8月1日~11日の日程で開催されているパリ五輪の陸上競技。その男子200m決勝が行われ、レツィレ・テボゴ(ボツワナ)が世界歴代5位、アフリカ新記録の19秒46(+0.4)で優勝した。日本勢は鵜澤飛羽(筑波大)がただ1人準決勝に進出。予選で五輪日本人最高タイムの20秒33(+0.1)をマークするなど奮闘した。上山紘輝(住友電工)、陸上最多タイとなる4大会連続出場の飯塚翔太(ミズノ)はいずれも予選で敗退し、敗者復活でも準決勝に進めなかった。2008年北京五輪男子4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に、レースを振り返ったもらった。
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鵜澤飛羽選手は、初出場の五輪で予選からしっかり走る姿を見て、すごいなと感じました。第一人者のノア・ライルズ選手(米国)らがいるメンバーの中で、末續慎吾さんが東海大2年だった2000年シドニー五輪2次予選で出した20秒37を上回る五輪日本人最高タイム。彼にとって、大きな経験になったのではないでしょうか。
鵜澤選手のレーススタイルとしては前半は抑え気味に入り、得意の後半で一気に突き抜けるというもの。今回は、その後半につなげられる流れを作りつつ前半から行けていたと感じます。
ただ、それでも準決勝では厳しい戦いになりました。前半からついていかないといいけないし、それでも後半を上げないといけない。世界の200mは今、そういう流れです。優勝したレツィレ・テボゴ選手は、これまで決して前半が速いタイプではありませんでした。しかし、決勝はトップで直線に入り、そのまま後半で他を圧倒しています。
そういう意味で、鵜澤選手の課題はやはり前半で、トップスピードを上げること、そのためにフィジカルを上げることが求められるでしょう。五輪の2本で、感覚的な課題を得られたと思います。それは非常に大きなものになるはずなので、ぜひ今後に生かしていってほしいです。
上山紘輝選手、飯塚翔太選手は、予選、敗者復活戦ともに、持ち味を発揮できませんでした。
上山選手は自分の持っている感覚と、実際に走った時の感覚に開きがあったように感じました。本来の前半を“滑る”ように入り、後半しっかり上げていく持ち味が出し切れなかった。頑張らなくていいところで、頑張らざるを得ない状況になり、後半が上がり切りませんでした。
飯塚選手の4大会連続出場は本当に素晴らしいこと。ただ、いずれも準決勝に進めませんでした。本来の“飯塚翔太”の走りを見たかったですし、代表として来ているからには状態がどうあれ結果を残してほしかったという思いがあります。
また、連続出場の裏返しとしては、飯塚選手に代わる選手がいなかったということ。日本の200mにとっては課題と言えるでしょう。
前述したように、テボゴ選手の走りは圧倒的でした。新型コロナウイルス陽性の状態だったライルズ選手が万全でも、簡単に勝てる相手ではなかったでしょう。ウサイン・ボルトさん、米国勢が中心だったスプリントの時代が、大きく動いたと感じています。
2大会連続銀メダルのケネス・ベドナレク選手(米国)、万全でなくとも銅メダルを確保したライルズ選手は、さすがの一言。上位3選手は100mの入りが特別速いわけではなく、100mのスピードを維持できるタイプです。それでも19秒台半ばを出せるということは、日本人選手だって19秒台は現実的な目標にできます。追いかける存在としては申し分ないのではないでしょうか。
テボゴ選手、ベドナレク選手、ライルズ選手はいずれも100mも兼ねています。それを、日本人選手も見習うべきかどうかは、難しいところです。1種目で通用していない現時点では、複数種目へのチャレンジよりも、種目を絞ってその種目で結果を残すことに集中する選択があってもいいのでは、と感じます。
◎高平慎士(たかひら・しんじ)
富士通陸上競技部一般種目ブロック長。五輪に3大会連続(2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン)で出場し、北京大会では4×100mリレーで銀メダルに輝いた(3走)。自己ベストは100m10秒20、200m20秒22(日本歴代7位)
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