2020.10.23
第38回全日本大学女子駅伝対校選手権大会は10月25日(日)、宮城県仙台市の弘進ゴムアスリートパーク仙台(仙台市陸上競技場)をスタート、仙台市役所前市民広場をフィニッシュとする6区間38.1kmで開催される。
コロナ禍の影響で、これが今季最初の駅伝全国大会。出場校は前回8位までに入ったシード校の名城大、大東大、立命大、松山大、日体大、城西大、大阪学大、関大、それに各地区予選を勝ち抜いた16校と、オープン参加の石巻専修大を加えた計25校。15年連続で編成されてきた東北学連選抜は、出場人数の関係で今回は断念となった。
杜の都を舞台とした、女子大学生たちの熱き戦い。その優勝争いを展望してみると、4連覇を目指す女王・名城大の強さが際立つ。
名城大はエースで主将の加世田梨花(右)を中心に死角なし。左は2年生の山本有真
盤石の戦力整う名城大
前回メンバー6人全員が残るうえ、昨年のインターハイ1500m8位の増渕祐香(東京・錦城学園高卒)ら強力ルーキーも加わった。その中でもただ1人、3連覇すべてに出走している主将・加世田梨花(4年)の存在が大きい。
9月の日本インカレでは10000m優勝、5000mは2位。さらに、10月11日の長崎ナイター女子10000mでは学生歴代7位の32分04秒99をマークした。4年連続で最長9.2kmの5区出走が濃厚。他の5人に与える安心感は絶大で、文字通りチームの“大黒柱”となるだろう。
さらに、2年連続で前半の勝負区間を担ってきた髙松智美ムセンビと和田有菜の3年生コンビが好調なうえ、前回大会で1年生ながら1区の大役を担った小林成美(2年)が、7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ網走大会10000mで当時学生歴代7位(現8位)の32分08秒67をマークするなど急成長した。
9月の日本インカレでは1500mで髙松と和田、10000mでは加世田と小林が“ワンツー”。さらには長崎ナイター5000mでは和田、小林、髙松、山本有真(2年)が15分台、増渕が16分00秒11と、誰がどの区間に入っても“決定打”を放てるほどの布陣が整った。
「選手には、ただ4連覇すればいいということではなく、内容も求めていこうと話しています。極端に言えば、全区間区間賞と当分破られない大会記録で、2位以下に背中も見せないようなレースをしたい」と、改めて手綱を引き締める米田勝朗監督。京産大、立命大に続く史上3校目の快挙に向けて、死角は見当たらない。
初優勝へ、吉村玲美(右)らスピードランナーがそろう大東大
大東大 悲願へのカギは鈴木と関谷
打倒・名城大へのハードルは相当に高いが、隙あらばと狙うのが悲願の初優勝に燃える大東大だ。
前回を含めて2013年以降の7大会で2位が6回。このうち前回メンバーの多くが残っており、1区を務めた昨年のドーハ世界選手権3000m障害代表・吉村玲美(2年)は、今年9月の日本インカレで2連覇を飾るなどエース級の力をつけつつある。
駅伝主将・秋山祐妃(4年)、前回1年生ながらアンカーを担った山賀瑞穂(2年)も好調で、外園隆監督は本番でのキーマンとして挙げた今井彩月(2年)の成長度次第では、序盤から女王に勝負を挑むオーダーが組めるだろう。
あとは、エースの復活を待つのみ。ケガの影響で9月まで試合に出場できていない主将・鈴木優花(3年)が、前々回2区、前回3区区間賞という学生女子長距離界1,2を争う実力を発揮できる状態であることが、頂点への必須条件だ。
加えて、4年連続5区を走り、今年度から大学院に進んだ関谷夏希も登録メンバー入り。外園監督は「〝育成の大東大〟にこだわりたいので、関谷を使うつもりは基本的にありません」と語るが、「関谷が(出走6人の)エントリーに入っていたら、本気で優勝を狙いにいっていると思っていただいて構いません」とも話しており、まずはそのオーダーに注目。鈴木、関谷ともに名を連ねるようなら、前回のように“2強対決”の様相となるだろう。
立命大も好調・飛田凜香らを中心に上位を狙う
立命大は「18年連続3位以内」の死守へ
トップスリー入りに向けては混戦が予想され、最多10度の優勝を誇る立命大、2016年に優勝経験のある松山大、日体大の前回3~5位のチームが中心となりそう。
前回まで3年連続3位の立命大は、春に卒業した佐藤成葉(現・資生堂)のような絶対的エースが不在。9月26日の関西学生女子駅伝では関大、大阪学大に屈して3位にとどまったが、前回2区区間3位の飛田凜香(2年)や、前々回4区区間賞の中田美優(4年)らが健在だ。
