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2020.10.28

【学生長距離Close-upインタビュー】学生長距離のエースに進化中 駒大・田澤廉
【学生長距離Close-upインタビュー】学生長距離のエースに進化中 駒大・田澤廉

学生長距離Close-upインタビュー
田澤 廉 Tazawa Ren 駒澤大学2年

「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューを毎月お届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。2回目は、ルーキーイヤーの昨シーズンに鮮烈な活躍を見せた駒大の田澤廉に迫る。

日本インカレ10000mで日本人トップ

昨季の学生駅伝で最も輝いたルーキーは間違いなく田澤廉(駒大)だ。出雲駅伝はエースが集った3区でトップを奪う区間新(区間2位)、全日本大学駅伝は7区で4人抜きの区間賞。11月23日の八王子ロングディスタンス10000mで昨季の日本人学生最高となる28分13秒21(U20日本歴代5位)を叩き出すと、箱根駅伝は3区で7人抜きの区間新(区間3位)と大活躍した。

大学2年生になった田澤は、さらに強さを増している。

「練習の質・量ともに上がっています。昨年もAチームで練習をやっていましたが、余裕度が違いますし、昨年と比べても力がついたなという実感があります」

特に練習の「質」については手応えがあるようだ。他の選手たちと一緒に走るが、インターバルなどは終盤ひとりだけペース設定を上げて行うことが多い。その成果は日本インカレの10000mでも発揮された。

7人の留学生が参戦したレースで田澤はひるむことなくトップ集団でレースを進める。5000mを前に離れたが、余裕度は「まだあった」という。その後は、箱根駅伝3区で驚異的な区間記録を樹立したイェゴン・ヴィンセント(東京国際大)の背後についた。しかし、残り7周でヴィンセントがレースをやめたのは想定外だった。

ヴィンセントについたものの、最後は単独走になってしまった

「箱根の3区で強さを見せていたので、これから上がるだろうと思っていたんですけど、急にいなくなってしまった。『エッ!?』と思いました。終盤は前の選手たちとさほど変わらないタイムで走れていたので、最初から前の3人についていけばよかったなと反省しています」

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田澤は28分22秒48でフィニッシュ。日本人トップの4位に入ったが、まったく満足していない。レース後の自己評価は「10点満点中7点くらい」だった。

「日本人トップは当たり前だと思っていたので、表彰台を逃した悔しさのほうが強いです。それでも後半は1人で走ってもある程度まとめられる力があるのを感じることができたのは良かったと思います。3週間の夏合宿のうち最後の1週間は調整というかたちで臨んだので、そこまで調整をガッツリやったわけではありません。どちらかというと練習の一環という感じでの出場でしたから」

暑さが残る9月中旬の10000mで28分22秒48は、今後のタイム短縮が十分に期待できる。加えて、2年生になった田澤の言葉からは“エースの自覚”が漂っている。

「1年時はどんな大会でもただガムシャラにやっている感じがあったんですけど、2年生になり、『駒澤のエース』『学生長距離界のトップ』という自覚があるので、負けないようにするにはどうしたらいいのかを考えるようになりました」

7月8日のホクレン・ディスタンスチャレンジ深川大会5000mA組で13分37秒28をマークして、自己ベストを更新している。しかし、同B組で13分38秒79をマークした吉居大和(中大)が、10日後の千歳大会で13分28秒31のU20日本記録を樹立。さらに3000m障害では三浦龍司(順大)がU20日本記録・日本学生記録となる8分19秒37(日本歴代2位)をマークした。

学生長距離界のエースを担う2年生としては、ルーキーたちの活躍は穏やかではないだろう。吉居と三浦の活躍について、田澤はどう思っているのか。

「すごいと思いますよ。1年目から自分よりも速いタイムで走っていますから。ただ、自分と大八木(弘明)監督の中では徐々にやっていく感じにしているので、それ以上の感想はありません。僕は実業団でも活躍できる選手になりたいので、先を見据えて、今の練習をやっています」

では、一緒に走ったらどうなのか――。

「一緒に走ったら負けないようにしないといけないですよ。さすがに」

そう言って笑った。

“日本一”を懸けて走り、箱根へ

11月1日の全日本大学駅伝。駒大のエースとして、2度目の伊勢路に向かうことになる。

「昨年の全日本(7区17.6㎞/52分09秒)は10㎞を超えるレースが初めてだったので不安もありました。区間賞は取れたのですが、監督から言われていた目標タイムよりも30秒くらい遅くて、力不足を感じましたね。でも、今年のチームは優勝を狙っているので、個人では区間賞はもちろん、区間新記録も狙っていきたいと思っています」

田澤は特に希望区間はないというが、優勝を狙うとなると7区もしくは8区での起用が有力だろう。

「7区は昨年も走っていますし、走ることになれば、区間記録(50分21秒)は目指すべきタイムだと思っています。8区の区間記録(55分32秒)は難しいですけど、日本人最高タイム(56分59秒)は意識したいですね。チーム状況も昨年より良い感じだと思います。1年生が強くて、4年生もタイムを出しています。レースの流れもあるんですけど、自分の持っている力を発揮できれば、優勝できるんじゃないかと思っているので楽しみです」

