HOME トレーニング

2021.01.13

【トレーニング講座】走高跳(2021年1月号)/醍醐直幸
【トレーニング講座】走高跳(2021年1月号)/醍醐直幸

トレーニング講座

月刊陸上競技で連載している「トレーニング講座」。種目ごとに全国の指導者の方々にご執筆いただいています! 月陸Onlineでは毎月1種目ピックアップして全掲載。ぜひトレーニングの参考にしてください✨

走高跳 編(2021年1月号掲載)

広告の下にコンテンツが続きます


執筆/醍醐直幸(東京高校顧問)

冬季練習でも動きは常に意識

冬季練習に入っているわけですが、本校では基本的には大きくトレーニングを変えることはしません。シーズン中と違うのは回数や重さなどの負荷。その狙いは実践したい動きの「質力」を高めることと、精度を上げることです。ただやみくもに力やスピードがついても、それをコントロールできなければ意味がありません。力を上げるとともにどんな時もバランスやコントロールの部分を意識して行いましょう。

私が日本記録を出した年の冬季練習は、2月に室内大会を予定していこともあり12月くらいまで基礎ベーストレーニングをこなし、1月初旬から跳躍練習を本格的に入れていきました。うまくいった年はたいていシーズンスタートから良い流れを作れます。好スタートを切るためにもしっかりと冬季練習を行ってください。

冬季は走る練習が多くなると思います。短距離の選手と走ることも増えるでしょう。その際、リズムを作ることを大事にしましょう。いざ走力が上げってシーズンインしてみるとうまく助走につながらず、踏み切りも出せなくなるということがあります。逆に、助走の〝乗り〟を出せるようになれば踏み切りの入りが楽になります。そのため、メインの走練習の後は必ず整える流しを入れています。助走につなげるイメージです。どんな練習でも「自分は走高跳の選手」だということを絶対に忘れないでください。

トレーニングを分別する

私が選手の時は、拠点を3ヵ所に分けてトレーニングを行っていました。1つ目は技術を学ぶ場所。2つ目は基礎ベースを上げる場所。3つ目は自分と向き合う場所(一人練習)です。

トレーニングはどうしても量で満足して、目指している課題克服からズレてしまうことがあります。練習ははっきりと目的を持ってやることが何より重要です。そのため、それぞれの場所に分けることで明確化していました。中高生が場所を変えることは難しいかもしれません。しかし、「意識」は変えられると思います。練習メニューによって狙いを明確にできるように取り組みましょう。

本数を決めて力を出す

試合で結果を残すためには大切な場面で力を発揮することが大事です。その意識づけをするために、あまり練習時間を長く行うことや、本数を多くした練習はしません。なぜなら試合はやり直しがきかない一発勝負だからです。練習でもそのような意識でできれば、本番では自分が「やれる」というイメージができるはずです。そして、本練習でできないことは自主練習でできるようにしてくる。この時間が選手として何よりも大切だと思います。できるようになればまた新しい課題を見つける。練習はこの繰り返しなのです。

最近はパワーロープ(重量のある縄)で二重跳び(下記動画参照)にチャレンジしています。最初は1度もできなかった選手が今では連続10回できるようになりました。常に継続して挑戦する感覚を身につけてもらいたいです。

力の貰い方を理解する

試合になるとどうしても動きや気持ちが焦って本来の力を発揮できない選手がいます。それはほんのちょっとしたことで、気持ちの部分で動き始めが早くなったり、体が突っ込んだりと、ズレてしまっているからです。

動きが速くなると接地が浅くなったり、突っ込んで接地が流れたりします。その結果、地面を捉える感覚が乱れ、うまく反発がもらえません。反発が返ってくる場所は地面の奥にあります。正しいポジションで地面の奥を押すためには自分のリズムを作り、きちんと真下に乗る。

そのための練習としてマットを使った腿上げやジャンプ(下記動画参照)などがお勧めです。マットは表面が柔らかいため奥のほうを押さないとジャンプができません。接地面の奥を押す感覚や腕を合わせる感覚、力を入れるタイミングを身につけてください。力づくではなく力の入れ方です。

鉄棒で身体の使い方を習得する

本校の跳躍ブロックの練習では雨の日以外は必ず鉄棒練習を入れます。身体の扱い方をつかむには鉄棒が最適だからです。まず、最初の目標として懸垂逆上がり10回できるようにさせます。これができるようになれば、いろいろな種目にチャレンジできるようになります。

