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2021.05.07

編集部コラム「努力は報われた」
編集部コラム「努力は報われた」

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リレーコラム

毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ!
陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。
編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。
暇つぶし程度にご覧ください!

第93回「努力は報われた(向永拓史)


「努力は必ず報われるんだなって」

こう涙ながらに語った競泳の池江璃花子選手の姿に感動しました。純粋に、仕事場だったけど普通に泣いちゃいました。

この「報われる」という言葉が、その後独り歩きしました。賛否両論(?)というか、さまざまな広がりを見せ、アスリートや著名人も自分の考えを発信する姿もありました。

すごく違和感を覚えました。「必ず報われる」という言葉ではなく、「必ず報われるわけじゃない」という話題に対してです。

努力が必ず報われるわけじゃないのは、ある程度人生経験を持つ選手なら誰でも理解していることだと思います。でも、報われると信じて、報われればいいなと思って、努力を続けますよね。たぶん、報われないことのほうが多いと思いますけれど……。

でも、今回、ちょっと違うんじゃないかな、というのが「報われた」=「結果(優勝)」という拡大解釈があったことです。

「この言葉は負けた選手が努力していないこと(報われていないから)になる」という表現が見受けられました。でも、「報われる」というのは本当に「結果」だけを指すものなのでしょうか。

池江選手は、また日本一になりたい、オリンピックに行きたい、もっと言えば強くなりたい、速く泳ぎたい、という目標があったでしょうし、それを達成したから「報われた」と表現したと思います。表現は難しいのですが、「勝った」から「報われた」ではなく「目標にしていたところに近づけた」から「報われた」と思うのです。

だから、もしかしたら3番に入っても池江選手は「報われた」と言ったかもしれない。その「報われる」指標は人それぞれですから。

ある選手にとっては自己ベストが「報われた」、ある選手にとっては8位入賞できて「報われた」。だから、「勝てなかった選手は報われなかったということじゃないか」という人の感受性にはとても疑問を感じます。

私だって、努力が「必ず」報われるなんて思っていない。だから「努力しない」という人と、思っていないけども、「必ず報われるんだ」と信じて努力する。この差は大きいと思うんです。

そういえば、世界リレーで女子4×100mリレーが東京五輪の出場権を獲得したのも、「努力が報われた」瞬間だったなと思います。女子短距離をたくさん取材してきたからこそ、感慨もひとしお。兒玉芽生選手なんて全国小学生陸上から取材していたので……。日本女子短距離にとって、ここがスタートになってほしいですね。

ちなみ月陸4月号では「女子短距離応援宣言。」と題して、五輪を目指す女子スプリンターたちを特集しました。ほんの少しでも盛り上げる一役を買えたり、背中を押せていたりしていたのならいいなと。世界リレーを見て、小さいかもしれないけど「努力が報われた」瞬間でした。

え? 4月号の売り上げはどうだったのかって? いやいや、努力は必ず報われるわけじゃないんですよ。

向永拓史(むかえ・ひろし)
月刊陸上競技編集部 新米編集部員
1983年8月30日生まれ。16★cm、★kg、O型。石川県金沢市生まれ、滋賀県育ち。両親の仕事の都合で多数の引っ越しを経験し、幼少期より「どうせ友達になっても離れる」とひねくれて育つ。運動音痴で絵を描くのが好きな少年だったが、小4の時に開幕したJリーグの影響で三浦知良に心酔し、天才漫画家になる未来を絶たれた。いろいろあって2011年全中以降、陸上競技の取材をすることになり、現在に至る。尊敬する人はカズ、尾崎豊、宮本輝、本田宗一郎。

