2021.05.17
ターゲットは学生駅伝「3冠」
コロナ禍で〝自立型チーム〟に変革
今年1月の箱根駅伝で3位に入った東洋大。前年の10位から、わずか1年で巻き返しに成功した。今季は宮下隼人(4年)と松山和希(2年)が2枚看板で、注目のルーキー・石田洸介も加わり、戦力はいっそう充実してきた。〝鉄紺の証明〟のチームスローガンのもと、学生三大駅伝すべてで頂点を見据えている。
今季の東洋大を牽引する主将の宮下隼人(左)と松山和希(右)、5000mで高校記録を持つ注目のルーキー・石田洸介
再び頂点へ
自立型チームで挑む
〝鉄紺の証明〟―これが今季の東洋大が掲げるチームスローガンだ。
2020年の箱根駅伝は大エースの相澤晃(現・旭化成)を擁しながらも10位に終わり、11年連続で保持してきたトップ3入りを逃した。だが、昨年度は相澤らの卒業で戦力ダウンが懸念されながらも、1月の箱根駅伝では3位に入り、1年で3位以内に返り咲くことに成功した。だからこそ、その結果がフロックと見られないように、今季の主将・宮下隼人(4年)はいっそう気を引き締めている。
「今年の箱根駅伝で3位という結果が、たまたまではなかったことを証明したい。三大駅伝で優勝し、東洋大の強さを見せたい」
箱根優勝4回を誇る名門だけに、3位という結果に慢心はない。〝鉄紺の証明〟のスローガンの下、その強さを誇示するために、今季はすべての駅伝で頂点を狙いにいく。
昨年度は、新型コロナウィルスの影響でチームとしての活動がままならないことが多かった。特に前半シーズンは埼玉・川越キャンパス内にある陸上競技部の寮が閉鎖され、選手たちは個々でトレーニングに取り組まなければならなかった。
ただ、そのような逆境の中にも、酒井俊幸監督は収穫を見出していた。
「昨年は、これまでやってきたことを思い切って見直す機会になったと思います。チーム運営等に関して、それまでとまったく違うやり方で臨まなければなりませんでしたが、その中で規律型チームから自立型チームに変わるきっかけが多かった。(昨年度の)主将だった大森龍之介を中心に、一人ひとりが良い影響力、リーダーシップを発揮できるようなチームを目指してきました。今年度も引き続き、継続していきたい」
〝自律と自立〟とは昨年度、監督や選手がミーティング等でたびたび口にした言葉だったが、再び頂点に立つためのキーワードとなっている。
昨年度から継続して「中間層の強化」を課題に育成を進めている酒井俊幸監督。3位だった箱根駅伝を経て手応えを感じている
中間層の充実がV奪還へのカギ
今季のチームは主将の宮下と2年生の松山和希が主軸を担う。宮下は箱根駅伝5区の区間記録保持者。松山は今年の箱根駅伝で1年生ながらエース区間の2区を任され、1時間7分15秒(1年生日本人歴代2位)の好記録で区間4位(日本人2位)と好走している。箱根の重要区間である2区と5区で計算が立つのは大きなアドバンテージだろう。
さらに、注目のルーキー・石田洸介が入学。日本高校記録でもある5000m13分34秒74はチーム最速タイムだ。
「監督とも話し合って、1年目は高すぎる目標を立てるのではなく、ケガなく練習を積んで、土台を作っていきたい。自分にプレッシャーをかけすぎずに伸び伸びとやっていきたいです」と石田が言うように、ルーキーイヤーは世界に羽ばたくための基礎固めの年となる。とはいえ、即戦力候補であることには違いない。石田自身も「1年目は三大駅伝で結果を残すところから始めていきたい」と駅伝出場に意欲を示している。
一方で、柱となる選手がそろっていても、それだけでは駅伝で頂点には立てないのも事実だ。
「箱根を走った4年生が4人抜けてしまったので、最低限そこは埋めなければいけませんし、優勝を狙うのであれば、それ以上を目指さなければいけません。そういう意味でも、中間層の厚さが大切になってくるのかなと思います」
宮下は、このように現状の課題を分析している。酒井監督も中間層に奮起を促す。
「今季のキーマンは主力選手の宮下、松山ですが、3年生の前田義弘や児玉悠輔には、西山和弥(現・トヨタ自動車)らが抜けた穴を埋められる選手に成長してほしい。佐藤真優(まひろ、2年)あたりにも主力選手になってもらえたらと思います。ルーキーに関しては、まだ入ってきたばかりなので経験を積ませたい。そして、蝦夷森章太、鈴木宗孝、腰塚遥人といった4年生が今年度の駅伝でちゃんとメンバーに入ってくるようになれば優勝争いに絡んでいけるんじゃないかと思います」