陸上競技はもちろん脚の使い方が大切ですが、下半身をうまく扱うためには腕の使い方が重要です。腿上げを早く行う際やラダーでキレを出す時は腕をコンパクトに速く振る。ストライドを出して歩く時は腕を大きく振る。脚だけの意識ではなく連動が大事です。選手にも「腕振りが身体を扱うコントローラーだ」と伝えています。身体を大きく使う時もコンパクトに動かす時も、意識を下半身ではなく上半身に向けてみるとよいでしょう。

トレーニング講座「走高跳」2021年1月号掲載

「月刊陸上競技」2021年1月号を購入は
月陸Webショップ

トレーニング講座 月刊陸上競技で連載している「トレーニング講座」。種目ごとに全国の指導者の方々にご執筆いただいています! 月陸Onlineでは毎月1種目ピックアップして全掲載。ぜひトレーニングの参考にしてください✨ 走高跳 編(2021年1月号掲載) 執筆/醍醐直幸(東京高校顧問)

冬季練習でも動きは常に意識

冬季練習に入っているわけですが、本校では基本的には大きくトレーニングを変えることはしません。シーズン中と違うのは回数や重さなどの負荷。その狙いは実践したい動きの「質力」を高めることと、精度を上げることです。ただやみくもに力やスピードがついても、それをコントロールできなければ意味がありません。力を上げるとともにどんな時もバランスやコントロールの部分を意識して行いましょう。 私が日本記録を出した年の冬季練習は、2月に室内大会を予定していこともあり12月くらいまで基礎ベーストレーニングをこなし、1月初旬から跳躍練習を本格的に入れていきました。うまくいった年はたいていシーズンスタートから良い流れを作れます。好スタートを切るためにもしっかりと冬季練習を行ってください。 冬季は走る練習が多くなると思います。短距離の選手と走ることも増えるでしょう。その際、リズムを作ることを大事にしましょう。いざ走力が上げってシーズンインしてみるとうまく助走につながらず、踏み切りも出せなくなるということがあります。逆に、助走の〝乗り〟を出せるようになれば踏み切りの入りが楽になります。そのため、メインの走練習の後は必ず整える流しを入れています。助走につなげるイメージです。どんな練習でも「自分は走高跳の選手」だということを絶対に忘れないでください。

トレーニングを分別する

私が選手の時は、拠点を3ヵ所に分けてトレーニングを行っていました。1つ目は技術を学ぶ場所。2つ目は基礎ベースを上げる場所。3つ目は自分と向き合う場所(一人練習)です。 トレーニングはどうしても量で満足して、目指している課題克服からズレてしまうことがあります。練習ははっきりと目的を持ってやることが何より重要です。そのため、それぞれの場所に分けることで明確化していました。中高生が場所を変えることは難しいかもしれません。しかし、「意識」は変えられると思います。練習メニューによって狙いを明確にできるように取り組みましょう。

本数を決めて力を出す

試合で結果を残すためには大切な場面で力を発揮することが大事です。その意識づけをするために、あまり練習時間を長く行うことや、本数を多くした練習はしません。なぜなら試合はやり直しがきかない一発勝負だからです。練習でもそのような意識でできれば、本番では自分が「やれる」というイメージができるはずです。そして、本練習でできないことは自主練習でできるようにしてくる。この時間が選手として何よりも大切だと思います。できるようになればまた新しい課題を見つける。練習はこの繰り返しなのです。 最近はパワーロープ(重量のある縄)で二重跳び(下記動画参照)にチャレンジしています。最初は1度もできなかった選手が今では連続10回できるようになりました。常に継続して挑戦する感覚を身につけてもらいたいです。

力の貰い方を理解する

試合になるとどうしても動きや気持ちが焦って本来の力を発揮できない選手がいます。それはほんのちょっとしたことで、気持ちの部分で動き始めが早くなったり、体が突っ込んだりと、ズレてしまっているからです。 動きが速くなると接地が浅くなったり、突っ込んで接地が流れたりします。その結果、地面を捉える感覚が乱れ、うまく反発がもらえません。反発が返ってくる場所は地面の奥にあります。正しいポジションで地面の奥を押すためには自分のリズムを作り、きちんと真下に乗る。 そのための練習としてマットを使った腿上げやジャンプ(下記動画参照)などがお勧めです。マットは表面が柔らかいため奥のほうを押さないとジャンプができません。接地面の奥を押す感覚や腕を合わせる感覚、力を入れるタイミングを身につけてください。力づくではなく力の入れ方です。

