HOME 国内

2024.09.23

世界陸上代表の宇都宮絵莉が今季で引退を表明「大満足、悔いはない」最後は国スポで地元背負う/全日本実業団
世界陸上代表の宇都宮絵莉が今季で引退を表明「大満足、悔いはない」最後は国スポで地元背負う/全日本実業団

笑顔でトラック1周を駆け抜けた宇都宮絵莉

◇第72回全日本実業団対抗選手権(9月21日~23日/山口・維新百年記念公園陸上競技場)3日目

全日本実業団対抗選手権の3日目に行われた女子400mハードルに出場した宇都宮絵莉(長谷川体育施設)が今季限りでの現役引退を表明した。

昨年のブダペスト世界選手権代表の宇都宮。所属チームのユニフォームを着て走る最後のヨンパーは59秒90の7位となり、「シンプルに勝ちたかった。もう少し走れると思ったけど……」と照れくさそうに笑った。

1993年生まれの31歳。その長いキャリアで“鉄人”のごとくとてつもない試合数に出場し、どんな舞台、そしてどんな種目でも輝きを放ってきた。

兵庫県出身で、平岡南中・園田学園高時代には走幅跳で全中とインターハイを制して日本一になった。園田学園女大2年時に七種競技に取り組むと、4年時には5460点をマーク。自己記録も5821点(日本歴代4位)を持ち、最後の800mでは誰も寄せ付けない圧巻の走りで虜にした。

その宇都宮が「世界に近い」と挑戦したのが400mハードルだった。社会人3年目には56秒84をマーク。大好きな陸上競技を目一杯できる混成競技との両立に苦しんだこともある。400mハードルに専念したにもかかわらず記録がなかなか伸びず。葛藤を抱き、紆余曲折、試行錯誤しながら、昨年のブダペスト世界選手権では400mハードルでようやく世界選手権の日本代表へとたどり着いた。予選落ちに終わったものの、夢が叶って涙をこぼした。

広告の下にコンテンツが続きます

「陸上人生で目標にしていたことも達成できて、世界選手権に出られてスーッと初めて(現役生活の)終わりと思えた。嫌になって辞めるとかではないんです。自分ではすごく大満足。悔いはないかな」

競技生活を振り返り、「中学校時代から指導者に恵まれて、自由にさあせてもらいながら背中も押してもらえた。ワガママに種目を変えたり、練習場所を変えたり。その都度自分の好きなようにやらせてもらいました。もちろん、すんなり行くことばかりじゃなかったですが、納得しています」と笑顔を見せる。

いつも前向きなチャレンジを見せてきた宇都宮。その姿勢にライバルや後輩たちはいつも勇気づけられ、特に後輩たちは「絵莉さん、絵莉さん」と慕い、「一緒に走りたい、戦いたい」とあこがれてきた。

決して恵まれた体格ではないが、そのバネと走力、そして負けん気で、400mハードルは56秒50(日本歴代7位タイ)、七種競技は5821点(日本歴代4位)、走幅跳は6m14のベスト。偉大なマルチアスリートとしてその名を刻んだ。

