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2024.11.22

第101回箱根駅伝シンポジウム開催!世界を知る武井氏、尾方氏、諏訪氏、中本氏が語る「箱根路と世界」
第101回箱根駅伝シンポジウム開催!世界を知る武井氏、尾方氏、諏訪氏、中本氏が語る「箱根路と世界」

第101回箱根駅伝シンポジウムの様子

第101回箱根駅伝を前に、大会への機運を高めるべく「第101回箱根駅伝シンポジウム」が11月22日、発着点となる東京・大手町のよみうりホールで行われた。

パネリストは武井隆次氏(元エスビー食品監督)、尾方剛氏(広島経大監督)、諏訪利成氏(上武大監督)、中本健太郎氏(安川電機監督)の4名。関東学連副会長の大後栄治氏と、日本テレビアナウンサーの蛯原哲氏がコーディネーター役を務めた。

今年のメインテーマは「箱根路と世界」。大会創始者の1人、金栗四三氏が掲げた「箱根駅伝から世界へ」という大会の主題を体現した面々が語り合う。

最初のテーマは「私の箱根駅伝」。

早大時代に箱根駅伝で4年連続区間賞の偉業を成し遂げた武井氏は、2002年釜山アジア大会で銅メダルを獲得している。

早大入学時は「箱根駅伝の魅力をわかっていなかった状態」だったが、1区、1区、7区、4区と異なる区間で区間賞を獲得。エース区間2区の出走経験がないことについては、「スロースタートで、エントリーの時には2区を任せられるほどの調子ではなかった」そうで、「2区を走らなかったのでダメですね」と笑う。

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尾方氏は山梨学大2年だった70回大会で10区区間賞、優勝テープを切った経験を持つ。

1年時はケガが多く、大学で初めての大きな舞台が箱根駅伝。前日の夜に当時の上田誠仁監督から「10区、いけるか?」と電話があり、「いけます」と答えたという。「純粋に大舞台で走れる楽しさ、うれしさが印象に残っていて、それを味わいながら走りました」。

箱根路を走ったのはこの1度きり。全身脱毛症やケガなどもあり、「いいこともありましたが、苦しいことのほうが多かった」4年間だったと振り返る。それでも、中国電力ではマラソンで世界へと飛躍。05年ヘルシンキ世界選手権で銅メダル、07年大阪世界選手権5位入賞を果たした。

東海大時代に3度の箱根駅伝出場経験を持つ諏訪氏も、マラソンで04年アテネ五輪6位入賞を成し遂げている。

初めて箱根路を走った2年時は4区を務めたが、「中止になるんじゃないかというぐらいに風が吹いていた」という。「あの時以上の緊張はいまだにない」と言うほどの不安の中で、「中止にならないかな」と本気で思ったエピソードを紹介する。

また、「普段のレースは何十人と一緒に走りますが、1対1で走れるのが駅伝」。4年時には格上だった日大の山本祐樹選手に挑むべく、スタート直前に腕時計を外して、走り出したという。「一緒に走る喜びを時計にも邪魔されたくないという思いだった」ことを明かした。

拓大4年時に箱根駅伝7区に出走経験がある中本氏は、12年ロンドン五輪6位、13年モスクワ世界選手権5位と、世界大会2年連続で入賞を遂げたマラソンキャリアの持ち主。「華やかな実績を持つ先輩方とは比べようもないですが、こういうキャリアの選手でも世界で戦ったということを、見てほしい」と言う。

次のテーマは「世界」。武井氏は、当時の瀬古利彦監督から「口を開けば『箱根駅伝は通過点、世界を目指せ』と言われていました」。そして、箱根駅伝を目指す中での練習量をやることは、「将来につながっています」。

尾方氏は学生時代は「世界は現実味のないもの」だったが、中国電力入社後は「結果を残さないとクビになる」という実業団の厳しさの中で、「自分にはマラソンしかない」と活路を見出した。そして、2002年の福岡国際で優勝争いをできたことが、「マラソンなら世界と勝負できる」と意識したきっかけになったという。

また、「箱根駅伝を目指す中でマラソン練習が自然とできていること、苦しい、悔しい思い、華やかな舞台で走れた経験を大学時代にできたからこそ、世界で走れたと思っています」と続けた。

