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2025.04.10

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連覇狙う葛西潤、好調・太田、復調の塩尻が中心か 女子は廣中が復活へ/日本選手権1万m
連覇狙う葛西潤、好調・太田、復調の塩尻が中心か 女子は廣中が復活へ/日本選手権1万m

24年日本選手権10000mの様子

東京世界選手権の代表選考会を兼ねた第109回日本選手権10000mが4月12日に、熊本・えがお健康スタジアムで行われる。代表選考の流れと注目選手をチェックしていこう。

東京世界選手権の出場条件は、参加標準記録(男子27分00秒00/女子30分20秒00)を突破することと、世界陸連(WA)のワールドランキング(Road to Tokyo)においてターゲットナンバー(出場枠=27)に入ること。

代表内定条件の一つは参加標準記録を突破して日本選手権3位以内。現時点で突破者はいないため、このレースで参加標準記録を突破して3位以内に入れば内定となる。ただ、参加標準記録は男女いずれも日本記録(男子27分09秒80/女子30分20秒44)よりも高く簡単ではないことがわかる。

これまで5月3日の静岡国際の後に開催されることもあったが、記録を狙うための条件面を考慮して約3週間前倒し。レースはペースメーカーに加えて、電子ペーサー(ウエーブライト)も使用される。

男子は前回Vの葛西、好調の太田らが中心

男子は自己記録で日本歴代1、2、4、5位にランクインする塩尻和也(富士通/27分09秒80)、太田智樹(トヨタ自動車/27分12秒53)、葛西順(旭化成/27分17秒46)、鈴木芽吹(トヨタ自動車/27分20秒33)がエントリーした。

前回、自己記録を出して優勝した葛西は、その後の海外レースでも力走して、ワールドランキングでの大逆転でパリ五輪出場にこぎ着けた。大学時代からケガに泣かされてきた大器がようやくその力を発揮。五輪では万全なコンディションとはいかず20位にとどまったが、今年の全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)では3区区間2位で優勝に貢献している。

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絶好調なのが太田。今年2月の丸亀ハーフでは日本初の1時間切りとなる59分27秒をマークした。太田も昨年はパリ五輪に出場したが、ケガのため完走するので精一杯の状態だったという。近い将来のマラソン挑戦を表明しているが、パリの借りは返すつもり。日本選手権は至近2大会連続2位で、『強さ』を示して初優勝を狙う。

日本記録保持者の塩尻が復調してきた。元々3000m障害でリオ五輪に出場しているランナーだが、22年シーズンからフラットレースを主戦場に。23年には5000mでアジア選手権とブダペスト世界選手権に出場、10000mでアジア大会に出場した。そしてその年の12月の日本選手権で日本新。ただ、前回大会は10位にとどまってパリ五輪には届かなかった。昨年12月に27分36秒37と復調し、1月中旬の全国都道府県対抗男子駅伝でも3区区間賞。2月の日本選手権クロカン(10km)も3位に入っている。

前回4位の鈴木は大八木弘明・駒大総監督が率いる『Ggoat』の一員として、田澤廉(トヨタ自動車)らとトレーニング。昨年秋には5000mで日本歴代8位の13分13秒80をマークすると、八王子ロングディスタンス10000mでは日本歴代5位の自己新だった。スピードに磨きをかけ明確に26分台を見据える。なお、オレゴン・ブダペスト世界選手権代表の田澤はケガから復調途上のためエントリーしていない。

2019年に優勝し、20年に当時の日本記録を上回る27分28秒92を出して3位に入った田村和希(住友電工)も復活してきた。ニューイヤー駅伝では3区区間賞を獲得している。

昨年、27分38秒28まで自己記録を更新した荻久保寛也(ひらまつ病院)、スピード豊かな吉居大和(トヨタ自動車)にも注目だ。また、マラソンで東京世界選手権代表に内定した吉田祐也(GMOインターネットグループ)もどんな走りをするか。青学大時代にマラソンで2時間6分07秒をマークして引退した若林宏樹は就職先の「日本生命」でエントリーした。

日本初の27分切りをターゲットに、上位4~5人あたりの上位集団で競り合いながらペースを落とさずにレースを進められるか。

ワールドランキングで出場資格を複数選手が得た場合は日本選手権の順位が優先される。また、今大会はアジア選手権の選考会も兼ねている。東京世界選手権に出場できる可能性として、アジア選手権の優勝で『エリアチャンピオン』枠もあり得る。また、日本陸連が定める開催国枠エントリー設定記録27分23秒65を突破して優勝すれば選考に乗ることにもなるため、死守しておきたい。

