◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)10日目
パリ五輪・陸上競技10日目のモーニングセッションに行われた男子マラソンで、赤﨑暁(九電工)が2時間7分32秒の自己ベストで日本人トップの6位入賞を果たした。これまでの自己記録は2時間9分01秒。さらに、大迫傑(Nike)が東京で出した日本人最高記録の2時間10分41秒を上回り、日本人五輪初の“サブテン”となった。
「五輪史上最も過酷」と言われたコースだったが、終わってみれば優勝したタミラト・トーラ(エチオピア)は2時間6分26秒のオリンピックレコード。8時スタート、肌寒さも感じる条件も相まって、16位までがサブテンだった。
この3ヵ月は「本当に辞めたいほど坂練習を“やらされて”きたので(笑)。そのお陰で入賞できて、綾部さん(健二/総監督)にのお陰です」と赤﨑は笑う。
5月の日本選手権10000mで27分43秒84の自己新をマークするなど、トラックでスピードを強化。そこからは「今までで一番しんどかった」と言う“地獄のトレーニング”がスタート。国内でじっくり調整し、御嶽や大分の合宿では、「今回のコースよりきつい坂を走ってきた」。約10km近くも上り続けたり、坂道で800mを10本などとにかく走り抜いた。距離走だけではなく、スピード練習も坂を使ったという。
最初の難関だった15kmからの長い上り坂で一気に集団はばらけたが、「自分のリズムで行きました」と淡々とレースを進める。
20km以降では先頭集団を引っ張る場面もあった。昨年のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)2位になった際には「自分でレースを作る力をつけたい」と話していたが、「自分でも走りながら、そういえば言っていたな」と思ったそうで、「知らないうちに成長しているのかなと感じることができました」。
赤﨑の強さは“自然体”にある。今回も「オリンピックというよりは、マラソンを走りにパリに来た」と気負うことはなく、「友達にもいつも通り行ってこいと言われて、いつも通り走ることができました」と笑う。「注目されていなかったし、気楽にやるのが一番。自分のやりたいように、僕のやり方で楽しくやりたいようにやっていきたい」。こうした姿勢だからこそ、終わって第一声は「人生で一番楽しいレースでした」だった。
高校時代は全国的に“無名”だった。中学時代はバレーボール部で、開新高(熊本)で本格的に陸上を始めた。高2まではケガで苦しみ、大好物のパンを扱う会社への就職を希望していたという。その能力を同郷の名伯楽・岡田正裕監督(当時)に見出されてて拓大へ。ここでもケガが重なりながら主力として力をつけた。
「大学でも(競技を)終わろうと思っていました。いろんな人に正しい道に導いてもらいました」
まだマラソンは5レース目。うち1レースはMGC前の練習の一貫だ。つまり、MGC取得への2本、MGC、そしてパリ五輪とすべて“外さない”で力を発揮してきた勝負強さがある。
「日本記録を出すまではまだまだ。ライバルの(山下)一貴(三菱重工)もいますし、大塚(祥平、九電工)さんもいます。大迫(傑/Nike)さんも。日本記録保持者の鈴木健吾さん(富士通)も。日本記録を出してから、僕は強いぞって言おうかなと思います」
赤﨑の前に熊本出身のマラソンランナーが五輪を走ったのは、ちょうど100年前のパリ大会、あの金栗四三だった。“韋駄天”のように速く、強く。熊本が生んだ新星のマラソン人生はまだまだ始まったばかりだ。
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.03.25
箱根駅伝予選会のスタート時刻を変更「温暖化の影響による選手の安全確保」
-
2025.03.25
-
2025.03.25
-
2025.03.25
2025.03.23
女子は長野東が7年ぶりの地元V アンカー・田畑陽菜が薫英女学院を逆転/春の高校伊那駅伝
-
2025.03.19
-
2025.03.19
2025.03.02
初挑戦の青学大・太田蒼生は途中棄権 果敢に先頭集団に挑戦/東京マラソン
2025.03.02
太田蒼生は低体温症と低血糖で途中棄権 「世界のレベルを知れて良い経験」/東京マラソン
-
2025.03.23
-
2025.03.19
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.03.25
箱根駅伝予選会のスタート時刻を変更「温暖化の影響による選手の安全確保」
関東学生陸上競技連盟は3月25日、箱根駅伝予選会のスタート時刻について、次回から変更すると発表した。 前回までは午前9時35分スタートだったが、第102回大会予選会から午前8時30分スタートと、約1時間前倒しする。 「温 […]
2025.03.25
100mH福部真子「引退しないといけないのかな…」菊池病の公表に葛藤も「あとで後悔したくない」元気な姿アピール
女子100mハードル日本記録保持者の福部真子(日本建設工業)がインタビューに応じ、昨年末に公表した「菊池病」と発覚した時の状況や、今の調子、復帰に向けた思いを聞いた。 「元気です!見てもらった通り!」。オンラインで画面越 […]
2025.03.25
大阪に約270人の高校生アスリートが集結! 「切磋琢磨していきたい」 3泊4日の全国高体連合宿スタート
2024年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月25日、大阪・ヤンマースタジアム長居で始まった。全国から選手約270人が参加し、20度を超える汗ばむ陽気の中で打ち解けながら練習に取り組ん […]
2025.03.25
HOKAが「CLIFTON 10」発売に先駆けてイベント 鎧坂哲哉「クッション性とフィット感が良い」
デッカーズジャパンは3月25日、パフォーマンスフットウェア&アパレルブランド「HOKA」の人気シリーズの新作シューズ「CLIFTON 10(クリフトン 10)」の発売に先駆けてメディア向けの商品説明会・トークセッションを […]
2025.03.25
富士通加入の平林樹「世界一になる」鈴木康也は「マラソンで世界へ」
富士通が3月25日、2025年度新加入選手の合同取材会見を開き、男子長距離の篠原倖太朗(駒大)、平林樹(城西大)、鈴木康也(麗澤大)、女子400mハードルの山本亜美(立命大)が登壇した。 城西大の主将を務めた平林は「こう […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報