諏訪氏は学生時代、世界というよりも「マラソンをどうしても走りたかった」。そのために、「一番近いのは箱根駅伝を走ること」と考え、「とにかく地道に、コツコツと上を目指してやっていました」。

日清食品入社後、「商品は店頭に並ばなければ廃棄される。いくらいい練習をしても、目立たなければ意味がない。見てもらえるためにはレベルの高い大会に出ていくことが大事」と感じ、世界を志したという。

中本氏は、「学生時代から長い距離を走っていたことで、実業団に入ってからの距離走が苦にならなかったという。「ベースがそこでできていたのかな」と振り返る。

そんな中本氏のエピソードに対し、大後氏が「拓大が夏合宿でトラックで30000mをやっていたことを思い出しました」と明かすと、うなずいた中本氏は「75周です」と苦笑いと浮かべた。

このほか、「パリ五輪で見えたもの」では、レースのテレビ解説を務めた尾方氏が、拓大出身の赤﨑暁(九電工)がマラソンで6位に入賞したことについて、「途中、日本人がトップを走る映像はなかなか見られない。それで6位入賞は良かった」と評価。今後は、「世界から評価されるのはメダリスト。入賞で満足するのではなく、メダルを取る、メダルを目指す選手の育成、モチベーション作りをしないといけない」と語った。

最後のテーマ「101回大会の見どころ」では、武井氏は「三強それぞれの強み」、尾方氏は「3強・3冠」、諏訪氏「10人目」、中本氏「三冠vs王者」、大後氏は「初優勝」とフリップに記す。

青学大、駒大、國學院大が中心と見られる優勝争いをそれぞれに占いつつ、諏訪氏は「メンバー争いを勝って勢いがあるのか、それともメンバー争いで疲れているのか。それが優勝争い、シード争いのプレッシャーの中でどれだけ力を発揮できるのかを見てみたい」と話した。

そして、101回大会に向けて、「ブレーキや棄権のない、ハイレベルの熱い戦いを期待したい」と武井氏。尾方氏は「昨年の2区、3区のしびれる走りを全区間見られることを期待したい」と続ける。

