HOME 特集

2024.10.01

泉谷駿介インタビュー 今でも思い出すパリ五輪準決勝のレース後の景色 来年は「いろいろ挑戦したい」
泉谷駿介インタビュー 今でも思い出すパリ五輪準決勝のレース後の景色 来年は「いろいろ挑戦したい」

インタビューに応じた泉谷駿介(住友電工) 写真提供/ナイキ

男子110mハードル日本記録保持者の泉谷駿介(住友電工)が合同インタビューに応じ、今シーズンを振り返った。

昨年のブダペスト世界選手権では5位入賞を果たしていた泉谷。パリ五輪ではメダル獲得を目指したものの、準決勝で敗退となった。

「やはり悔しい思いが強かったです。普通に走れば(決勝に)行けたと思うので、“たら・れば”ばかり思い浮かびます」

成長したスピードとハードリングを噛み合わせるのに苦労した1年。ダイヤモンドリーグ(DL)という「難易度」の高いレース中心に臨んだが、自分らしいレースができないまま本番を迎えた。

「技術面で噛み合わなかったです。ハードルに向かってディップ(※上半身を前傾)をかけて突っ込む感じを意識していたのですが、ハードルに突っ込みすぎてぶつけてしまいました。もう少し冷静に当てないようなハードリングができれば良かったのですが…。スピードレベルが上がるとコントロールするのが難しくなる。調子は悪くなかったですが、シーズン中から感覚が良くなかったので、走れる気がしませんでした。練習ではできても本番になるとまったく違う走りになる。いつもと違う景色に見えるというか、まるで別の種目をしているような不思議な感覚でした」

パリ五輪を終えてから、今もレースの動画は確認できていないという。

「レースの映像は今も見られていません。あまり悪いことは思い出したくないので。なかったことにはできないですが、気にしないようにしています。でも、あの日、準決勝のレースが終わってからミックスゾーン(取材エリア)を通って待機所に戻るまでの失望感は、今でも1日1回は思い出しています。これまでで一番悔しい結果です。その気持ちを練習の時に思い出して、歯を食いしばって頑張りたいです」

五輪は厳しい結果となったが、100mでは追い風参考ながら10秒14(+2.1)をマークするなど、スピードは向上。DL転戦でも常に上位で走る安定感を見せた。今季から契約したナイキのシューズも、その背中を押す。

「マックスフライ 2 はエアもあって反発が強いので特に直線が走りやすいです。横ブレもなくなりました。重心や腰の位置も高くなるのでハードルを越えるのも楽になります。そして、推進力がありかなり進むため、ハードル間のインターバルランで詰まってしまうこともあり、そこは刻む練習をしてさらにうまくまとめていきたいです」

来年は東京世界選手権を控えるなか、泉谷にはこれまでも心にあった“野望”への思いがより強くなっていく。

「来年はいろいろ挑戦してみたいと思っているんです。ケガや調整は難しいと思うのですが、110mハードルをメインに考えながら、走幅跳や100mでも挑戦していきたいです」

実際、全日本実業団対抗選手権では1年ぶりの走幅跳で、8m14の自己新をマーク。世界選手権の参加標準記録まであと13cmに迫った。

「110mハードルの足を引っ張らないようにやっていきたい。そのためには、もっと自分が強くならないといけない。海外の選手は非常にタフですし、本当に強くなるためには、そのくらいやらないとダメだと思います」

