現・富士通)が2016年に樹立した大会記録5m43の更新も視野に入る。メダル争いは7月に5m15を成功した松井楓雅(南陽工3山口)、5m02の篠塚浩斗(成田3千葉)、5m00の小暮七斗(樹徳3群馬)、菅野航太(黒沢尻北2岩手)、宮地築(高松工芸3香川)あたりに絞られそうだ。 走幅跳は今季7m50超えが8人と過去最高水準となり、予選からハイレベルな争いが繰り広げられそう。なかでも高校歴代3位の7m89を持ち、今季も7m78でトップに立つ舞永夏稀(太成学院大3大阪)がV争いの筆頭。そこに7m81の北川凱(3年)、7m72の深沢瑞樹(2年)の東海大翔洋コンビ、7m66の吉良龍星(八幡浜3愛媛)らが加わり、メダル争いは7m70超えとなる可能性を秘める。ビッグジャンプの応酬の末に、高校生では2人目となる8mジャンプも見られるかもしれない。
リレー 4継は中京大中京が一歩リード マイルは東福岡、成田、新潟明訓がV候補
4×100mリレーは、40秒00を筆頭に今季40秒台前半を連発している中京大中京(愛知)が他校をリードしている。2年前のインターハイと昨年の全国高校大会を制しており、全国大会3連覇と39秒台突入がターゲットだ。40秒35の大阪、40秒39の洛南(京都)ら近畿勢も強力で、40秒55の明星学園(東京)、40秒56の宮崎工、40秒57の白鴎大足利(栃木)、40秒59の市船橋(千葉)、皇學館(三重)ら40秒5~6台に7校がひしめく。決勝進出を懸けた準決勝から激しい争いになること必至だ。 4×400mリレーは7月に3分10秒68をマークした新潟明訓が一躍ランキングトップに躍り出た。北信越大会では400m47秒26の鈴木大翼を外して3分13秒台で走っており、総合力が高い。福岡県大会、北九州大会で3分11秒台を連発した東福岡、激戦の南関東大会を制した成田(千葉)らも全国の頂点を目指しており、上記3校はどこが勝っても初優勝となる。そこに3分11秒台を持つ大阪、比叡山(滋賀)、決勝常連の相洋(神奈川)、洛南(京都)らが加わり、大会最終種目となる決勝はラストの直線まで勝負がわからない大混戦となりそうだ。 女子の種目別展望
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