2024.10.18
第101回箱根駅伝予選会が、10月19日に東京・立川市の陸上自衛隊立川駐屯地をスタートし、国営昭和記念公園にフィニッシュするハーフマラソンのコースで行われる。
前回の本戦出場校のうち3校で新監督(駅伝監督)が就任した。立教大・髙林祐介監督、神奈川大・中野剛監督、山梨学大・大﨑悟史監督が、予選会の初采配に臨む。
独特の形式で争われる箱根駅伝予選会。集団走の組み方やペース設定など、その采配が大きな影響を持つ。前回大会では明大・山本豪監督、日大・新雅弘監督が初采配ながらチームを本戦に導いたが、今年の新指揮官たちはどんな戦いを見せるだろうか。
経験で言えば、大﨑監督はコーチとして8度予選会に携わってきた。中野監督の大学コーチ経験は2年と短いものの、実業団監督時代にオリンピアンを育成したキャリアが光る。
それぞれ、予選落ちの苦い経験も含め、大学が積み重ねたデータを受け継いでいるうえ、選手たちと過ごした時間も長い。
その点、立教大の髙林監督は内部昇格の2人と違い、2年間の駒大コーチを経て外部からの就任。駒大時代を含めても箱根駅伝予選会は正真正銘の“初采配”となる。ただ、現役時代の2009年(第86回大会)の予選会に出場し個人8位と活躍していた。
それぞれ大学にとって、大きな意味を持つ分岐点だ。立教大は創立150年の年に2大会連続出場を果たしたが、昨年の予選会直前に前監督が退任。それからの約半年は学生たちによる自主運営を続けてきた。
本戦を連覇した経験を持つ神奈川大と山梨学大は、100回大会を区切りとして新しい時代への移行を図っている。
神奈川大は最長の在任期間になっていた大後栄治氏(部長兼総監督)が退任し、その後の大仕事を託された。山梨学大は、飯島理彰・前監督がコーチ時代を含めると20年以上もトレーニングを主導していた。飯島氏自身が大﨑流への変革を期待しての交代となった。
新指揮官たちはシーズン上半期に早くも手腕を発揮した。6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では、立教大、神奈川大が見事に予選を突破し、伊勢路の本戦切符を獲得。山梨学大も昨年より成績を上げ、通過ラインまで約30秒だった。
今春に就任した立教大の髙林新監督は何らかの大方針を示す間もなく、当初は迫り来るレースと選手の要望に対応していった。そうした中で、関東インカレや全日本選考会で選手たちの個性を引き出した。
「監督がコミュニケーションを密にとってくれるのでやりやすいです」と選手たち。自主運営時期の張りつめた表情が和らいでいる。
腰を据えた強化は夏合宿からだ。「私がやりたいと思うトレーニングよりも、強度を抑えています。それがどう出るかですね」。合宿地で髙林監督はそう話していた。
神奈川大は前回の箱根駅伝出場者のうち7人が卒業。新学年の10000m平均タイムは「30位」だったという。「大幅な戦力ダウン」が心配される状況だったため、全日本選考会の通過は「意外」と受け止められた。
「学生が思いのほか危機感を持ち、自分たちからいろんな工夫をしてくれました」と中野監督。また、2年生の学年全体に活気があり、監督の「3、4年生をピークに」との思いよりも1年早く、成果を出し始めた。
動き作りや体幹トレーニングをおろそかにしない姿勢を受け継ぎつつ、実戦的な練習、出場レースを増やして新味を出している。
大﨑監督は2008年北京五輪マラソン代表の実績こそ華々しいが、フルタイム勤務の経験など、無二の人生経験は泥臭いものがある。山梨学大の上田誠仁顧問は以前、「優しい言葉で厳しいことが言える」とそのコーチングを評していた。
狙い通り、監督交代によって山梨学大のトレーニングは様変わりした。ジョグの内容、継続性を最重視したポイント練習。また、「上から押しつけたくない」と、2週間分の練習メニューを提示する際には選手との話し合いを持つ。
今年は練習を引っ張れる4年生の人数が多く、下級生も伸びてきた。次は、この育成の力を「発揮」へ導くことだ。
三者三様となりそうな、それぞれの初采配を見守りたい。
文/奥村 崇
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.03.28
-
2025.03.28
-
2025.03.28
2025.03.23
女子は長野東が7年ぶりの地元V アンカー・田畑陽菜が薫英女学院を逆転/春の高校伊那駅伝
-
2025.03.25
2025.03.02
初挑戦の青学大・太田蒼生は途中棄権 果敢に先頭集団に挑戦/東京マラソン
2025.03.02
太田蒼生は低体温症と低血糖で途中棄権 「世界のレベルを知れて良い経験」/東京マラソン
-
2025.03.23
-
2025.03.19
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.03.28
【世界陸上プレイバック】五輪ボイコットきっかけに創設!クラトフヴィロヴァが女子400mと800mで今も大会記録に残る2冠 日本は室伏重信ら出場も入賞ゼロ
今年、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪大会を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。これま […]
2025.03.28
【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山﨑りりや Yamasaki Ririya 鳴門渦潮高3徳島 高校アスリートをフォーカスするコーナー。年度末を迎えますが、振り返ってみれば、2024年度は高校生による日本記録樹立を […]
2025.03.28
3泊4日の全国高体連合宿終了! 「高め合える仲間がいっぱいできた」 来年度は宮崎で開催予定
大阪・ヤンマースタジアム長居を主会場に行われた2024年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月28日、3泊4日の全日程を終えた。全国から集まった選手たちは交流を深め、試合での再会を誓った […]
2025.03.28
資格停止中の競歩・池田向希がCASに不服申し立て「一日も早く競技 を再開」
旭化成は3月28日、所属選手である競歩の池田向希が受けたアンチ・ドーピング規則違反による4年間の資格停止処分について、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に不服申し立てを行ったと発表した。 男子20km競歩で東京五輪銀メダリスト […]
2025.03.28
【男子円盤投】福宮佳潤(東京高1) 50m73=高1歴代2位&4人目の50mオーバー
3月28日、東京都多摩市の国士大多摩陸上競技場で第7回国士大競技会が行われ、高校用規格の男子円盤投(1.75kg)において福宮佳潤(東京高1)が50m73をマークした。この記録は高校1年生の歴代ランキングで2位。高1で史 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報