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2024.12.27

箱根駅伝Stories/王座奪還を目指す駒大 世界を目指す取り組みと両立 「箱根の借りは箱根で」
箱根駅伝Stories/王座奪還を目指す駒大 世界を目指す取り組みと両立 「箱根の借りは箱根で」

王座奪還へ着々と戦力が整っている駒大

4人の3年生がそろい踏みなるか

駒大は今季の1歩目を出遅れていた。3冠を目指した張りつめた空気が解かれた1月、脚に痛みを訴える選手が続出したのだ。チームの空気を壊さないよう、ケガの申告を箱根駅伝後に遅らせた選手もいた。

そのスタートからすると、7~8月の鍛錬期は充実し、9月以降は個人レースで自己ベストがあちこちに飛び出し上昇ムード。出雲、全日本の戦いは大砲の佐藤を欠きながら、見どころを作る内容で2位。「春先の状況を考えたら成長だと思います」と篠原主将は言う。

チーム上昇の背景には、3年生カルテットの存在がある。伊藤蒼唯、山川拓馬、帰山侑大、そして佐藤。箱根駅伝では、それぞれに晴らしたい悔しさがある。

伊藤はチームでも一番練習する選手であり、今年は篠原との練習を志願。2月の丸亀ハーフマラソンで1時間1分16秒の快記録をはじめ、1年フル稼働した。全日本の3区で追い上げの起点となったが、「結局、区間賞が取れていないんです」と厳しい自己採点だ。

1年時の6区区間賞が輝くが、1年前はインフルエンザの影響が考慮され、出走メンバーから外れている。「箱根は一番得意な距離でもあり、チームのポジション的にも区間賞は取らなくてはいけない」と決意がにじむ。

山川は1月からケガの治療に時間を割き、7月に10000mの自己新で復帰。真にスイッチが入ったのは9月からだ。全日本の策長区間・8区での目の覚めるような追い上げ。日本人歴代2位のタイムにより、次元を一つ飛び越えた感がある。

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それでも「途中で明らかにペースが落ち、まだまだ改善するところがあります」と、まったく満足していない。「もともと『山の神になりたい』と思って駒大に入りました。1年時は納得できる走りではなく、2年時は4区に回りチームに負荷をかけてしまいました。箱根の借りは箱根で返すしかない」と力強い。

帰山は上尾ハーフで1時間1分59秒を出し、チームに上昇気流を生み出した。もともとあるスピードと、下りへの適性に加え、長い距離に進境を見せる。1年前の箱根は区間12位の悔しさを置いてきたが、その6区にこだわっていない。

実戦から長く離れている佐藤圭汰がカギを握る

復帰へ調整中の佐藤が、思い出すのは1年前の3区の悔しさ。故障離脱中のチームを支えた仲間へ、感謝の気持ち。積み重なった思いを吐き出す機会を待っている。

山川、伊藤、帰山の3人が特殊区間の5、6区経験者であることが、作戦にバリエーションを生む。3年生カルテットが駅伝でそろい踏みしたことはまだない。それが叶えば大きな推進力になり、駒大の王座奪還が近づくだろう。

