HOME 国内、日本代表、五輪
日本4継「悔しい」5位!2走サニブラウン爆走、3走・桐生でトップの見せ場、メダルへの強き意志示す/パリ五輪
日本4継「悔しい」5位!2走サニブラウン爆走、3走・桐生でトップの見せ場、メダルへの強き意志示す/パリ五輪

レース後は笑顔を見せた男子4×100mRメンバー

◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)9日目

パリ五輪・陸上競技9日目のイブニングセッションに行われ、男子4×100mリレーに出場した日本は、37秒78の日本歴代4位タイで5位に入り、2大会ぶり入賞を果たした。

予選が全体の4番目のタイムながら38秒06を擁し、組4着でのプラス通過。その結果を経て、メダル奪回を目指す日本は大きな“勝負”に出た。

昨年のブダペスト世界選手権、5月の世界リレー、今大会の予選と2走として世界のエースたちと戦ってきた栁田大輝(東洋大)から、サニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)に変更。個人の100mでファイナルこそ逃したが、日本歴代2位の9秒96(+0.5)をマークするなど今や日本の“エース”となったサニブラウンが、世界の強豪たちと対峙する。

サニブラウンが予選で担当した1走は、日本選手権2連覇の坂井隆一郎(大阪ガス)。世界選手権では2大会連続で務めてきたスターターの役割に復帰した。3走・桐生祥秀(日本生命)、アンカー・上山紘輝(住友電工)は予選と同じ。選手入場ではグータッチを交わし、トラックのそれぞれの場所へと散っていく。

その日本の戦略は、ほぼ成功した。1走の坂井が得意のスタートからの加速を発揮し、3レーンの急カーブを駆け抜ける。サニブラウンへのバトンパスも無難にこなした。

広告の下にコンテンツが続きます

そしてサニブラウンが、米国がバトンパスに失敗するのを横目にグングン加速する。ほぼトップ争いの位置で、桐生にスムーズにバトンを託した。

16年リオ五輪の銀、17年ロンドン、19年ドーハ両世界選手権で銅メダルを獲得した時には常に、「3走・桐生」がいた。その再現とばかりに、快走を見せる。アンカー・上山に日本伝統のバトンを“トップ”で持ってきた。

だが、大外9レーンのカナダ、7レーンの南アフリカ、4レーンの英国、2レーンのイタリアが逃げる上山に襲い掛かる。上山は予選とさほど変わらない力走を見せたが、他国がそれを上回った。優勝したカナダが出した37秒50は、日本が金メダルのターゲットタイムとして目指すものとピタリ同じ。3位の英国との差は0.17秒。あと一歩、目標に届かなかった。

サニブラウンは、悔しさを隠さずにこう語る。

「もっとももっと思い切り出られたなと思います。加速自体は悪くなかったけど、もっと思いっきり入れたら、早い段階で桐生さんに渡せて加速に乗ってもらえた。そうすれば、上山に渡すところももっともっと前になったと思います」

上山にもっとリードを作って渡せれば――。それこそが日本の狙いであり、それを果たせなかったサニブラウンは、自分を責めた。だが、「ぶっつけ本番だった」2走でサニブラウンが出した区間タイム8秒88は、全体のトップ。今の力は出し切った。

チームリーダーの桐生は、「本来なら、ハキーム君は100mで疲れているはずなので、1~3走でもっとリードしてハキーム君がアンカー」が理想と語るが、「頼っている部分があると思います」。

日本の中でサニブラウンが突出した存在となり、「個人でもハキーム君と勝負できるようにならないといけない」と、個人の走力アップの必要性を口にした。

1走の坂井は「本気でメダルを狙っていたし、いけると思っていたので本当に悔しい」と言えば、上山は「1番で持ってきてもらって、どんなリードでもしっかり守らないといけない。(メンバーに)本当にすいません、と話しました」。

5位でも「悔しい」。それが今の日本男子4継であり、リオ五輪の銀メダル以降、日本の4継が目指すものは「金メダル」になっている。

それでも、予選から決勝へ、タイムを0.3秒近く縮め、伝統のバトンパスの底力を世界に示した。桐生は「3大会連続の五輪でメンバーは違っていても、やっぱりバトンは日本の伝統が息づいています」と胸を張る。

サニブラウンも、まっすぐ前を見つめた。

「本当に金メダルを目指して、ここまでみんなが切磋琢磨してきました。その努力は叶わなかったけど、まだ自分たちの競技人生は終わりじゃない。来年の東京世界陸上、28年のロサンゼルス五輪で、日本のみなさんの前で金メダルを取りたい」

