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2025.02.17

最後の箱根路/青学大・鶴川正也 待望の舞台で初のアクシデントも「たった1回でも走れて良かった」
最後の箱根路/青学大・鶴川正也 待望の舞台で初のアクシデントも「たった1回でも走れて良かった」

4年生にして初となった箱根駅伝3区で力走した青学大・鶴川正也

最終学年で「チームのエース」に

熊本・九州学院高3年時に全国高校駅伝1区(10km)で区間賞を獲得し、大きな期待を寄せられて、青学大へ進んだ鶴川。自身も「1年目から強さを出して、大活躍してやろうと思っていた」と意欲を持っていたが、思わぬ苦悩が待ち受けていた。

3年目までは度重なる故障に苦しみ、三大駅伝出走は、3年時の出雲駅伝(6区7位)のみ。同期の太田蒼生や若林宏樹らがルーキーイヤーから駅伝で活躍する傍らで、「あの頃は本当に絶望的な状態でした」と振り返る日々を過ごしてきた。

だが、今季は破竹の勢いを見せる姿があった。5月の関東インカレ2部5000mで優勝を果たすと、6月の日本選手権では、屋外日本学生最高記録(当時)となる13分18秒51をマークして4位に入っている。

駅伝シーズンに入っても、出雲1区、全日本2区で区間賞を獲得。MARCH対抗戦まで日本人学生無敗を誇り、原監督からも「チームのエースは鶴川」と言われるほど信頼を取り戻した。その活躍はまさに今季の学生長距離界を彩った主役にふさわしいものだった。

箱根路では自身の走りには悔いが残った。それでも、ようやく優勝メンバーとなり、「正直、自分の走りはどうでも良いと思えるくらい、うれしくて幸せでした。4年間が報われた気がします」と喜びを噛みしめた。

青学大での4年間はつらいことのほうが多かったかもしれない。それでも、同期とともに成長し、最高の結果をつかんだ。

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「4年生がいたから頑張ってこられました。自分の後に太田、若林、(野村)昭夢、(白石)光星、田中(悠登)がしっかり走ってくれて、最後まで助けられて感謝しかないですね」

その一方で、今季はトラックから出雲、全日本と鶴川がチームを何度となく救い、牽引してきたことも間違いない。そう投げかけると、「そういうことにしておきます」とはにかむ姿が印象的だった。

1月19日の全国都道府県対抗男子駅伝では、熊本県の一員として3区に出走。10000m日本記録保持者(27分09秒80)で群馬県の塩尻和也(富士通)に1秒差の区間2位で7人抜き。2月18日に地元で行われた熊日30キロロードレースは1時間30分34秒で優勝するなど、箱根での不完全燃焼を晴らす気迫の走りを見せた。

今後は得意のトラックで勝負をする。その能力を高く評価する原監督も、「5000m12分台を最初に出せる逸材」と期待する。青学大で得た経験を糧に、世界への飛躍を目指していく。

中盤で差し込みに苦しんだが、区間4位だった鶴川

鶴川正也(つるかわ・まさや:青学大)/2002年6月2日生まれ。熊本県熊本市出身。九州学院高卒。自己ベストは5000m13分18秒51、10000m27分43秒33、ハーフ1時間2分44秒。

文/田中 葵

第101回箱根駅伝で力走した選手たちがいる。勝利の栄光で日の目を見た選手以外にもそれぞれの思いを胸に秘め、必死でタスキをつないだ。毎年行われる箱根路でも「第101回」は一度のみ。そんな“最後”の舞台を駆け抜けた選手たちの奮闘を紹介する。

