HOME バックナンバー
ALL for TOKYO2020+1 館澤亨次 パリ五輪までは1500mで勝負
ALL for TOKYO2020+1 館澤亨次 パリ五輪までは1500mで勝負

埼玉栄高では長距離が主戦場、東海大では1500mで日本選手権を連覇する一方、駅伝でも大活躍。マルチな才能を発揮した館澤亨次(横浜DeNA)は大学卒業後、「1500m」に特化する道を選んだ。そしてその1年目、10月の日本選手権でこれまでとは大きく異なるスタイルで3度目の栄冠に輝いた。男子800m前日本記録保持者である横田真人コーチとともに、目指すは世界トップクラスの領域。2021年東京五輪をステップに、2024年パリ五輪での〝快挙〟を狙っている。

●文/酒井政人 撮影/中村博之

1500mランナーに進化中

1年前の館澤亨次(横浜DeNA)なら、苦にしない練習だったはずだ。取材に訪れた日のメニューは12000mペース走。12月4日に行われる日本選手権で男子3000m障害に出場予定の楠康成(阿見AC)の練習パートナーを務める館澤は、もがいていた。

1㎞3分30秒ペースで入り、4000mごとに10秒ずつ上げていく。最後の4000mは1㎞3分10秒ペースになるが、ラスト1000mは2分56秒まで上がった。楠のペースに食らいついた館澤は、「いや、きつかったですね。大学時代だったら余裕でできる練習なんですけど」と苦笑いしながらも、充実した表情を見せていた。

館澤は埼玉栄高時代、2年連続でインターハイ5000m出場、全国高校駅伝では3年時に1区6位など、長距離で活躍してきた。だが、東海大では2年時から1500mに本格参戦すると、終盤のパワフルなスパートを武器に日本選手権を連覇(17、18年)した。学生駅伝でも大活躍して、全日本大学駅伝は3区で3年連続(16 ~ 18年)の区間賞。主将として臨んだ最後の箱根駅伝は6区で57分17秒の驚異的な区間新記録も打ち立てた。

「大学時代は長い距離の練習も少なくありませんでしたが、今は1回の練習で16㎞も走らないですね。月間走行距離は大学時代の半分以下じゃないでしょうか。でも、補強やウエイトトレーニングは大学時代よりもきっちりとやっています。ちょっと大きくなり過ぎたんですけど、体型も中距離選手に近づいてきたかなと思っています」

身体が大きくなり、スピードも楽に出るようになった。マルチな活躍を見せた館澤は今、「1500 m」を極めようとしている。

身体と走りを見つめ直した

大学4年だった昨年度は、恥骨結合炎で苦しいシーズンを過ごした。ほぼ〝ぶっつけ本番〟で合わせた正月の箱根駅伝の代償も小さくなく、社会人1年目の今季は大きく出遅れるはずだった。ただ、コロナ禍でシーズンがストップしたことは、館澤にとって救いとなった。

「東京五輪の1年延期は自分からすれば正直、助かりました。日本選手権も予定通りの日時(6月下旬)でやっていたら決勝にすら進出できていなかったと思います」

10月の日本選手権1500mでは2年ぶり3度目の優勝。見事な逃げ切り勝ちだった

大学卒業後は、横浜DeNAランニングクラブに加入。中長距離専門チーム「TWOLAPS TC」を率いる横田真人氏とコーチ契約を結び、同チームでトレーニングをすることになった。ただ、ケガを抱えた状態だったことと、4~6月は集団での練習ができなかったこともあり、じっくりと自分の身体と走りを見つめ直すことから始めた。

「横田コーチと話し合って、まずは故障を治すことに重点を置きました。さらに自分のもともとの走り方だと同じケガを繰り返してしまうので、走りの改善もやってきたんです。これまではハムストリングスを無理に使って脚を前方に送り、ググッと引っ張る感じの走りでした。そうではなくて、脚を(重心の真下に)置いて、地面からの反発をもらって走る。それが横田コーチの理論なんです」

