2020.12.18
平成以降の箱根駅伝を振り返る「PlayBack箱根駅伝」。今回は東洋大が2年ぶり4回目の総合優勝を果たした第90回記念大会(2014年)を紹介する。大会の歴史を知ることで、正月の箱根路がより楽しみになるかも!?
90回記念大会で23大学が出場
出雲駅伝を大会新で制し、全日本大学駅伝で3連覇を成し遂げた駒大に史上4校目の「学生駅伝3冠」が懸かった第90回記念大会。そこに出雲・全日本2位の東洋大、前回王者の日体大が追いかける構図と見られていた。
記念大会ということもあり、通常よりも多い23校が出場。前年まで正式出場していた関東学連選抜は編成されず、前回出場校に加えて東海大、拓大、国士大、専大が予選会を通過して箱根路に返り咲いた。
1区は1、2年時に連続で区間賞を獲得している早大の大迫傑(4年)が引っ張りハイペースで推移していった。徐々に脱落する選手が続出し、17km過ぎには5人の集団へ。勝負ポイントとなった六郷橋付近で前回区間賞の東洋大・田口雅也(3年)がスパートし、これに日体大の山中秀仁(2年)、駒大・中村匠吾(3年)だけがついていく。最後は山中と中村の一騎打ちとなり、山中が区間歴代3位の1時間1分25秒で区間賞を獲得。中村と田口も1時間1分台で走破するなど史上稀に見る好勝負で戦いの幕が開かれた。
ハイペースとなった1区は日体大の山中秀仁(左端)が区間賞を獲得。10000mの日本人学生最高記録を持っていた大迫傑(早大、中央)は先頭から49秒差の区間5位と出遅れた
早くも優勝候補の3校がそろい踏みした2区では、駒大の村山謙太(3年)が4km過ぎに先頭へ立つと、そのまま独走態勢へ。村山は途中でペースダウンするも、駒大として大八木弘明監督が現役だった1986年以来となる戸塚中継所トップ通過を果たした。2位争いは東洋大の服部勇馬と早大の高田康暉の2年生コンビが争い、先にスタートした服部が先着。3秒遅れの3位でタスキをつないだ高田が区間賞を獲得した。
なお、2区では区間賞候補に挙げられていた山梨学大のエノック・オムワンバ(2年)が右脚脛骨の疲労骨折で走行不可能となり、無念の途中棄権となった。
3区では前年もこの区間で区間トップの走りを見せている東洋大の設楽悠太(4年)が爆走。首位を走る駒大・油布郁人(4年)との26秒差をひっくり返し、逆に55秒の大差をつけて2年連続の区間賞を獲得。4区では駒大の中谷圭佑(1年)が区間トップの走りで猛追するも上位5校の順位は変わらず、東洋大、駒大、早大、明大、青学大の順で5区走者にタスキが渡った。
東洋大の5区は、過去3年間2区を担ってきたエースで主将の設楽啓太(4年)。一時、駒大の馬場翔大(2年)に19秒差まで迫られるも、そこから突き放して2年ぶり5回目の往路優勝を達成した。往路2位は59秒差で駒大。そこから4分以上離れて早大が3位でフィニッシュし、前回王者の日体大は7位から前回5区区間賞の服部翔大(4年)が3人抜きの猛追で4位へジャンプアップ。区間賞は設楽が1秒差で服部を抑えて初受賞した。
3区の悠太(右から2人目)、5区の啓太(右端)ら設楽兄弟のダブル区間賞などで2年ぶりの往路優勝を達成した東洋大
往路を終え、V争いは東洋大と駒大の一騎打ちになるかと思われたが、復路は東洋大の独壇場だった。
6区で箱根初出場の日下佳祐(4年)が区間4位の好走で駒大との差を18秒広げると、7区の服部弾馬(1年)、8区の高久龍(3年)が連続区間賞でその差を3分40秒へ。
駒大は9区の窪田忍(4年)が28秒詰めるので精一杯で、復路は終始2位を独走。東洋大は10区の大津顕杜(4年)も区間1位の快走を見せ、2年ぶり4度目の総合優勝をつかんだ。2位は駒大、3位には9区の矢野圭吾(4年)が区間賞を獲得して順位を上げた日体大が入り、4位以下は早大、青学大、明大と続いた。
7位の日大が5年ぶり、9位の拓大が3年ぶり、10位の大東大が5年ぶりにそれぞれシード権を獲得した。
最優秀選手に贈られる金栗四三杯は10区で区間歴代2位の1時間9分08秒をマークした東洋大の大津が受賞。東洋大は復路新記録(5時間25分38秒)を樹立した。
<人物Close-up>
設楽悠太(東洋大4年)
双子の兄・啓太とともに10000m27分台を在学中にマークするなど“最速ツインズ”として注目される。箱根駅伝では1年時から3区区間8位、7区区間1位(区間新)、3区区間1位と抜群の安定感。4年目は副主将として主将の兄を支えながらチームを牽引し、3区で区間賞を獲得して総合優勝に貢献した。卒業後はHondaへ進み、10000mで2015年の北京世界選手権、16年のリオ五輪に出場。その後はマラソンに活躍の場を移し、2018年の東京では2時間6分11秒で16年ぶりの日本新記録(当時)を樹立したほか、ハーフマラソンでも1時間0分17秒の当時日本新をマークしている。20年度からチームの主将を務め、ニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)では初優勝を目指す。
