HOME 箱根駅伝

2025.01.03

「大手町でアンカーを待ちたい」 2区8位にとどまった國學院大・平林清澄/箱根駅伝
「大手町でアンカーを待ちたい」 2区8位にとどまった國學院大・平林清澄/箱根駅伝

25年箱根駅伝2区で区間8位だった平林清澄(國學院大)

◇第101回箱根駅伝・往路(東京・大手町~神奈川・箱根町/5区間107.5km)

第101回箱根駅伝の往路が行われ、青学大が5時間20分01秒で往路優勝を飾った。

6位の國學院大のエース・平林清澄(4年)は2区で1時間6分38秒の区間8位にとどまった。

「今までにないくらい、苦しいレースになりました。悔しい限りです」。今季は走ればニュースになった平林が、最後の最後に悔しさから唇を噛みしめた。

ずっと、箱根で勝ちたかった。出雲駅伝は今年度、全日本大学駅伝では昨年度、それぞれ区間賞を獲得しているが、1年時から出場している箱根だけは、いまだ区間賞はゼロ。チームとしても優勝はない。

並々ならぬ決意で今シーズンをスタートさせ、個人では2月に初マラソンの大阪で日本学生記録を打ち立てた。主将に加えて寮長も務めることになった平林は、1年間チームを鼓舞し続ける。

広告の下にコンテンツが続きます

自分が出走しないレースにも足を運び、チームメイトの応援に声をからす。自分の目で仲間の走りを見ないと「ミーティングで言えないこともある」と、チームのためになることなら努力を惜しまなかった。

強いチーム、速いチームになるのではなく、『勝てるチーム』づくりに邁進してきたことによって、國學院大は出雲駅伝、全日本大学駅伝を制覇。史上6校目となる学生駅伝3冠に向けた足がかりとしては最高の結果となった。

いよいよ迎えた箱根。もちろん平林は3年連続でエースが集う2区を担当する。小細工なしの真っ向勝負。区間エントリー発表の段階で、すでに2区のところに平林の名前があった。

平林が待つ鶴見中継所にタスキを運ぶのは、野中恒亨(2年)。中大の吉居駿恭(3年)が飛び出した以外は、スローペースで固まりになって展開された1区で、野中は落ち着いていた。最後のスパート勝負で粘りを見せ、トップの中大とは1分40秒差ではあったが、2位の駒大とはたった8秒差の6位と、上々の位置で平林にタスキをつないだ。

権太坂以後のアップダウンに備え、落ち着いたスタートを見せる平林。しかし、早速後ろから東京国際大のリチャード・エティーリ(2年)がすさまじい勢いで迫ってきた。

2kmで早々にエティーリに捕まった平林は、「調子が良かったのでついていきました」と食らいつく。その後ペースは少し落ちてエティーリに離されるも、10km過ぎからは平林が集団の先頭に立ち、再度前を伺う走りを見せる。

15kmではついに2位争いを繰り広げる駒大・篠原倖太朗(4年)とエティーリとの差を10秒に縮めることに成功。だが、平林の走りが苦しい。

「権太坂から上げる予定でしたけど、そこからきつくなってしまった感じで上がり切らなかった」

そう振り返る平林は、20km手前から集団から遅れ始める。最後に平林を待っていたのが、2区名物の戸塚の壁。本来であれば、ここを誰よりも速く、強く駆け抜ける予定だったが、その足取りは重い。

しかし、平林の目はただひたすらに前を向く。むしろ力強さすら感じるほどの鬼気迫る表情でひたすらに走り続ける。

意志の強さこそ、心の強さ。それを証明するかのように、懸命に腕を振り、足を前に運び続ける平林。『箱根で勝つ』という、たったひとつの願いのためだ。

結果、8番目で戸塚中継所に辿り着き、3区を走る同級生の山本歩夢にタスキを託した。1時間6分38秒。前回からは記録を12秒落としてしまっただけだったが、一度に3人が区間記録を上回るという史上最高レベルのスピードレースのなかでは、順位では厳しい結果となってしまった。

「後半上がらなかったのは、自分の弱さだと思います。最後の箱根駅伝だったので、自分のなかでも大事にしたいと思っていましたし、次につなげていかないといけなかったですけど、レース展開というところで悔しい、悔いが残るかたちになりました」

