2025.04.17

1月1日に群馬県で開催された第69回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)で、旭化成は5年ぶりに優勝。最多優勝回数を1つ上積みして「26」とした。7人全員がミスなく走り切り、区間賞2つ、区間2位も2つ。同日付で旭化成陸上部とのサプライヤー契約を締結したデサントジャパン株式会社「MOVESPORT(ムーブスポーツ)」の新ユニフォームには、象徴的なグラフィックの誕生から20周年のアニバーサリーイヤー幕開けを飾って真新しいロゴが。選手たちへのヒヤリングでウエアの機能性や快適性を追求した「MOVESPORT」も、旭化成が最大の勝因として挙げた「チームワーク」の一端を担った。
2年連続1区の長嶋が1秒差で首位発進
昨年のニューイヤー駅伝は、高卒ルーキーで1区に抜てきされた長嶋幸宝が終盤の競り合いで転倒し、「1年間ずっと悔しかった」という13位スタート。優勝を狙っていた旭化成は、3位にとどまった。そのリベンジを誓う長嶋は今年の元日早朝、前橋市内のホテルで歯を磨きながら、「一瞬ですけど涙がこぼれて……」。「1年前は朝ご飯の後、嘔吐したんだよね」と最年長32歳の大六野秀畝に暴露される20歳の長嶋だが、2年連続の1区はかなりのプレッシャーだったようだ。
それでも期待に応えて、長嶋は「絶対に区間賞を取る」という自身の目標を完遂。2番手にわずか1秒差だったが、ラスト1kmを切ってロングスパートをかけた長嶋をテレビで見たアンカーの井川龍人は「わっ、行った!」と身が引き締まるような思い。今回、最長21.9kmの2区を任された茂木圭次郞は「この1秒差が後半に響いたりするので、一番で来てもらえたのは非常にありがたかったです」と、若手の健闘を称えた。

元日のニューイヤー駅伝では高卒2年目の長嶋幸宝(左)がプレッシャーのかかる1区でトップに立つ活躍を見せ、エース区間の2区を務めた茂木圭次郞ら先輩たちが発憤した
「今回は『次の世代が育っている』という安心感がありました」と話す大六野。3区の葛西潤と7区の井川は大卒2年目で、年齢は違うが1区の長嶋とは同期入社。この〝2年目トリオ〟は普段から兄弟のように仲が良く、葛西は「中坊(長嶋の愛称)ががんばったので、やる気出ましたよ」と笑顔を見せ、井川は「最後は僕がやるしかないな」と、中坊の快走に腹をくくった。
4区のケニア人ランナー、キプルト・エマニエル・キプロプは目標の区間ひとケタ順位に届かなかったが、5区の大六野、6区の齋藤椋は区間2位、4位と上位をキープ。アンカー井川には、先頭のHondaから12秒遅れの2位でタスキが渡った。そこからの井川の攻めは圧巻。じっくりと時間をかけてライバルに追いつき、「背後で溜めて、溜めて」(井川)、スパート時機を待つプラン。フィニッシュ地点が見えるラスト600mで鮮やかに切り替えると、「サングラスを外すのも忘れて」トップに躍り出た。
群馬県庁で井川の到着を待つメンバーたちは、「安心して(中継画面を)見ていました」と口を揃える。旭化成がHondaを逆転して、5年ぶりの優勝。実は暮れのミーティングで選手たちは、1月で72歳になる宗猛総監督(現・顧問)が今年度末で退任することを知らされた。「だったら駅伝で勝って、猛さんを胴上げしよう」。そんなチーム全員の思いが結実して、宗総監督は元日の空に舞った。
グラフィック誕生から20周年、「MOVESPORT」が最高の新章開幕
旭化成の西村功監督(現スペシャルアドバイザー)は「みんなが自分の任された区間をしっかりと走り、役割を果たしたことが一番の勝因」と、駅伝で最も大事なチームワークを勝てた要因に挙げた。
今回、そのチームワークの一端に加わって勝利に貢献したのが、長年、旭化成陸上部をサポートしてきたデサントジャパン株式会社。30年以上続いている両者の信頼関係は厚く、2010年からはニューイヤー駅伝でチーム全員がデサントのユニフォームを着用し、2025年1月1日からは「MOVESPORT」ブランドにおいて、サプライヤー契約を締結するに至った。
「日常をもっとスポーツのように。」をコンセプトに置く、スポーツウエアブランドの「MOVESPORT」は、初代グラフィック誕生からちょうど20周年のアニバーサリーイヤー。旭化成陸上部とのサプライヤー契約を前に、チーム担当者が昨年夏の北海道・千歳合宿へ出向き、選手5~6人からウエアの感想や要望などのヒヤリングを行った。
選手たちはシューズのことは理想のものを考えたことがあっても、ウエアの改善点はあまり考えたことがなく、チームメイト同士で意見を出し合った機会は新鮮だったという。
そこで出てきたのが「ランシャツを少しラフなシルエットに」、「ランパンのインナーが小さすぎるので、もう少し大きくしてほしい」、「ランパンのシルエットは昔ながらのVが深いシルエットよりもややBOX型に近いものがいい」、「ハーフタイツは下着を履かずに着用できるように前側にインナーをつけてほしい」といった話。
「ウエアから受けるストレスを軽減すること」も「MOVESPORT」の大事な視点の一つで、担当者は選手たちの生の声を会社へ持ち帰り、改良を加え、刷新したブランドロゴとともにニューイヤー駅伝でのお披露目となった。