<総合成績>
1位 東洋大学 10.52.51(往路1位、復路1位)
2位 駒澤大学 10.57.25(往路2位、復路2位)
3位 日本体育大学 11.03.51(往路4位、復路3位)
4位 早稲田大学 11.04.17(往路3位、復路4位)
5位 青山学院大学 11.08.53(往路5位、復路6位)
6位 明治大学 11.10.09(往路7位、復路7位)
7位 日本大学 11.12.52(往路10位、復路10位)
8位 帝京大学 11.13.03(往路12位、復路5位)
9位 拓殖大学 11.13.06(往路6位、復路13位)
10位 大東文化大学 11.14.43(往路8位、復路16位)
========シード権ライン=========
11位 法政大学 11.15.33(往路11位、復路14位)
12位 中央学院大学 11.15.40(往路13位、復路8位)
13位 東海大学 11.17.52(往路9位、復路18位)
14位 東京農業大学 11.18.02(往路14位、復路12位)
15位 中央大学 11.18.43(往路17位、復路11位)
16位 順天堂大学 11.19.03(往路19位、復路9位)
17位 國學院大學 11.20.44(往路18位、復路15位)
18位 神奈川大学 11.23.47(往路15位、復路20位)
19位 城西大学 11.25.42(往路20位、復路19位)
20位 上武大学 11.25.56(往路16位、復路22位)
21位 専修大学 11.28.39(往路21位、復路17位)
22位 国士舘大学 11.38.35(往路22位、復路21位)
途中棄権 山梨学院大学 記録なし
<区間賞>
1区(21.4km)山中秀仁(日体大2)1.01.25
2区(23.2km)高田康暉(早 大2)1.08.18
3区(21.5km)設楽悠太(東洋大4)1.02.13
4区(18.5km)中谷圭佑(駒 大1) 54.41
5区(23.4km)設楽啓太(東洋大4)1.19.16
6区(20.8km)廣瀨大貴(明 大4) 58.16
7区(21.3km)服部弾馬(東洋大1)1.03.27
8区(21.5km)髙久 龍(東洋大3)1.04.35
9区(23.2km)矢野圭吾(日体大4)1.08.29
10区(23.1km)大津顕杜(東洋大4)1.09.08
90回記念大会で23大学が出場
出雲駅伝を大会新で制し、全日本大学駅伝で3連覇を成し遂げた駒大に史上4校目の「学生駅伝3冠」が懸かった第90回記念大会。そこに出雲・全日本2位の東洋大、前回王者の日体大が追いかける構図と見られていた。 記念大会ということもあり、通常よりも多い23校が出場。前年まで正式出場していた関東学連選抜は編成されず、前回出場校に加えて東海大、拓大、国士大、専大が予選会を通過して箱根路に返り咲いた。 1区は1、2年時に連続で区間賞を獲得している早大の大迫傑(4年)が引っ張りハイペースで推移していった。徐々に脱落する選手が続出し、17km過ぎには5人の集団へ。勝負ポイントとなった六郷橋付近で前回区間賞の東洋大・田口雅也(3年)がスパートし、これに日体大の山中秀仁(2年)、駒大・中村匠吾(3年)だけがついていく。最後は山中と中村の一騎打ちとなり、山中が区間歴代3位の1時間1分25秒で区間賞を獲得。中村と田口も1時間1分台で走破するなど史上稀に見る好勝負で戦いの幕が開かれた。 ハイペースとなった1区は日体大の山中秀仁(左端)が区間賞を獲得。10000mの日本人学生最高記録を持っていた大迫傑(早大、中央)は先頭から49秒差の区間5位と出遅れた 早くも優勝候補の3校がそろい踏みした2区では、駒大の村山謙太(3年)が4km過ぎに先頭へ立つと、そのまま独走態勢へ。村山は途中でペースダウンするも、駒大として大八木弘明監督が現役だった1986年以来となる戸塚中継所トップ通過を果たした。2位争いは東洋大の服部勇馬と早大の高田康暉の2年生コンビが争い、先にスタートした服部が先着。3秒遅れの3位でタスキをつないだ高田が区間賞を獲得した。 なお、2区では区間賞候補に挙げられていた山梨学大のエノック・オムワンバ(2年)が右脚脛骨の疲労骨折で走行不可能となり、無念の途中棄権となった。 3区では前年もこの区間で区間トップの走りを見せている東洋大の設楽悠太(4年)が爆走。首位を走る駒大・油布郁人(4年)との26秒差をひっくり返し、逆に55秒の大差をつけて2年連続の区間賞を獲得。4区では駒大の中谷圭佑(1年)が区間トップの走りで猛追するも上位5校の順位は変わらず、東洋大、駒大、早大、明大、青学大の順で5区走者にタスキが渡った。 東洋大の5区は、過去3年間2区を担ってきたエースで主将の設楽啓太(4年)。