HOME 編集部コラム

2025.01.10

編集部コラム「思惑」船越陽一郎

毎週金曜日更新!?
★月陸編集部★
攻め(?)のアンダーハンド
リレーコラム🔥
毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ!
陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。
編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。
暇つぶし程度にご覧ください!

第273回「思惑(船越陽一郎)

今年も箱根駅伝往路の報道カメラ車に乗せていただきました。
ここ数年、箱根駅伝の1区は誰かが飛び出して独走するという傾向にあるように思います。

我々専門誌としては、全選手の写真が撮りたいところでございます。しかし、1区というのはあまり選手間の差が出づらい区間であり、沿道からの撮影では どうしても選手同士での重なるなど、撮影が困難な場合も多々ございます。ですので、報道カメラ車にて1区の選手をなるだけ押さえておきたいという思惑がございます。

そんななか、選手がスタートして間もなく中大の吉居駿恭選手が飛び出しました。

「え! もう!?」とは思いましたが、正直すぐに後続に追いつかれるだろうと思いました。
ただ、98回大会でお兄さんの吉居大和選手が1区にてものすごいぶっちぎって走ったのが脳裏にチラつきましたが……。

1区後半、追いつかれるどころか 2位集団がまったく見えない状態で 5区まで行くとは思っていませんでした。

本当に吉居駿恭選手いや、中央大学さんが 素晴らしいということなのですが……。こんなことなら、スタート直後 もっとシャッターをフルに切っておくべきでした・・・。

広告の下にコンテンツが続きます

しかしながら、まだ 報道の神(?)はこの報道カメラ車を見放してはいませんでした。
なんと、5区にて 若の神こと青学の若林選手が後ろから迫っているではありませんか!?

こういう状況になると急に中大の園木選手も応援したくなるというド素人感丸出しな私。それと同時に、トップが入れ替わる瞬間を撮れるということに喜びを感じるエゴイストな私。そんな相反する気持ちが私の中に共存できるのでしょうか?
そんな自分自身に酔っている最中に重大なことに気が付きました。

先導する白バイとトップに躍り出る瞬間の若林選手が重なるのでは!?

報道の神(?)には見放されませんでしたが、若の神には見放されてしまったのでしょうか!?

もうこうなったら、立って撮るしかない!

クネクネの山道を行く報道カメラ車の上に 体幹がほぼ無いおじさんがヨロヨロしながら立ったまま撮影している状態です。

あ! これは 老人と海だ! ヘミングウェイの老人と海だ!
その時 私の中で何かが覚醒したような気がしました。

が、そんなわけがありません。
そもそも、老人と海と重なるところなんて1mmもないのに……。

昔から苦しくなると、現実逃避する節がございまして、自分を鼓舞する為の何でも良いストーリーを妄想しがちで、自分に感情移入をすることによって……ゴチャゴチャ考えているうちに若林選手が園木選手を抜いちゃっていました。

何とか先導白バイとも重ならずに済みました。
トップが入れ替わる瞬間も撮影でき、ことなきを得ましたが、何か腑に落ちません。
漫画や物語の主人公の様にその瞬間に思考が完結するということは難しいのですね。 いや、無駄なことを考え過ぎなのでしょうか?

また、悶々としながら 報道カメラ車から降りることになるとは……。

船越陽一郎(ふなこし・よういちろう)
月刊陸上競技写真部
1974年12月生まれ 172cm ○0kg 福岡県春日市出身
小学生の時に身体が弱く 喘息持ちだったため、鍛えるためにラグビーを始め「走れば治る」が口癖のドSのコーチに肉体改造される。大学までラグビーを続けるも卒業と同時に引退。何を思ったか社会人でボクシングを始める。戦績 3戦3敗(3KO負け) 秘密兵器の左フックを編み出すも、秘密のまま引退。なんじゃかんじゃあって現在に至る。

過去の編集部コラムはこちら

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。 編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。 暇つぶし程度にご覧ください!

第273回「思惑(船越陽一郎)