電子ペーサーの設定のトップ層は27分20秒で、8000mまで2分45秒ペース、その後、1000mずつを2分42秒、2分37秒と上がるように設定されている。

女子は廣中の復活か、マラソン代表の小林にも注目

女子は混戦模様。日本歴代上位の現役選手では、日本記録保持者の新谷仁美(積水化学)はマラソンへシフト、同3位の不破聖衣来(三井住友海上)はまだ状態が上がらず出場に至らなかった。さらに、前回日本歴代6位の30分53秒31をマークして優勝してパリ五輪に出場した五島莉乃(資生堂)も名古屋ウィメンズマラソン激走の反動からエントリーを見送った。

さらに、同じくパリ五輪代表で歴代7、8位にランクインしている高島由香(資生堂)、小海遥(第一生命グループ)もコンディションが整わずに出場せず。

そうしたなか、復活を期すのが東京五輪&ブダペスト世界選手権7位に入っているエースの廣中璃梨佳(日本郵政グループ)だ。105回大会から3連覇しているが、前回は欠場し、5000mの日本選手権も体調不良でエントリーを見送った。

23年末の第108回を30分55秒29で優勝したあと、右膝のケガに苦しんだ。それでも昨年10月の全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)で3区区間2位の激走で優勝に貢献して復調をアピールすると、12月には5000mで15分33秒25をマーク。10000mは有効期間内に出走していなかったが、5000mの記録でエントリーにこぎ着けた。同日開催の金栗記念5000mにも登録しているが、どちらに出場するか。

世界選手権に向けたワールドランキングでチャンスがあるのは、菅田雅香(日本郵政グループ)。昨年はクイーンズ駅伝は1区3位、12月には31分42秒28をマークした。また、前回3、4位だった兼友良夏(三井住友海上)、矢田みくに(エディオン)も初優勝の好機か。

東京世界選手権マラソン代表の小林香菜(大塚製薬)は自己新で9月に向けて弾みをつけるか。日本選手権クロカン優勝の川口桃佳(ユニクロ)、競技復帰して躍進する伊澤菜々花(スターツ)も上位争いしそうだ。

女子もまずは1秒でも早く上位に入ることが重要で、アジア選手権への出場は決めておきたい。開催国枠エントリー設定記録は31分01秒32だ。

電子ペーサーの設定のトップ層は31分20秒で、5000mまで3分08秒、8000mまで3分10秒、ラスト1000mずつで3分06秒、3分04秒と上がる。

レースは金栗記念と併催となり、男子は19時35分、女子は20分15分にスタート。NHK BSで19時30分から中継される。

東京世界選手権の代表選考会を兼ねた第109回日本選手権10000mが4月12日に、熊本・えがお健康スタジアムで行われる。代表選考の流れと注目選手をチェックしていこう。 東京世界選手権の出場条件は、参加標準記録(男子27分00秒00/女子30分20秒00)を突破することと、世界陸連(WA)のワールドランキング(Road to Tokyo)においてターゲットナンバー(出場枠=27)に入ること。 代表内定条件の一つは参加標準記録を突破して日本選手権3位以内。現時点で突破者はいないため、このレースで参加標準記録を突破して3位以内に入れば内定となる。ただ、参加標準記録は男女いずれも日本記録(男子27分09秒80/女子30分20秒44)よりも高く簡単ではないことがわかる。 これまで5月3日の静岡国際の後に開催されることもあったが、記録を狙うための条件面を考慮して約3週間前倒し。レースはペースメーカーに加えて、電子ペーサー(ウエーブライト)も使用される。