チームとしては田澤が入る区間でトップに立つことが、「日本一」への道になるだろう。本人もそれは十分に理解している。駒大を6年ぶりの優勝に導く“絶対エース”になるつもりだ。

全日本大学駅伝では昨年7区。今年も勝負所で登場しそうだ

全日本大学駅伝後は12月4日の日本選手権10000mに出場予定。「目指す距離を切り替え取り組みはこれまでにないのでわからないですけど、1カ月あればたぶん大丈夫です」と話す。目指すはトラック日本一だ。

「優勝するのが難しいのはわかっているんですよ。実業団の選手に勝たないといけないので。勝てなかったとしても、国内トップランナーとどのように走るのか。そういう経験が大切だと思っています」

東京五輪の選考レース。特別な雰囲気になるであろう今年の日本選手権で勝負するためのプランは。

「トップを走らないようにしないといけないと思っています。まずはトップ集団についていく。みんなが仕掛けそうな残り1000mや、残り400mでスパートをかけてもダメな気がするので、そこは監督と相談して、意外なところで、自分の余裕があるタイミングで仕掛けたいと思っています」

日本選手権の約1カ月後に、箱根駅伝を迎えることになる。1年時は3区21.4㎞を走って、1時間1分25秒の区間新(区間3位)。振り返ると、スーパールーキーは完全燃焼したという。

「箱根駅伝は昨季1年間やってきた中で一番きつかったという印象です。監督から『休むな!』という声をかけられていたので、ずっと全力みたいな感覚でした。帝京大の遠藤(大地)さんに2秒負けましたけど、これ以上出せる、という感じはありませんでした。自分のほうが2秒、力がなかったということ」

2度目の箱根駅伝は最も華やかな区間、23.1㎞へのチャレンジになりそうだ。

「特に希望区間はありません。でも、チーム状況を考えると2区になるんじゃないかなと思っています。監督がひねって、違う区間に入れる可能性もありますけど……。もちろん区間賞を狙いにいきますよ。さすがに昨年の相澤(晃)さんのタイム(1時間5分57秒)を超えますとは簡単には言えないですけど、前年までの日本人最高記録(1時間6分45秒)はクリアしていきたいです」

駒大のエース、そして学生長距離界のエースとしての階段を着実に上っている田澤に、負ける気持ちは毛頭ない。

たざわ・れん/2000年11月11日生まれ。青森県出身。180cm、60kg。是川中(青森)→青森山田高→駒大。5000m13分37秒28、10000m28分13秒21。

文/酒井政人

学生長距離Close-upインタビュー 田澤 廉 Tazawa Ren 駒澤大学2年 「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューを毎月お届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。2回目は、ルーキーイヤーの昨シーズンに鮮烈な活躍を見せた駒大の田澤廉に迫る。

日本インカレ10000mで日本人トップ

昨季の学生駅伝で最も輝いたルーキーは間違いなく田澤廉(駒大)だ。出雲駅伝はエースが集った3区でトップを奪う区間新(区間2位)、全日本大学駅伝は7区で4人抜きの区間賞。11月23日の八王子ロングディスタンス10000mで昨季の日本人学生最高となる28分13秒21(U20日本歴代5位)を叩き出すと、箱根駅伝は3区で7人抜きの区間新(区間3位)と大活躍した。 大学2年生になった田澤は、さらに強さを増している。 「練習の質・量ともに上がっています。昨年もAチームで練習をやっていましたが、余裕度が違いますし、昨年と比べても力がついたなという実感があります」 特に練習の「質」については手応えがあるようだ。他の選手たちと一緒に走るが、インターバルなどは終盤ひとりだけペース設定を上げて行うことが多い。その成果は日本インカレの10000mでも発揮された。 7人の留学生が参戦したレースで田澤はひるむことなくトップ集団でレースを進める。5000mを前に離れたが、余裕度は「まだあった」という。その後は、箱根駅伝3区で驚異的な区間記録を樹立したイェゴン・ヴィンセント(東京国際大)の背後についた。しかし、残り7周でヴィンセントがレースをやめたのは想定外だった。 ヴィンセントについたものの、最後は単独走になってしまった 「箱根の3区で強さを見せていたので、これから上がるだろうと思っていたんですけど、急にいなくなってしまった。『エッ!?』と思いました。終盤は前の選手たちとさほど変わらないタイムで走れていたので、最初から前の3人についていけばよかったなと反省しています」 田澤は28分22秒48でフィニッシュ。日本人トップの4位に入ったが、まったく満足していない。レース後の自己評価は「10点満点中7点くらい」だった。 「日本人トップは当たり前だと思っていたので、表彰台を逃した悔しさのほうが強いです。それでも後半は1人で走ってもある程度まとめられる力があるのを感じることができたのは良かったと思います。3週間の夏合宿のうち最後の1週間は調整というかたちで臨んだので、そこまで調整をガッツリやったわけではありません。どちらかというと練習の一環という感じでの出場でしたから」 暑さが残る9月中旬の10000mで28分22秒48は、今後のタイム短縮が十分に期待できる。加えて、2年生になった田澤の言葉からは“エースの自覚”が漂っている。 「1年時はどんな大会でもただガムシャラにやっている感じがあったんですけど、2年生になり、『駒澤のエース』『学生長距離界のトップ』という自覚があるので、負けないようにするにはどうしたらいいのかを考えるようになりました」 7月8日のホクレン・ディスタンスチャレンジ深川大会5000mA組で13分37秒28をマークして、自己ベストを更新している。しかし、同B組で13分38秒79をマークした吉居大和(中大)が、10日後の千歳大会で13分28秒31のU20日本記録を樹立。さらに3000m障害では三浦龍司(順大)がU20日本記録・日本学生記録となる8分19秒37(日本歴代2位)をマークした。 学生長距離界のエースを担う2年生としては、ルーキーたちの活躍は穏やかではないだろう。吉居と三浦の活躍について、田澤はどう思っているのか。 「すごいと思いますよ。1年目から自分よりも速いタイムで走っていますから。ただ、自分と大八木(弘明)監督の中では徐々にやっていく感じにしているので、それ以上の感想はありません。僕は実業団でも活躍できる選手になりたいので、先を見据えて、今の練習をやっています」 では、一緒に走ったらどうなのか――。 「一緒に走ったら負けないようにしないといけないですよ。さすがに」 そう言って笑った。

