2024.12.22
新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。
トラックシーズンで大車輪の活躍
大学最後のシーズンで、平林樹(4年)はキャプテンとして力強くチームを牽引してきた。櫛部静二監督が「言葉が先行してチームを引っ張るタイプではありませんが、姿勢で見せるキャプテン」と言うように、平林は「自分からいろいろこうしてほしいと言うのではなく、個人個人が自分の目標に向かって必要なことを各自で考え、最大限に努力できるチームを作りたかった」と、チームメイトの自主性を重んじた。
自身もまずは自分の競技力向上に目を向け、とくに前期のトラックシーズンで大車輪の活躍を見せた。5月に5000mで13分39秒77の自己ベストをマークすると、5日後の関東インカレ1部10000mではチームメイトのヴィクター・キムタイ(3年)に競り勝って2位。タイムも28分03秒13と、46秒以上の大幅自己新で27分台に迫った。櫛部監督は「本人の自信にもなったと思いますが、チームとしても非常に盛り上がった。キャプテンが強さを見せたことは、前期の象徴的なシーンでした。競技に対して熱心で、走ること以外にも真剣に取り組む。そういう姿は他の学生たちの見本になっています」と平林を高く評価する。
しかし、夏を前にその勢いに陰りが見え始めた。連戦の疲労で練習をこなせなくなり、夏合宿に入ると、「腸脛靭帯を少し痛めて、8月はジョグしかできなかった」と明かす。結局、合宿中は調子が上がらないままだった。
9月半ばの合宿明けとともに身体が徐々に復調し、「夏合宿をしっかりこなせなかった不安がある中、でも、走れてきたから大丈夫だろうと、半々ぐらいの気持ちで臨んだ」のが出雲駅伝だ。4区に起用された出雲は、3区区間賞の快走でチームを12位から5位に押し上げたキムタイからタスキを受けた後、平林は区間9位で順位を1つ落としてしまう。
「調子は悪くなかったけれど、4位が見える位置にいたので力みがありましたし、何となく『やるぞ』という気持ちになれていなかった。だいぶ良くない走りをしてしまいました」
今季の城西大は3年生に実力者が多く、なかでも斎藤将也(3年)とキムタイは箱根駅伝で1年時から2年連続で2区、3区を担ってきたダブルエースだ。平林は2人を「駅伝になったら頼もしい存在」と絶対的な信頼を置きながらも、4年生として「頼もしいで終わるのはいかがなものか」という複雑な思いを持っている。
「先輩が後輩に頼り切っているだけではチームとしても良くないですし、僕も将也やヴィクターに負けたくない、負けていてはいけないという気持ちが強いです。前半シーズンの走りから言えば、自分もやってやれないことはない。3人でチームを引っ張っていけたらなと思っています」
その根底には「4年生がしっかりしないといけない」という考えがある。前回3位と躍進した箱根では、山本唯翔(SUBARU)や山中秀真(トーエネック)、野村颯斗(中国電力)という4年生が往路でチームを勢いづけた。当時の強力な最上級生の印象が強く残っているのかもしれない。
トラックシーズンで大車輪の活躍
大学最後のシーズンで、平林樹(4年)はキャプテンとして力強くチームを牽引してきた。櫛部静二監督が「言葉が先行してチームを引っ張るタイプではありませんが、姿勢で見せるキャプテン」と言うように、平林は「自分からいろいろこうしてほしいと言うのではなく、個人個人が自分の目標に向かって必要なことを各自で考え、最大限に努力できるチームを作りたかった」と、チームメイトの自主性を重んじた。 自身もまずは自分の競技力向上に目を向け、とくに前期のトラックシーズンで大車輪の活躍を見せた。5月に5000mで13分39秒77の自己ベストをマークすると、5日後の関東インカレ1部10000mではチームメイトのヴィクター・キムタイ(3年)に競り勝って2位。タイムも28分03秒13と、46秒以上の大幅自己新で27分台に迫った。櫛部監督は「本人の自信にもなったと思いますが、チームとしても非常に盛り上がった。キャプテンが強さを見せたことは、前期の象徴的なシーンでした。