前田康弘監督からは「最後、悔いが残らないように、ここで負けたら悔いが残るぞ、悔いが残らないように最後しっかり頑張れ」と声をかけられた。だが、「それができなかったのが悔しい。もっとやれればなと思いますし、チームに本当に申し訳ない結果だったかなと思います」と悔やむ言葉が続く。

ただ、今年度の國學院大は、平林が『勝つ』チームに仕上げてきた過去最高のチームだ。その熱い思いは十分に伝わっている。

平林の後を継いだ3区山本は2つ順位を上げ、4区の青木瑠郁は区間2位の走りでさらに順位をひとつ押し上げて5位でつなぐ。國學院大の不安要素でもあった5区山上りは、高山豪起が順位をひとつ下げてしまうが、それでも総合6位で踏ん張り往路を終えた。往路トップの青学大とは、5分25秒差。國學院大が復路に強力な布陣が残る。

平林は主将として言葉を紡いだ。「キャプテンとしてチームを信じて、レースが終わるまで大手町でアンカーを待ちたいと思います」。

文/田坂友暁

◇第101回箱根駅伝・往路(東京・大手町~神奈川・箱根町/5区間107.5km) 第101回箱根駅伝の往路が行われ、青学大が5時間20分01秒で往路優勝を飾った。 6位の國學院大のエース・平林清澄(4年)は2区で1時間6分38秒の区間8位にとどまった。 「今までにないくらい、苦しいレースになりました。悔しい限りです」。今季は走ればニュースになった平林が、最後の最後に悔しさから唇を噛みしめた。 ずっと、箱根で勝ちたかった。出雲駅伝は今年度、全日本大学駅伝では昨年度、それぞれ区間賞を獲得しているが、1年時から出場している箱根だけは、いまだ区間賞はゼロ。チームとしても優勝はない。 並々ならぬ決意で今シーズンをスタートさせ、個人では2月に初マラソンの大阪で日本学生記録を打ち立てた。主将に加えて寮長も務めることになった平林は、1年間チームを鼓舞し続ける。 自分が出走しないレースにも足を運び、チームメイトの応援に声をからす。自分の目で仲間の走りを見ないと「ミーティングで言えないこともある」と、チームのためになることなら努力を惜しまなかった。 強いチーム、速いチームになるのではなく、『勝てるチーム』づくりに邁進してきたことによって、國學院大は出雲駅伝、全日本大学駅伝を制覇。史上6校目となる学生駅伝3冠に向けた足がかりとしては最高の結果となった。 いよいよ迎えた箱根。もちろん平林は3年連続でエースが集う2区を担当する。小細工なしの真っ向勝負。区間エントリー発表の段階で、すでに2区のところに平林の名前があった。 平林が待つ鶴見中継所にタスキを運ぶのは、野中恒亨(2年)。中大の吉居駿恭(3年)が飛び出した以外は、スローペースで固まりになって展開された1区で、野中は落ち着いていた。最後のスパート勝負で粘りを見せ、トップの中大とは1分40秒差ではあったが、2位の駒大とはたった8秒差の6位と、上々の位置で平林にタスキをつないだ。 権太坂以後のアップダウンに備え、落ち着いたスタートを見せる平林。しかし、早速後ろから東京国際大のリチャード・エティーリ(2年)がすさまじい勢いで迫ってきた。 2kmで早々にエティーリに捕まった平林は、「調子が良かったのでついていきました」と食らいつく。その後ペースは少し落ちてエティーリに離されるも、10km過ぎからは平林が集団の先頭に立ち、再度前を伺う走りを見せる。 15kmではついに2位争いを繰り広げる駒大・篠原倖太朗(4年)とエティーリとの差を10秒に縮めることに成功。だが、平林の走りが苦しい。 「権太坂から上げる予定でしたけど、そこからきつくなってしまった感じで上がり切らなかった」 そう振り返る平林は、20km手前から集団から遅れ始める。最後に平林を待っていたのが、2区名物の戸塚の壁。本来であれば、ここを誰よりも速く、強く駆け抜ける予定だったが、その足取りは重い。 しかし、平林の目はただひたすらに前を向く。むしろ力強さすら感じるほどの鬼気迫る表情でひたすらに走り続ける。 意志の強さこそ、心の強さ。それを証明するかのように、懸命に腕を振り、足を前に運び続ける平林。『箱根で勝つ』という、たったひとつの願いのためだ。 結果、8番目で戸塚中継所に辿り着き、3区を走る同級生の山本歩夢にタスキを託した。1時間6分38秒。前回からは記録を12秒落としてしまっただけだったが、一度に3人が区間記録を上回るという史上最高レベルのスピードレースのなかでは、順位では厳しい結果となってしまった。 「後半上がらなかったのは、自分の弱さだと思います。最後の箱根駅伝だったので、自分のなかでも大事にしたいと思っていましたし、次につなげていかないといけなかったですけど、レース展開というところで悔しい、悔いが残るかたちになりました」 前田康弘監督からは「最後、悔いが残らないように、ここで負けたら悔いが残るぞ、悔いが残らないように最後しっかり頑張れ」と声をかけられた。だが、「それができなかったのが悔しい。もっとやれればなと思いますし、チームに本当に申し訳ない結果だったかなと思います」と悔やむ言葉が続く。 ただ、今年度の國學院大は、平林が『勝つ』チームに仕上げてきた過去最高のチームだ。その熱い思いは十分に伝わっている。 平林の後を継いだ3区山本は2つ順位を上げ、4区の青木瑠郁は区間2位の走りでさらに順位をひとつ押し上げて5位でつなぐ。國學院大の不安要素でもあった5区山上りは、高山豪起が順位をひとつ下げてしまうが、それでも総合6位で踏ん張り往路を終えた。往路トップの青学大とは、5分25秒差。國學院大が復路に強力な布陣が残る。 平林は主将として言葉を紡いだ。「キャプテンとしてチームを信じて、レースが終わるまで大手町でアンカーを待ちたいと思います」。 文/田坂友暁