諏訪氏も「世界に行きたいという選手が1人でも多く出てきてほしい」と言えば、中本氏は「一人ひとりが主役になれる大会。全選手に頑張ってほしい」とエールを送った。

第101回箱根駅伝を前に、大会への機運を高めるべく「第101回箱根駅伝シンポジウム」が11月22日、発着点となる東京・大手町のよみうりホールで行われた。 パネリストは武井隆次氏(元エスビー食品監督)、尾方剛氏(広島経大監督)、諏訪利成氏(上武大監督)、中本健太郎氏(安川電機監督)の4名。関東学連副会長の大後栄治氏と、日本テレビアナウンサーの蛯原哲氏がコーディネーター役を務めた。 今年のメインテーマは「箱根路と世界」。大会創始者の1人、金栗四三氏が掲げた「箱根駅伝から世界へ」という大会の主題を体現した面々が語り合う。 最初のテーマは「私の箱根駅伝」。 早大時代に箱根駅伝で4年連続区間賞の偉業を成し遂げた武井氏は、2002年釜山アジア大会で銅メダルを獲得している。 早大入学時は「箱根駅伝の魅力をわかっていなかった状態」だったが、1区、1区、7区、4区と異なる区間で区間賞を獲得。エース区間2区の出走経験がないことについては、「スロースタートで、エントリーの時には2区を任せられるほどの調子ではなかった」そうで、「2区を走らなかったのでダメですね」と笑う。 尾方氏は山梨学大2年だった70回大会で10区区間賞、優勝テープを切った経験を持つ。 1年時はケガが多く、大学で初めての大きな舞台が箱根駅伝。前日の夜に当時の上田誠仁監督から「10区、いけるか?」と電話があり、「いけます」と答えたという。「純粋に大舞台で走れる楽しさ、うれしさが印象に残っていて、それを味わいながら走りました」。 箱根路を走ったのはこの1度きり。全身脱毛症やケガなどもあり、「いいこともありましたが、苦しいことのほうが多かった」4年間だったと振り返る。それでも、中国電力ではマラソンで世界へと飛躍。05年ヘルシンキ世界選手権で銅メダル、07年大阪世界選手権5位入賞を果たした。 東海大時代に3度の箱根駅伝出場経験を持つ諏訪氏も、マラソンで04年アテネ五輪6位入賞を成し遂げている。 初めて箱根路を走った2年時は4区を務めたが、「中止になるんじゃないかというぐらいに風が吹いていた」という。「あの時以上の緊張はいまだにない」と言うほどの不安の中で、「中止にならないかな」と本気で思ったエピソードを紹介する。 また、「普段のレースは何十人と一緒に走りますが、1対1で走れるのが駅伝」。4年時には格上だった日大の山本祐樹選手に挑むべく、スタート直前に腕時計を外して、走り出したという。「一緒に走る喜びを時計にも邪魔されたくないという思いだった」ことを明かした。 拓大4年時に箱根駅伝7区に出走経験がある中本氏は、12年ロンドン五輪6位、13年モスクワ世界選手権5位と、世界大会2年連続で入賞を遂げたマラソンキャリアの持ち主。「華やかな実績を持つ先輩方とは比べようもないですが、こういうキャリアの選手でも世界で戦ったということを、見てほしい」と言う。 次のテーマは「世界」。武井氏は、当時の瀬古利彦監督から「口を開けば『箱根駅伝は通過点、世界を目指せ』と言われていました」。そして、箱根駅伝を目指す中での練習量をやることは、「将来につながっています」。 尾方氏は学生時代は「世界は現実味のないもの」だったが、中国電力入社後は「結果を残さないとクビになる」という実業団の厳しさの中で、「自分にはマラソンしかない」と活路を見出した。そして、2002年の福岡国際で優勝争いをできたことが、「マラソンなら世界と勝負できる」と意識したきっかけになったという。 また、「箱根駅伝を目指す中でマラソン練習が自然とできていること、苦しい、悔しい思い、華やかな舞台で走れた経験を大学時代にできたからこそ、世界で走れたと思っています」と続けた。 諏訪氏は学生時代、世界というよりも「マラソンをどうしても走りたかった」。そのために、「一番近いのは箱根駅伝を走ること」と考え、「とにかく地道に、コツコツと上を目指してやっていました」。 日清食品入社後、「商品は店頭に並ばなければ廃棄される。いくらいい練習をしても、目立たなければ意味がない。見てもらえるためにはレベルの高い大会に出ていくことが大事」と感じ、世界を志したという。 中本氏は、「学生時代から長い距離を走っていたことで、実業団に入ってからの距離走が苦にならなかったという。「ベースがそこでできていたのかな」と振り返る。 そんな中本氏のエピソードに対し、大後氏が「拓大が夏合宿でトラックで30000mをやっていたことを思い出しました」と明かすと、うなずいた中本氏は「75周です」と苦笑いと浮かべた。 このほか、「パリ五輪で見えたもの」では、レースのテレビ解説を務めた尾方氏が、拓大出身の赤﨑暁(九電工)がマラソンで6位に入賞したことについて、「途中、日本人がトップを走る映像はなかなか見られない。それで6位入賞は良かった」と評価。今後は、「世界から評価されるのはメダリスト。入賞で満足するのではなく、メダルを取る、メダルを目指す選手の育成、モチベーション作りをしないといけない」と語った。 最後のテーマ「101回大会の見どころ」では、武井氏は「三強それぞれの強み」、尾方氏は「3強・3冠」、諏訪氏「10人目」、中本氏「三冠vs王者」、大後氏は「初優勝」とフリップに記す。 青学大、駒大、國學院大が中心と見られる優勝争いをそれぞれに占いつつ、諏訪氏は「メンバー争いを勝って勢いがあるのか、それともメンバー争いで疲れているのか。それが優勝争い、シード争いのプレッシャーの中でどれだけ力を発揮できるのかを見てみたい」と話した。 そして、101回大会に向けて、「ブレーキや棄権のない、ハイレベルの熱い戦いを期待したい」と武井氏。尾方氏は「昨年の2区、3区のしびれる走りを全区間見られることを期待したい」と続ける。 諏訪氏も「世界に行きたいという選手が1人でも多く出てきてほしい」と言えば、中本氏は「一人ひとりが主役になれる大会。全選手に頑張ってほしい」とエールを送った。

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