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2024.12.28

箱根駅伝Stories/初の総合優勝を狙う國學院大 一戦必勝で「歴史を変える挑戦」最終章へ
箱根駅伝Stories/初の総合優勝を狙う國學院大 一戦必勝で「歴史を変える挑戦」最終章へ

全日本大学駅伝で初優勝を飾り、一戦必勝で箱根路へ臨む國學院大の選手たち

新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。

前半戦から躍進の予感

 
その勢いはとどまるところを知らない。今季は「歴史を変える挑戦~Ep.3~」を掲げた國學院大は、出雲で5年ぶり2回目、全日本を初制覇。すでに新たな歴史を刻んできたが、スローガンに込められたターゲットは箱根駅伝で初の総合優勝だ。

一般的に、学生駅伝「3冠」と表現されることが多い。しかし、前田康弘監督は全日本後、「出雲は出雲、全日本は全日本。一つひとつ全力で勝ちにいくと考えていて、2つ勝っただけです。箱根駅伝優勝を最大の目標にチームは動いていますので、気を抜かずに、またここからしっかり戦っていきたいと思います」。

今季は前半戦から躍進の予兆はあった。平林清澄(4年)が2月の大阪マラソンで、初マラソン日本最高記録と学生新記録。それを皮切りに、宮古島大学駅伝の完全優勝、日本学生ハーフでは、青木瑠郁(3年)が優勝し、辻原輝(2年)が5位に入る。各種ロードレースでも結果を残し続けてきた。

さらに昨季は故障に苦しんだ山本歩夢(4年)が復帰。走れなかった期間の取り組みで走りの内容も変わったと実感しており、山本は「膝下だけで走ってしまっていた部分がありました。しっかりハム(ストリングス)やお尻を使いながらうまく連動性も持たせることができるようになってきました」と今季の好走につながっている。

そして、何より選手層の厚みが違う。エントリーの16人で見ても、5000m13分台が10人、10000m29分切りが10人、ハーフ1時間3分切りが9人もいる。

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新潟・妙高高原での2次合宿の30km走も大集団で行っていた。「30人ぐらいがAチームで練習をやったと思うのですが、過去最高ですね。あの人数でやることは普通ないですから」。指揮官もうなずいていた。

そんな充実の夏合宿を経て、迎えた駅伝シーズン。10月の出雲駅伝では4~6区の連続区間賞、中でも今季ブレイクしている上原琉翔(3年)が5区で先頭に立つと、アンカー・平林が駒大・篠原倖太朗(4年)との競り合いを制した。

11月の全日本でもアンカー勝負を制する。青学大に先行される流れだったが、出雲に続く区間賞に輝いた5区・野中恒亨(2年)、大会MVPの6区山本で追撃。7区平林は青学大の太田蒼生(4年)と同タイムの区間2位タイ、そして、上原が冷静に勝負を決めている。

新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。

前半戦から躍進の予感

  その勢いはとどまるところを知らない。今季は「歴史を変える挑戦~Ep.3~」を掲げた國學院大は、出雲で5年ぶり2回目、全日本を初制覇。すでに新たな歴史を刻んできたが、スローガンに込められたターゲットは箱根駅伝で初の総合優勝だ。 一般的に、学生駅伝「3冠」と表現されることが多い。しかし、前田康弘監督は全日本後、「出雲は出雲、全日本は全日本。一つひとつ全力で勝ちにいくと考えていて、2つ勝っただけです。箱根駅伝優勝を最大の目標にチームは動いていますので、気を抜かずに、またここからしっかり戦っていきたいと思います」。 今季は前半戦から躍進の予兆はあった。平林清澄(4年)が2月の大阪マラソンで、初マラソン日本最高記録と学生新記録。それを皮切りに、宮古島大学駅伝の完全優勝、日本学生ハーフでは、青木瑠郁(3年)が優勝し、辻原輝(2年)が5位に入る。各種ロードレースでも結果を残し続けてきた。 さらに昨季は故障に苦しんだ山本歩夢(4年)が復帰。走れなかった期間の取り組みで走りの内容も変わったと実感しており、山本は「膝下だけで走ってしまっていた部分がありました。しっかりハム(ストリングス)やお尻を使いながらうまく連動性も持たせることができるようになってきました」と今季の好走につながっている。 そして、何より選手層の厚みが違う。エントリーの16人で見ても、5000m13分台が10人、10000m29分切りが10人、ハーフ1時間3分切りが9人もいる。 新潟・妙高高原での2次合宿の30km走も大集団で行っていた。「30人ぐらいがAチームで練習をやったと思うのですが、過去最高ですね。あの人数でやることは普通ないですから」。指揮官もうなずいていた。 そんな充実の夏合宿を経て、迎えた駅伝シーズン。10月の出雲駅伝では4~6区の連続区間賞、中でも今季ブレイクしている上原琉翔(3年)が5区で先頭に立つと、アンカー・平林が駒大・篠原倖太朗(4年)との競り合いを制した。 11月の全日本でもアンカー勝負を制する。青学大に先行される流れだったが、出雲に続く区間賞に輝いた5区・野中恒亨(2年)、大会MVPの6区山本で追撃。7区平林は青学大の太田蒼生(4年)と同タイムの区間2位タイ、そして、上原が冷静に勝負を決めている。

復路逆転のシナリオ

出雲、全日本で2度の逆転シーンを演出した上原は1年時はケガがちだったが、昨年1年度は練習を継続。箱根こそ5区17位と苦しんだが、「3年生になって去年よりさらにレベルアップしたトレーニングを目指してやってきました。去年よりは確実に力がついていると思います」と主力に成長した。 オランダのナイメーヘン15kmロードレースでは出雲、全日本でやや苦戦した青木が4位と好走。長い距離に適性がある高山豪起(3年)や後村光星(2年)といった前回経験者がエントリーメンバーで計7人も残る。 練習から熾烈な争いで、「上原はみんな平林さんに勝とうという気持ちで臨んでいるので、本当にチームの力が上がったと感じます」と話す。 ただ、出雲、全日本と違い、箱根は20km超の10区間、“山”という特殊区間もある。初の頂へ、指揮官が語ったプランは出雲、全日本と同じ後半、つまり復路での逆転だ。 「僕らが青学さんと駒澤さんに勝つとしたら、多分復路逆転しかシナリオがないんですよ。相手がちょっと自信のない区間にウチは自信のある選手を置いて、プレッシャーかけていくという感じですかね」 さらに12月27日の早大競技会では、前回7区7位ながら、今回はエントリー外となった田中愛睦(2年)が10000mで自己記録更新の快走。國學院大勢が上位を占めており、チームの状態の良さの表れでもあるのだろう。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"] 前回はケガに苦しんだ山本歩夢。今回は区間賞の走りを誓う[/caption] 選手たちにも「3冠」ではなく、「一戦必勝」の考えが根づく。「一戦1勝だったり、勝ち切るだったり。みんな頭の片隅に置いて、やれているのでそれがうまく体現できていっています」と山本は言う。 自身も最後の箱根路で、「絶対区間賞を取って、チームの優勝の流れを引き寄せる走りがしたいです」と燃えている。 「幸せですよね。こういうチームの指揮を取れるなんてなかなかできないので。だから、本当感謝しかないですし、とにかく最後勝ちたいですよ」。前田監督も熱い思いをにじませる。 「歴史を変える挑戦」は、いよいよ最終章。その時がまもなく迫る。「箱根初優勝」、そしてその結果としての「3冠」を果たし、エピソード3を完結させる。 文/片井雅也

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