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2024.12.28

箱根駅伝Stories/“鉄紺の覚醒”掲げる東洋大 節目の20年連続シードへ「出し切った走り」
箱根駅伝Stories/“鉄紺の覚醒”掲げる東洋大 節目の20年連続シードへ「出し切った走り」

20年連続のシード獲得を最低限とする東洋大の選手たち

6人残る前回経験者

出雲は「収穫としては経験値を積めたことぐらい」と評価も手厳しかったが、視点を変えれば、箱根で大火傷をする前に課題を炙り出せたと前向きに捉えることもできる。全日本は、もちろん納得のいく結果には程遠かった。それでも、チームが好転するきっかけになったという。

「復帰まもない4年生たちが、全日本を機にだいぶ良くなってきました。それで、チームのムードも良くなってきました」。12月頭の時点で、指揮官はチーム状況をこう説明していた。

全日本で6区21位と本来の走りからは遠かった石田も、「悔しかった反面、1年以上駅伝に出られずにいたので。自分の中では大きな一歩を踏み出せました」と、決して下を向くことなく、箱根に向けて調整している。

12月に入り、前半戦に活躍した主力選手たちがようやく調子を上げてきた。10月に首のヘルニアの手術をした松井が、箱根を走れる目処が立ったのは大きい。また、ルーキーでは、松井の他に内堀勇、宮崎優、迎暖人がエントリーされた。若い力がチームを活気づける。

そして、前回4位のメンバーは6人残る。なかでも、5区10位の緒方澪那斗(3年)と6区8位の西村真周(同)の山を担った2人がいるのは、アドバンテージになるだろう。ハーフマラソンで1時間1分台の記録をもつ緒方は、平地の主要区間でも勝負できる力をつけた。

さらに、2区6位の梅崎、3区6位の小林、9区2位の吉田周(4年)、10区区間賞の岸本遼太郎(3年)と、いずれも主要区間で好走した選手たちが残っているのも大きい。

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前半戦の勢いを取り戻すことができれば、前回の再現はもちろん、さらに上位を狙える陣容は十分に築ける。

「20年連続のシード権は最低限。少しでも良い順位でゴールしたいです。4年間の締めくくりとなるので、後悔なく、しっかり出し切ったと思えるような走りをしたいと思います」。主将の梅崎は、このように決意を表明する。

出雲、全日本の結果から前評判が高くないのも事実。だが、前半戦で示したように、決して力がないわけではない。これまでも逆境で強さを見せてきたチームだ。得意とする箱根駅伝でこそ、鉄紺の底力を発揮するだろう。

箱根駅伝に向けて練習に励む東洋大の選手たち

文/和田悟志

新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。

躍動の前半戦

“鉄紺の再建”を掲げた昨シーズン、東洋大は、出雲駅伝7位、全日本大学駅伝14位と苦戦しながらも、箱根駅伝では4位と巻き返し、2006年の第82回大会から19年連続となるシード権を獲得した。 そして、今季は“鉄紺の覚醒”というスローガンを掲げ、昨季以上の結果を目指してきた。そのとおりに前半戦は躍動した。 まずは関東インカレ(1部)。10000mでは、石田洸介(4年)が28分08秒29の自己ベストで6位、小林亮太(同)も自己記録をマークし、2年連続入賞となる7位に入った。 ハーフマラソンでは、主将の梅崎蓮(4年)が2位に入り、3年連続で表彰台。薄根大河(2年)も4位と健闘を見せ、5000mではルーキーの松井海斗が5位、西村真周(3年)が7位に入った。 長距離3種目で複数入賞を果たしたうえに、新戦力の台頭もあり、全学年の選手がしっかりと活躍。一時期戦列を離れていた石田の復活は、何よりも明るい話題だった。 続く、6月の全日本大学駅伝選考会でも、鉄紺軍団がインパクトを残す。「『選考会にいるチームじゃないぞというところを見せられるような走りをしてこい』と言われており、チームに勢いをつける走りをしたかったです」。 ルーキーの松井が“攻め”のレースで1組1着を奪うと、2組では網本佳悟(3年)も1着でフィニッシュ。3組でも石田が続いた。総合2位通過だったものの、3組連続で組トップの活躍は、秋の飛躍を予感させた。 しかし、秋を迎えてからは、苦戦が続いている。「前半戦で頑張った選手に体調不良や故障があり、夏合宿を終えた時点で思うように足並みがそろわなかった」。酒井俊幸監督がこう話すように、万全な状態で駅伝シーズンに臨めなかった。 出雲駅伝は11位、全日本大学駅伝は13位と、上位争いに顔を出すこともできなかった。ただ、酒井監督は、苦戦を覚悟のうえで、両駅伝のオーダーを組んでいた。 「出雲は、3年生以下が新しい経験を積むというふうに戦術として決めました。全日本に関しては、遅れていた主力の4年生たちをしっかりスタートラインに立たせようと思いました」

6人残る前回経験者

出雲は「収穫としては経験値を積めたことぐらい」と評価も手厳しかったが、視点を変えれば、箱根で大火傷をする前に課題を炙り出せたと前向きに捉えることもできる。全日本は、もちろん納得のいく結果には程遠かった。それでも、チームが好転するきっかけになったという。 「復帰まもない4年生たちが、全日本を機にだいぶ良くなってきました。それで、チームのムードも良くなってきました」。12月頭の時点で、指揮官はチーム状況をこう説明していた。 全日本で6区21位と本来の走りからは遠かった石田も、「悔しかった反面、1年以上駅伝に出られずにいたので。自分の中では大きな一歩を踏み出せました」と、決して下を向くことなく、箱根に向けて調整している。 12月に入り、前半戦に活躍した主力選手たちがようやく調子を上げてきた。10月に首のヘルニアの手術をした松井が、箱根を走れる目処が立ったのは大きい。また、ルーキーでは、松井の他に内堀勇、宮崎優、迎暖人がエントリーされた。若い力がチームを活気づける。 そして、前回4位のメンバーは6人残る。なかでも、5区10位の緒方澪那斗(3年)と6区8位の西村真周(同)の山を担った2人がいるのは、アドバンテージになるだろう。ハーフマラソンで1時間1分台の記録をもつ緒方は、平地の主要区間でも勝負できる力をつけた。 さらに、2区6位の梅崎、3区6位の小林、9区2位の吉田周(4年)、10区区間賞の岸本遼太郎(3年)と、いずれも主要区間で好走した選手たちが残っているのも大きい。 前半戦の勢いを取り戻すことができれば、前回の再現はもちろん、さらに上位を狙える陣容は十分に築ける。 「20年連続のシード権は最低限。少しでも良い順位でゴールしたいです。4年間の締めくくりとなるので、後悔なく、しっかり出し切ったと思えるような走りをしたいと思います」。主将の梅崎は、このように決意を表明する。 出雲、全日本の結果から前評判が高くないのも事実。だが、前半戦で示したように、決して力がないわけではない。これまでも逆境で強さを見せてきたチームだ。得意とする箱根駅伝でこそ、鉄紺の底力を発揮するだろう。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"] 箱根駅伝に向けて練習に励む東洋大の選手たち[/caption] 文/和田悟志

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