コロナ禍をきっかけにチームの運営方針を見直したという酒井監督(中央)。その左が主力である3年生の前田義弘
エース級への成長が期待されている3年生の児玉悠輔
今年の箱根を走った選手は4人卒業したが、実は、過去の三大駅伝を走った選手を数えると11人いる。そこに、石田や甲木康博といった有力ルーキーが加わったのだから、課題克服の糸口は十分に見えていると言っていい。
〝自炊のススメ〟で栄養学を体験的に学ぶ
近年、東洋大が学生駅伝界で常に上位にいる要因は、栄養学に基づいた身体作りやコンディショニングにあるだろう。
「やはり健康な身体を作ることは大事。特に10代から20代になる大学4年間は身体が大きく変わる時期ですから、ちゃんとした栄養を補給することがパフォーマンスにも健康にも大切だと思っています。それに、この時期にスポーツ栄養学に触れることは、その後の人生にも役立ってきますから。トレーニングの質と量を増やすのは実業団に行ってからでもできますが、身体作りは大学でしっかりやっておくべきことだと思っています」(酒井監督)
東洋大は体幹などのフィジカル強化にも時間をかけて取り組む
東洋大は2009年に酒井監督が就任した時から女子栄養大学と提携してサポートを受けているが、栄養学のレクチャーも定期的に行っており、選手の関心も高いという。
また、コロナ禍において、昨年度から昼食時に自炊を推奨している。
「栄養士や妻(競歩の酒井瑞穂コーチ)が簡単に作れそうなものを教えています。例えば、煮物1つとっても、おいしく作るには砂糖や醤油、みりんを結構使うんですよね。自炊していると、そういう気づきもあります」(酒井監督)
お菓子作りを趣味とする主将の宮下は、もちろん自炊もお手のものだ。
「コロナ禍で外出もできない中で、楽しみなのが食事ですから。食べ飽きないものを作るように心がけています。もちろん栄養も大事です。陸上競技は毎日練習メニューが異なるので、フィジカル強化の日はタンパク質を多めにしたり、長い距離の練習の日には炭水化物を多めにとったり、逆にオフの日は少なめにしたりと、考えながら食事をしています」(宮下)
これもまた〝自律と自立〟の1つのかたちなのだろう。
駅伝シーズンに照準を合わせている宮下。コロナ禍での生活では自炊やお菓子作りが気分転換になっているという
「昼食は週の半分くらい自炊しています。母から教えてもらったり、レシピを見たりして作っていますが、自分の経験になるので楽しいです。豚の生姜焼きやチーズタッカルビを作ってみました」とは石田。入寮間もない1年生も、さっそく自炊に取り組んでいる。
コンディショニングにはミネラル入り麦茶を活用
また、コンディショニングの一環として、水分補給にミネラル入り麦茶を活用するようになって今年度で4シーズン目を迎える。酒井監督も大きな変化を実感している。
「血液性状のチェックは前々から定期的に行っていますが、コンディショニング飲料としてミネラル入り麦茶を飲むようになって、データ的にも貧血がだいぶ減りました。私自身、学生時代に貧血になってまったく走れないことがありましたが、貧血になってから対処するのではなくて、予防することが大事なんですよね。それに、汗の分析もしていますが、汗でミネラルが排出されますから、ミネラルを含んだものを補給するかどうかで身体の調子も違ってきます。脱水対策にもなっています」(酒井監督)
入学当初は「貧血気味だった」と言う松山は、食事の面では鉄分や、鉄分の吸収率を高めるためにビタミン群を意識して摂取し、水分補給ではミネラル入り麦茶を積極的に活用した。
「負荷の大きいポイント練習を行う時は、エネルギーも必要なのでスポーツドリンクを飲みますが、ジョグの日とか、普段の水分補給ではミネラル入り麦茶を飲むようにしています」
こうして貧血の悩みから解放されると、1年目で一気にエース格に成長した。
ミネラル入り麦茶を活用したコンディショニングもチーム全体で継続中。スポーツドリンクと使い分けることで体質改善を図っている
ルーキーの石田は、高校時代からミネラル入り麦茶で水分補給を行っていたという。