競技に対して熱心で、走ること以外にも真剣に取り組む。そういう姿は他の学生たちの見本になっています」と平林を高く評価する。 しかし、夏を前にその勢いに陰りが見え始めた。連戦の疲労で練習をこなせなくなり、夏合宿に入ると、「腸脛靭帯を少し痛めて、8月はジョグしかできなかった」と明かす。結局、合宿中は調子が上がらないままだった。 9月半ばの合宿明けとともに身体が徐々に復調し、「夏合宿をしっかりこなせなかった不安がある中、でも、走れてきたから大丈夫だろうと、半々ぐらいの気持ちで臨んだ」のが出雲駅伝だ。4区に起用された出雲は、3区区間賞の快走でチームを12位から5位に押し上げたキムタイからタスキを受けた後、平林は区間9位で順位を1つ落としてしまう。 「調子は悪くなかったけれど、4位が見える位置にいたので力みがありましたし、何となく『やるぞ』という気持ちになれていなかった。だいぶ良くない走りをしてしまいました」 今季の城西大は3年生に実力者が多く、なかでも斎藤将也(3年)とキムタイは箱根駅伝で1年時から2年連続で2区、3区を担ってきたダブルエースだ。平林は2人を「駅伝になったら頼もしい存在」と絶対的な信頼を置きながらも、4年生として「頼もしいで終わるのはいかがなものか」という複雑な思いを持っている。 「先輩が後輩に頼り切っているだけではチームとしても良くないですし、僕も将也やヴィクターに負けたくない、負けていてはいけないという気持ちが強いです。前半シーズンの走りから言えば、自分もやってやれないことはない。3人でチームを引っ張っていけたらなと思っています」 その根底には「4年生がしっかりしないといけない」という考えがある。前回3位と躍進した箱根では、山本唯翔(SUBARU)や山中秀真(トーエネック)、野村颯斗(中国電力)という4年生が往路でチームを勢いづけた。当時の強力な最上級生の印象が強く残っているのかもしれない。4年生としての覚悟
今年11月の全日本大学駅伝では、5区に林晃耀、7区に久保出雄太、アンカーの8区に平林と、4年生3人が後半区間に起用された。平林はレース前、4年生だけのグループラインで、「俺たち4年生がやらないと」というメッセージを伝えたという。 「今回の全日本で言えば、流れを作るのはヴィクターや将也。その流れを確実なものにして、順位を決めるのは後半区間に入った4年生の仕事。そういう意味でも4年生のがんばりが重要になると思っていました」 実際、城西大は2区終了時点で10位とやや出遅れたものの、3区のキムタイが5人抜き、4区の斎藤が3人抜きを達成。2位で前半区間を終えた。しかし、林が2つ、久保出が1つ順位を落とし、平林も5位をキープできずに6位でフィニッシュ。平林は「区間順位は5位ということで最低限の走りはできましたが、チーム目標は5位だったので、主将として、アンカーとしての仕事は果たせませんでした」と悔しさを滲ませる。 それでも、「自分たちがやっていることの方向性は間違っていない」という手応えも得られた。 箱根駅伝では前々回、前回とともに9区を担い、区間8位、10位と今いる順位をしっかりキープしたが、自身には「全体を通して納得のいく入りができていない」という思いがある。 最後となる3度目の箱根は、櫛部監督が「チームの3本柱の1人ですので、主要区間を走ってもらいたい。往路を考えています」と語るように初の往路での出走が有力。平林は「前回の往路の選手たち同様、しっかりとチームの順位を決める走りをしていきたいです」と静かに闘志を燃やす。 「自分としては、往路ならどこでも走れる準備をしてきたつもりですが、1区、3区、4区あたりなら自分の力を一番出せると思っています。4位以上というチーム目標のためにも、区間3位以上を目指していきたいです」 平林がどんな大学4年間を過ごしてきたのか。それを証明する集大成の時が近づいてきた。 [caption id="attachment_156366" align="alignnone" width="800"]
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