男子は前回Vの葛西、好調の太田らが中心

男子は自己記録で日本歴代1、2、4、5位にランクインする塩尻和也(富士通/27分09秒80)、太田智樹(トヨタ自動車/27分12秒53)、葛西順(旭化成/27分17秒46)、鈴木芽吹(トヨタ自動車/27分20秒33)がエントリーした。 前回、自己記録を出して優勝した葛西は、その後の海外レースでも力走して、ワールドランキングでの大逆転でパリ五輪出場にこぎ着けた。大学時代からケガに泣かされてきた大器がようやくその力を発揮。五輪では万全なコンディションとはいかず20位にとどまったが、今年の全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)では3区区間2位で優勝に貢献している。 絶好調なのが太田。今年2月の丸亀ハーフでは日本初の1時間切りとなる59分27秒をマークした。太田も昨年はパリ五輪に出場したが、ケガのため完走するので精一杯の状態だったという。近い将来のマラソン挑戦を表明しているが、パリの借りは返すつもり。日本選手権は至近2大会連続2位で、『強さ』を示して初優勝を狙う。 日本記録保持者の塩尻が復調してきた。元々3000m障害でリオ五輪に出場しているランナーだが、22年シーズンからフラットレースを主戦場に。23年には5000mでアジア選手権とブダペスト世界選手権に出場、10000mでアジア大会に出場した。そしてその年の12月の日本選手権で日本新。ただ、前回大会は10位にとどまってパリ五輪には届かなかった。昨年12月に27分36秒37と復調し、1月中旬の全国都道府県対抗男子駅伝でも3区区間賞。2月の日本選手権クロカン(10km)も3位に入っている。 前回4位の鈴木は大八木弘明・駒大総監督が率いる『Ggoat』の一員として、田澤廉(トヨタ自動車)らとトレーニング。昨年秋には5000mで日本歴代8位の13分13秒80をマークすると、八王子ロングディスタンス10000mでは日本歴代5位の自己新だった。スピードに磨きをかけ明確に26分台を見据える。なお、オレゴン・ブダペスト世界選手権代表の田澤はケガから復調途上のためエントリーしていない。 2019年に優勝し、20年に当時の日本記録を上回る27分28秒92を出して3位に入った田村和希(住友電工)も復活してきた。ニューイヤー駅伝では3区区間賞を獲得している。 昨年、27分38秒28まで自己記録を更新した荻久保寛也(ひらまつ病院)、スピード豊かな吉居大和(トヨタ自動車)にも注目だ。また、マラソンで東京世界選手権代表に内定した吉田祐也(GMOインターネットグループ)もどんな走りをするか。青学大時代にマラソンで2時間6分07秒をマークして引退した若林宏樹は就職先の「日本生命」でエントリーした。 日本初の27分切りをターゲットに、上位4~5人あたりの上位集団で競り合いながらペースを落とさずにレースを進められるか。 ワールドランキングで出場資格を複数選手が得た場合は日本選手権の順位が優先される。また、今大会はアジア選手権の選考会も兼ねている。東京世界選手権に出場できる可能性として、アジア選手権の優勝で『エリアチャンピオン』枠もあり得る。また、日本陸連が定める開催国枠エントリー設定記録27分23秒65を突破して優勝すれば選考に乗ることにもなるため、死守しておきたい。 電子ペーサーの設定のトップ層は27分20秒で、8000mまで2分45秒ペース、その後、1000mずつを2分42秒、2分37秒と上がるように設定されている。

女子は廣中の復活か、マラソン代表の小林にも注目

女子は混戦模様。日本歴代上位の現役選手では、日本記録保持者の新谷仁美(積水化学)はマラソンへシフト、同3位の不破聖衣来(三井住友海上)はまだ状態が上がらず出場に至らなかった。さらに、前回日本歴代6位の30分53秒31をマークして優勝してパリ五輪に出場した五島莉乃(資生堂)も名古屋ウィメンズマラソン激走の反動からエントリーを見送った。 さらに、同じくパリ五輪代表で歴代7、8位にランクインしている高島由香(資生堂)、小海遥(第一生命グループ)もコンディションが整わずに出場せず。 そうしたなか、復活を期すのが東京五輪&ブダペスト世界選手権7位に入っているエースの廣中璃梨佳(日本郵政グループ)だ。105回大会から3連覇しているが、前回は欠場し、5000mの日本選手権も体調不良でエントリーを見送った。 23年末の第108回を30分55秒29で優勝したあと、右膝のケガに苦しんだ。それでも昨年10月の全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)で3区区間2位の激走で優勝に貢献して復調をアピールすると、12月には5000mで15分33秒25をマーク。10000mは有効期間内に出走していなかったが、5000mの記録でエントリーにこぎ着けた。同日開催の金栗記念5000mにも登録しているが、どちらに出場するか。 世界選手権に向けたワールドランキングでチャンスがあるのは、菅田雅香(日本郵政グループ)。昨年はクイーンズ駅伝は1区3位、12月には31分42秒28をマークした。また、前回3、4位だった兼友良夏(三井住友海上)、矢田みくに(エディオン)も初優勝の好機か。 東京世界選手権マラソン代表の小林香菜(大塚製薬)は自己新で9月に向けて弾みをつけるか。日本選手権クロカン優勝の川口桃佳(ユニクロ)、競技復帰して躍進する伊澤菜々花(スターツ)も上位争いしそうだ。 女子もまずは1秒でも早く上位に入ることが重要で、アジア選手権への出場は決めておきたい。開催国枠エントリー設定記録は31分01秒32だ。 電子ペーサーの設定のトップ層は31分20秒で、5000mまで3分08秒、8000mまで3分10秒、ラスト1000mずつで3分06秒、3分04秒と上がる。 レースは金栗記念と併催となり、男子は19時35分、女子は20分15分にスタート。NHK BSで19時30分から中継される。

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