ハムストリングスだけではなく、臀筋や股関節を使い、重心に置いた接地脚に乗り込んでいくフォームを目指した。故障は6月に完治したが、新たな走りの感覚はなかなかつかむことができずに「最初はかなり苦労しました」と言う。それでも、練習を重ねることで徐々に光が見え始めた。

「まだ完璧ではないんですけど、身についてきたのは8月くらいからです。乗る感覚とはこういうことなのかというのを徐々に理解できるようになってきました」

接地位置がこれまでより少し手前になったことで、ストライドはやや狭くなったという。しかし、脚の切り返しが素早くなり、走りの効率が良くなったことを実感している。

この続きは2020年11月13日発売の『月刊陸上競技12月号』をご覧ください。

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

埼玉栄高では長距離が主戦場、東海大では1500mで日本選手権を連覇する一方、駅伝でも大活躍。マルチな才能を発揮した館澤亨次(横浜DeNA)は大学卒業後、「1500m」に特化する道を選んだ。そしてその1年目、10月の日本選手権でこれまでとは大きく異なるスタイルで3度目の栄冠に輝いた。男子800m前日本記録保持者である横田真人コーチとともに、目指すは世界トップクラスの領域。2021年東京五輪をステップに、2024年パリ五輪での〝快挙〟を狙っている。 ●文/酒井政人 撮影/中村博之

1500mランナーに進化中

1年前の館澤亨次(横浜DeNA)なら、苦にしない練習だったはずだ。取材に訪れた日のメニューは12000mペース走。12月4日に行われる日本選手権で男子3000m障害に出場予定の楠康成(阿見AC)の練習パートナーを務める館澤は、もがいていた。 1㎞3分30秒ペースで入り、4000mごとに10秒ずつ上げていく。最後の4000mは1㎞3分10秒ペースになるが、ラスト1000mは2分56秒まで上がった。楠のペースに食らいついた館澤は、「いや、きつかったですね。大学時代だったら余裕でできる練習なんですけど」と苦笑いしながらも、充実した表情を見せていた。 館澤は埼玉栄高時代、2年連続でインターハイ5000m出場、全国高校駅伝では3年時に1区6位など、長距離で活躍してきた。だが、東海大では2年時から1500mに本格参戦すると、終盤のパワフルなスパートを武器に日本選手権を連覇(17、18年)した。学生駅伝でも大活躍して、全日本大学駅伝は3区で3年連続(16 ~ 18年)の区間賞。主将として臨んだ最後の箱根駅伝は6区で57分17秒の驚異的な区間新記録も打ち立てた。 「大学時代は長い距離の練習も少なくありませんでしたが、今は1回の練習で16㎞も走らないですね。月間走行距離は大学時代の半分以下じゃないでしょうか。でも、補強やウエイトトレーニングは大学時代よりもきっちりとやっています。ちょっと大きくなり過ぎたんですけど、体型も中距離選手に近づいてきたかなと思っています」 身体が大きくなり、スピードも楽に出るようになった。マルチな活躍を見せた館澤は今、「1500 m」を極めようとしている。

