2020.10.15
第97回箱根駅伝予選会は10月17日(土)、東京・立川市の陸上自衛隊立川駐屯地で行われる。本戦への出場枠は前回と変わらず「10」。今回は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から国営昭和記念公園内や市街地には出ず、陸上自衛隊立川駐屯地内の周回コースのみで実施される。“無観客”という異例のかたちだが、選考方法は従来通り。各校10名以上12名以下がハーフマラソンに出走し、各校の上位10人の合計タイムで争われる。10月5日のチームエントリーを反映させた最新情報で予選会の勢力図を分析しよう。
神奈川大と拓大のキャプテンがエントリー外
山梨学大は留学生・ムルアを起用せず
箱根駅伝予選会のエントリーが10月5日に行われ、登録選手が確定したことで大会の勢力図が見えてきた。
エース級が多数エントリーから外れるような“アクシデント”はなかったものの、神奈川大は箱根本戦でエース区間の2区を走った北崎拓矢(4年)、拓大は同5区を担った石川佳樹(4年)と、ともにチームの主軸である主将がメンバーから外れた。山梨学大も10000mで28分08秒10を持つボニフェス・ムルア(2年)や、関東学生連合チームの一員として箱根路を駆け抜けた渡邊晶紀(3年)がエントリー外。日体大も箱根経験者である4年生3人(大内一輝、太田哲朗、亀田優太朗)を登録しなかった。
【エントリーに入れなかった有力選手】
選手名(所属) 10000m 箱根2020成績
石綿宏人(中央学大4) 29.11.06 10区18位
千守倫央(中大2) 28.37.68 1区16位
若林陽大(中大2) 29.27.93 6区10位
中野翔太(中大1) 28.58.80 ―
石川佳樹(拓大4) 29.16.75 5区11位
真砂春希(順大4) 29.27.91 5区14位
平 駿介(順大2) 28.48.40 ―
久納 碧(法大3) 29.53.46 1区19位
北崎拓矢(神奈川大4) 28.57.30 2区20位
大内一輝(日体大4) 29.04.21 7区17位
太田哲朗(日体大4) 29.16.12 4区18位
亀田優太朗(日体大4) 29.01.81 3区20位
宮﨑佑喜(日大4) 30.31.01 6区4位
橋口大希(日大3) 29.35.68 9区20位
孝田拓海(国士大4) 30.00.46 10区14位
P.ギトンガ(国士大4) 28.13.38 ―
荻原陸斗(国士大3) 29.52.10 1区20位
渡邊晶紀(山梨学大3) 29.37.85 9区11位※
B.ムルア(山梨学大2) 28.08.10 ―
※前回の箱根駅伝出場者と10000m28分台のベストを持つ選手
※渡邊は関東学生連合として出場
平均タイムは中大がダントツ
順大、中央学大もトップ通過候補
昨年の箱根駅伝出場校(シード校は除く)、前回の予選会11位~18位の計18チームを対象としてエントリー選手の5000m、10000m、ハーフマラソンの自己ベスト上位10人平均をまとめ、各種目ごとのランキングを得点化したものが以下の表だ。
【総合力評価】
①中 大 4(②―①―①)
②順 大 8(①―②―⑤)
③中央学大 11(④―④―③)
④日 大 12(⑤―③―④)
⑤日 体 大 16(⑥―⑧―②)
〃山梨学大 16(③―⑤―⑧)
⑦国 士 大 23(⑦―⑦―⑨)
⑧城 西 大 28.5(⑧―⑥―14)
⑨神奈川大 31(⑨―16―⑥)
⑩拓 大 34(18―⑨―⑦)
⑪駿河台大 35(⑩―12―13)
⑫上 武 大 37(17―⑩―⑩)
⑬筑 波 大 39(15―13―11)
⑭麗 澤 大 40(14―14―12)
〃大 東 大 40(12―11―17)
⑯法 大 42.5(11―17―14)
⑰東 農 大 46(13―15―18)
⑱専 大 50(16―18―16)