さらに9月の日本インカレ10000m5位、6位の吉薗栞(3年)と松本美咲(4年)も含めて選手層はそろううえ、本番では調子を合わせてくるチーム。経験のある上級生に、4人エントリーされた1年生が融合すれば、17年続けてきた〝3位以内〟の死守はもちろん、さらなる高みも十分目指せる。
松山大は、優勝を知る選手がすべて卒業したが、前々回、前回と下級生5人を起用し、2年連続でシード権獲得した。彼女たちが上級生としてチームを牽引する。
主力は、日本インカレ5000m4位の小松優衣(2年)、昨夏のユニバーシアード・ハーフマラソン銅メダリストの田川友貴、前回2区区間2位の西山未奈美(ともに3年)の3人。日本インカレを欠場した田川の状態が気になるところだが、チームとして集大成とする2021年への試金石にできるだろうか。
2年ぶりのシード校として臨む日体大は、前回メンバー全員が残る。3年連続1区、5000mで15分56秒11を持つ工藤杏華(4年)と、9月に5000m16分02秒32をマークした岡島楓(3年)が主軸。そこに今季は栗原泉、宮内志佳、保坂晴子ら、高校時代に全国大会出場経験のある1年生が加入した。
立命大と同様、上級生と新戦力がうまくかみ合うタスキリレーができれば、過去最高順位の3位を上回る可能性も出てくる。
ここまで挙げた5校以外では、前回5区で8人抜き(区間3位)と好走し、チームを2年ぶりのシード権獲得に導いた福嶋摩耶(2年)を擁する城西大、前回8位の、9月の関西女王・関大などが虎視眈々と上位を狙う。
シード権争いは関東地区選考会でトップ通過の拓大や前々回8位の大阪芸大も加わり、例年以上に混沌としそうだ。
第38回全日本大学女子駅伝出場校
■シード校
名城大 22年連続22回目
大東大 10年連続10回目
立命大 31年連続31回目
松山大 13年連続13回目
日体大 9年連続32回目
城西大 26年連続27回目
大阪学大 12年連続27回目
関 大 13年連続13回目
■北海道地区
札幌国際大 4年連続4回目
■東北地区
東北福祉大 14年連続18回目
■関東地区
拓 大 3年連続3回目
順 大 2年ぶり27回目
東洋大 8年連続8回目
中 大 2年連続29回目
■北信越
新潟医療福祉大 9年連続9回目
■東海地区
中京学大 2年連続2回目
■関西地区
大阪芸大 5年連続8回目
京産大 27年連続27回目
佛教大 3年連続19回目
関西外大 2年ぶり6回目
京都光華女大 7年ぶり4回目
■中四国地区
環太平洋大 2年連続3回目
■九州地区
福岡大 11年連続32回目
鹿屋体大 2年ぶり16回目
■オープン参加
石巻専修大

盤石の戦力整う名城大
前回メンバー6人全員が残るうえ、昨年のインターハイ1500m8位の増渕祐香(東京・錦城学園高卒)ら強力ルーキーも加わった。その中でもただ1人、3連覇すべてに出走している主将・加世田梨花(4年)の存在が大きい。 9月の日本インカレでは10000m優勝、5000mは2位。さらに、10月11日の長崎ナイター女子10000mでは学生歴代7位の32分04秒99をマークした。4年連続で最長9.2kmの5区出走が濃厚。他の5人に与える安心感は絶大で、文字通りチームの“大黒柱”となるだろう。 さらに、2年連続で前半の勝負区間を担ってきた髙松智美ムセンビと和田有菜の3年生コンビが好調なうえ、前回大会で1年生ながら1区の大役を担った小林成美(2年)が、7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ網走大会10000mで当時学生歴代7位(現8位)の32分08秒67をマークするなど急成長した。 9月の日本インカレでは1500mで髙松と和田、10000mでは加世田と小林が“ワンツー”。さらには長崎ナイター5000mでは和田、小林、髙松、山本有真(2年)が15分台、増渕が16分00秒11と、誰がどの区間に入っても“決定打”を放てるほどの布陣が整った。 「選手には、ただ4連覇すればいいということではなく、内容も求めていこうと話しています。極端に言えば、全区間区間賞と当分破られない大会記録で、2位以下に背中も見せないようなレースをしたい」と、改めて手綱を引き締める米田勝朗監督。京産大、立命大に続く史上3校目の快挙に向けて、死角は見当たらない。
大東大 悲願へのカギは鈴木と関谷