「高3になる頃に、短距離の桐生さん(祥秀/日本生命)が冷蔵庫にミネラル入り麦茶をストックされていると聞いて、(実家の)親にお願いして毎月1ケース送ってもらい、高3の時はほぼ毎日飲んでいました。自分はけっこう汗をかく体質なので、水分補給は水だけでは足りないんですね。午前中はミネラル入り麦茶で、練習前はスポーツドリンクで、と決めていました。夏も暑さに負けず、熱中症にならずに練習ができました」
1月から故障に苦しんだ新人の石田(右)は3月から練習を継続できるようになった。チームに合流後は着実にトレーニングを積んでいる。左は3年生の山田和輝
また、レース前のウォーターローディングにもミネラル入り麦茶を取り入れている。
「スポーツドリンクや経口補水液はカロリーがあるので、早い段階から飲み始めると体重管理が難しくなります。このため、1週間前からはミネラル入り麦茶を飲み、レース前日にスポーツドリンクや経口補水液に切り替えるようにしています」(宮下)
狙った試合にきっちりコンディションを合わせるために、ミネラル入り麦茶が役立っている。
秋を見据えて調整中
駅伝では「東洋大らしさ」を
例年であれば箱根駅伝後に新チームが始動するが、1月に再び自宅待機期間があったため、東洋大は他校に比べて活動再開が遅かったという。また、宮下は箱根のレース中に右脚の脛を疲労骨折し、松山も自粛期間明けに右脚の腸脛靱帯を痛め、ともにシーズンインが遅れている。
「正直、チームとして焦りはある」と宮下は心の内を明かすが、「この春は耐えて、夏に走り込んで、秋からしっかり結果を出したい」と、気持ちを切り替えている。無理にトラックの記録を狙うのではなく、駅伝に向けてじっくり仕上げていく考えだ。
そして、「攻めの走り、あきらめない走り、きついときこそ前に進む走りという、東洋らしい走りを体現したい」と宮下が言うように、東洋大は今季も「その1秒をけずりだせ」「怯まず前へ」というチームスピリッツを示すつもりでいる。
今季の目標は「学生駅伝3冠」。〝鉄紺の証明〟をスローガンに掲げている
文/福本ケイヤ
撮影/真鍋 元
※この記事は『月刊陸上競技』2021年6月号に掲載しています
ターゲットは学生駅伝「3冠」 コロナ禍で〝自立型チーム〟に変革
今年1月の箱根駅伝で3位に入った東洋大。前年の10位から、わずか1年で巻き返しに成功した。今季は宮下隼人(4年)と松山和希(2年)が2枚看板で、注目のルーキー・石田洸介も加わり、戦力はいっそう充実してきた。〝鉄紺の証明〟のチームスローガンのもと、学生三大駅伝すべてで頂点を見据えている。 今季の東洋大を牽引する主将の宮下隼人(左)と松山和希(右)、5000mで高校記録を持つ注目のルーキー・石田洸介再び頂点へ 自立型チームで挑む
〝鉄紺の証明〟―これが今季の東洋大が掲げるチームスローガンだ。 2020年の箱根駅伝は大エースの相澤晃(現・旭化成)を擁しながらも10位に終わり、11年連続で保持してきたトップ3入りを逃した。だが、昨年度は相澤らの卒業で戦力ダウンが懸念されながらも、1月の箱根駅伝では3位に入り、1年で3位以内に返り咲くことに成功した。だからこそ、その結果がフロックと見られないように、今季の主将・宮下隼人(4年)はいっそう気を引き締めている。 「今年の箱根駅伝で3位という結果が、たまたまではなかったことを証明したい。三大駅伝で優勝し、東洋大の強さを見せたい」 箱根優勝4回を誇る名門だけに、3位という結果に慢心はない。〝鉄紺の証明〟のスローガンの下、その強さを誇示するために、今季はすべての駅伝で頂点を狙いにいく。 昨年度は、新型コロナウィルスの影響でチームとしての活動がままならないことが多かった。特に前半シーズンは埼玉・川越キャンパス内にある陸上競技部の寮が閉鎖され、選手たちは個々でトレーニングに取り組まなければならなかった。 ただ、そのような逆境の中にも、酒井俊幸監督は収穫を見出していた。 「昨年は、これまでやってきたことを思い切って見直す機会になったと思います。チーム運営等に関して、それまでとまったく違うやり方で臨まなければなりませんでしたが、その中で規律型チームから自立型チームに変わるきっかけが多かった。(昨年度の)主将だった大森龍之介を中心に、一人ひとりが良い影響力、リーダーシップを発揮できるようなチームを目指してきました。今年度も引き続き、継続していきたい」 〝自律と自立〟とは昨年度、監督や選手がミーティング等でたびたび口にした言葉だったが、再び頂点に立つためのキーワードとなっている。 昨年度から継続して「中間層の強化」を課題に育成を進めている酒井俊幸監督。3位だった箱根駅伝を経て手応えを感じている中間層の充実がV奪還へのカギ
