◇日本選手権(6月24日〜27日/大阪・ヤンマースタジアム長居)
東京五輪代表選考会となる第105回日本選手権の4日目。男子砲丸投は最終6投目で、武田歴次(栃木スポ協)が劇的な大逆転劇を演じた。
3投目までは17m04にとどまり、6位でトップエイト入り。4投目に17m58をマークして4位に浮上したものの、2投目(18m02)と5投目(18m04)にただ1人18m台に乗せた佐藤征平(新潟アルビレックスRC)との差はまだ50㎝近くあった。
残るは1投。武田は「このままの投げじゃ絶対に優勝できない。もっとスピードを出して、ファウルしてもいいから思い切り投げよう」とサークルに入った。2019年シーズン後に始めた回転投法から突き出された鉄球は、これまでとは比べ物にならないほどの放物線を描き、日本記録(18m84)を示すライン近くにドスンと落ちた。
記録は18m64。4投目の記録から1m以上も伸ばし、グライド投法だった2019年に出した自己記録(17m78)も大幅に更新。日本歴代3位タイの快投に、武田は雄叫びを上げ、力強く両こぶしを握り締めた。その後、武田の記録を上回る選手は現れず、2年ぶりの優勝を果たした。
「この記録はうれしいし、自分の力をしっかりと発揮できて良かった」
野球の捕手をやりながら陸上にも取り組んだ徳島・美馬中時代、3年時の国体で5㎏規格では中学初となる17mオーバー(17m31)を果たした。その当時ですでに180㎝を大きく超える大柄な体格から、「大器」と称され、注目を集めた。
生光学園高、日大と投てきの名門でさらに力をつけ、大学3、4年時には日本インカレを連覇。2017年に大学を卒業後、四国大大学院に進んだが、再び拠点を日大に。桜門陸友会所属だった19年、大雨の中で行われた日本選手権を制して日本の頂点に立った。
そして、さらなる進化を求めて、19年の冬から回転投法に挑戦。「始めた当初はうまくいかずに、回転投法にして本当に良かったのかなと自信がなかった」そうだが、「いつもサポートしてくださる指導者の方々が根気強く教えてくださった」ことで、次第に技術の精度を高めていった。
「せっかく回転投法に変えたんだから、指導者の方々のためにも、自分自身のためにも成功したいという気持ちでやってきました」
磨いてきた技術、それを発揮したいという強い思いが乗った一投は、「大器覚醒」と呼ぶにふさわしい快投だった。
自身初めて18mの壁を越えたのだが、もう日本記録、さらには日本人初の「19m」が見えてきた。しかし、武田は冷静に今の実力を見極める。
「今回の記録にとらわれずに、まずは18m前半から18m50ぐらいを安定させること。安定した技術、投てきができるように取り組みたい。それによって今日みたいな投げができれば、日本人初の19mというのが見えてくると思う」
日大の先輩で、男子砲丸投の第一人者だった畑瀬聡(現・同大コーチ)が昨年秋に現役を引退した。その背中を見続けてきた26歳の後輩が、先輩が目指しながらも果たせなかった夢の記録を、現実のものに変えるつもりだ。

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.18
編集部コラム「20年とカツ丼」
2025.04.18
円盤投・湯上剛輝が62m52のビッグスロー!7年ぶりの自己新「まだチャンスはある」
-
2025.04.18
-
2025.04.17
-
2025.04.17
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.12
-
2025.04.12
-
2025.04.12
-
2025.04.13
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.03.23
-
2025.04.01
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.18
編集部コラム「20年とカツ丼」
毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]
2025.04.18
アディダス アディゼロから「ADIZERO BOSTON 13」が新登場!5月1日より数量限定で発売!
アディダス ジャパンは4月18日、ランニングシリーズ「アディゼロ」より「ADIZERO BOSTON 13(アディゼロ ボストン 13)」を5月1日に限定カラーモデル「ADIZERO BOSTON 13 EQT」を数量限 […]
2025.04.18
円盤投・湯上剛輝が62m52のビッグスロー!7年ぶりの自己新「まだチャンスはある」
男子円盤投の湯上剛輝(トヨタ自動車)が4月17日に米国で行われたオクラホマ・スロー・シリーズに出場し、日本歴代2位タイとなる62m52を投げた。 湯上は1投目ファウルのあと、55m71、57m70と序盤は苦戦したが、4投 […]
2025.04.18
やり投・ディーン元気が兵庫リレーカーニバルを欠場 1500mドルーリー朱瑛里らも
日本グランプリシリーズの兵庫リレーカーニバルの主催者は、男子やり投のディーン元気(ミズノ)が欠場すると発表した。ディーンは昨年のパリで、12年ロンドン以来となる五輪出場を果たし、ダイヤモンドリーグでのファイナルに進むなど […]
2025.04.18
ダイヤモンドリーグ柯橋のエントリー発表!女王・北口榛花が中国で今季初戦!5000mに佐藤圭汰が初参戦
世界最高峰のダイヤモンドリーグ(DL)第2戦の上海・柯橋(中国)のエントリー選手が発表された。 女子やり投には昨年のパリ五輪金メダリストの北口榛花(JAL)が登録。連覇が懸かる東京世界選手権に向けて、これが今シーズン初戦 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)