高校時代も混成競技(八種競技)や三段跳で世代トップの実力を誇ってきた。

「高校のとき、今日はあまり走れないなという日は高跳びをしたり、違うことをしたり。調子が悪い時でも楽しめるようにしてきたからこそ、陸上を大好きになれました」。

類い稀なスピードやバネを誇る泉谷の最大の武器は、この『陸上競技が大好き』という思いなのかもしれない。

構成/向永拓史

男子110mハードル日本記録保持者の泉谷駿介(住友電工)が合同インタビューに応じ、今シーズンを振り返った。 昨年のブダペスト世界選手権では5位入賞を果たしていた泉谷。パリ五輪ではメダル獲得を目指したものの、準決勝で敗退となった。 「やはり悔しい思いが強かったです。普通に走れば(決勝に)行けたと思うので、“たら・れば”ばかり思い浮かびます」 成長したスピードとハードリングを噛み合わせるのに苦労した1年。ダイヤモンドリーグ(DL)という「難易度」の高いレース中心に臨んだが、自分らしいレースができないまま本番を迎えた。 「技術面で噛み合わなかったです。ハードルに向かってディップ(※上半身を前傾)をかけて突っ込む感じを意識していたのですが、ハードルに突っ込みすぎてぶつけてしまいました。もう少し冷静に当てないようなハードリングができれば良かったのですが…。スピードレベルが上がるとコントロールするのが難しくなる。調子は悪くなかったですが、シーズン中から感覚が良くなかったので、走れる気がしませんでした。練習ではできても本番になるとまったく違う走りになる。いつもと違う景色に見えるというか、まるで別の種目をしているような不思議な感覚でした」 パリ五輪を終えてから、今もレースの動画は確認できていないという。 「レースの映像は今も見られていません。あまり悪いことは思い出したくないので。なかったことにはできないですが、気にしないようにしています。でも、あの日、準決勝のレースが終わってからミックスゾーン(取材エリア)を通って待機所に戻るまでの失望感は、今でも1日1回は思い出しています。これまでで一番悔しい結果です。その気持ちを練習の時に思い出して、歯を食いしばって頑張りたいです」 五輪は厳しい結果となったが、100mでは追い風参考ながら10秒14(+2.1)をマークするなど、スピードは向上。DL転戦でも常に上位で走る安定感を見せた。今季から契約したナイキのシューズも、その背中を押す。 「マックスフライ 2 はエアもあって反発が強いので特に直線が走りやすいです。横ブレもなくなりました。重心や腰の位置も高くなるのでハードルを越えるのも楽になります。そして、推進力がありかなり進むため、ハードル間のインターバルランで詰まってしまうこともあり、そこは刻む練習をしてさらにうまくまとめていきたいです」 来年は東京世界選手権を控えるなか、泉谷にはこれまでも心にあった“野望”への思いがより強くなっていく。 「来年はいろいろ挑戦してみたいと思っているんです。ケガや調整は難しいと思うのですが、110mハードルをメインに考えながら、走幅跳や100mでも挑戦していきたいです」 実際、全日本実業団対抗選手権では1年ぶりの走幅跳で、8m14の自己新をマーク。世界選手権の参加標準記録まであと13cmに迫った。 「110mハードルの足を引っ張らないようにやっていきたい。そのためには、もっと自分が強くならないといけない。海外の選手は非常にタフですし、本当に強くなるためには、そのくらいやらないとダメだと思います」 高校時代も混成競技(八種競技)や三段跳で世代トップの実力を誇ってきた。 「高校のとき、今日はあまり走れないなという日は高跳びをしたり、違うことをしたり。調子が悪い時でも楽しめるようにしてきたからこそ、陸上を大好きになれました」。 類い稀なスピードやバネを誇る泉谷の最大の武器は、この『陸上競技が大好き』という思いなのかもしれない。 構成/向永拓史

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.11.21

早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結

11月21日、株式会社コラゾンは同社が展開する麹専門ブランド「MURO」を通じて、早大競走部駅伝部とスポンサー契約を結んだことを発表した。 コラゾン社は「MURO」の商品である「KOJI DRINK A」および「KOJI […]

NEWS 立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン

2024.11.21

立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン

第55回防府読売マラソン大会事務局は、女子招待選手の立迫志穂(天満屋)が欠場すると発表した。調整不良のためとしている。 立迫は今年2月の全日本実業団ハーフマラソンで1時間11分16秒の11位。7月には5000m(15分3 […]

NEWS M&Aベストパートナーズに中大・山平怜生、城西大・栗原直央、國學院大・板垣俊佑が内定!神野「チーム一丸」

2024.11.20

M&Aベストパートナーズに中大・山平怜生、城西大・栗原直央、國學院大・板垣俊佑が内定!神野「チーム一丸」

神野大地が選手兼監督を務めるM&Aベストパートナーズが来春入社選手として、中大・山平怜生、國學院大・板垣俊佑、城西大・栗原直央の3人が内定した。神野が自身のSNSで内定式の様子を伝えている。 山平は宮城・仙台育英 […]

NEWS 第101回(2025年)箱根駅伝 出場チーム選手名鑑

2024.11.20

第101回(2025年)箱根駅伝 出場チーム選手名鑑

・候補選手は各チームが選出 ・情報は11月20日時点、チーム提供および編集部把握の公認記録を掲載 ・選手名の一部漢字で対応外のものは新字で掲載しています ・過去箱根駅伝成績で関東学生連合での出場選手は相当順位を掲載 ・一 […]

NEWS 八王子ロングディスタンスのスタートリスト発表!! 1万m26分台狙うS組は鈴⽊芽吹、遠藤⽇向、羽生拓矢、篠原倖太朗らが出場!

2024.11.20

八王子ロングディスタンスのスタートリスト発表!! 1万m26分台狙うS組は鈴⽊芽吹、遠藤⽇向、羽生拓矢、篠原倖太朗らが出場!

東日本実業団連盟は11月20日、2024八王子ロングディスタンス(11月23日)のスタートリストを発表した。 来年の世界選手権男子10000mの参加標準記録(27分00秒00)の突破を狙う『S組』では、日本の実業団に所属 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年12月号 (11月14日発売)

2024年12月号 (11月14日発売)

全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会

page top