2024.12.24
積極性に粘り強さを上乗せ
とはいえ、「練習の考案はやはり知識が浅く、みんなでアイデアを出して真剣には作っていたのですが、たいしたメニューしか作れませんでした。そこはやはり指導者が頼りになるという思いがありましたね」と安藤主将は回顧する。
そこに、髙林監督の就任だ。選手たちが困っていたトレーニング立案に、「なんとかしましょう」と手を貸すあたりからスタート。6月までは来るレース一つひとつへの対応に追われたが、7月から腰を据えた強化に入った。
7~8月。そこでの「脚作り」が、新指揮官の持ち込んだコンセプト。アップダウンのあるコースを使い、カーボンプレートが入っていないシューズで負荷をかけていく。
強靭な脚は、予選会で酷暑の中で粘り抜いた走りにつながった。これまでのスタイルでもある「積極性」に、「粘り強さ」を上乗せしたのが、今年の立教大だと言える。
もう一つの特色が、全員参加の夏合宿。レベルに応じてグループを4つに分けており、そのうちC・Dのグループを引っ張った加藤広人副キャプテン(4年)が合宿地で話していた。「今年は同じ合宿に参加することで、意識高くやれている印象です」。
固定メンバー以外が醸し出す選手層が、今年は違う。全日本大学駅伝は主要メンバー中心の配置にこそなったが、伸びてきた下級生たちを起用するプランも温めていた。
合宿には関東インカレ2部1500m優勝の青木龍翔(2年)も帯同し、別メニューに取り組んでいた。9月の日本インカレ1500mは2位と躍動している。
選手たちはうねりの中を進んできた。指導体制の急ハンドルにも、「異なる知識を吸収できて引き出しが多くなりました」と林虎大朗(4年)。積極的に受け入れ、糧にする。
鍛錬の夏を挟んで、ひときわ力を伸ばしたのが3年の馬場賢人だ。予選会は積極的な走りで勝負を挑み、「後半は粘り倒すだけでした」と出し切った。「そんなに疲労を感じなくて、すぐ調整に入れました」と全日本も7区4位の快走。シード争いの集団に後ろから追いつき、競り合いをリードした。
「箱根は全日本の応用。さらにレベルアップしてつなげていければ」。馬場が流れを生み出す役目を担う。
負けん気の強い國安広人(3年)が馬場の躍進に刺激を受けている。「予選トップ通過は良かったですが、自分の走りには納得していません」と本戦をにらむ。
林も「夏の練習を一つもこぼさずにやれました」と充実し、持ち味のスピードにタフネスを積み上げた。予選会は冷静なペース判断で後半に押し上げ、全日本は疲労が残る中での粘り。「チームに貢献できる区間であれば上りでも下りでもいきます。単独走の力もついてきています」と強調する。
復路のポイントを担いそうな安藤は、「シード権につながる走りをしたいです。これまで本戦で貢献できていませんが、当時と違い粘り強さが確実についています。改善した動きで走れている姿を見せたいです」と力を込める。
63年ぶりとなるシード権獲得へ。時代を作ってきた選手たちが、その証を残す。
文/奥村 崇
自主自律の気風と大学の支援
箱根駅伝に55年ぶりの復帰から3大会連続出場となる立教大が、注目を集めている。髙林祐介監督が2024年4月に就任して以来、望んだ成果を次々とつかみ取り、活力に満ちているのだ。 まず、6月に全日本大学駅伝関東地区選考会を勝ち上がった。初の伊勢路行きを決める話題性があったものの、1年前の惜しい次点での落選を経て、ここは想定内の“ワン・ステップアップ”だろう。 特に目を見張ったのは、夏の鍛錬期を越えてからの勢いだ。10月に箱根駅伝予選会を総合トップで通過。約2週間後の全日本大学駅伝では7位に食い込み、初出場にしてシード権獲得を果たした。 予選会は3位通過を目標とし、全日本は目標の7位にピタリの到達だったと、髙林監督は言う。そのような水準に目標を置けるチーム力を備えていた、と捉える必要がある。外からは驚きの快進撃に映ったが、現場では日に日に手応えを得ていたと聞く。 髙林監督は就任して間もないころ、シード権獲得の目標を「口では言っていてもなかなか難しい」と感じていたそうだ。そのシード権はいま、掛け声だけではなくなり、目視できる場所にある。 今季の立教大学は、なぜこれほど快調なのか。真っ先に、髙林監督の手腕が挙がるのは当然だろう。キャリア初の監督業で、就任1年未満の中で成果を上げ続けているのだ。 しかし、それだけでは決してなく、さまざまな要因が複合し、噛み合っていった様子も見えてくる。下地はあった。まず、部員たちの足元を支える、大学の支援だ。 創立150周年事業の一環として強化に着手し、陸上部に専任の長距離監督を初めて招へい。