一時、駒大の馬場翔大(2年)に19秒差まで迫られるも、そこから突き放して2年ぶり5回目の往路優勝を達成した。往路2位は59秒差で駒大。そこから4分以上離れて早大が3位でフィニッシュし、前回王者の日体大は7位から前回5区区間賞の服部翔大(4年)が3人抜きの猛追で4位へジャンプアップ。区間賞は設楽が1秒差で服部を抑えて初受賞した。 3区の悠太(右から2人目)、5区の啓太(右端)ら設楽兄弟のダブル区間賞などで2年ぶりの往路優勝を達成した東洋大 往路を終え、V争いは東洋大と駒大の一騎打ちになるかと思われたが、復路は東洋大の独壇場だった。 6区で箱根初出場の日下佳祐(4年)が区間4位の好走で駒大との差を18秒広げると、7区の服部弾馬(1年)、8区の高久龍(3年)が連続区間賞でその差を3分40秒へ。 駒大は9区の窪田忍(4年)が28秒詰めるので精一杯で、復路は終始2位を独走。東洋大は10区の大津顕杜(4年)も区間1位の快走を見せ、2年ぶり4度目の総合優勝をつかんだ。2位は駒大、3位には9区の矢野圭吾(4年)が区間賞を獲得して順位を上げた日体大が入り、4位以下は早大、青学大、明大と続いた。 7位の日大が5年ぶり、9位の拓大が3年ぶり、10位の大東大が5年ぶりにそれぞれシード権を獲得した。 最優秀選手に贈られる金栗四三杯は10区で区間歴代2位の1時間9分08秒をマークした東洋大の大津が受賞。東洋大は復路新記録(5時間25分38秒)を樹立した。 <人物Close-up> 設楽悠太(東洋大4年) 双子の兄・啓太とともに10000m27分台を在学中にマークするなど“最速ツインズ”として注目される。箱根駅伝では1年時から3区区間8位、7区区間1位(区間新)、3区区間1位と抜群の安定感。4年目は副主将として主将の兄を支えながらチームを牽引し、3区で区間賞を獲得して総合優勝に貢献した。卒業後はHondaへ進み、10000mで2015年の北京世界選手権、16年のリオ五輪に出場。その後はマラソンに活躍の場を移し、2018年の東京では2時間6分11秒で16年ぶりの日本新記録(当時)を樹立したほか、ハーフマラソンでも1時間0分17秒の当時日本新をマークしている。20年度からチームの主将を務め、ニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)では初優勝を目指す。 <総合成績> 1位 東洋大学 10.52.51(往路1位、復路1位) 2位 駒澤大学 10.57.25(往路2位、復路2位) 3位 日本体育大学 11.03.51(往路4位、復路3位) 4位 早稲田大学 11.04.17(往路3位、復路4位) 5位 青山学院大学 11.08.53(往路5位、復路6位) 6位 明治大学 11.10.09(往路7位、復路7位) 7位 日本大学 11.12.52(往路10位、復路10位) 8位 帝京大学 11.13.03(往路12位、復路5位) 9位 拓殖大学 11.13.06(往路6位、復路13位) 10位 大東文化大学 11.14.43(往路8位、復路16位) ========シード権ライン========= 11位 法政大学 11.15.33(往路11位、復路14位) 12位 中央学院大学 11.15.40(往路13位、復路8位) 13位 東海大学 11.17.52(往路9位、復路18位) 14位 東京農業大学 11.18.02(往路14位、復路12位) 15位 中央大学 11.18.43(往路17位、復路11位) 16位 順天堂大学 11.19.03(往路19位、復路9位) 17位 國學院大學 11.20.44(往路18位、復路15位) 18位 神奈川大学 11.23.47(往路15位、復路20位) 19位 城西大学 11.25.42(往路20位、復路19位) 20位 上武大学 11.25.56(往路16位、復路22位) 21位 専修大学 11.28.39(往路21位、復路17位) 22位 国士舘大学 11.38.35(往路22位、復路21位) 途中棄権 山梨学院大学 記録なし <区間賞> 1区(21.4km)山中秀仁(日体大2)1.01.25 2区(23.2km)高田康暉(早 大2)1.08.18 3区(21.5km)設楽悠太(東洋大4)1.02.13 4区(18.5km)中谷圭佑(駒 大1) 54.41 5区(23.4km)設楽啓太(東洋大4)1.19.16 6区(20.8km)廣瀨大貴(明 大4) 58.16 7区(21.3km)服部弾馬(東洋大1)1.03.27 8区(21.5km)髙久 龍(東洋大3)1.04.35 9区(23.2km)矢野圭吾(日体大4)1.08.29 10区(23.1km)大津顕杜(東洋大4)1.09.08
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