文/奥村 崇

新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。

駒大としての矜持

1年前の大手町で、駒大・藤田敦史監督は「これだけ強いチームを預かって優勝させてあげられず、私の未熟さを感じました」と話した。ただ、落胆と言うには違う、ある種の信念が毅然とした表情に宿っていた。 昨年度のチームは、出雲駅伝、全日本大学駅伝を連覇。1区からトップを譲らない完全優勝を果たした。両駅伝の大会記録は今も至近3年のうちに駒大が残したものだ。 しかし、箱根駅伝になると、大会新記録の変遷史は青学大が塗り固めている。「20km以上の距離で10区間をそろえることにおいて、私たちも選手層を作り込んでいかなければなりません。年間をとおしたスタミナ作りも。青学大とはそこの差が出てしまいました」と藤田監督は話す。 箱根駅伝に勝つことだけが目的なら、そこに注力さえすればいい。しかし、駒大のスタンスは違う。「我々は世界を目指す選手を育成する目的も、同時進行でやっています。箱根駅伝だけを目的とする考えはあまり持ちたくない」。 出雲、全日本の距離と区間数であれば、その両立は、もう十分な成功を収めてきた。「出雲、全日本の区間の距離であれば二兎を追い、トラックの強化と兼ねられます。これが箱根駅伝の20km超になると、そこへ向けての作り方は根本的な部分で変えていかなくてはなりません」。問題は箱根駅伝だ。 「ただ、私たちは『箱根で負けたから、これからはスタミナの練習を増やしていくぞ』と安易な考え方はあまりしていきたくないのです」。そこに駒大の矜持がある。 世界を目指す歩みとの両立は、今季の場合、篠原倖太朗(4年)の活動に象徴された。国内外のレースに積極的に参加。5月の日本選手権10000mは自己新で入賞。9月に5000m13分15秒70の屋外の日本人学生最高を手にした。 篠原の秋以降は、翌年の世界選手権を見据えた計画に、学生駅伝を並走させることになる。9月のYogibo Athletics Challeng Cup 2024の5000mを経て、10月以降は、出雲駅伝6区3位(10.2km)、全日本大学駅伝7区(17.6km)区間賞、八王子ロングディスタンス10000m。異なる競技と距離に出場してきた。 「世界を目指す取り組みはブラさずやりたかった」と話す篠原には、Yogiboと八王子の個人レースは外せない試合。両駅伝と合わせた4戦のうち、出雲と八王子が不本意な結果ではあった。篠原はそれぞれ「準備する時間の不足」と分析したが、ハードスケジュールに取り組んだこと自体、ネガティブに捉えていない。 20km以上のいわゆる“箱根ディスタンス”に照準を合わせ、年間をとおして練習を編み込んできたチーム、選手がほとんど。篠原の取り組みは、そのルートからは外れている。外れているが、長距離走の大枠の中で両立することが本分だ。 一方、ショートトラック5000mで13分09秒45をマークした佐藤圭汰(3年)は、ケガで長期離脱。10月から復帰へ向け少しずつ練習の強度を上げている。駅伝を復帰戦にするかたちでの「両立」もあり得そうだ。

4人の3年生がそろい踏みなるか

駒大は今季の1歩目を出遅れていた。3冠を目指した張りつめた空気が解かれた1月、脚に痛みを訴える選手が続出したのだ。チームの空気を壊さないよう、ケガの申告を箱根駅伝後に遅らせた選手もいた。 そのスタートからすると、7~8月の鍛錬期は充実し、9月以降は個人レースで自己ベストがあちこちに飛び出し上昇ムード。出雲、全日本の戦いは大砲の佐藤を欠きながら、見どころを作る内容で2位。「春先の状況を考えたら成長だと思います」と篠原主将は言う。 チーム上昇の背景には、3年生カルテットの存在がある。伊藤蒼唯、山川拓馬、帰山侑大、そして佐藤。箱根駅伝では、それぞれに晴らしたい悔しさがある。 伊藤はチームでも一番練習する選手であり、今年は篠原との練習を志願。2月の丸亀ハーフマラソンで1時間1分16秒の快記録をはじめ、1年フル稼働した。全日本の3区で追い上げの起点となったが、「結局、区間賞が取れていないんです」と厳しい自己採点だ。 1年時の6区区間賞が輝くが、1年前はインフルエンザの影響が考慮され、出走メンバーから外れている。「箱根は一番得意な距離でもあり、チームのポジション的にも区間賞は取らなくてはいけない」と決意がにじむ。 山川は1月からケガの治療に時間を割き、7月に10000mの自己新で復帰。真にスイッチが入ったのは9月からだ。全日本の策長区間・8区での目の覚めるような追い上げ。日本人歴代2位のタイムにより、次元を一つ飛び越えた感がある。 それでも「途中で明らかにペースが落ち、まだまだ改善するところがあります」と、まったく満足していない。「もともと『山の神になりたい』と思って駒大に入りました。1年時は納得できる走りではなく、2年時は4区に回りチームに負荷をかけてしまいました。箱根の借りは箱根で返すしかない」と力強い。 帰山は上尾ハーフで1時間1分59秒を出し、チームに上昇気流を生み出した。もともとあるスピードと、下りへの適性に加え、長い距離に進境を見せる。1年前の箱根は区間12位の悔しさを置いてきたが、その6区にこだわっていない。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"] 実戦から長く離れている佐藤圭汰がカギを握る[/caption] 復帰へ調整中の佐藤が、思い出すのは1年前の3区の悔しさ。故障離脱中のチームを支えた仲間へ、感謝の気持ち。積み重なった思いを吐き出す機会を待っている。 山川、伊藤、帰山の3人が特殊区間の5、6区経験者であることが、作戦にバリエーションを生む。3年生カルテットが駅伝でそろい踏みしたことはまだない。それが叶えば大きな推進力になり、駒大の王座奪還が近づくだろう。 文/奥村 崇

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