※3種目のランキングを得点化して合計(同順位は按分)
※カッコ内の数字は左から5000m、10000m、ハーフマラソンのランキング
※留学生が2人いる場合は1人のみ反映
10000m28分台を持つ千守倫央(2年)と中野翔太(1年)らを欠いた中大は、それでも5000m2位、10000m1位、ハーフマラソン1位とずば抜けた戦力を誇る。エース格の北﨑を欠いた神奈川大はベストメンバーなら5000m6位、10000m8位につけていたが、それぞれ9位、16位と大きく落とした。
これらと過去の実績などを総合すると、今大会の勢力図は以下のようになると予想する。
■今大会の勢力図予想
A(1位通過候補)
中大、順大、中央学大
B(通過濃厚)
日体大、日大
C(通過有力)
神奈川大、山梨学大
D(ボーダーライン)
拓大、法大、国士大、筑波大、麗澤大、駿河台大、上武大、城西大
E(チャレンジ)
専大、東農大、大東大など
日本インカレ5000mを制するなど1年生ながらエース級の活躍が光る中大の吉居大和
トップ通過を狙えるのは中大、順大、中央学大あたりか。中大は5000mで日本インカレを制した吉居大和、順大は3000m障害で学生記録を持つ三浦龍司と、いずれも学生トップクラスのスピードを誇るスーパールーキーをエントリー。どちらも初のハーフマラソンとなり、その走りに注目が集まる。両校とも経験豊富な上級生がそろい、1位通過となれば平成以降ではチーム初となる。中央学大は6年ぶりの予選会出場となるが、10000m28分台を持つ髙橋翔也(4年)、栗原啓吾(3年)、小島慎也(2年)、ハーフマラソンで1時間1分台を持つ戸口豪琉(4年)ら主力選手が無事にエントリー。目標に掲げる「トップ通過」も現実味を帯びてきた。
〝3強〟を除けば、日大と日体大も戦力が充実しており、通過は濃厚と言える。日大は留学生のチャールズ・ドゥング(2年)が強力で、日本人も昨年以上に選手がそろってきている。日体大もハーフマラソンで関東ナンバーワンの自己記録(1時間1分36秒)を持つ池田耀平(4年)を軸にハーフの10人平均は2位。両校とも主力のエントリー漏れが多少あるものの、落選の可能性は極めて低いと言っていい。予選会の戦いを熟知して得意としている神奈川大、戦力が充実している山梨学大も通過の有力候補だ。
ボーダーライン上の戦いは今年も混戦が予想され、1つのミスが命取りになる。前回出場校の拓大、法大、国士大、筑波大は連続出場を堅守したい一方で、初出場を狙う麗澤大、駿河台大も戦力的には十分チャンスがあると見ていいだろう。
吉居と三浦はルーキー11年ぶりの快挙に期待
湘南工科大が予選会初出場
昨年も全体上位を占めた留学生。右から前回個人2位のライモイ・ヴィンセント(国士大)、同4位のチャールズ・ドゥング(日大)、同26位のノア・キプリモ(日本薬科大)
前回はスタート後に気温が急上昇した影響で、過去最高レベルだった前々回に比べて記録水準が低下。今回はアップダウンの激しい昭和記念公園内を使用しないことに加え、当日は雨で気温が下がる走りやすいコンディションが予想されることから、全体トップが1時間1分前後、日本人トップは1時間2分前後の高速レースが予想される。
そうなると、序盤で強力なケニア人留学生が抜け出す可能性が高く、前回個人2位につけたライモイ・ヴィンセント(国士大3)、同4位のドゥング、日本インカレ10000m優勝のジェームス・ブヌカ(駿河台大3)あたりが個人トップ候補に挙がる。日本人ではハーフマラソンで上位の持ちタイムを持つ日体大の池田と上武大の岩崎大洋(4年)、トラックで存在感を示す城西大の菅原伊織(4年)や山梨学大の森山あたりが有力で、吉居と三浦は2009年の村澤明伸(東海大/現・日清食品グループ)以来となる1年生での日本人トップの可能性も十分ある。
出場校全体に目を通すと、今回は前回より3校増の46チームが出場。なかでも湘南工科大は唯一初出場を決め、大学の歴史に新たな1ページを刻む。立正大、茨城大、埼玉大は久しぶりの予選会出場だ。
