HOME 編集部コラム

2019.08.09

編集部コラム「リクジョウクエスト」
編集部コラム「リクジョウクエスト」

陸上競技はキャリアが長くなるほど装備品やアイテムが増えていく(でも、一番大事なのは身体能力)

毎週金曜日更新!?

★月陸編集部★

攻め(?)のアンダーハンド

リレーコラム🔥

毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ!
陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。
編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。
暇つぶし程度にご覧ください!

第3回「リクジョウクエスト(山本慎一郎)

陸上界のみなさん、こんにちは。月陸編集部の山本と申します。

広告の下にコンテンツが続きます

この仕事をして13年目になるので、名前は知らなくてもどこかで見たことがあるという方も多いかと思います。
かつては雲の上の存在である先輩アスリートたちに恐縮しながら話を聞いていたものですが、いつの間にか現役選手はほぼ年下になり、指導者のほうが自分の年齢と近くなって、歳月の経過を実感しています。

さて、私の最初のコラムは陸上競技の楽しみ方を一つ提案したいと思います。

陸上競技をやっているみなさんならよくご存知かと思いますが、陸上は結構きついスポーツだと思います。
練習に費やす時間こそ他のスポーツに比べて特別に長いわけではありませんが、強くなるためには肉体を追い込むことが必須で、その練習をするためには日常生活から気を配っていく必要があります。
そして、日々の取り組みの成果は数字として明確に表れます。

ただ、視点を変えると、これって結構面白いことだと思います。
自分の努力の成果が公平に数字として出てくるなんて、陸上競技以外の場面ではほとんどないからです。

実は私も学生時代はアスリートとして、今は市民ランナーとして、通算24年も走り続けていますが、陸上を嫌になったり、辞めたいと思ったことはほとんどありません。

というのは、陸上競技とはRPG(ロールプレイングゲーム)や育成シミュレーションゲームに似ていると感じるからです。

これらのゲームでは、シナリオを先に進めるためには主人公の能力値を高めなければいけません。
しかも、一つの能力だけを強化すれば良いのではなく、難易度が上がるほどバランス良くさまざまな能力を上げていく必要があります。
単に攻撃力と守備力を上げるだけではダメで、呪文やブレス耐性、ステータス異常ガード、ドラゴン系特攻など、状況に応じてスキルや装備品を変えていかなければなりません。

最初はアリアハンでスライムを相手に打撃だけで戦っていればよかったのが、物語を進めるうちにより強力な攻撃呪文、回復呪文が必要になり、補助呪文も覚え、戦略が多様化していきます。

さらに、育成シミュレーションゲームでは、ただ強化だけをしていくと体力や気力がなくなってしまうので、効率を上げるためには適度に休養を挟む必要があります(「パワプロ」や「ときメモ」で休養の大切さを学ぶ人は多いはず……)。

陸上競技はキャリアが長くなるほど装備品やアイテムが増えていく(でも、一番大事なのは身体能力)

自分はどの能力を高めるべきか。
そのためには今、何をやらなければならないか。
これって陸上と同じですよね?

違うのは、強化をする対象がゲームの主人公なのか、現実の自分かというところです。

言い換えれば、陸上競技とは自分を主人公とした「リアル育成シミュレーション」ではないかと感じます。
それでいてゲームよりも奥が深い。
これが陸上競技の魅力の一つではないでしょうか。

指導者にメニューを出され、それを何となくこなしていく毎日というのはきついと思います。
しかし、「この練習をすればこういう効果がある!」とか、「自分はこの能力が低いから、こういう練習をすればもっと記録が伸びるはず!」と考えていくと、厳しい練習に対しても前向きに取り組めると思いませんか?
また、厳しい練習であっても、その攻略法を考えることで印象が変わる場合もあります。
意識のポイントを変えてみるとか、いつもとは違う力配分を試してみるとか。
そうすることで走り方の「コツ」や、飛躍のきっかけとなる「究極奥義」を発見できるかもしれません。

特に、実績のある指導者というのはビジョンも明確なので、「そなたが次のレベルになるためにはあと◯◯◯の経験値が必要じゃ」と、目標までの最短距離を示してくれることが多いです。

あとは、やるかやらないかです。
それによって未来が変わるかもしれません。
今はスライムを倒すのが精一杯でも、そうして鍛錬を重ねるうちに、いつかはボストロールやバラモスと戦い、大魔王ゾーマに挑めるようになるかもしれないのです。

いろいろなことを考えて、工夫して、試してみる。
練習はその舞台だと思えば、単なる「苦行」ではなくなります。
偉大な先人たちの「考えて陸上をやろう!」というアドバイスは、きっとそういう意味も含んでいるのだと思います。

というわけで、「陸上ってきついなー」「何のために陸上をやってるのかわからない……」という選手は、視点を変えてみると陸上の新たな楽しみ方が見えてくるかもしれません。

その冒険のお供に、『月刊陸上競技』を〝攻略本〟として使っていただけると、編集部としてはうれしく思います。

なお、元ネタが古い(ドラゴンクエスト3=1988年発売)のはジェネレーションギャップということでご容赦下さい(笑)。

※ドラクエ3は現在、ゲーム機だけでなくスマホのアプリでも遊べるようです。興味のある人はレッツプレイ!

