◇福岡国際マラソン(12月6日/平和台陸上競技場発着42.195km)
服部勇馬(トヨタ自動車)、高久龍(ヤクルト)の欠場により混戦が予想された福岡国際マラソン。初優勝を果たしたのは、マラソン2レース目となる吉田祐也(GMOインターネットグループ)だった。「優勝するために出場した。自分の力を100%出し切って優勝できてうれしいです」。優勝タイム2時間7分05秒は日本歴代9位タイという快走だった。藤田敦史の日本人最高タイム2時間6分51秒(2000年)に惜しくも届かなかったが、福岡国際における日本人歴代2位に入る。
吉田は服部の欠場により「日本記録ペースではなく、2時間6分台と優勝を」とスタート。だが、「途中で2時間6分のペースがわからなくなったので、勝つことに集中しました」と振り返る。30kmからは独走。「速いペースでも、気持ちの面も含めて余裕を持てていました」と吉田。タイムについて「競り合うことがない中でのこのタイムは良かったと思います」と話した。
1年前にこの躍進を想像した者はどれほどいただろうか。青学大4年だった昨年は、箱根駅伝のメンバー入りに必死だった。だが、最初で最後の箱根路を4区区間新・区間賞で総合優勝に貢献。2月の別府大分毎日マラソンを花道に、ブルボンへの一般就職を決めていた。だが、その別大で初マラソン歴代2位となる2時間8分30秒をマーク。「誰かに言われたのではなく、自分で決めて競技を続けました」。
競技を続けると決めたからには「結果を出す」と強い決意があった。「ブルボンさんのためにも、GMOのために、大きな大会で優勝するという覚悟を決めていました」と胸を張る。今季はコロナ禍の自粛期間もあったが、5000m13分36秒86、10000m28分19秒07と自己記録を更新。マラソン練習でも「ロングジョグの時間を150分に延ばすなど地道な練習をして、ペースの上げ下げにも対応できるようにしてきました」と言う。
指導する花田勝彦監督も「強制ではなくすべての行動をマラソンにつなげていて、マラソンをすごく研究している。マラソンに対する情熱がすごい」と評価。この日の走りも「何を言っていいか……。有言実行で勝ったことを称えたい」と最大限の賛辞を贈る。
吉田にとってマラソンとは「能力よりも妥協のない準備ができたかどうかがポイント」だという。その点で福岡に向けては「やり残したことがない状況でスタートラインに立てた」と自信を持って臨んだ。
2日前の日本選手権10000mで日本記録を更新した相澤晃(旭化成)、伊藤達彦(Honda)らと同じ、輝きを放った1997年組。東京五輪マラソン代表はすでに決まっているが、吉田は先を見据えている。
「オリンピックが一つの目標ですが、世界と戦うためには絶対的なスピードやラストなどまだまだ競り勝てない。これから練習でそういった部分を補っていきたい」。引退撤回から約7ヵ月。競技継続をサポートしてくれたすべての人のために、自分で決めた道を吉田は全力で突き進む。
■マラソン全成績
2月 別府大分 2時間8分30秒=学生歴代2位
12月 福岡国際 2時間7分05秒=日本歴代9位タイ
■ラップタイム(主催者発表)
5km 14.57
10km 29.55
15km 44.48
20km 59.37
中間 1.02.55
25km 1.14.32
30km 1.29.31
35km 1.44.37
40km 2.00.15
フィニッシュ 2.07.05
■福岡国際マラソン入賞者
(1)吉田祐也(GMOインターネットG) 2.07.05
(2)大塚祥平(九電工) 2.07.38
(3)寺田夏生(JR東日本) 2.08.03
(4)M.ギザエ(スズキ) 2.08.17
(5)作田直也(JR東日本) 2.08.21
(6)竹ノ内佳樹(NTT西日本) 2.09.31
(7)P.クイラ(JR東日本) 2.09.57
(8)吉岡 幸輝(中央発條) 2.10.13

RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.03.29
編集部コラム「いつのまにか700号超え」
-
2025.03.28
-
2025.03.28
2025.03.23
女子は長野東が7年ぶりの地元V アンカー・田畑陽菜が薫英女学院を逆転/春の高校伊那駅伝
-
2025.03.25
2025.03.02
初挑戦の青学大・太田蒼生は途中棄権 果敢に先頭集団に挑戦/東京マラソン
2025.03.02
太田蒼生は低体温症と低血糖で途中棄権 「世界のレベルを知れて良い経験」/東京マラソン
-
2025.03.23
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.03.29
編集部コラム「いつのまにか700号超え」
攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム?? 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。 編集スタッフが週替りで […]
2025.03.29
齋藤みう3000m障害で9分41秒57 自己ベスト4秒以上更新して日本歴代6位、学生歴代2位
第319回日体大長距離競技会初日が3月29日、神奈川・横浜市の同大学健志台キャンパス競技場で行われ、女子3000m障害で齋藤みう(日体大4)が日本歴代6位、学生歴代2位の9分41秒57をマークした。 齋藤のこれまでのベス […]
2025.03.28
【世界陸上プレイバック】五輪ボイコットきっかけに創設!クラトフヴィロヴァが女子400mと800mで今も大会記録に残る2冠 日本は室伏重信ら出場も入賞ゼロ
今年、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪大会を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。これま […]
2025.03.28
【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山﨑りりや Yamasaki Ririya 鳴門渦潮高3徳島 高校アスリートをフォーカスするコーナー。年度末を迎えますが、振り返ってみれば、2024年度は高校生による日本記録樹立を […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報