2024.12.29
土屋拓人 PROFILE
◎つちや・たくと/2006年7月22日生まれ。宮城県多賀城市出身。高崎中―聖和学園高。小学校3年生から野球を始め、中学校でも続けていたが、中学3年時に陸上の試合に出て県総体走幅跳では3位(6m18/+1.9)。東北大会ではさらに記録を伸ばし6m70(+0.4)で優勝を果たした。これをきっかけに陸上へ本格転向。高校では1年時のインターハイ東北大会で6位に入り、徳島インターハイに出場。2年時では、東北大会を制し、インターハイは8位に食い込む。また、国体少年A、U18大会ではいずれも3位に入った。3年生となった2024年シーズンはU20日本選手権で2位。初の海外遠征となったU20世界選手権では8位入賞を遂げ、国民スポーツ大会少年Aでは優勝した。主な自己ベストは走幅跳7m73(24年)、三段跳14m76(23年)

高校卒業後は大学に進み、日本トップを目指す土屋拓人選手
会心の跳躍は宮城県大会
――2024年はどんなシーズンでしたか。 土屋 インターハイに出場することはできませんでしたが、U20世界選手権で入賞したり、国民スポーツ大会で優勝することができて、得るものが大きかったシーズンでした。 ――どんな目標を掲げてシーズンをスタートしましたか。 土屋 1番大きな目標は、インターハイで優勝すること。あとは高校歴代でトップ10に入るような7m80ぐらいの記録を出すことが目標でした。 ――シーズンに向けて主にどのようなところを強化しましたか。 土屋 まだ不完全だった助走区間の安定性や効率の良い踏み切りの仕方などを、自分なりに試行錯誤しながらやっていく感じでした。 ――良いかたちでシーズンに入れましたか。 土屋 冬季からいつもと少し違う良い感覚で跳躍練習を行えていたので、それをシーズンの最初の方から出していけたのは良かったです。 ――5月のインターハイ宮城県大会では7m55(-1.3)の自己ベストで優勝。県高校記録を34年ぶりに塗り替えました。 土屋 1本目に7m52の県タイ記録を出し、修正していくなか、6本目で7m55を出せました。うれしかったですが、向かい風の条件だったので、もっと上を狙えるという伸びしろも同時に感じました。 ――6月の東北大会では7m73(+1.1)とさらに記録を伸ばしました。 土屋 自分の身体の状態や、観客の盛り上がりで「行けるな」という感覚があって、踏み切った瞬間には記録が出ることを確信した感じでした。でも、「自己ベストを出せればいい」と考えていたので77m70台に乗ったのはびっくりしました。東北で切磋琢磨してきた仲間と戦えるうれしさや、コンディションの良さが相まって記録につながったと思っています。 ――インターハイに向けて、自信がついたのでは。 土屋 そうですね。この記録をインターハイで出せれば、優勝は見えてくるという感覚は自分の中でありました。 ――東北大会の後、U20日本選手権は7m57(-0.5)で2位に入りました。 土屋 そこで記録を出せば世界(U20世界選手権)の舞台で戦えることがわかっていましたが、まずは先輩方と戦って勝ち抜くことを目標にしました。結局、そこで負けてしまいましたが、自分の力は出し切れましたし、世界の切符もつかめたので、結果以上に得たものが大きかった試合でした。 ――優勝候補に挙がっていた福岡インターハイは、競技前日に腰を痛めて棄権となってしまいました。ショックも大きかったのでは? 土屋 東北大会、U20日本選手権、県選手権と大きい大会が1週間おきに続いたので、疲労が溜まってしまったのがケガにつながったと考えています。前日の練習で踏みきったとき、腰に衝撃があり、痛みが出ました。当日の朝、棄権を決断した時はこみ上げてくるものがありましたが、その時はU20世界選手権の出場が決まっていたので、将来的に見てそちらに専念しようと前向きな思いもありました。 ――8月下旬のU20世界選手権(ペルー・リマ)までにはケガは治ったのですか。 土屋 少し長引いてしまって、痛めて試合に出られないというのが一番良くないと考えていたので、日本にいる間は、練習はせずに腰の休養にあて、現地で合わせるというかたちでした。 ――海外遠征は初めてでしたか。 土屋 自分は海外に行くこと自体が初めてで、普通の生活や言語など、日常的な部分で不安に感じていました。英語が話せないので、外国人の輪に溶け込めない感覚がありました。 ――それでも初の国際大会で7m56(+1.1)を跳び、8位入賞を果たしました。 土屋 今後も見据えて、自分に世界で戦える器があるかどうかを知りたかったので、結果を出すことを目標に臨みました。