山本慎一郎 やまもとしんいちろう
月刊陸上競技 編集部(兼企画営業部)企画課長。
1983年生まれ。福島県いわき市出身。160cm、47kg(ピーク時)。植田中→磐城高→福島大→法大卒(3年次に編入したはずが、なぜか3年間在学)。中学から現在まで長距離ランナーで、趣味は陸上グッズ集め。箱根駅伝担当として各大学に顔を出しつつ、取材で得たノウハウを自身のトレーニングに活用している。無駄に多い知識に身体がついてこないのが永遠のテーマ。「鉄拳7」が8段、「ウルトラストリートファイター4」がBBクラス、「KOF」が対人戦10連勝の自己ベストを持つ〝ぬるゲーマー〟でもある。

編集部コラム第2回「あんな選手を目指しなさい」(向永拓史)
編集部コラム第1回「締め切りとIHと五輪」(小川雅生)

 

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。 編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。 暇つぶし程度にご覧ください!

第3回「リクジョウクエスト(山本慎一郎)

陸上界のみなさん、こんにちは。月陸編集部の山本と申します。 この仕事をして13年目になるので、名前は知らなくてもどこかで見たことがあるという方も多いかと思います。 かつては雲の上の存在である先輩アスリートたちに恐縮しながら話を聞いていたものですが、いつの間にか現役選手はほぼ年下になり、指導者のほうが自分の年齢と近くなって、歳月の経過を実感しています。 さて、私の最初のコラムは陸上競技の楽しみ方を一つ提案したいと思います。 陸上競技をやっているみなさんならよくご存知かと思いますが、陸上は結構きついスポーツだと思います。 練習に費やす時間こそ他のスポーツに比べて特別に長いわけではありませんが、強くなるためには肉体を追い込むことが必須で、その練習をするためには日常生活から気を配っていく必要があります。 そして、日々の取り組みの成果は数字として明確に表れます。 ただ、視点を変えると、これって結構面白いことだと思います。 自分の努力の成果が公平に数字として出てくるなんて、陸上競技以外の場面ではほとんどないからです。 実は私も学生時代はアスリートとして、今は市民ランナーとして、通算24年も走り続けていますが、陸上を嫌になったり、辞めたいと思ったことはほとんどありません。 というのは、陸上競技とはRPG(ロールプレイングゲーム)や育成シミュレーションゲームに似ていると感じるからです。 これらのゲームでは、シナリオを先に進めるためには主人公の能力値を高めなければいけません。 しかも、一つの能力だけを強化すれば良いのではなく、難易度が上がるほどバランス良くさまざまな能力を上げていく必要があります。 単に攻撃力と守備力を上げるだけではダメで、呪文やブレス耐性、ステータス異常ガード、ドラゴン系特攻など、状況に応じてスキルや装備品を変えていかなければなりません。 最初はアリアハンでスライムを相手に打撃だけで戦っていればよかったのが、物語を進めるうちにより強力な攻撃呪文、回復呪文が必要になり、補助呪文も覚え、戦略が多様化していきます。 さらに、育成シミュレーションゲームでは、ただ強化だけをしていくと体力や気力がなくなってしまうので、効率を上げるためには適度に休養を挟む必要があります(「パワプロ」や「ときメモ」で休養の大切さを学ぶ人は多いはず……)。 [caption id="attachment_3976" align="aligncenter" width="493"] 陸上競技はキャリアが長くなるほど装備品やアイテムが増えていく(でも、一番大事なのは身体能力)[/caption] 自分はどの能力を高めるべきか。 そのためには今、何をやらなければならないか。 これって陸上と同じですよね? 違うのは、強化をする対象がゲームの主人公なのか、現実の自分かというところです。 言い換えれば、陸上競技とは自分を主人公とした「リアル育成シミュレーション」ではないかと感じます。 それでいてゲームよりも奥が深い。 これが陸上競技の魅力の一つではないでしょうか。 指導者にメニューを出され、それを何となくこなしていく毎日というのはきついと思います。 しかし、「この練習をすればこういう効果がある!」とか、「自分はこの能力が低いから、こういう練習をすればもっと記録が伸びるはず!」と考えていくと、厳しい練習に対しても前向きに取り組めると思いませんか? また、厳しい練習であっても、その攻略法を考えることで印象が変わる場合もあります。 意識のポイントを変えてみるとか、いつもとは違う力配分を試してみるとか。 そうすることで走り方の「コツ」や、飛躍のきっかけとなる「究極奥義」を発見できるかもしれません。 特に、実績のある指導者というのはビジョンも明確なので、「そなたが次のレベルになるためにはあと◯◯◯の経験値が必要じゃ」と、目標までの最短距離を示してくれることが多いです。 あとは、やるかやらないかです。 それによって未来が変わるかもしれません。 今はスライムを倒すのが精一杯でも、そうして鍛錬を重ねるうちに、いつかはボストロールやバラモスと戦い、大魔王ゾーマに挑めるようになるかもしれないのです。 いろいろなことを考えて、工夫して、試してみる。 練習はその舞台だと思えば、単なる「苦行」ではなくなります。 偉大な先人たちの「考えて陸上をやろう!」というアドバイスは、きっとそういう意味も含んでいるのだと思います。 というわけで、「陸上ってきついなー」「何のために陸上をやってるのかわからない……」という選手は、視点を変えてみると陸上の新たな楽しみ方が見えてくるかもしれません。 その冒険のお供に、『月刊陸上競技』を〝攻略本〟として使っていただけると、編集部としてはうれしく思います。 なお、元ネタが古い(ドラゴンクエスト3=1988年発売)のはジェネレーションギャップということでご容赦下さい(笑)。 ※ドラクエ3は現在、ゲーム機だけでなくスマホのアプリでも遊べるようです。興味のある人はレッツプレイ!
山本慎一郎 やまもとしんいちろう 月刊陸上競技 編集部(兼企画営業部)企画課長。 1983年生まれ。福島県いわき市出身。160cm、47kg(ピーク時)。植田中→磐城高→福島大→法大卒(3年次に編入したはずが、なぜか3年間在学)。中学から現在まで長距離ランナーで、趣味は陸上グッズ集め。箱根駅伝担当として各大学に顔を出しつつ、取材で得たノウハウを自身のトレーニングに活用している。無駄に多い知識に身体がついてこないのが永遠のテーマ。「鉄拳7」が8段、「ウルトラストリートファイター4」がBBクラス、「KOF」が対人戦10連勝の自己ベストを持つ〝ぬるゲーマー〟でもある。
編集部コラム第2回「あんな選手を目指しなさい」(向永拓史) 編集部コラム第1回「締め切りとIHと五輪」(小川雅生)  

