3大会連続の五輪代表入りを目指す男子短距離の山縣亮太(セイコー)が3月29日、新年度に向けてオンライン上で会見を開き、メディアの取材に応じた。ちょうど1ヵ月後の地元・広島での織田記念で東京五輪イヤーの2021年シーズン本格突入する予定で、「織田記念に向けて調子を上げながら、10秒05の東京五輪参加標準を突破して、日本選手権に勝負に徹することができるようにしておきたい」と意気込みを語った。
すでに2月28日のJapan Athlete Games in Osaki(鹿児島)の室内100m(予選10秒50、決勝10秒39)と、3月28日のシレジア2021世界リレー日本代表選考トライアルの特別レース100m(10秒36/-0.1)と3レースを消化。まだまだ試運転の状況とはいえ、「その時にやりたいことができている」と一定の手応えは得ている。
2019年5月のセイコーゴールデングランプリ以降、レースに出場できたのは昨年8月の同大会のみと、背中、肺気胸、足首、膝などアクシデントに悩まされ続けてきた。そんな時期と比べれば、今年は「シーズンに対して不安は持っていない」と表情は明るい。
その裏付けとして、「しっかり全身、バランス良く走ること」を目指した取り組みがある。
2018年は重心の位置を、トップスピードの維持につながる後傾気味にして、日本選手権5年ぶり制覇、アジア大会銅メダルなど、自身のスプリントが「いい作品に仕上がった」と感じていた。しかし2019年は、その走りを追い求め過ぎたり、ウエイトトレーニングで重さを追求し過ぎたりしたことから、重心の位置がさらに後ろにずれ、バランスを崩した。
この重心の位置はほんのわずかの違いなのだが、感覚が鋭く、繊細なトップアスリートの領域では、このわずかな誤差が大きな差を生む。それは悪いほうだけではなく、もちろんいい方向へも変えられるものだ。2020年からはより加速に乗りやすい「前」への意識を高めてきた。
そのために、取り組んできたのが、一つひとつの動きで「身体をうまく使う」こと。理学療法士やストレングスのトレーナーらと「より技術にフォーカスできる体制」を作り、その仕上がりに手応えを感じている。
もちろん、強度の高いトレーニングも重ねており、2018年以前と比べて「パワーがついた」ことは確かな成長点。あとは鹿児島、宮崎で見えた課題から、「どうトレーニングしていこう、試合に向けてどうやっていこうということを調整していければ、1ヵ月後にはいい状態を作れると思う」と山縣は話す。
過去2度の五輪はいずれも自己ベストをマークし、セミファイナルの舞台でその時のベストパフォーマンスを発揮してきた。3度目の五輪でもその再現を頭に描いているが、そのためには年々激しさを増す国内の代表争いを勝ち抜かねばならない。
東京五輪イヤーに向けて意気込みを語った山縣(画像/セイコーホールディングス提供)
男子100mの東京五輪参加標準記録をサニブラウン・アブデル・ハキーム(Tumbleweed TC)、小池祐貴(住友電工)、桐生祥秀(日本生命)が突破済み。代表選考においては標準突破者が有利になるため、山縣もまずは記録を求めていく必要がある。
だが、一歩後れを取るこの状況が、山縣に「チャレンジャー」という気持ちを芽生えさせた。日本男子スプリントを引っ張る存在から、自身の立ち位置が変わったことを受け止め、それでも再び日本の「エース」となるべく突き進む。
「これまで五輪前はケガが続いたり、調子が悪かった時ばかりで、今の状況とすごく似ているところがある。これまでで最高のパフォーマンスを出せるような準備をして、ぜひ結果を出したい」
3度目の五輪、自国開催の大舞台で悲願のファイナルを。山縣が夢を実現させるシーズンが、始まる。
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
-
2025.01.17
-
2025.01.17
-
2025.01.17
-
2025.01.17
2025.01.12
【テキスト速報】第43回全国都道府県対抗女子駅伝
2025.01.14
創価大が来春入学の長距離10人を発表! 西脇工・衣川勇太、倉敷・大倉凰來ら
-
2025.01.15
-
2025.01.12
2024.12.22
早大に鈴木琉胤、佐々木哲の都大路区間賞2人が来春入学!女子100mH谷中、松田ら推薦合格
-
2024.12.22
-
2024.12.30
-
2025.01.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.01.18
選抜女子駅伝オーダー発表 積水化学は1区松本明莉、パナソニック5区森田香織 高校3連覇狙う神村学園は5区瀬戸口凜
第36回選抜女子駅伝北九州大会(1月19日/福岡・北九州市の小倉城歴史の道発着)前日の1月18日、各チームのオーダーが発表された。 一般の部(5区間27.2km)は実業団チームと地元・北九州市一般選抜を含めた10チームが […]
2025.01.18
都道府県男子駅伝オーダー発表!3区に塩尻和也と鶴川正也 7区は鈴木健吾、黒田朝日 4連覇狙う長野は3区吉岡大翔
◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48.0km) 天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝前日の1月18日、オーダーリストが発表された。 エントリーされていた2人の日本記 […]
2025.01.17
西脇多可新人高校駅伝の出場校決定!男子は佐久長聖、大牟田、九州学院、洛南 女子は長野東、薫英女学院など有力校が登録
1月17日、西脇多可新人高校駅伝の実行委員会が、2月16日に行われる第17回大会の出場チームを発表した。 西脇多可新人高校駅伝は、兵庫県西脇市から多可町を結ぶ「北はりま田園ハーフマラソンコース(21.0795km)」で行 […]
2025.01.17
編集部コラム「年末年始の風物詩」
毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]
2025.01.17
中・高校生充実の長野“4連覇”なるか 実力者ぞろいの熊本や千葉、岡山、京都、福岡も注目/都道府県男子駅伝
◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48.0km) 中学生から高校生、社会人・大学生のランナーがふるさとのチームでタスキをつなぐ全国都道府県男子駅伝が1月19日に行われる […]
Latest Issue 最新号
2025年2月号 (1月14日発売)
駅伝総特集!
箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
高校駅伝、中学駅伝
富士山女子駅伝