今季のチームは主将の宮下と2年生の松山和希が主軸を担う。宮下は箱根駅伝5区の区間記録保持者。松山は今年の箱根駅伝で1年生ながらエース区間の2区を任され、1時間7分15秒(1年生日本人歴代2位)の好記録で区間4位(日本人2位)と好走している。箱根の重要区間である2区と5区で計算が立つのは大きなアドバンテージだろう。 さらに、注目のルーキー・石田洸介が入学。日本高校記録でもある5000m13分34秒74はチーム最速タイムだ。 「監督とも話し合って、1年目は高すぎる目標を立てるのではなく、ケガなく練習を積んで、土台を作っていきたい。自分にプレッシャーをかけすぎずに伸び伸びとやっていきたいです」と石田が言うように、ルーキーイヤーは世界に羽ばたくための基礎固めの年となる。とはいえ、即戦力候補であることには違いない。石田自身も「1年目は三大駅伝で結果を残すところから始めていきたい」と駅伝出場に意欲を示している。 一方で、柱となる選手がそろっていても、それだけでは駅伝で頂点には立てないのも事実だ。 「箱根を走った4年生が4人抜けてしまったので、最低限そこは埋めなければいけませんし、優勝を狙うのであれば、それ以上を目指さなければいけません。そういう意味でも、中間層の厚さが大切になってくるのかなと思います」 宮下は、このように現状の課題を分析している。酒井監督も中間層に奮起を促す。 「今季のキーマンは主力選手の宮下、松山ですが、3年生の前田義弘や児玉悠輔には、西山和弥(現・トヨタ自動車)らが抜けた穴を埋められる選手に成長してほしい。佐藤真優(まひろ、2年)あたりにも主力選手になってもらえたらと思います。ルーキーに関しては、まだ入ってきたばかりなので経験を積ませたい。そして、蝦夷森章太、鈴木宗孝、腰塚遥人といった4年生が今年度の駅伝でちゃんとメンバーに入ってくるようになれば優勝争いに絡んでいけるんじゃないかと思います」 コロナ禍をきっかけにチームの運営方針を見直したという酒井監督(中央)。その左が主力である3年生の前田義弘 エース級への成長が期待されている3年生の児玉悠輔 今年の箱根を走った選手は4人卒業したが、実は、過去の三大駅伝を走った選手を数えると11人いる。そこに、石田や甲木康博といった有力ルーキーが加わったのだから、課題克服の糸口は十分に見えていると言っていい。〝自炊のススメ〟で栄養学を体験的に学ぶ
近年、東洋大が学生駅伝界で常に上位にいる要因は、栄養学に基づいた身体作りやコンディショニングにあるだろう。 「やはり健康な身体を作ることは大事。特に10代から20代になる大学4年間は身体が大きく変わる時期ですから、ちゃんとした栄養を補給することがパフォーマンスにも健康にも大切だと思っています。それに、この時期にスポーツ栄養学に触れることは、その後の人生にも役立ってきますから。トレーニングの質と量を増やすのは実業団に行ってからでもできますが、身体作りは大学でしっかりやっておくべきことだと思っています」(酒井監督) 東洋大は体幹などのフィジカル強化にも時間をかけて取り組む 東洋大は2009年に酒井監督が就任した時から女子栄養大学と提携してサポートを受けているが、栄養学のレクチャーも定期的に行っており、選手の関心も高いという。 また、コロナ禍において、昨年度から昼食時に自炊を推奨している。 「栄養士や妻(競歩の酒井瑞穂コーチ)が簡単に作れそうなものを教えています。例えば、煮物1つとっても、おいしく作るには砂糖や醤油、みりんを結構使うんですよね。自炊していると、そういう気づきもあります」(酒井監督) お菓子作りを趣味とする主将の宮下は、もちろん自炊もお手のものだ。 「コロナ禍で外出もできない中で、楽しみなのが食事ですから。食べ飽きないものを作るように心がけています。もちろん栄養も大事です。陸上競技は毎日練習メニューが異なるので、フィジカル強化の日はタンパク質を多めにしたり、長い距離の練習の日には炭水化物を多めにとったり、逆にオフの日は少なめにしたりと、考えながら食事をしています」(宮下) これもまた〝自律と自立〟の1つのかたちなのだろう。 駅伝シーズンに照準を合わせている宮下。コロナ禍での生活では自炊やお菓子作りが気分転換になっているという 「昼食は週の半分くらい自炊しています。母から教えてもらったり、レシピを見たりして作っていますが、自分の経験になるので楽しいです。豚の生姜焼きやチーズタッカルビを作ってみました」とは石田。入寮間もない1年生も、さっそく自炊に取り組んでいる。コンディショニングにはミネラル入り麦茶を活用