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.03.26

日本選手権室内・日本室内大阪大会が終了 リレーフェス今年実施せず、U16リレーは7/12~13の日本選手権リレー・混成と併催

日本陸連は3月26日、都内で理事会を開き、2025年度の主要競技会日程を承認した。 これまで、主に毎年2月に実施していた日本選手権室内・日本室内大阪大会は終了とし、25年度から行われない。 大阪城ホールを会場とした同大会 […]

NEWS 【男子3000m】尾田祥太(Runup Academy・中2) 8分37秒25=中2歴代6位

2025.03.26

【男子3000m】尾田祥太(Runup Academy・中2) 8分37秒25=中2歴代6位

3月22日、名古屋市のパロマ瑞穂北陸上競技場で愛知陸協長距離競技会(第1回トヨタ紡織記録挑戦会)が行われ、男子3000mに出場した尾田祥太(Runup Academy/岡崎南中2愛知)が8分37秒25の中2歴代6位のタイ […]

NEWS セイコーGGPと日本選手権で東京世界陸上の運営トレーニング実施「大会運営に必要な能力・経験」の蓄積目指す

2025.03.26

セイコーGGPと日本選手権で東京世界陸上の運営トレーニング実施「大会運営に必要な能力・経験」の蓄積目指す

公益財団法人東京2025世界陸上財団は3月26日に理事会を開き、本番での運営能力向上を図るため、運営トレーニングを実施することを発表した。 トレーニングの対象大会は、本番のメイン会場である国立競技場で行われるセイコーゴー […]

NEWS スズキの田原遼太郎が現役引退 800mインターハイ出場 大学時代は関西インカレ1万m優勝

2025.03.26

スズキの田原遼太郎が現役引退 800mインターハイ出場 大学時代は関西インカレ1万m優勝

スズキは所属する田原遼太郎が現役を引退し、社業に専念することを発表した。 田原は大阪府出身の26歳。中学から陸上を始め、当初は800mなど中距離に取り組み、13年全中では準決勝まで進んでいる。大阪高でもトラックや高校駅伝 […]

NEWS 東京世界陸上ボランティアに3100人が採用 周辺協力者含めて3400人で構成

2025.03.26

東京世界陸上ボランティアに3100人が採用 周辺協力者含めて3400人で構成

公益財団法人東京世界陸上財団は3月26日に理事会を開催し、ボランティアの採用結果について発表した。 11月1日から12月17日までの期間で募集し、当初想定していた募集人数3000人程度を大きく上回る8,276人が応募。そ […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報

page top