陸上人生で初のアクシデント

4年目にして、最初で最後の箱根駅伝となった。自身の走りは思い描いていたものとは程遠いものだったかもしれない。だが、届かなかった舞台を走り終えた鶴川正也(4年)の表情は一つも曇りのない晴れやかなものだった。 前回大会、チームの総合優勝も素直に喜べず、一時は「陸上を辞めたいとすら思った」ほど追い込まれていた。1年の時を経て、笑顔で大手町にいた。 出番は3区。2区の黒田朝日(3年)の激走で、首位・中大と49秒差の3位でタスキを受けた鶴川は、前半の10kmを27分58秒で通過。「想定よりも遅いタイムになりましたが、目の前に東京国際大学さんがいましたし、中大さんも肉眼で見えていました。後半で逆転できるかもしれないと思っていました」と、順調な走りを見せていた。 だが、異変は突如訪れる。10km過ぎに東京国際大・佐藤榛紀(4年)を抜いて2位に浮上するも、後ろから追い上げてきた創価大のスティーブン・ムチーニ(2年)に並ばれる。さらに、原晋監督が乗る運営管理車が、13km地点付近にあるトイレ休憩ポイントで一時離れると、その直後に右腹の差し込みに襲われた。 「差し込みは陸上人生で初めての経験。ちょっと焦ってしまい、一気にペースダウンしてしまいました」 調子は決して悪くはなかった。11月23日のMARCH対抗戦10000mで、27分43秒33をマークして以降も、特別なことは意識しなかった。「特に気にしていたのは体調管理の面。普段からやっていることをやれば、大会に向けて調子は上がってくると思っていました」と、自然体を貫いてきた。 だが、箱根の舞台は試練を与えた。ようやくつかんだ夢舞台に、「集中し過ぎていたのか、緊張だったのか。全日本のレース前で初めて使用したゼリーが良かったので今回も飲んだのですが、全日本の時よりも飲むのが30分以上遅れてしまったりして。それも原因だったかもしれません」と振り返る。 右腹の痛みは翌日まで残るほどのダメージを与えていた。それでも終盤は、「監督から『駒大、國學院とは離れているから、落ち着いて自信を持って行くよ』と言われて、最後まで意地を見せようと思った」と必死に振り絞った。 「出雲や全日本よりもキツさはなかったのですが、力を出し切れない走りになってしまいました」と悔やむも、1時間1分51分秒、区間4位の力走だった。 「自分の走りは全然ダメでしたけど、箱根駅伝という舞台は最高でした。監督の声かけや、沿道の声援で力が出ましたし、『箱根駅伝はすごいな』と本気で思いました。たった1回でしたけど、走ることができて良かったです」

最終学年で「チームのエース」に

熊本・九州学院高3年時に全国高校駅伝1区(10km)で区間賞を獲得し、大きな期待を寄せられて、青学大へ進んだ鶴川。自身も「1年目から強さを出して、大活躍してやろうと思っていた」と意欲を持っていたが、思わぬ苦悩が待ち受けていた。 3年目までは度重なる故障に苦しみ、三大駅伝出走は、3年時の出雲駅伝(6区7位)のみ。同期の太田蒼生や若林宏樹らがルーキーイヤーから駅伝で活躍する傍らで、「あの頃は本当に絶望的な状態でした」と振り返る日々を過ごしてきた。 だが、今季は破竹の勢いを見せる姿があった。5月の関東インカレ2部5000mで優勝を果たすと、6月の日本選手権では、屋外日本学生最高記録(当時)となる13分18秒51をマークして4位に入っている。 駅伝シーズンに入っても、出雲1区、全日本2区で区間賞を獲得。MARCH対抗戦まで日本人学生無敗を誇り、原監督からも「チームのエースは鶴川」と言われるほど信頼を取り戻した。その活躍はまさに今季の学生長距離界を彩った主役にふさわしいものだった。 箱根路では自身の走りには悔いが残った。それでも、ようやく優勝メンバーとなり、「正直、自分の走りはどうでも良いと思えるくらい、うれしくて幸せでした。4年間が報われた気がします」と喜びを噛みしめた。 青学大での4年間はつらいことのほうが多かったかもしれない。それでも、同期とともに成長し、最高の結果をつかんだ。 「4年生がいたから頑張ってこられました。自分の後に太田、若林、(野村)昭夢、(白石)光星、田中(悠登)がしっかり走ってくれて、最後まで助けられて感謝しかないですね」 その一方で、今季はトラックから出雲、全日本と鶴川がチームを何度となく救い、牽引してきたことも間違いない。そう投げかけると、「そういうことにしておきます」とはにかむ姿が印象的だった。 1月19日の全国都道府県対抗男子駅伝では、熊本県の一員として3区に出走。10000m日本記録保持者(27分09秒80)で群馬県の塩尻和也(富士通)に1秒差の区間2位で7人抜き。2月18日に地元で行われた熊日30キロロードレースは1時間30分34秒で優勝するなど、箱根での不完全燃焼を晴らす気迫の走りを見せた。 今後は得意のトラックで勝負をする。その能力を高く評価する原監督も、「5000m12分台を最初に出せる逸材」と期待する。青学大で得た経験を糧に、世界への飛躍を目指していく。 [caption id="attachment_127554" align="alignnone" width="800"] 中盤で差し込みに苦しんだが、区間4位だった鶴川[/caption] 鶴川正也(つるかわ・まさや:青学大)/2002年6月2日生まれ。熊本県熊本市出身。九州学院高卒。自己ベストは5000m13分18秒51、10000m27分43秒33、ハーフ1時間2分44秒。 文/田中 葵

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