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.02.05

Onの最速レーシングシューズ 「Cloudboom Strike」から新色が2月6日より発売! 

スイスのスポーツブランド「On(オン)」およびオン・ジャパンは2月5日、ブランド史上最速のマラソン向けレーシングシューズ「Cloudboom Strike (クラウドブーム ストライク)」の新カラー、ライムライト / ウ […]

NEWS 中国の21歳・李晨洋が棒高跳で5m85 中国記録を3cm更新 山本聖途5m55/WA室内ツアー

2025.02.05

中国の21歳・李晨洋が棒高跳で5m85 中国記録を3cm更新 山本聖途5m55/WA室内ツアー

2月1日、フランス北部のカーンで開催されたパーチ・エクストリームの男子棒高跳B組において李晨洋(中国)が5m85に成功。これまでの中国記録を3cm更新する新記録を樹立した。 李は2003年生まれの21歳。23年のベストは […]

NEWS 走幅跳・フルラーニが大会新V 女子3000mハイルは歴代8位の8分24秒17/WA室内ツアー

2025.02.05

走幅跳・フルラーニが大会新V 女子3000mハイルは歴代8位の8分24秒17/WA室内ツアー

2月4日、チェコ・オストラヴァで世界陸連(WA)室内ツアー・ゴールド第4戦のチェコ室内ガラが行われ、男子走幅跳ではパリ五輪銅メダルのM.フルラーニ(イタリア)が8m23の大会新記録で優勝を果たした。 2月7日に20歳の誕 […]

NEWS 多田修平が60m5位 通過の50mは5秒73の日本新!/WA室内ツアー

2025.02.05

多田修平が60m5位 通過の50mは5秒73の日本新!/WA室内ツアー

2月4日、チェコ・オストラヴァで世界陸連(WA)室内ツアー・ゴールド第4戦のチェコ室内ガラが行われ、男子60mに出場した多田修平(住友電工)が6秒63で5位に入った。 昨年3月の世界室内選手権60mでは予選で6秒52の日 […]

NEWS シスメックスの堀江美里が引退 アジア選手権3000m障害4位 マラソンでも活躍

2025.02.04

シスメックスの堀江美里が引退 アジア選手権3000m障害4位 マラソンでも活躍

11年アジア選手権女子3000m障害4位で、現在はシスメックスに所属する堀江美里が2月2日の兵庫県郡市区対抗駅伝をもって引退することが、関係者への取材でわかった。 堀江は1987年生まれの37歳。兵庫・星陵高までは近畿大 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年2月号 (1月14日発売)

2025年2月号 (1月14日発売)

駅伝総特集!
箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
高校駅伝、中学駅伝
富士山女子駅伝

page top