2025.03.30

今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。
これまで数々のスーパースター、名勝負が生まれた世界陸上の各大会の様子を紹介する『世界陸上プレイバック』。1987年に開催されたローマ大会を振り返る。
第2回大会はイタリアのローマで開催。前回から女子10000mと女子10km競歩の2種目が追加され、43種目(男子24種目、女子19種目)が実施された。
史上空前のハイレベルな争いとなったのが女子走高跳。前年に2m08の世界記録を樹立していたステフカ・コスタディノワ(ブルガリア)が自身の世界記録を更新する2m09で金メダル、前世界記録保持者で前回覇者のタマラ・ビコワ(ソ連)が2m04の銀メダルで続いた。
前回の優勝記録を1cm上回る2m02はコスタディノワ、ビコワともに1回目でクリア。同じ大会で2m02が2人以上成功させるのは史上初のことだった。
2m04はビコワが一発でクリアしたのに対して、コスタディノワは1回目、2回目と失敗してしまう。それでも3回目で何とか成功させ、優勝に望みをつないだ。
2m06にバーの高さが上がると、形成が逆転。コスタディノワは2回目で成功させたが、ビコワはこの高さを2回続けて失敗した。追い込まれたビコワは3回目をパスして、2m08の一発勝負に懸ける。
ビコワがこれをクリアすることはできず、コスタディノワの優勝が決まった。だが、ドラマはこれで終わらない。コスタディノワは自らが持つ世界記録を1cm上回る2m09に挑戦したのだ。
1回目は失敗してしまうが、2回目はバーを少し揺らしながらも成功。マットの上に着地をすると、喜びから両腕を上げて何度も飛び跳ねた。
この記録は現在も大会記録として残っており、昨年7月にヤロスラワ・マフチフ(ウクライナ)が2m10を跳ぶまで、約37年も世界記録として残り続けた。40年以上の歴史を持つ世界陸上において、同種目では最もレベルの高い争いだった。
大会前から注目を集めていた種目が男子100m。前回大会で100m、走幅跳、4×100mリレーの3冠を達成したカール・ルイス(米国)と当時100mで連戦連勝中だったベン・ジョンソン(カナダ)の一騎打ちになると目されていた。
当時の世界記録はカルヴィン・スミス(米国)が1983年に出した9秒93だった。その中でジョンソンは持ち味のロケットスタートでルイスを圧倒。9秒83という衝撃的な世界新記録を叩き出し、ルイスが9秒93の世界タイ記録で続いた。
なお、翌年に行われた韓国のソウル五輪でもジョンソンが9秒79の世界新記録で金メダル、ルイスが9秒92で銀メダルとハイレベルな争いを展開する。しかし、レース後の検査でジョンソンにドーピング陽性反応が出たため、金メダルは剝奪。世界記録も取り消しとなり、ルイスが金メダルに繰り上がり、世界記録もルイスのものが適用されることになった。
日本からは男子22選手、女子7選手が出場。第1回では入賞0だったが、男子やり投で溝口和洋が日本勢初入賞を果たした。

87年ローマ世界陸上の男子やり投に出場した溝口和洋
溝口は予選を80m58の全体4位で通過。メダル獲得にも期待が懸かった。決勝では1投目で3位につけたが、2投目で左足首と股関節を痛め、80m24の6位にとどまったが、日本陸上史に確かな一歩を刻んだ。
溝口は2年後、日本新記録・世界歴代2位(当時)となる87m60をマーク。これは今も日本記録として残っている。翌年のソウル五輪にも出場したが、19位に終わっており、世界一を決める大会では溝口にとって、今回が唯一の入賞だった。
男子50km競歩では園原健弘が21位ながら、4時間0分11秒で当時の日本記録を更新している。女子ではマラソンの山下美幸が10位と健闘。入賞ラインとは1分39秒差だった。

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