ニューイヤー駅伝に向けて改良された「MOVESPORT」の新ユニフォームのシルエットやフィット感を高く評価したVメンバー最年長の大六野秀畝
そもそも伝統のある旭化成陸上部のユニフォームは「着ると身が引き締まる」と話す選手が多いが、新たなユニフォームのシルエットやインナーについて皆、満足げ。ランパンのインナーサイズに対して要望を出していた茂木は「〝いい感じ〟で出来上がってきました」と言ってうなずき、ランシャツも含めて「(着心地に)ゆとりを感じて、今の時代に合っている」という声が多く聞かれた。

ランパンのインナーサイズ改良の要望を出した茂木は「〝いい感じ〟で出来上がってきました」と満足げに話していた
チーム担当者は「1月1日に『MOVESPORT』のユニフォームを大会で初めて着用し、結果を出していただき、最高のスタートを切れました」と、旭化成の優勝をウエアの面でバックアップできたことを喜んだ。
駅伝連覇に向けて「MOVESPORT」と共闘
2025年度の旭化成陸上部は、これまでヘッドコーチだった三木弘氏が監督に昇格し、4月1日から新たな体制で活動を始めた。34年ぶりに東京で開かれる夏の世界選手権に向け、トラックの長距離種目で代表入りを狙う選手たちは調整に余念がない。
伝統のあるチームを率いる三木新監督は「ニューイヤー駅伝の連覇」を一番の目標に掲げ、「今年優勝をして、最高のかたちでバトンタッチしていただいたので、ぜひ勝ちたいですね」と言葉に力を込めた。今年はエースの相澤晃を故障で欠いたが、戻ってくれば戦力アップは間違いない。1978~83年に1度目の6連覇を果たして以降、旭化成は6連覇、3連覇、4連覇と1回だけの優勝で終わっていない。
その良い歴史を継続するためにも、選手たちのパフォーマンスを最大限に引き出すウエア、「MOVESPORT」の細やかなバックアップが欠かせない。マラソンで2時間8分05秒のベスト記録を持つ三木監督は、「私自身も旭化成の伝統のユニフォームに憧れて入社した1人。これからも伝統は大事にしていきたいと思います」と、「MOVESPORT」とともに新たな歴史を築いていく覚悟だ。
ロゴも刷新した『MOVESPORT』
カンパニーブランド『DESCENTE』から独り立ち
デサントジャパン株式会社が展開する『MOVESPORT(ムーブスポーツ)』は、2005 年にコラボレーション企画から始まり、その誕生から今年で20周年。この節目に際し、カンパニーブランド『DESCENTE(デサント)』から独り立ちするかたちで新たなスタートを切った。
「日常をもっとスポーツのように。」をコンセプトに、動きやすさや耐久性などパフォーマンスをサポートする機能性に加え、高揚感のあるデザイン性で、トップアスリートからライトユーザーまで、スポーツに関わるあらゆるシーンに着用できるアイテムを取り揃えている。
さらなる高みを目指すための象徴として「ボーダーレスな未来へ向けて、自由と多様性」をコンセプトに『MOVESPORT』の新しいブランドロゴも誕生した。耐久性と軽量性の象徴であるハニカム構造の六角形をベースに、前身ブランド『DESCENTE』のロゴのエレメントを掛け合わせてシンボル化。さまざまな方向へ向かう矢印のエレメントは、人々のアイデンティティーや自由、多様性を表しながら、それぞれが組み合わさり、ひとつの輪となってかたちづくられていることを表現している。
※この記事は『月刊陸上競技』2025年5月号に掲載しています
文/小森貞子、撮影/船越陽一郎
2年連続1区の長嶋が1秒差で首位発進
昨年のニューイヤー駅伝は、高卒ルーキーで1区に抜てきされた長嶋幸宝が終盤の競り合いで転倒し、「1年間ずっと悔しかった」という13位スタート。優勝を狙っていた旭化成は、3位にとどまった。そのリベンジを誓う長嶋は今年の元日早朝、前橋市内のホテルで歯を磨きながら、「一瞬ですけど涙がこぼれて……」。「1年前は朝ご飯の後、嘔吐したんだよね」と最年長32歳の大六野秀畝に暴露される20歳の長嶋だが、2年連続の1区はかなりのプレッシャーだったようだ。 それでも期待に応えて、長嶋は「絶対に区間賞を取る」という自身の目標を完遂。2番手にわずか1秒差だったが、ラスト1kmを切ってロングスパートをかけた長嶋をテレビで見たアンカーの井川龍人は「わっ、行った!」と身が引き締まるような思い。今回、最長21.9kmの2区を任された茂木圭次郞は「この1秒差が後半に響いたりするので、一番で来てもらえたのは非常にありがたかったです」と、若手の健闘を称えた。 [caption id="attachment_166082" align="alignnone" width="800"]
グラフィック誕生から20周年、「MOVESPORT」が最高の新章開幕
旭化成の西村功監督(現スペシャルアドバイザー)は「みんなが自分の任された区間をしっかりと走り、役割を果たしたことが一番の勝因」と、駅伝で最も大事なチームワークを勝てた要因に挙げた。 今回、そのチームワークの一端に加わって勝利に貢献したのが、長年、旭化成陸上部をサポートしてきたデサントジャパン株式会社。30年以上続いている両者の信頼関係は厚く、2010年からはニューイヤー駅伝でチーム全員がデサントのユニフォームを着用し、2025年1月1日からは「MOVESPORT」ブランドにおいて、サプライヤー契約を締結するに至った。 「日常をもっとスポーツのように。」をコンセプトに置く、スポーツウエアブランドの「MOVESPORT」は、初代グラフィック誕生からちょうど20周年のアニバーサリーイヤー。旭化成陸上部とのサプライヤー契約を前に、チーム担当者が昨年夏の北海道・千歳合宿へ出向き、選手5~6人からウエアの感想や要望などのヒヤリングを行った。 選手たちはシューズのことは理想のものを考えたことがあっても、ウエアの改善点はあまり考えたことがなく、チームメイト同士で意見を出し合った機会は新鮮だったという。 そこで出てきたのが「ランシャツを少しラフなシルエットに」、「ランパンのインナーが小さすぎるので、もう少し大きくしてほしい」、「ランパンのシルエットは昔ながらのVが深いシルエットよりもややBOX型に近いものがいい」、「ハーフタイツは下着を履かずに着用できるように前側にインナーをつけてほしい」といった話。 「ウエアから受けるストレスを軽減すること」も「MOVESPORT」の大事な視点の一つで、担当者は選手たちの生の声を会社へ持ち帰り、改良を加え、刷新したブランドロゴとともにニューイヤー駅伝でのお披露目となった。 [caption id="attachment_166084" align="alignnone" width="800"]

