◇日本選手権(6月24日〜27日/大阪・ヤンマースタジアム長居)
東京五輪代表選考会となる第105回日本選手権の最終日。その最後を締めくくる男子200mは、小池祐貴(住友電工)が20秒46(+1.0)で初優勝。普段はあまり感情を表に出さない男が、歓喜を爆発させた。
「これまで日本一を取ったことがなかったので。タイムは思ったよりも出なかったな、と一瞬思ったけど、『あ、勝ったのか、勝つっていいな』と思ったら……」
26歳はその瞬間の、率直な思いを語った。
2日前の100mで4位ながら、五輪代表入りはほぼ間違いない状況にあった。それでも、「自分は100m、200mの選手」。今大会5レース目で、今季一番のパフォーマンスを持ってきた。
コーナーまでは山下潤(ANA)にリードされる展開だったが、「勝負は直線に入ってから」と小池。ウォーミングアップの段階で、「後半にこれぐらい踏み込んだらどれぐらいいけるか、という感覚がわかっていた」ことから、前半は後半につなげる走りに集中した。そして直線に入って、一気に抜け出した。
100mで2位に食い込んでいた新鋭のデーデー・ブルーノ(東海大)に、0.17秒差をつける圧勝。「今出せる力をしっかり出せた」と小池は胸を張った。
2019年に100mで日本人3人目の9秒台(9秒98)をマークするなど、100mで注目を集めるが、200mで結果を残すことが多かった。2018年のアジア大会で金メダルを獲得したのもこの種目であり、初めて全国タイトルを手にしたのは北海道・立命館慶祥高3年だった日本ジュニア選手権。そして、今の飛躍への第一歩だった慶大4年時の日本インカレ優勝も200mだった。
ただ、2019年のドーハ世界選手権で予選敗退したあたりから、走りの感覚と記録が伴わないことが増えた。今季も練習ではできていても、いざレースになると「うまく力が入らない」状態を繰り返していた。小池の表情も、語る言葉も、なかなか前向きにはならなかった。
それでも、なかなかできなかった「年に1回の日本一を決める大会。そこでしっかりと勝つこと」を成し遂げた時、霧が晴れたように晴れやかな姿があった。
「アスリートとして精神的な強さを求められる中で、日本一になれない自分はまだまだだと思っていた。だからこそ、勝ったという気持ちが大きかった」
スプリンターとして、これが大きな転機の瞬間になるかもしれない。それを証明する舞台は、もちろん東京五輪だ。
100m、200mの2種目に出場するかどうかは、代表選考がこれからという状況で明言を避けたが、「100mにせよ、200mにせよ、リレーにせよ、今日の走りは今後につながるものになったと思う」と小池は、清々しい表情で語った。
デーデーはこの種目でも自己新(20秒63)をマークし、100mに続いて2位とまたも大健闘。鈴木涼太(城西大)が20秒73で昨年に続く3位を占めた。
五輪代表争いでは、現時点で世界ランキングでターゲットナンバー内にいた山下と飯塚翔太(ミズノ)のうち、山下が4位、飯塚は6位となり、山下が優位な立場に。また、標準記録突破済みでこの種目を棄権したサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)も選考基準では山下の上に来るため、飯塚の3大会連続の五輪代表入りが難しくなった。
フィニッシュ後はトラック上でしばらく下を向いて立ち尽くした飯塚は、「前半からスピードを乗せていったつもりだけど、うまく出せず、後半もまったく伸びなかった。うまく調整はできていたし、ベストを尽くした結果なので、悔いはない」と振り返った。

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.25
【選手名鑑】荒井 七海
2025.04.25
【選手名鑑】石井 優吉
-
2025.04.25
-
2025.04.19
-
2025.04.20
-
2025.04.20
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.01
-
2025.04.12
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.25
前田彩花が選考レース10000m1着! ハーフの悔しさ晴らし「余裕持って走れた」/日本学生個人
◇日本学生個人選手権(4月25日~27日/神奈川・レモンガススタジアム平塚)1日目 日本学生個人選手権内でワールドユニバーシティゲームズ代表選考会の女子10000mが行われ、前田彩花(関大)が33分10秒60で1着だった […]
2025.04.25
【選手名鑑】荒井 七海
荒井 七海 ARAI NANAMI SNS: Honda 1994年12月26日 御滝中(千葉)→八千代松陰高(千葉)→東海大 1500m:3.36.63(22年) 5000m:13.36.68(25年) ■代表歴 アジ […]
2025.04.25
【選手名鑑】石井 優吉
石井 優吉 ISHII YUKICHI SNS: ペンシルベニア州立大 2001年11月6日 五井中(千葉)→八千代松陰高(千葉) 800m:1.46.22(24年) ■代表歴 アジア選手権(25クミ) 【年次ベスト】 […]
2025.04.25
1500m超スローな男子は前田陽向が競り勝つ 女子は太田垣楓華が大会新V/日本学生個人
◇日本学生個人選手権(4月25日~27日/神奈川・レモンガススタジアム平塚)1日目 ワールドユニバーシティゲームズ代表選考会を兼ねた日本学生個人選手権が行われ、男子1500mは前田陽向(環太平洋大)が4分03秒64、女子 […]
2025.04.25
110mH阿部竜希が13秒26!東京世界陸上の標準突破!!「感覚的にはもっと行ける」/日本学生個人
◇日本学生個人選手権(4月25日~27日/神奈川・レモンガススタジアム平塚)1日目 ワールドユニバーシティゲームズ代表選考会を兼ねた日本学生個人選手権が行われ、男子110mハードル準決勝で阿部竜希(順大)が13秒26(+ […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)