また、コンディショニングの一環として、水分補給にミネラル入り麦茶を活用するようになって今年度で4シーズン目を迎える。酒井監督も大きな変化を実感している。 「血液性状のチェックは前々から定期的に行っていますが、コンディショニング飲料としてミネラル入り麦茶を飲むようになって、データ的にも貧血がだいぶ減りました。私自身、学生時代に貧血になってまったく走れないことがありましたが、貧血になってから対処するのではなくて、予防することが大事なんですよね。それに、汗の分析もしていますが、汗でミネラルが排出されますから、ミネラルを含んだものを補給するかどうかで身体の調子も違ってきます。脱水対策にもなっています」(酒井監督) 入学当初は「貧血気味だった」と言う松山は、食事の面では鉄分や、鉄分の吸収率を高めるためにビタミン群を意識して摂取し、水分補給ではミネラル入り麦茶を積極的に活用した。 「負荷の大きいポイント練習を行う時は、エネルギーも必要なのでスポーツドリンクを飲みますが、ジョグの日とか、普段の水分補給ではミネラル入り麦茶を飲むようにしています」 こうして貧血の悩みから解放されると、1年目で一気にエース格に成長した。 ミネラル入り麦茶を活用したコンディショニングもチーム全体で継続中。スポーツドリンクと使い分けることで体質改善を図っている ルーキーの石田は、高校時代からミネラル入り麦茶で水分補給を行っていたという。 「高3になる頃に、短距離の桐生さん(祥秀/日本生命)が冷蔵庫にミネラル入り麦茶をストックされていると聞いて、(実家の)親にお願いして毎月1ケース送ってもらい、高3の時はほぼ毎日飲んでいました。自分はけっこう汗をかく体質なので、水分補給は水だけでは足りないんですね。午前中はミネラル入り麦茶で、練習前はスポーツドリンクで、と決めていました。夏も暑さに負けず、熱中症にならずに練習ができました」 1月から故障に苦しんだ新人の石田(右)は3月から練習を継続できるようになった。チームに合流後は着実にトレーニングを積んでいる。左は3年生の山田和輝 また、レース前のウォーターローディングにもミネラル入り麦茶を取り入れている。 「スポーツドリンクや経口補水液はカロリーがあるので、早い段階から飲み始めると体重管理が難しくなります。このため、1週間前からはミネラル入り麦茶を飲み、レース前日にスポーツドリンクや経口補水液に切り替えるようにしています」(宮下) 狙った試合にきっちりコンディションを合わせるために、ミネラル入り麦茶が役立っている。秋を見据えて調整中 駅伝では「東洋大らしさ」を
例年であれば箱根駅伝後に新チームが始動するが、1月に再び自宅待機期間があったため、東洋大は他校に比べて活動再開が遅かったという。また、宮下は箱根のレース中に右脚の脛を疲労骨折し、松山も自粛期間明けに右脚の腸脛靱帯を痛め、ともにシーズンインが遅れている。 「正直、チームとして焦りはある」と宮下は心の内を明かすが、「この春は耐えて、夏に走り込んで、秋からしっかり結果を出したい」と、気持ちを切り替えている。無理にトラックの記録を狙うのではなく、駅伝に向けてじっくり仕上げていく考えだ。 そして、「攻めの走り、あきらめない走り、きついときこそ前に進む走りという、東洋らしい走りを体現したい」と宮下が言うように、東洋大は今季も「その1秒をけずりだせ」「怯まず前へ」というチームスピリッツを示すつもりでいる。 今季の目標は「学生駅伝3冠」。〝鉄紺の証明〟をスローガンに掲げている 文/福本ケイヤ 撮影/真鍋 元 ※この記事は『月刊陸上競技』2021年6月号に掲載しています
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