駅伝連覇に向けて「MOVESPORT」と共闘
2025年度の旭化成陸上部は、これまでヘッドコーチだった三木弘氏が監督に昇格し、4月1日から新たな体制で活動を始めた。34年ぶりに東京で開かれる夏の世界選手権に向け、トラックの長距離種目で代表入りを狙う選手たちは調整に余念がない。 伝統のあるチームを率いる三木新監督は「ニューイヤー駅伝の連覇」を一番の目標に掲げ、「今年優勝をして、最高のかたちでバトンタッチしていただいたので、ぜひ勝ちたいですね」と言葉に力を込めた。今年はエースの相澤晃を故障で欠いたが、戻ってくれば戦力アップは間違いない。1978~83年に1度目の6連覇を果たして以降、旭化成は6連覇、3連覇、4連覇と1回だけの優勝で終わっていない。 その良い歴史を継続するためにも、選手たちのパフォーマンスを最大限に引き出すウエア、「MOVESPORT」の細やかなバックアップが欠かせない。マラソンで2時間8分05秒のベスト記録を持つ三木監督は、「私自身も旭化成の伝統のユニフォームに憧れて入社した1人。これからも伝統は大事にしていきたいと思います」と、「MOVESPORT」とともに新たな歴史を築いていく覚悟だ。ロゴも刷新した『MOVESPORT』 カンパニーブランド『DESCENTE』から独り立ち
デサントジャパン株式会社が展開する『MOVESPORT(ムーブスポーツ)』は、2005 年にコラボレーション企画から始まり、その誕生から今年で20周年。この節目に際し、カンパニーブランド『DESCENTE(デサント)』から独り立ちするかたちで新たなスタートを切った。 「日常をもっとスポーツのように。」をコンセプトに、動きやすさや耐久性などパフォーマンスをサポートする機能性に加え、高揚感のあるデザイン性で、トップアスリートからライトユーザーまで、スポーツに関わるあらゆるシーンに着用できるアイテムを取り揃えている。 さらなる高みを目指すための象徴として「ボーダーレスな未来へ向けて、自由と多様性」をコンセプトに『MOVESPORT』の新しいブランドロゴも誕生した。耐久性と軽量性の象徴であるハニカム構造の六角形をベースに、前身ブランド『DESCENTE』のロゴのエレメントを掛け合わせてシンボル化。さまざまな方向へ向かう矢印のエレメントは、人々のアイデンティティーや自由、多様性を表しながら、それぞれが組み合わさり、ひとつの輪となってかたちづくられていることを表現している。
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