“日本一”を懸けて走り、箱根へ

11月1日の全日本大学駅伝。駒大のエースとして、2度目の伊勢路に向かうことになる。 「昨年の全日本(7区17.6㎞/52分09秒)は10㎞を超えるレースが初めてだったので不安もありました。区間賞は取れたのですが、監督から言われていた目標タイムよりも30秒くらい遅くて、力不足を感じましたね。でも、今年のチームは優勝を狙っているので、個人では区間賞はもちろん、区間新記録も狙っていきたいと思っています」 田澤は特に希望区間はないというが、優勝を狙うとなると7区もしくは8区での起用が有力だろう。 「7区は昨年も走っていますし、走ることになれば、区間記録(50分21秒)は目指すべきタイムだと思っています。8区の区間記録(55分32秒)は難しいですけど、日本人最高タイム(56分59秒)は意識したいですね。チーム状況も昨年より良い感じだと思います。1年生が強くて、4年生もタイムを出しています。レースの流れもあるんですけど、自分の持っている力を発揮できれば、優勝できるんじゃないかと思っているので楽しみです」 チームとしては田澤が入る区間でトップに立つことが、「日本一」への道になるだろう。本人もそれは十分に理解している。駒大を6年ぶりの優勝に導く“絶対エース”になるつもりだ。 全日本大学駅伝では昨年7区。今年も勝負所で登場しそうだ 全日本大学駅伝後は12月4日の日本選手権10000mに出場予定。「目指す距離を切り替え取り組みはこれまでにないのでわからないですけど、1カ月あればたぶん大丈夫です」と話す。目指すはトラック日本一だ。 「優勝するのが難しいのはわかっているんですよ。実業団の選手に勝たないといけないので。勝てなかったとしても、国内トップランナーとどのように走るのか。そういう経験が大切だと思っています」 東京五輪の選考レース。特別な雰囲気になるであろう今年の日本選手権で勝負するためのプランは。 「トップを走らないようにしないといけないと思っています。まずはトップ集団についていく。みんなが仕掛けそうな残り1000mや、残り400mでスパートをかけてもダメな気がするので、そこは監督と相談して、意外なところで、自分の余裕があるタイミングで仕掛けたいと思っています」 日本選手権の約1カ月後に、箱根駅伝を迎えることになる。1年時は3区21.4㎞を走って、1時間1分25秒の区間新(区間3位)。振り返ると、スーパールーキーは完全燃焼したという。 「箱根駅伝は昨季1年間やってきた中で一番きつかったという印象です。監督から『休むな!』という声をかけられていたので、ずっと全力みたいな感覚でした。帝京大の遠藤(大地)さんに2秒負けましたけど、これ以上出せる、という感じはありませんでした。自分のほうが2秒、力がなかったということ」 2度目の箱根駅伝は最も華やかな区間、23.1㎞へのチャレンジになりそうだ。 「特に希望区間はありません。でも、チーム状況を考えると2区になるんじゃないかなと思っています。監督がひねって、違う区間に入れる可能性もありますけど……。もちろん区間賞を狙いにいきますよ。さすがに昨年の相澤(晃)さんのタイム(1時間5分57秒)を超えますとは簡単には言えないですけど、前年までの日本人最高記録(1時間6分45秒)はクリアしていきたいです」 駒大のエース、そして学生長距離界のエースとしての階段を着実に上っている田澤に、負ける気持ちは毛頭ない。 たざわ・れん/2000年11月11日生まれ。青森県出身。180cm、60kg。是川中(青森)→青森山田高→駒大。5000m13分37秒28、10000m28分13秒21。 文/酒井政人

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