今年も箱根駅伝往路の報道カメラ車に乗せていただきました。 ここ数年、箱根駅伝の1区は誰かが飛び出して独走するという傾向にあるように思います。 我々専門誌としては、全選手の写真が撮りたいところでございます。しかし、1区というのはあまり選手間の差が出づらい区間であり、沿道からの撮影では どうしても選手同士での重なるなど、撮影が困難な場合も多々ございます。ですので、報道カメラ車にて1区の選手をなるだけ押さえておきたいという思惑がございます。 そんななか、選手がスタートして間もなく中大の吉居駿恭選手が飛び出しました。 「え! もう!?」とは思いましたが、正直すぐに後続に追いつかれるだろうと思いました。 ただ、98回大会でお兄さんの吉居大和選手が1区にてものすごいぶっちぎって走ったのが脳裏にチラつきましたが……。 1区後半、追いつかれるどころか 2位集団がまったく見えない状態で 5区まで行くとは思っていませんでした。 本当に吉居駿恭選手いや、中央大学さんが 素晴らしいということなのですが……。こんなことなら、スタート直後 もっとシャッターをフルに切っておくべきでした・・・。 しかしながら、まだ 報道の神(?)はこの報道カメラ車を見放してはいませんでした。 なんと、5区にて 若の神こと青学の若林選手が後ろから迫っているではありませんか!? こういう状況になると急に中大の園木選手も応援したくなるというド素人感丸出しな私。それと同時に、トップが入れ替わる瞬間を撮れるということに喜びを感じるエゴイストな私。そんな相反する気持ちが私の中に共存できるのでしょうか? そんな自分自身に酔っている最中に重大なことに気が付きました。 先導する白バイとトップに躍り出る瞬間の若林選手が重なるのでは!? 報道の神(?)には見放されませんでしたが、若の神には見放されてしまったのでしょうか!? もうこうなったら、立って撮るしかない! クネクネの山道を行く報道カメラ車の上に 体幹がほぼ無いおじさんがヨロヨロしながら立ったまま撮影している状態です。 あ! これは 老人と海だ! ヘミングウェイの老人と海だ! その時 私の中で何かが覚醒したような気がしました。 が、そんなわけがありません。 そもそも、老人と海と重なるところなんて1mmもないのに……。 昔から苦しくなると、現実逃避する節がございまして、自分を鼓舞する為の何でも良いストーリーを妄想しがちで、自分に感情移入をすることによって……ゴチャゴチャ考えているうちに若林選手が園木選手を抜いちゃっていました。 何とか先導白バイとも重ならずに済みました。 トップが入れ替わる瞬間も撮影でき、ことなきを得ましたが、何か腑に落ちません。 漫画や物語の主人公の様にその瞬間に思考が完結するということは難しいのですね。 いや、無駄なことを考え過ぎなのでしょうか? また、悶々としながら 報道カメラ車から降りることになるとは……。
船越陽一郎(ふなこし・よういちろう) 月刊陸上競技写真部 1974年12月生まれ 172cm ○0kg 福岡県春日市出身 小学生の時に身体が弱く 喘息持ちだったため、鍛えるためにラグビーを始め「走れば治る」が口癖のドSのコーチに肉体改造される。大学までラグビーを続けるも卒業と同時に引退。何を思ったか社会人でボクシングを始める。戦績 3戦3敗(3KO負け) 秘密兵器の左フックを編み出すも、秘密のまま引退。なんじゃかんじゃあって現在に至る。
過去の編集部コラムはこちら

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.15

Athlete of The Year賞に北口榛花を選出! 2024年度「実業団陸上of The Year」発表

日本実業団陸上競技連合は4月15日、2024年度「実業団陸上of The Year 表彰」の受賞者・受賞チームをホームページで発表し、個人賞のAthlete of The Year賞に8月のパリ五輪女子やり投で、マラソン […]

NEWS 神戸マラソンがMGCシリーズ加盟 愛知アジア大会、ロス五輪代表の選考へつながるレースに

2025.04.15

神戸マラソンがMGCシリーズ加盟 愛知アジア大会、ロス五輪代表の選考へつながるレースに

日本陸連は4月15日、「神戸マラソン2025」がMGCシリーズ2025-26に加盟したと発表した。 MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)シリーズは、前身のJMCシリーズを継承したもので、ポイントにより年間王者を決 […]

NEWS 100mH寺田明日香「今季限りで一線を退く」東京世界陸上目指してラストスパート「引退」は使わず

2025.04.15

100mH寺田明日香「今季限りで一線を退く」東京世界陸上目指してラストスパート「引退」は使わず

女子100mハードル元日本記録保持者の寺田明日香(ジャパンクリエイト)が都内で会見を開き、今季限りでの第一線を退く意向を表明した。 冒頭のキャリアを振り返るVTRが流れると、登壇早々から涙を浮かべた寺田。一線を退く意向を […]

NEWS コモディイイダ・高橋舞衣が退職 2月の愛媛マラソンで骨折 「この決断が後に良かったと思えることを信じて」

2025.04.15

コモディイイダ・高橋舞衣が退職 2月の愛媛マラソンで骨折 「この決断が後に良かったと思えることを信じて」

コモディイイダはは4月15日付で、高橋舞衣が退職すると発表した。2月の愛媛マラソンで骨折し、今後は地元の愛媛で治療とリハビリに専念するという。 高橋は愛媛・今治北高では主要な全国大会への出場はなかったが、松山大では1年時 […]

NEWS 東海大が陸上競技場に電子ペーサーを常設! トラック内側に4色点滅のLED325個を配置

2025.04.14

東海大が陸上競技場に電子ペーサーを常設! トラック内側に4色点滅のLED325個を配置

東海大陸上部と工学部は4月14日、東海大湘南キャンパス内陸上競技場にLEDライトをトラックの縁に置いてペース設定に合わせて光る「電子ペーサー」を3月から常設したと発表した。国内メーカーによる開発と、陸上競技場への常設は国 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top