目標は、必ず実現させる。強い意志が、これからもバトンとともにつながれていく。

◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)9日目 パリ五輪・陸上競技9日目のイブニングセッションに行われ、男子4×100mリレーに出場した日本は、37秒78の日本歴代4位タイで5位に入り、2大会ぶり入賞を果たした。 予選が全体の4番目のタイムながら38秒06を擁し、組4着でのプラス通過。その結果を経て、メダル奪回を目指す日本は大きな“勝負”に出た。 昨年のブダペスト世界選手権、5月の世界リレー、今大会の予選と2走として世界のエースたちと戦ってきた栁田大輝(東洋大)から、サニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)に変更。個人の100mでファイナルこそ逃したが、日本歴代2位の9秒96(+0.5)をマークするなど今や日本の“エース”となったサニブラウンが、世界の強豪たちと対峙する。 サニブラウンが予選で担当した1走は、日本選手権2連覇の坂井隆一郎(大阪ガス)。世界選手権では2大会連続で務めてきたスターターの役割に復帰した。3走・桐生祥秀(日本生命)、アンカー・上山紘輝(住友電工)は予選と同じ。選手入場ではグータッチを交わし、トラックのそれぞれの場所へと散っていく。 その日本の戦略は、ほぼ成功した。1走の坂井が得意のスタートからの加速を発揮し、3レーンの急カーブを駆け抜ける。サニブラウンへのバトンパスも無難にこなした。 そしてサニブラウンが、米国がバトンパスに失敗するのを横目にグングン加速する。ほぼトップ争いの位置で、桐生にスムーズにバトンを託した。 16年リオ五輪の銀、17年ロンドン、19年ドーハ両世界選手権で銅メダルを獲得した時には常に、「3走・桐生」がいた。その再現とばかりに、快走を見せる。アンカー・上山に日本伝統のバトンを“トップ”で持ってきた。 だが、大外9レーンのカナダ、7レーンの南アフリカ、4レーンの英国、2レーンのイタリアが逃げる上山に襲い掛かる。上山は予選とさほど変わらない力走を見せたが、他国がそれを上回った。優勝したカナダが出した37秒50は、日本が金メダルのターゲットタイムとして目指すものとピタリ同じ。3位の英国との差は0.17秒。あと一歩、目標に届かなかった。 サニブラウンは、悔しさを隠さずにこう語る。 「もっとももっと思い切り出られたなと思います。加速自体は悪くなかったけど、もっと思いっきり入れたら、早い段階で桐生さんに渡せて加速に乗ってもらえた。そうすれば、上山に渡すところももっともっと前になったと思います」 上山にもっとリードを作って渡せれば――。それこそが日本の狙いであり、それを果たせなかったサニブラウンは、自分を責めた。だが、「ぶっつけ本番だった」2走でサニブラウンが出した区間タイム8秒88は、全体のトップ。今の力は出し切った。 チームリーダーの桐生は、「本来なら、ハキーム君は100mで疲れているはずなので、1~3走でもっとリードしてハキーム君がアンカー」が理想と語るが、「頼っている部分があると思います」。 日本の中でサニブラウンが突出した存在となり、「個人でもハキーム君と勝負できるようにならないといけない」と、個人の走力アップの必要性を口にした。 1走の坂井は「本気でメダルを狙っていたし、いけると思っていたので本当に悔しい」と言えば、上山は「1番で持ってきてもらって、どんなリードでもしっかり守らないといけない。(メンバーに)本当にすいません、と話しました」。 5位でも「悔しい」。それが今の日本男子4継であり、リオ五輪の銀メダル以降、日本の4継が目指すものは「金メダル」になっている。 それでも、予選から決勝へ、タイムを0.3秒近く縮め、伝統のバトンパスの底力を世界に示した。桐生は「3大会連続の五輪でメンバーは違っていても、やっぱりバトンは日本の伝統が息づいています」と胸を張る。 サニブラウンも、まっすぐ前を見つめた。 「本当に金メダルを目指して、ここまでみんなが切磋琢磨してきました。その努力は叶わなかったけど、まだ自分たちの競技人生は終わりじゃない。来年の東京世界陸上、28年のロサンゼルス五輪で、日本のみなさんの前で金メダルを取りたい」 目標は、必ず実現させる。強い意志が、これからもバトンとともにつながれていく。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.02.22

今年も福岡でクロカン日本一決定戦! 日本選手権&U20日本選手権クロカンに有力選手が多数出場

第108回日本選手権クロスカントリー、第40回U20日本選手権クロスカントリーは今日2月22日、福岡・海の中道海浜公園の1周2kmのコースを舞台に行われる。 日本選手権は男子が10km、女子が8kmで争われ、男子にはパリ […]

NEWS 編集部コラム「奥が深い」

2025.02.21

編集部コラム「奥が深い」

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]

NEWS ひらまつ病院にニューイヤー駅伝3年連続出走の三田眞司が加入 「チームの最高順位に貢献」

2025.02.21

ひらまつ病院にニューイヤー駅伝3年連続出走の三田眞司が加入 「チームの最高順位に貢献」

ひらまつ病院は2月16日付で、サンベルクスに所属していた三田眞司が加入したと発表した。 29歳の三田は神奈川県出身。光明学園相模原高では3年時に全国都道府県対抗男子駅伝4区9位と力走。国士大では3年時に全日本大学駅伝で3 […]

NEWS 斎藤将也、不破聖衣来、菖蒲敦司らが欠場を発表/日本選手権クロカン

2025.02.21

斎藤将也、不破聖衣来、菖蒲敦司らが欠場を発表/日本選手権クロカン

福岡クロカン事務局は第108回日本選手権クロスカントリーの2月21日時点での欠場者リストを公開した。 男子では斎藤将也(城西大)や谷本昂士郎(順大)ら5人が新たに欠場を発表。女子は不破聖衣来、新井沙希(ともに拓大)、板井 […]

NEWS 国内唯一の室内100mに山縣亮太が登場 投てきは幸長慎一に注目 走幅跳8m40の台湾記録保持者参戦/JAG大崎

2025.02.21

国内唯一の室内100mに山縣亮太が登場 投てきは幸長慎一に注目 走幅跳8m40の台湾記録保持者参戦/JAG大崎

2025 Japan Athlete Games in Osakiが2月23日、鹿児島県大崎町のジャパンアスリートトレーニングセンター大隅で開催される。 この大会は2020年鹿児島国体がコロナ禍で中止(2023年に特別大 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年3月号 (2月14日発売)

2025年3月号 (2月14日発売)

別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝

page top