シード校を目指す強豪校から、久しぶりの本戦返り咲きを狙う名門校、初出場に意気込む新興校まで、さまざまなドラマが渦巻く〝駐屯地決戦〟はどんな結末を迎えるのだろうか。
神奈川大と拓大のキャプテンがエントリー外 山梨学大は留学生・ムルアを起用せず
箱根駅伝予選会のエントリーが10月5日に行われ、登録選手が確定したことで大会の勢力図が見えてきた。 エース級が多数エントリーから外れるような“アクシデント”はなかったものの、神奈川大は箱根本戦でエース区間の2区を走った北崎拓矢(4年)、拓大は同5区を担った石川佳樹(4年)と、ともにチームの主軸である主将がメンバーから外れた。山梨学大も10000mで28分08秒10を持つボニフェス・ムルア(2年)や、関東学生連合チームの一員として箱根路を駆け抜けた渡邊晶紀(3年)がエントリー外。日体大も箱根経験者である4年生3人(大内一輝、太田哲朗、亀田優太朗)を登録しなかった。【エントリーに入れなかった有力選手】 選手名(所属) 10000m 箱根2020成績 石綿宏人(中央学大4) 29.11.06 10区18位 千守倫央(中大2) 28.37.68 1区16位 若林陽大(中大2) 29.27.93 6区10位 中野翔太(中大1) 28.58.80 ― 石川佳樹(拓大4) 29.16.75 5区11位 真砂春希(順大4) 29.27.91 5区14位 平 駿介(順大2) 28.48.40 ― 久納 碧(法大3) 29.53.46 1区19位 北崎拓矢(神奈川大4) 28.57.30 2区20位 大内一輝(日体大4) 29.04.21 7区17位 太田哲朗(日体大4) 29.16.12 4区18位 亀田優太朗(日体大4) 29.01.81 3区20位 宮﨑佑喜(日大4) 30.31.01 6区4位 橋口大希(日大3) 29.35.68 9区20位 孝田拓海(国士大4) 30.00.46 10区14位 P.ギトンガ(国士大4) 28.13.38 ― 荻原陸斗(国士大3) 29.52.10 1区20位 渡邊晶紀(山梨学大3) 29.37.85 9区11位※ B.ムルア(山梨学大2) 28.08.10 ― ※前回の箱根駅伝出場者と10000m28分台のベストを持つ選手 ※渡邊は関東学生連合として出場
平均タイムは中大がダントツ 順大、中央学大もトップ通過候補
昨年の箱根駅伝出場校(シード校は除く)、前回の予選会11位~18位の計18チームを対象としてエントリー選手の5000m、10000m、ハーフマラソンの自己ベスト上位10人平均をまとめ、各種目ごとのランキングを得点化したものが以下の表だ。【総合力評価】 ①中 大 4(②―①―①) ②順 大 8(①―②―⑤) ③中央学大 11(④―④―③) ④日 大 12(⑤―③―④) ⑤日 体 大 16(⑥―⑧―②) 〃山梨学大 16(③―⑤―⑧) ⑦国 士 大 23(⑦―⑦―⑨) ⑧城 西 大 28.5(⑧―⑥―14) ⑨神奈川大 31(⑨―16―⑥) ⑩拓 大 34(18―⑨―⑦) ⑪駿河台大 35(⑩―12―13) ⑫上 武 大 37(17―⑩―⑩) ⑬筑 波 大 39(15―13―11) ⑭麗 澤 大 40(14―14―12) 〃大 東 大 40(12―11―17) ⑯法 大 42.5(11―17―14) ⑰東 農 大 46(13―15―18) ⑱専 大 50(16―18―16) ※3種目のランキングを得点化して合計(同順位は按分) ※カッコ内の数字は左から5000m、10000m、ハーフマラソンのランキング ※留学生が2人いる場合は1人のみ反映10000m28分台を持つ千守倫央(2年)と中野翔太(1年)らを欠いた中大は、それでも5000m2位、10000m1位、ハーフマラソン1位とずば抜けた戦力を誇る。エース格の北﨑を欠いた神奈川大はベストメンバーなら5000m6位、10000m8位につけていたが、それぞれ9位、16位と大きく落とした。 これらと過去の実績などを総合すると、今大会の勢力図は以下のようになると予想する。