身体と走りを見つめ直した

大学4年だった昨年度は、恥骨結合炎で苦しいシーズンを過ごした。ほぼ〝ぶっつけ本番〟で合わせた正月の箱根駅伝の代償も小さくなく、社会人1年目の今季は大きく出遅れるはずだった。ただ、コロナ禍でシーズンがストップしたことは、館澤にとって救いとなった。 「東京五輪の1年延期は自分からすれば正直、助かりました。日本選手権も予定通りの日時(6月下旬)でやっていたら決勝にすら進出できていなかったと思います」 10月の日本選手権1500mでは2年ぶり3度目の優勝。見事な逃げ切り勝ちだった 大学卒業後は、横浜DeNAランニングクラブに加入。中長距離専門チーム「TWOLAPS TC」を率いる横田真人氏とコーチ契約を結び、同チームでトレーニングをすることになった。ただ、ケガを抱えた状態だったことと、4~6月は集団での練習ができなかったこともあり、じっくりと自分の身体と走りを見つめ直すことから始めた。 「横田コーチと話し合って、まずは故障を治すことに重点を置きました。さらに自分のもともとの走り方だと同じケガを繰り返してしまうので、走りの改善もやってきたんです。これまではハムストリングスを無理に使って脚を前方に送り、ググッと引っ張る感じの走りでした。そうではなくて、脚を(重心の真下に)置いて、地面からの反発をもらって走る。それが横田コーチの理論なんです」 ハムストリングスだけではなく、臀筋や股関節を使い、重心に置いた接地脚に乗り込んでいくフォームを目指した。故障は6月に完治したが、新たな走りの感覚はなかなかつかむことができずに「最初はかなり苦労しました」と言う。それでも、練習を重ねることで徐々に光が見え始めた。 「まだ完璧ではないんですけど、身についてきたのは8月くらいからです。乗る感覚とはこういうことなのかというのを徐々に理解できるようになってきました」 接地位置がこれまでより少し手前になったことで、ストライドはやや狭くなったという。しかし、脚の切り返しが素早くなり、走りの効率が良くなったことを実感している。 この続きは2020年11月13日発売の『月刊陸上競技12月号』をご覧ください。
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.09.07

順大・澤木啓祐氏が名誉総監督を退任 本人の申し出を受け

9月6日、順天堂大学スポーツ健康科学部はホームページに「順天堂大学陸上競技部に関する報道について」と題したリリースを公開。同大学陸上部名誉総監督の澤木啓祐氏が退任することが発表された。 この件は、一部報道で同大学陸上部指 […]

NEWS ヤマダホールディングスが10月のプリンセス駅伝欠場を発表

2024.09.06

ヤマダホールディングスが10月のプリンセス駅伝欠場を発表

9月6日、ヤマダホールディングスは10月20日に開催予定の第10回全⽇本実業団対抗⼥⼦駅伝予選会(プリンセス駅伝)を欠場することを発表した。 チームは11月の全⽇本実業団対抗⼥⼦駅伝(クイーンズ駅伝)での上位入賞を目標に […]

NEWS チェベトが女子5000mで14分09秒52 男子1500mはヌグセがインゲブリグトセンを抑える/DLチューリヒ

2024.09.06

チェベトが女子5000mで14分09秒52 男子1500mはヌグセがインゲブリグトセンを抑える/DLチューリヒ

9月5日、ダイヤモンドリーグ(DL)第13戦のヴェルトクラッセ・チューリッヒがスイス・チューリヒで開催され、女子5000mでは、パリ五輪金メダルのB.チェベト(ケニア)が今季世界最高、パフォーマンス世界歴代7位の14分0 […]

NEWS 田中希実25歳初レース5000m14分49秒95で東京世界陸上の標準突破!!やり投・ディーン3位で初ファイナルへ/DLチューリヒ

2024.09.06

田中希実25歳初レース5000m14分49秒95で東京世界陸上の標準突破!!やり投・ディーン3位で初ファイナルへ/DLチューリヒ

世界最高峰のダイヤモンドリーグ(DL)シリーズ最終戦となる第14戦・チューリヒ大会(スイス)が9月6日に行われ、女子5000mの田中希実(New Balance)が14分49秒95で7位に入った。この記録で、来年の東京世 […]

NEWS 女子マラソン・ウガンダ代表のチェプテゲイが死去 五輪から1ヵ月経たぬうちの惨劇に悲しみ広がる

2024.09.05

女子マラソン・ウガンダ代表のチェプテゲイが死去 五輪から1ヵ月経たぬうちの惨劇に悲しみ広がる

ウガンダのオリンピック委員会(UOC)は9月4日、パリ五輪女子マラソン代表のレベッカ・チェプテゲイが死去したことを発表した。 チェプテゲイは9月2日、トレーニング先のケニアにおいて交際相手の男と口論となった末に、男からガ […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年9月号 (8月9日発売)

2024年9月号 (8月9日発売)

速報 パリ五輪
大盛況 福岡IH
久保凛 日本新特集!

page top