2024.11.22
男子3000m障害日本記録保持者で、今夏のパリ五輪8位入賞の三浦龍司(SUBARU)がインタビューに応じ、今シーズンを振り返った。
パリでは自己4番目となる8分11秒72をマークして8位入賞。前回の東京(7位)に続く2大会連続入賞はトラック種目の個人初の快挙だった。
「決勝は“サンショー”のおもしろさや醍醐味、難しさなどが凝縮されたレースでした。走りながらもそう感じていたので、楽しかったですし充実していた思いは強かったです。あとで見返していると、『今、行けただろう!』と思うシーンもありますが、見ていても楽しかったです」
オリンピックという舞台、そして三浦龍司という存在によって、この種目への注目度はこれまで以上に高くなった。
「障害を越えていかないといけないので、距離感など意識しないといけないところがたくさんあります。集団の中で走ると体格の違いから、視界が狭くなって(障害が)わからなくなる場面もあるんです。決勝では上位選手が振り落としにかかってくるので、難しさが一層高まります」
「障害はハードルとは違って倒れてくれないので怖さはあります。しかも、見えなかったり、スピードが上がった時に切り換える場面だったりは、かなり神経質になります。そうした中で、残り1000mになった時の駆け引きはおもしろいなと感じます」
どれだけ厳しい競技かを説明する三浦の表情は、まるで少年のようにキラキラと輝く。サンショーの話をするとき、三浦はいつも楽しそうだ。走力、障害の技術、ポジショニング、テクニック、相手とのコンタクト、そして展開の読み……総合力が試され、随所にある「一瞬の判断」がラスト勝負の余力にも影響してくる繊細な競技だ。
五輪2大会だけでなく、昨年のブダペスト世界選手権でも6位入賞を果たした三浦。選ばれた者だけが出場できる世界最高峰シリーズのダイヤモンドリーグ(DL)の常連にもなっているように、その実力は世界トップクラスなのは周知の事実だ。それを物語るエピソードがある。
「パリの予選の前に、同じ組に入ったケニアの選手とインドの選手と話をしました。DLなどで顔見知りなので。どんな展開で行くのか、速いペースがいいね、と3人で相談するような感じでした。話しながら僕もいろいろ予測して、『じゃあ引っ張って』と言われて『オッケー』と答えたのですが、これは(ペースメーカーに)使われるなと思い直して『やっぱり前には行けない』と言って“回避”しました(笑)。きっとイエスマンでいたら使われていましたね」
DLラバトでは、世界王者のエル・バッカリ(モロッコ)から「写真を撮ろう」と肩を組まれたという。「顔ぶれも変わらないので仲良くなりますし、みんなきさくなんです」と笑みを浮かべる。
五輪で履いた「ドラゴンフライ 2」はインパクト抜群だった。「なかなか見ないデザインで特別感がありました。一気にモチベーションも上がりますし、勝負するんだという感じになります」。東京五輪では「ビクトリー」を履いていたが、「大学3年くらいで、その時の状態を考慮してドラゴンフライを試してみました」と言う。「ドラゴンフライ2」はピンの数も6本から4本に変わったが、スパイクの感覚はそのままに、「障害に向けて足を合わせる瞬間」のリスク軽減にもなったという。
激闘のあとは「少しだけオフが取れました」と言う三浦。普段はインドア派で、自宅でのんびり過ごすことが多いそうだが、「プチ旅行でリフレッシュしました」。今後は11月に5000mで記録を目指し、来年1月1日の全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)でチームの力となるべく、調整していく。学生駅伝は“卒業”したが、「大まかな流れはあまり変化しないと思います」と語る。
来年は東京世界選手権が最大のターゲット。東京世界選手権では「粘り強く走って、集団から抜け出してメダルを狙える走りをしたい」と静かに闘志を燃やす。「現状でもあと5秒は(自己記録を)短縮できると思いますし、そこは最低ライン絶対に行かないといけないところ」。そのためには「5000mや1500mで日本記録(13分08秒40、3分35秒42)を狙える水準を目指していかないといけない」と考えている。11月末の記録会には5000mで出場予定。久しぶりに記録を狙うレースとなりそうだ。
「3000m障害という種目、そしてアジア人ということで過小評価されていた部分もあります。日本人が戦える可能性も低いと思われていたと思います。1人の選手として、走りで会場を沸かせられる、雰囲気をガラリと変えられるようなインパクトのある走りがしたい。この人のレースを見ていると鳥肌が立つ……そんな走りに自然と惹かれると思うんです」
そんな熱い思いを飄々と話す三浦。その走りが多くの人々をどれほどワクワクさせているか気づいているだろうか。
構成/向永拓史
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
-
2024.11.22
2024.11.20
【箱根駅伝2025名鑑】早稲田大学
2024.11.17
不破聖衣来が香港で10kmレースに出場 9位でフィニッシュ
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
2024.11.01
吉田圭太が住友電工を退部 「充実した陸上人生を歩んでいきたい」競技は継続
2024.11.07
アシックスから軽量で反発性に優れたランニングシューズ「NOVABLAST 5」が登場!
-
2024.10.27
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2024.11.22
第101回箱根駅伝シンポジウム開催!世界を知る武井氏、尾方氏、諏訪氏、中本氏が語る「箱根路と世界」
第101回箱根駅伝を前に、大会への機運を高めるべく「第101回箱根駅伝シンポジウム」が11月22日、発着点となる東京・大手町のよみうりホールで行われた。 パネリストは武井隆次氏(元エスビー食品監督)、尾方剛氏(広島経大監 […]
2024.11.22
世界陸上アルティメット選手権の実施種目発表!! 100m、やり投のほか、男女混合4×100mRを初実施! 賞金総額は15億円
世界陸連は11月22日、26年から新たに開催する世界陸上アルティメット選手権の実施種目を発表した。 第1回大会で行われるのは男女28種目。トラックでは男女100mから5000m、男子110mハードル・女子100mハードル […]
2024.11.22
12月8日のホノルルマラソンに大迫傑、堀尾謙介が招待参加 2時間4分台のB.キプトゥムもエントリー
12月8日に米国ハワイで行われる、ホノルルマラソン2024の招待選手が発表され、日本からパリ五輪マラソン代表の大迫傑(Nike)や堀尾謙介(M&Aベストパートナーズ)が招待選手として登録された。 8月のパリ五輪 […]
2024.11.22
エディオンディスタンスチャレンジ女子10000mに廣中璃梨佳、安藤友香、不破聖衣来らがエントリー 5000mには樺沢和佳奈、小海遥、山本有真らが出場予定
⽇本実業団陸上競技連合は11月22日、日本グランプリシリーズ第16戦の「エディオンディスタンスチャレンジin⼤阪2024」(12月7日)のエントリー選手を発表した。同大会は世界陸連コンチネンタルツアーのチャレンジャー大会 […]
2024.11.22
ヤマダホールディングス 2月就任の横山景監督が退任 プリンセス駅伝は複数選手のコンディション不良で出場断念
ヤマダホールディングスは、女子中長距離ブロックを指導していた横山景監督が11月1日付で退任したことを、ホームページで明らかにした。 50歳の横山監督は東海大時代に箱根駅伝に3回出場。卒業後は雪印や富士通で競技を続け、19 […]
Latest Issue 最新号
2024年12月号 (11月14日発売)
全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会