編集部コラム第92回「2年ぶりの織田記念」(小川)
編集部コラム第91回「エゴイスト」(船越)
編集部コラム第90回「あらためて100m10秒台ってすごいタイムですよね??」(松永)
編集部コラム第89回「学生競技会の華 大学対校戦!」(大久保)
編集部コラム第88回「U20世界選手権の上位候補をリサーチ!」(井上)
編集部コラム第87回「編集部コラム「郷土の応援」(山本)
編集部コラム第86回「あこがれの松田耕作記者」(向永)
編集部コラム第85回「スポーツのチカラ」(小川)
編集部コラム第84回「初心」(船越)
編集部コラム第83回「高校生にとってのインターハイ」(松永)
編集部コラム第82回「2020年世界リストTop10入り日本人選手」(大久保)
編集部コラム第81回「〝きっかけ〟の提供を」(井上)
編集部コラム第80回「一番アツい夏」(山本)
編集部コラム第79回「前向きな言葉という魔法」(向永)
編集部コラム第78回「自分なりの『答え』を探す」(小川)
編集部コラム第77回「カメラマンの箱根駅伝」(船越)
編集部コラム第76回「専門誌記者の箱根駅伝」(松永)
編集部コラム第75回「データで見る箱根駅伝当日エントリー変更」(大久保)
編集部コラム第74回「2020年を振り返って」(井上)
編集部コラム第73回「プレッシャーとの向き合い方」(山本)
編集部コラム第72回「陸上競技のイメージを変えたい」(向永)
編集部コラム第71回「2020年ラストスパート!!」(小川)
編集部コラム第70回「理不尽なこと」(船越)
編集部コラム第69回「這い上がる」(松永)
編集部コラム第68回「都道府県対抗 男子十種競技選手権」(大久保)
編集部コラム第67回「都大路も高速レースの予感」(井上)
編集部コラム第66回「陸上競技を続けると……?」(山本)
編集部コラム第65回「強い選手の共通点?パート2」(向永)
編集部コラム第64回「2020年シーズンはまだこれから!!」(小川)
編集部コラム第63回「質と量」(船越)
編集部コラム第62回「たかが2cm、されど2cm」(松永)
編集部コラム第61回「都道府県対抗 女子七種競技選手権」(大久保)
編集部コラム第60回「キソの大切さ」(井上)
編集部コラム第59回「思い込みを捨てる」(山本)
編集部コラム第58回「それ、ドーピングだよ」(向永)
編集部コラム第57回「東京五輪へ“もう1度”あと1年」(小川)
編集部コラム第56回「魔法の言葉」(船越)
編集部コラム第55回「月陸ってどんな雑誌?」(松永)
編集部コラム第54回「インターハイ種目別学校対抗(女子編)」(大久保)
編集部コラム第53回「明確なビジョン」(井上)
編集部コラム第52回「人間性を磨く」(山本)
編集部コラム第51回「指が痛い。」(向永)
編集部コラム第50回「温故知新」(小川)
編集部コラム第49回「対面取材」(船越)
編集部コラム第48回「日本選手権優勝者を世代別にまとめてみた」(松永)
編集部コラム第47回「インターハイ種目別学校対抗(男子編)」(大久保)
編集部コラム第46回「月陸に自分が載った」(井上)
編集部コラム第45回「陸上競技と関わり続ける」(山本)
編集部コラム第44回「逃げるとどうなる?」(向永)
編集部コラム第43回「成長のヒント」(小川)
編集部コラム第42回「日本実業団記録」(大久保)
編集部コラム第41回「思い出の2016年長野全中」(松永)
編集部コラム第40回「葛藤」(船越)
編集部コラム第39回「何も咲かない寒い日は……」(井上)
編集部コラム第38回「社会の一員としての役割」(山本)
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編集部コラム第36回「Tokyo 2020+1」(小川)
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編集部コラム第34回「ピンチをチャンスに」(松永)
編集部コラム第33回「日本記録アラカルト」(大久保)
編集部コラム第32回「独断で選ぶ2019年度高校陸上界5選」(井上)
編集部コラム第31回「記録と順位」(山本)
編集部コラム第30回「答えを見つけ出す面白さ」(向永)
編集部コラム第29回「初めてのオリンピック」(小川)
編集部コラム第28回「人生意気に感ず」(船越)
編集部コラム第27回「学生駅伝〝区間賞〟に関するアレコレ」(松永)
編集部コラム第26回「2019年度 陸上界ナンバーワン都道府県は?」(大久保)
編集部コラム第25回「全国男子駅伝の〝私見〟大会展望」(井上)
編集部コラム第24回「箱根駅伝の高速化を検証」(山本)
編集部コラム番外編「勝負師の顔」(山本)
編集部コラム第23回「みんなキラキラ」(向永)
編集部コラム第22回「国立競技場」(小川)
編集部コラム第21回「〝がんばれ〟という言葉の力と呪縛」(船越)
編集部コラム第20回「日本記録樹立者を世代別にまとめてみた」(松永)
編集部コラム第19回「高校陸上界史上最強校は?(女子編)」(大久保)
編集部コラム第18回「独断で選ぶ全国高校駅伝5選」(井上)
編集部コラム第17回「リクジョウクエスト2~そして月陸へ~」(山本)
編集部コラム第16回「強い選手の共通点?」(向永)
編集部コラム第15回「続・ドーハの喜劇?」(小川)
編集部コラム第14回「初陣」(船越)
編集部コラム第13回「どうなる東京五輪マラソン&競歩!?」(松永)
編集部コラム第12回「高校陸上界史上最強校は?(男子編)」(大久保)
編集部コラム第11回「羽ばたけ日本の中距離!」(井上)
編集部コラム第10回「心を動かすもの」(山本)
編集部コラム第9回「混成競技のアレコレ」(向永)
編集部コラム第8回「アナウンス」(小川)
編集部コラム第7回「ジンクス」(船越)
編集部コラム第6回「学生駅伝を支える主務の存在」(松永)
編集部コラム第5回「他競技で活躍する陸上競技経験者」(大久保)
編集部コラム第4回「とらんすふぁ~」(井上)
編集部コラム第3回「リクジョウクエスト」(山本)
編集部コラム第2回「あんな選手を目指しなさい」(向永)
編集部コラム第1回「締め切りとIHと五輪」(小川)