入賞できたことはうれしかったですが、1位(クロアチアのR.ファルカシュ、8m17/+2.4)との記録の差が大き過ぎて、世界で戦うにはまだ全然力が足りないという悔しさのほうが大きかったです。 ――日本代表のユニフォームを着ての試合はいかがでしたか。 土屋 緊張はありましたが、やることは県の大会でも日本の大会でも変わらないと考えていたので、試合には集中して取り組めたと思います。 ――その後、10月の国スポでは7m57(+3.2)を跳び、初の全国優勝を飾りました。 土屋 優勝できたのはもちろんうれしいですが、納得できない記録で優勝してしまったのは物足りなかったなという印象です。自分の跳躍の時に良い追い風が吹いて、かなりラッキーな優勝でした。 ――2024年シーズンの会心の跳躍はどの大会ですか。 土屋 県記録を更新した7m55です。自分は7m60台を出せていません。7m73は最大限のパフォーマンスを引き出した結果で、現時点での平均では7m50~60ぐらい。しかも今季は、決勝で記録を伸ばせたのは県総体だけなので、その時の7m55が印象に残っています。野球で鍛えた身体のバランス
――もともと野球をがんばっていたそうですが、陸上はいつ、どんなきっかけで始めましたか。 土屋 中学までは野球をやっていました。中学に陸上部はありませんでしたが、大会の時だけ即席のチームで出場し、本格的に陸上を始めたのは高校に入ってからです。 ――野球をやってきて走幅跳に生かせている点はありますか。 土屋 野球は投げる、打つ、走るといった動作があるので、オールマイティーな身体の使い方やバランス的な部分が鍛えられて、陸上にも生きていると思っています。 ――宮城・高崎中での3年間で印象に残っていることは。 土屋 東北大会の走幅跳で優勝したことです。ずっと「野球を続けなさい」と言われていたクラブチームの監督とは、「東北大会で優勝したら陸上に転向して良い」と約束し、運良く優勝できました。県大会3位で東北大会に進んだので、大口を叩いた感じですが、そこで勝てたのも今の勝負強さにつながっている気がします。 ――聖和学園高に進んだ経緯を教えてください。 土屋 通いやすかったことと近くに競技場があるのが魅力でした。それに陸上や跳躍についての知識がなかったので、イチからやるなら専門的な知識を持った先生方に教えてほしいと考えて、聖和学園を選びました。 ――実際に入学して陸上部の雰囲気や練習はどうでしたか。 土屋 野球と違って練習時間が短かったり、個人競技なので団体でやることが少ないことに驚きました。陸上ならではの練習のきつさも感じましたが、新しいことに挑戦する楽しさもありました。 ――入学当初に立てた高校3年間の目標は。 土屋 それほど具体的には考えていなくて、「3年目でインターハイ入賞するレベルになれればいい」ぐらいでした。 ――1年目にインターハイに出場し、2年目に8位に入賞しました。 土屋 1年目は運の良さもあって、何とか滑り込んで出場できました。その後、全国の強化練習会に参加し、基本の大切さを教わって記録が伸びていきました。ただ、2年目のインターハイは予選を1位で通過したので、ピーキングの大切さや自分の弱さが見えた大会でした。 [caption id="attachment_156884" align="alignnone" width="800"]
土屋拓人 PROFILE
◎つちや・たくと/2006年7月22日生まれ。宮城県多賀城市出身。高崎中―聖和学園高。小学校3年生から野球を始め、中学校でも続けていたが、中学3年時に陸上の試合に出て県総体走幅跳では3位(6m18/+1.9)。東北大会ではさらに記録を伸ばし6m70(+0.4)で優勝を果たした。これをきっかけに陸上へ本格転向。高校では1年時のインターハイ東北大会で6位に入り、徳島インターハイに出場。2年時では、東北大会を制し、インターハイは8位に食い込む。また、国体少年A、U18大会ではいずれも3位に入った。3年生となった2024年シーズンはU20日本選手権で2位。初の海外遠征となったU20世界選手権では8位入賞を遂げ、国民スポーツ大会少年Aでは優勝した。主な自己ベストは走幅跳7m73(24年)、三段跳14m76(23年) [caption id="attachment_156886" align="alignnone" width="800"]
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