打倒・名城大へのハードルは相当に高いが、隙あらばと狙うのが悲願の初優勝に燃える大東大だ。 前回を含めて2013年以降の7大会で2位が6回。このうち前回メンバーの多くが残っており、1区を務めた昨年のドーハ世界選手権3000m障害代表・吉村玲美(2年)は、今年9月の日本インカレで2連覇を飾るなどエース級の力をつけつつある。 駅伝主将・秋山祐妃(4年)、前回1年生ながらアンカーを担った山賀瑞穂(2年)も好調で、外園隆監督は本番でのキーマンとして挙げた今井彩月(2年)の成長度次第では、序盤から女王に勝負を挑むオーダーが組めるだろう。 あとは、エースの復活を待つのみ。ケガの影響で9月まで試合に出場できていない主将・鈴木優花(3年)が、前々回2区、前回3区区間賞という学生女子長距離界1,2を争う実力を発揮できる状態であることが、頂点への必須条件だ。 加えて、4年連続5区を走り、今年度から大学院に進んだ関谷夏希も登録メンバー入り。外園監督は「〝育成の大東大〟にこだわりたいので、関谷を使うつもりは基本的にありません」と語るが、「関谷が(出走6人の)エントリーに入っていたら、本気で優勝を狙いにいっていると思っていただいて構いません」とも話しており、まずはそのオーダーに注目。鈴木、関谷ともに名を連ねるようなら、前回のように“2強対決”の様相となるだろう。
立命大は「18年連続3位以内」の死守へ
トップスリー入りに向けては混戦が予想され、最多10度の優勝を誇る立命大、2016年に優勝経験のある松山大、日体大の前回3~5位のチームが中心となりそう。 前回まで3年連続3位の立命大は、春に卒業した佐藤成葉(現・資生堂)のような絶対的エースが不在。9月26日の関西学生女子駅伝では関大、大阪学大に屈して3位にとどまったが、前回2区区間3位の飛田凜香(2年)や、前々回4区区間賞の中田美優(4年)らが健在だ。 さらに9月の日本インカレ10000m5位、6位の吉薗栞(3年)と松本美咲(4年)も含めて選手層はそろううえ、本番では調子を合わせてくるチーム。経験のある上級生に、4人エントリーされた1年生が融合すれば、17年続けてきた〝3位以内〟の死守はもちろん、さらなる高みも十分目指せる。 松山大は、優勝を知る選手がすべて卒業したが、前々回、前回と下級生5人を起用し、2年連続でシード権獲得した。彼女たちが上級生としてチームを牽引する。 主力は、日本インカレ5000m4位の小松優衣(2年)、昨夏のユニバーシアード・ハーフマラソン銅メダリストの田川友貴、前回2区区間2位の西山未奈美(ともに3年)の3人。日本インカレを欠場した田川の状態が気になるところだが、チームとして集大成とする2021年への試金石にできるだろうか。 2年ぶりのシード校として臨む日体大は、前回メンバー全員が残る。3年連続1区、5000mで15分56秒11を持つ工藤杏華(4年)と、9月に5000m16分02秒32をマークした岡島楓(3年)が主軸。そこに今季は栗原泉、宮内志佳、保坂晴子ら、高校時代に全国大会出場経験のある1年生が加入した。 立命大と同様、上級生と新戦力がうまくかみ合うタスキリレーができれば、過去最高順位の3位を上回る可能性も出てくる。 ここまで挙げた5校以外では、前回5区で8人抜き(区間3位)と好走し、チームを2年ぶりのシード権獲得に導いた福嶋摩耶(2年)を擁する城西大、前回8位の、9月の関西女王・関大などが虎視眈々と上位を狙う。 シード権争いは関東地区選考会でトップ通過の拓大や前々回8位の大阪芸大も加わり、例年以上に混沌としそうだ。 第38回全日本大学女子駅伝出場校 ■シード校 名城大 22年連続22回目 大東大 10年連続10回目 立命大 31年連続31回目 松山大 13年連続13回目 日体大 9年連続32回目 城西大 26年連続27回目 大阪学大 12年連続27回目 関 大 13年連続13回目 ■北海道地区 札幌国際大 4年連続4回目 ■東北地区 東北福祉大 14年連続18回目 ■関東地区 拓 大 3年連続3回目 順 大 2年ぶり27回目 東洋大 8年連続8回目 中 大 2年連続29回目 ■北信越 新潟医療福祉大 9年連続9回目 ■東海地区 中京学大 2年連続2回目 ■関西地区 大阪芸大 5年連続8回目 京産大 27年連続27回目 佛教大 3年連続19回目 関西外大 2年ぶり6回目 京都光華女大 7年ぶり4回目 ■中四国地区 環太平洋大 2年連続3回目 ■九州地区 福岡大 11年連続32回目 鹿屋体大 2年ぶり16回目 ■オープン参加 石巻専修大 公式サイト
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