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第93回「努力は報われた(向永拓史)

「努力は必ず報われるんだなって」 こう涙ながらに語った競泳の池江璃花子選手の姿に感動しました。純粋に、仕事場だったけど普通に泣いちゃいました。 この「報われる」という言葉が、その後独り歩きしました。賛否両論(?)というか、さまざまな広がりを見せ、アスリートや著名人も自分の考えを発信する姿もありました。 すごく違和感を覚えました。「必ず報われる」という言葉ではなく、「必ず報われるわけじゃない」という話題に対してです。 努力が必ず報われるわけじゃないのは、ある程度人生経験を持つ選手なら誰でも理解していることだと思います。でも、報われると信じて、報われればいいなと思って、努力を続けますよね。たぶん、報われないことのほうが多いと思いますけれど……。 でも、今回、ちょっと違うんじゃないかな、というのが「報われた」=「結果(優勝)」という拡大解釈があったことです。 「この言葉は負けた選手が努力していないこと(報われていないから)になる」という表現が見受けられました。でも、「報われる」というのは本当に「結果」だけを指すものなのでしょうか。 池江選手は、また日本一になりたい、オリンピックに行きたい、もっと言えば強くなりたい、速く泳ぎたい、という目標があったでしょうし、それを達成したから「報われた」と表現したと思います。表現は難しいのですが、「勝った」から「報われた」ではなく「目標にしていたところに近づけた」から「報われた」と思うのです。 だから、もしかしたら3番に入っても池江選手は「報われた」と言ったかもしれない。その「報われる」指標は人それぞれですから。 ある選手にとっては自己ベストが「報われた」、ある選手にとっては8位入賞できて「報われた」。だから、「勝てなかった選手は報われなかったということじゃないか」という人の感受性にはとても疑問を感じます。 私だって、努力が「必ず」報われるなんて思っていない。だから「努力しない」という人と、思っていないけども、「必ず報われるんだ」と信じて努力する。この差は大きいと思うんです。 そういえば、世界リレーで女子4×100mリレーが東京五輪の出場権を獲得したのも、「努力が報われた」瞬間だったなと思います。女子短距離をたくさん取材してきたからこそ、感慨もひとしお。兒玉芽生選手なんて全国小学生陸上から取材していたので……。日本女子短距離にとって、ここがスタートになってほしいですね。 ちなみ月陸4月号では「女子短距離応援宣言。」と題して、五輪を目指す女子スプリンターたちを特集しました。ほんの少しでも盛り上げる一役を買えたり、背中を押せていたりしていたのならいいなと。世界リレーを見て、小さいかもしれないけど「努力が報われた」瞬間でした。 え? 4月号の売り上げはどうだったのかって? いやいや、努力は必ず報われるわけじゃないんですよ。
向永拓史(むかえ・ひろし) 月刊陸上競技編集部 新米編集部員 1983年8月30日生まれ。16★cm、★kg、O型。石川県金沢市生まれ、滋賀県育ち。両親の仕事の都合で多数の引っ越しを経験し、幼少期より「どうせ友達になっても離れる」とひねくれて育つ。運動音痴で絵を描くのが好きな少年だったが、小4の時に開幕したJリーグの影響で三浦知良に心酔し、天才漫画家になる未来を絶たれた。いろいろあって2011年全中以降、陸上競技の取材をすることになり、現在に至る。尊敬する人はカズ、尾崎豊、宮本輝、本田宗一郎。
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