2020.11.14
平成以降の箱根駅伝を振り返る「PlayBack箱根駅伝」。
2位との差は史上最小の「21秒」
東海大・村澤が17人抜きの快走で金栗杯受賞
87回大会は3連覇を狙う東洋大と、出雲・全日本の両駅伝を制して3冠を狙う早大が“2強”とされ、それを駒大、日体大、明大らが追う構図。10月の予選会では前回出場校の大東大、法大、亜細亜大が敗退した一方で、國學院大が4年ぶり、拓大と神奈川大が2年ぶりに本戦に返り咲いた。
1区は1km過ぎに早大・大迫傑(1年)が抜けだし、日大・堂本尚寛(3年)だけが追走する展開。3位以下はスローペースで牽制し合い、みるみるうちに差が開いていった。大迫は11.5kmで堂本を引き離すと完全に独走状態となり、2位の堂本に54秒差をつけて区間賞を獲得。堂本から約1分遅れで駒大、日体大、中央学大と続いた。
2区では各校のエースたちが快走を見せた。特に光ったのが東海大・村澤明伸(2年)だ。最下位(20位)でタスキを受け取ると、中間地点までに16人を抜いて4位に浮上。そこからは拓大のジョン・マイナ(1年)としばらく併走したものの、振り切って17人抜きを達成した。明大の鎧坂哲也も15位から11人抜き、青学大の出岐雄大(2年)も16位から5位まで順位を上げ、マイナは終盤に失速したものの、17位から7位まで順位を上げる力走を見せた。
3区では山梨学大のオンディバ・コスマス(3年)が区間トップの快走で15位から4位に浮上。4区では帝京大の西村知修(4年)が区間新記録の走りで15位から8位に押し上げた。その一方で、上位争いは早大が2区以降も首位を独走し、4区終了時で東海大が2位、東洋大が3位、明大が4位、駒大が5位、日体大が6位と実力校が順位を上げていった。
早大の5区・猪俣英希(4年)は悠々と山を駆け上がっていったが、この年も東洋大・柏原竜二(3年)が「山の神」の異名にふさわしい走りを見せた。タスキを受け取った時点で先頭とは2分54秒差があったが、7km手前で2位の東海大を、16km過ぎに首位の早大・猪俣をかわし、そのまま3年連続となる往路優勝のフィニッシュを飾った。しかし、猪俣も粘ってその差を27秒で抑え、復路での逆転劇をお膳立て。東洋大と早大は2003年に山梨学大がマークした往路記録を8年ぶりに更新した。
6区では東洋大と早大による一騎打ちとなり、途中で転倒のアクシデントがあった早大の高野寛基(4年)が意地の走りで東洋大を突き放し、首位を奪還。なお、この区間では駒大の千葉健太(2年)が従来の記録を10秒上回る区間新記録(58分11秒)をマークして5位から3位に上がっている。
7区では早大の三田裕介(3年)が区間2位の好走で東洋大に1分24秒差をつけ、勝負あったかと思われたが、そこから東洋大が粘りを見せた。8区の千葉優(4年)、9区の田中貴章(3年)、10区の山本憲二(3年)が3連続区間賞の走りで早大を猛追。一時は100m差まで迫ったものの、早大も復路全員が区間3位以内と意地を見せ、18年ぶり13度目の総合優勝を手にした。2位・東洋大との差「21秒」は史上最小だった。
3位以下は駒大、東海大、明大と続き、明大が48年ぶりのトップ5。拓大が過去最高の7位に食い込み、熾烈を極めたシード権争いは8位集団に4チームが固まり、1チームがシード権を逃す展開に。混戦模様が続いたものの、残り150mで國學院大の寺田夏生(1年)がコースを間違えるハプニングが発生。寺田は一時完全に集団から後れたものの、最後の最後で城西大をかわして10位を確保。城西大はわずか3秒差でシード権を逃した。
大会MVPにあたる金栗杯は2区で17人抜きを見せた村澤が受賞。早大は1990年度の大東大、2000年度の順大に続く史上3校目の「3冠」を達成し、東洋大は区間賞を4つも獲得しながら、3連覇を逃した。
<人物Close-up>
村澤明伸(東海大2年)
長野・佐久長聖高時代から世界ジュニア選手権5000mに出場するなど世代トップクラスの選手として君臨し、高校の偉大な先輩・佐藤悠基(現・SGホールディングスグループ)と入れ違いで東海大へ入学。1年目から日本インカレ10000m2位、箱根駅伝予選会個人トップ(20km59分08秒)と活躍し、箱根駅伝では14位から10人抜きを演じた。そして圧巻だったのが2年目の箱根駅伝だった。2区走者として最下位の20位でタスキを受けると、圧巻の17人抜きで3位へ浮上。同区間日本人史上3人目の1時間6分台となる1時間6分52秒で区間賞と大会MVP(金栗四三杯)を獲得した。3年時の箱根は2区区間3位(区間3位)。大学4年目は4月に10000m27分50秒59と自己ベストを更新したものの、以降はケガにより思ったような走りができず、最後の箱根予選会も欠場してチームは敗退に終わっている。日清食品グループに入社後もしばらくは大学時代のような走りが見られなかったが、2017年の北海道マラソンで優勝して復活。東京五輪のマラソン代表選考会となるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)の出場権獲得第一号となった。マラソン自己記録は2018年東京で出した2時間9分47秒。