■今大会の勢力図予想 A(1位通過候補) 中大、順大、中央学大 B(通過濃厚) 日体大、日大 C(通過有力) 神奈川大、山梨学大 D(ボーダーライン) 拓大、法大、国士大、筑波大、麗澤大、駿河台大、上武大、城西大 E(チャレンジ) 専大、東農大、大東大など日本インカレ5000mを制するなど1年生ながらエース級の活躍が光る中大の吉居大和 トップ通過を狙えるのは中大、順大、中央学大あたりか。中大は5000mで日本インカレを制した吉居大和、順大は3000m障害で学生記録を持つ三浦龍司と、いずれも学生トップクラスのスピードを誇るスーパールーキーをエントリー。どちらも初のハーフマラソンとなり、その走りに注目が集まる。両校とも経験豊富な上級生がそろい、1位通過となれば平成以降ではチーム初となる。中央学大は6年ぶりの予選会出場となるが、10000m28分台を持つ髙橋翔也(4年)、栗原啓吾(3年)、小島慎也(2年)、ハーフマラソンで1時間1分台を持つ戸口豪琉(4年)ら主力選手が無事にエントリー。目標に掲げる「トップ通過」も現実味を帯びてきた。 〝3強〟を除けば、日大と日体大も戦力が充実しており、通過は濃厚と言える。日大は留学生のチャールズ・ドゥング(2年)が強力で、日本人も昨年以上に選手がそろってきている。日体大もハーフマラソンで関東ナンバーワンの自己記録(1時間1分36秒)を持つ池田耀平(4年)を軸にハーフの10人平均は2位。両校とも主力のエントリー漏れが多少あるものの、落選の可能性は極めて低いと言っていい。予選会の戦いを熟知して得意としている神奈川大、戦力が充実している山梨学大も通過の有力候補だ。 ボーダーライン上の戦いは今年も混戦が予想され、1つのミスが命取りになる。前回出場校の拓大、法大、国士大、筑波大は連続出場を堅守したい一方で、初出場を狙う麗澤大、駿河台大も戦力的には十分チャンスがあると見ていいだろう。
吉居と三浦はルーキー11年ぶりの快挙に期待 湘南工科大が予選会初出場
昨年も全体上位を占めた留学生。右から前回個人2位のライモイ・ヴィンセント(国士大)、同4位のチャールズ・ドゥング(日大)、同26位のノア・キプリモ(日本薬科大) 前回はスタート後に気温が急上昇した影響で、過去最高レベルだった前々回に比べて記録水準が低下。今回はアップダウンの激しい昭和記念公園内を使用しないことに加え、当日は雨で気温が下がる走りやすいコンディションが予想されることから、全体トップが1時間1分前後、日本人トップは1時間2分前後の高速レースが予想される。 そうなると、序盤で強力なケニア人留学生が抜け出す可能性が高く、前回個人2位につけたライモイ・ヴィンセント(国士大3)、同4位のドゥング、日本インカレ10000m優勝のジェームス・ブヌカ(駿河台大3)あたりが個人トップ候補に挙がる。日本人ではハーフマラソンで上位の持ちタイムを持つ日体大の池田と上武大の岩崎大洋(4年)、トラックで存在感を示す城西大の菅原伊織(4年)や山梨学大の森山あたりが有力で、吉居と三浦は2009年の村澤明伸(東海大/現・日清食品グループ)以来となる1年生での日本人トップの可能性も十分ある。 出場校全体に目を通すと、今回は前回より3校増の46チームが出場。なかでも湘南工科大は唯一初出場を決め、大学の歴史に新たな1ページを刻む。立正大、茨城大、埼玉大は久しぶりの予選会出場だ。 シード校を目指す強豪校から、久しぶりの本戦返り咲きを狙う名門校、初出場に意気込む新興校まで、さまざまなドラマが渦巻く〝駐屯地決戦〟はどんな結末を迎えるのだろうか。
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