最後は国民スポーツ大会で愛着のある『HYOGO』を背負って戦う宇都宮。最後まで目一杯、その全身全霊を込めた走りでトラックを駆け抜けるつもりだ。

◇第72回全日本実業団対抗選手権(9月21日~23日/山口・維新百年記念公園陸上競技場)3日目 全日本実業団対抗選手権の3日目に行われた女子400mハードルに出場した宇都宮絵莉(長谷川体育施設)が今季限りでの現役引退を表明した。 昨年のブダペスト世界選手権代表の宇都宮。所属チームのユニフォームを着て走る最後のヨンパーは59秒90の7位となり、「シンプルに勝ちたかった。もう少し走れると思ったけど……」と照れくさそうに笑った。 1993年生まれの31歳。その長いキャリアで“鉄人”のごとくとてつもない試合数に出場し、どんな舞台、そしてどんな種目でも輝きを放ってきた。 兵庫県出身で、平岡南中・園田学園高時代には走幅跳で全中とインターハイを制して日本一になった。園田学園女大2年時に七種競技に取り組むと、4年時には5460点をマーク。自己記録も5821点(日本歴代4位)を持ち、最後の800mでは誰も寄せ付けない圧巻の走りで虜にした。 その宇都宮が「世界に近い」と挑戦したのが400mハードルだった。社会人3年目には56秒84をマーク。大好きな陸上競技を目一杯できる混成競技との両立に苦しんだこともある。400mハードルに専念したにもかかわらず記録がなかなか伸びず。葛藤を抱き、紆余曲折、試行錯誤しながら、昨年のブダペスト世界選手権では400mハードルでようやく世界選手権の日本代表へとたどり着いた。予選落ちに終わったものの、夢が叶って涙をこぼした。 「陸上人生で目標にしていたことも達成できて、世界選手権に出られてスーッと初めて(現役生活の)終わりと思えた。嫌になって辞めるとかではないんです。自分ではすごく大満足。悔いはないかな」 競技生活を振り返り、「中学校時代から指導者に恵まれて、自由にさあせてもらいながら背中も押してもらえた。ワガママに種目を変えたり、練習場所を変えたり。その都度自分の好きなようにやらせてもらいました。もちろん、すんなり行くことばかりじゃなかったですが、納得しています」と笑顔を見せる。 いつも前向きなチャレンジを見せてきた宇都宮。その姿勢にライバルや後輩たちはいつも勇気づけられ、特に後輩たちは「絵莉さん、絵莉さん」と慕い、「一緒に走りたい、戦いたい」とあこがれてきた。 決して恵まれた体格ではないが、そのバネと走力、そして負けん気で、400mハードルは56秒50(日本歴代7位タイ)、七種競技は5821点(日本歴代4位)、走幅跳は6m14のベスト。偉大なマルチアスリートとしてその名を刻んだ。 最後は国民スポーツ大会で愛着のある『HYOGO』を背負って戦う宇都宮。最後まで目一杯、その全身全霊を込めた走りでトラックを駆け抜けるつもりだ。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.03.25

箱根駅伝予選会のスタート時刻を変更「温暖化の影響による選手の安全確保」

関東学生陸上競技連盟は3月25日、箱根駅伝予選会のスタート時刻について、次回から変更すると発表した。 前回までは午前9時35分スタートだったが、第102回大会予選会から午前8時30分スタートと、約1時間前倒しする。 「温 […]

NEWS 100mH福部真子「引退しないといけないのかな…」菊池病の公表に葛藤も「あとで後悔したくない」元気な姿アピール

2025.03.25

100mH福部真子「引退しないといけないのかな…」菊池病の公表に葛藤も「あとで後悔したくない」元気な姿アピール

女子100mハードル日本記録保持者の福部真子(日本建設工業)がインタビューに応じ、昨年末に公表した「菊池病」と発覚した時の状況や、今の調子、復帰に向けた思いを聞いた。 「元気です!見てもらった通り!」。オンラインで画面越 […]

NEWS 大阪に約270人の高校生アスリートが集結! 「切磋琢磨していきたい」 3泊4日の全国高体連合宿スタート

2025.03.25

大阪に約270人の高校生アスリートが集結! 「切磋琢磨していきたい」 3泊4日の全国高体連合宿スタート

2024年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月25日、大阪・ヤンマースタジアム長居で始まった。全国から選手約270人が参加し、20度を超える汗ばむ陽気の中で打ち解けながら練習に取り組ん […]

NEWS HOKAが「CLIFTON 10」発売に先駆けてイベント 鎧坂哲哉「クッション性とフィット感が良い」

2025.03.25

HOKAが「CLIFTON 10」発売に先駆けてイベント 鎧坂哲哉「クッション性とフィット感が良い」

デッカーズジャパンは3月25日、パフォーマンスフットウェア&アパレルブランド「HOKA」の人気シリーズの新作シューズ「CLIFTON 10(クリフトン 10)」の発売に先駆けてメディア向けの商品説明会・トークセッションを […]

NEWS 富士通加入の平林樹「世界一になる」鈴木康也は「マラソンで世界へ」

2025.03.25

富士通加入の平林樹「世界一になる」鈴木康也は「マラソンで世界へ」

富士通が3月25日、2025年度新加入選手の合同取材会見を開き、男子長距離の篠原倖太朗(駒大)、平林樹(城西大)、鈴木康也(麗澤大)、女子400mハードルの山本亜美(立命大)が登壇した。 城西大の主将を務めた平林は「こう […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報

page top