鉄棒で身体の使い方を習得する

本校の跳躍ブロックの練習では雨の日以外は必ず鉄棒練習を入れます。身体の扱い方をつかむには鉄棒が最適だからです。まず、最初の目標として懸垂逆上がり10回できるようにさせます。これができるようになれば、いろいろな種目にチャレンジできるようになります。 陸上競技はもちろん脚の使い方が大切ですが、下半身をうまく扱うためには腕の使い方が重要です。腿上げを早く行う際やラダーでキレを出す時は腕をコンパクトに速く振る。ストライドを出して歩く時は腕を大きく振る。脚だけの意識ではなく連動が大事です。選手にも「腕振りが身体を扱うコントローラーだ」と伝えています。身体を大きく使う時もコンパクトに動かす時も、意識を下半身ではなく上半身に向けてみるとよいでしょう。 トレーニング講座「走高跳」2021年1月号掲載 https://www.youtube.com/watch?v=0-xJF84rq70 「月刊陸上競技」2021年1月号を購入は 月陸Webショップ

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.17

競歩の山西利和に京都市スポーツ最高栄誉賞 自身4度目、2月に世界記録樹立 丸尾には特別賞

愛知製鋼は、同社所属の競歩・山西利和が京都市スポーツ最高栄誉賞を受賞したと発表した。 同賞は国際大会などにおいて顕著な活躍、またはそれに準ずるせいかを挙げた者に贈られるもの。山西は今年2月の日本選手権20km競歩で1時間 […]

NEWS 中央学大がTKK株式会社とスポンサー契約 同大卒業生が代表取締役

2025.12.16

中央学大がTKK株式会社とスポンサー契約 同大卒業生が代表取締役

中央学大駅伝部が「TKK株式会社」とスポンサー契約を結んだことを発表した。 同社は千葉県八千代市に本社を構え、主にプレキャストコンクリート鋼製型枠を取り扱うメーカー。中央学大卒業の安保誠司氏が代表取締役を務めており、「未 […]

NEWS 今年度限りでの「引退」を表明した村澤明伸インタビュー【前編】 大学3・4年時はトラックと駅伝の両立に挑戦したが「バランスを取るのが難しかった」

2025.12.16

今年度限りでの「引退」を表明した村澤明伸インタビュー【前編】 大学3・4年時はトラックと駅伝の両立に挑戦したが「バランスを取るのが難しかった」

全国高校駅伝で日本一に輝き、箱根駅伝は花の2区で快走。日本選手権10000mでも上位に食い込んだのが、村澤明伸(SGホールディングス、34歳)だ。紆余曲折を経て、今年度限りでの「引退」を表明したが、どんな競技生活を過ごし […]

NEWS ニューイヤー駅伝エントリー発表! トヨタ自動車は鈴木芽吹が登録も太田智樹が外れる 連覇目指す旭化成は葛西潤、Honda・小山直城、GMO・吉田祐也らエントリー!

2025.12.16

ニューイヤー駅伝エントリー発表! トヨタ自動車は鈴木芽吹が登録も太田智樹が外れる 連覇目指す旭化成は葛西潤、Honda・小山直城、GMO・吉田祐也らエントリー!

12月16日、日本実業団陸上競技連合は第70回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝/2026年1月1日)のエントリー選手を発表した。70回記念大会の今回は、例年より3チーム多い、40チームがエントリーした。 前回、5年 […]

NEWS 赤﨑優花が自身の思いと感謝綴る 移籍は「前向きな決断」「この道を正解にします」

2025.12.16

赤﨑優花が自身の思いと感謝綴る 移籍は「前向きな決断」「この道を正解にします」

12月15日で第一生命グループを退社し、夫の赤﨑暁も所属するクラフティア(前・九電工)へ移籍加入した赤﨑優花(旧姓・鈴木)が自身のSNSを更新し、改めて思いを綴った。 昨年のパリ五輪女子マラソン6位入賞の赤﨑。「決して悲 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年1月号 (12月12日発売)

2026年1月号 (12月12日発売)

箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳

page top