寮など環境を整備するなどといった支援と、選手たちとの距離が近い。短距離や中距離などが関東インカレ2部で活躍してきた土壌もある。 学び舎には「自主自律」の気風が息づき、キャンパスと体育会の間に隔たりはあまり感じられない。安藤圭佑主将(4年)は「僕たちが入学した時点ですでに、自分で考えて行動する雰囲気はありました」と言う。予選会で集団走を行わない戦い方は、自律できる選手たちが作ってきたスタイルでもある。 プロジェクトは順調に成果を上げ、大学150周年の2024年より1年早く本戦に復帰。大会史上最長ブランクを克服した伝統校に、スポットライトが当たった。 ところが昨年度の10月、前監督の解任を受けて3月までの約半年、部長が監督を代行。学生が自主運営していた期間があった。監督不在で予選会を突破し、本戦は学生たち自ら調整し、区間配置なども話し合って決めている。 考えて行動できる立教大の選手たちだからこそ、自主運営の期間を過ごせたのだろう。組織運営では例えば、小グループを作り、グループ長が集まって会議。就任して間もない髙林監督が「驚きますよ。こちらから投げかけると、さっと意見がまとまって上がってきます。民主的です」と驚くほどだ。積極性に粘り強さを上乗せ
とはいえ、「練習の考案はやはり知識が浅く、みんなでアイデアを出して真剣には作っていたのですが、たいしたメニューしか作れませんでした。そこはやはり指導者が頼りになるという思いがありましたね」と安藤主将は回顧する。 そこに、髙林監督の就任だ。選手たちが困っていたトレーニング立案に、「なんとかしましょう」と手を貸すあたりからスタート。6月までは来るレース一つひとつへの対応に追われたが、7月から腰を据えた強化に入った。 7~8月。そこでの「脚作り」が、新指揮官の持ち込んだコンセプト。アップダウンのあるコースを使い、カーボンプレートが入っていないシューズで負荷をかけていく。 強靭な脚は、予選会で酷暑の中で粘り抜いた走りにつながった。これまでのスタイルでもある「積極性」に、「粘り強さ」を上乗せしたのが、今年の立教大だと言える。 もう一つの特色が、全員参加の夏合宿。レベルに応じてグループを4つに分けており、そのうちC・Dのグループを引っ張った加藤広人副キャプテン(4年)が合宿地で話していた。「今年は同じ合宿に参加することで、意識高くやれている印象です」。 固定メンバー以外が醸し出す選手層が、今年は違う。全日本大学駅伝は主要メンバー中心の配置にこそなったが、伸びてきた下級生たちを起用するプランも温めていた。 合宿には関東インカレ2部1500m優勝の青木龍翔(2年)も帯同し、別メニューに取り組んでいた。9月の日本インカレ1500mは2位と躍動している。 選手たちはうねりの中を進んできた。指導体制の急ハンドルにも、「異なる知識を吸収できて引き出しが多くなりました」と林虎大朗(4年)。積極的に受け入れ、糧にする。 鍛錬の夏を挟んで、ひときわ力を伸ばしたのが3年の馬場賢人だ。予選会は積極的な走りで勝負を挑み、「後半は粘り倒すだけでした」と出し切った。「そんなに疲労を感じなくて、すぐ調整に入れました」と全日本も7区4位の快走。シード争いの集団に後ろから追いつき、競り合いをリードした。 「箱根は全日本の応用。さらにレベルアップしてつなげていければ」。馬場が流れを生み出す役目を担う。 負けん気の強い國安広人(3年)が馬場の躍進に刺激を受けている。「予選トップ通過は良かったですが、自分の走りには納得していません」と本戦をにらむ。 林も「夏の練習を一つもこぼさずにやれました」と充実し、持ち味のスピードにタフネスを積み上げた。予選会は冷静なペース判断で後半に押し上げ、全日本は疲労が残る中での粘り。「チームに貢献できる区間であれば上りでも下りでもいきます。単独走の力もついてきています」と強調する。 復路のポイントを担いそうな安藤は、「シード権につながる走りをしたいです。これまで本戦で貢献できていませんが、当時と違い粘り強さが確実についています。改善した動きで走れている姿を見せたいです」と力を込める。 63年ぶりとなるシード権獲得へ。時代を作ってきた選手たちが、その証を残す。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"] 11月の全日本大学駅伝に初出場ながらシード権を獲得。安藤圭佑主将がフィニッシュテープを切った[/caption] 文/奥村 崇
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