<総合成績>
1位 早稲田大学 10.59.51(往路2位、復路1位)
2位 東洋大学 11.00.12(往路1位、復路2位)
3位 駒澤大学 11.03.53(往路5位、復路3位)
4位 東海大学 11.08.12(往路3位、復路8位)
5位 明治大学 11.08.24(往路4位、復路7位)
6位 中央大学 11.11.24(往路8位、復路6位)
7位 拓殖大学 11.11.28(往路9位、復路4位)
8位 日本体育大学 11.13.19(往路10位、復路10位)
9位 青山学院大学 11.13.20(往路16位、復路5位)
10位 國學院大學 11.13.23(往路6位、復路13位)
========シード権ライン=========
11位 城西大学 11.13.26(往路7位、復路12位)
12位 山梨学院大学 11.13.50(往路13位、復路9位)
13位 帝京大学 11.14.21(往路12位、復路11位)
14位 東京農業大学 11.15.43(往路11位、復路15位)
15位 神奈川大学 11.16.37(往路15位、復路14位)
16位 中央学院大学 11.19.00(往路18位、復路16位)
17位 専修大学 11.21.05(往路14位、復路19位)
18位 関東学連選抜 11.21.17(往路19位、復路17位)
19位 上武大学 11.25.11(往路20位、復路18位)
20位 日本大学 11.28.00(往路17位、復路20位)
<区間賞>
1区(21.4km)大迫 傑(早 大1) 1.02.22
2区(23.2km)村澤明伸(東海大2) 1.06.52
3区(21.5km)O.コスマス(山梨学大3)1.02.19
4区(18.5km)西村知修(帝京大4) 54.34=区間新
5区(23.4km)柏原竜二(東洋大3) 1.17.53
6区(20.8km)千葉健太(駒 大2) 58.11=区間新
7区(21.3km)窪田 忍(駒 大1) 1.03.43
8区(21.5km)千葉 優(東洋大4) 1.06.13
9区(23.2km)田中貴章(東洋大3) 1.09.46
10区(23.1km)山本憲二(東洋大3)1.09.36

2位との差は史上最小の「21秒」 東海大・村澤が17人抜きの快走で金栗杯受賞
87回大会は3連覇を狙う東洋大と、出雲・全日本の両駅伝を制して3冠を狙う早大が“2強”とされ、それを駒大、日体大、明大らが追う構図。10月の予選会では前回出場校の大東大、法大、亜細亜大が敗退した一方で、國學院大が4年ぶり、拓大と神奈川大が2年ぶりに本戦に返り咲いた。 1区は1km過ぎに早大・大迫傑(1年)が抜けだし、日大・堂本尚寛(3年)だけが追走する展開。3位以下はスローペースで牽制し合い、みるみるうちに差が開いていった。大迫は11.5kmで堂本を引き離すと完全に独走状態となり、2位の堂本に54秒差をつけて区間賞を獲得。堂本から約1分遅れで駒大、日体大、中央学大と続いた。 2区では各校のエースたちが快走を見せた。特に光ったのが東海大・村澤明伸(2年)だ。最下位(20位)でタスキを受け取ると、中間地点までに16人を抜いて4位に浮上。そこからは拓大のジョン・マイナ(1年)としばらく併走したものの、振り切って17人抜きを達成した。明大の鎧坂哲也も15位から11人抜き、青学大の出岐雄大(2年)も16位から5位まで順位を上げ、マイナは終盤に失速したものの、17位から7位まで順位を上げる力走を見せた。 3区では山梨学大のオンディバ・コスマス(3年)が区間トップの快走で15位から4位に浮上。4区では帝京大の西村知修(4年)が区間新記録の走りで15位から8位に押し上げた。その一方で、上位争いは早大が2区以降も首位を独走し、4区終了時で東海大が2位、東洋大が3位、明大が4位、駒大が5位、日体大が6位と実力校が順位を上げていった。 早大の5区・猪俣英希(4年)は悠々と山を駆け上がっていったが、この年も東洋大・柏原竜二(3年)が「山の神」の異名にふさわしい走りを見せた。タスキを受け取った時点で先頭とは2分54秒差があったが、7km手前で2位の東海大を、16km過ぎに首位の早大・猪俣をかわし、そのまま3年連続となる往路優勝のフィニッシュを飾った。しかし、猪俣も粘ってその差を27秒で抑え、復路での逆転劇をお膳立て。東洋大と早大は2003年に山梨学大がマークした往路記録を8年ぶりに更新した。
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