2024.07.31
いよいよ開幕したパリ五輪。陸上競技は8月1日から11日の日程で行われる。ここでは海外の注目選手たちを紹介していく。
パリ五輪みどころ【日本男子トラック編】
パリ五輪みどころ【日本男子フィールド編】
パリ五輪みどころ【日本女子編】
パリ五輪みどころ【日本男女ロード編】
今季世界新のマフチフ、アレクナも注目
ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が2017年に引退して以降、陸上界に不在だったスーパースターの座に、ノア・ライルズ(米国)が挑もうとしている。
昨年のブダペスト世界選手権で、そのボルト以来となる100m、200m、4×100mリレーの3冠を獲得。200mは3連覇を達成した。五輪でも同じ快挙を成し遂げれば、ボルトが16年リオ大会で達成して以来の偉業だ。
100mは五輪前最後のダイヤモンドリーグ(DL)だった7月20日のロンドン大会を9秒81(-0.3)の自己新で制覇。200mは一昨年のオレゴン世界選手権で26年ぶり全米新、世界歴代3位の19秒31を出しており、ボルトの世界記録(19秒19)の更新も視野に。
前回王者のラモント・マルセル・ジェイコブス(イタリア)、ジャマイカ選手権で今季世界最高の9秒77をマークして優勝したキシェーン・トンプソン、2位のオブリク・セヴィル、ケニー・ベドナレク(米国)、フレッド・カーリー(同)らがライバルとなる100mが偉業への最大の難関となる。だが、それを乗り越えれば3冠がいよいよ現実味を帯び、意欲を示す4×400mリレー決勝に登場となれば、母国のレジェンド、カール・ルイスが1984年ロサンゼルス大会で果たした「4冠」すらも可能だ。
男子100決勝は8月5日午前4時50分(現地時間4日午後9時50分)、200m決勝は8月9日午前3時30分(現地時間8日午後8時30分)、4×100mリレーは8月10日午前2時47分(現地時間9日午後7時47分)、4×400mリレーはトラック&フィールド競技の男子最終種目として8月11日午前4時(現地時間8月10日午後9時)に実施予定。新たな歴史の誕生となるか。
世界新記録誕生の可能性を見ると、男子棒高跳のアルマンド・デュプランティス(スウェーデン)がその筆頭となる。
24歳にして、記録、タイトルを欲しいままにしてきた、まさに“棒高跳の申し子”。今季屋外初戦だった4月のDL厦門で、自身8度目の世界新となる6m24に成功するなど、今季も好調だ。連覇はほぼ間違いなく、パリの夜空にどれほどの高さのバーをかけ、それを越えるか焦点となるだろう。
対して、白熱のライバル対決から大記録誕生なるかに注目が集まるのが、男女400mハードルだ。前回の東京では、男子はカールステン・ワルホルム(ノルウェー)が史上初の45秒台(45秒94)、女子はシドニー・マクローリン(米国)が51秒46とそろって世界新Vを飾っている。
そこから、さらに記録を短縮しているのがマクローリンだ。22年のオレゴン世界選手権では女子初の51秒切りとなる50秒68、その記録を全米五輪選考会で50秒65にまで短縮した。23年に結婚してマクローリン・レヴロンとして挑む3度目の五輪では、夢の50秒突破すら視野に入る。
ただ、それを阻まんと、フェムケ・ボル(オランダ)も調子を上げている。7月に世界歴代2位の自己ベスト(51秒45)を一気に0.5秒更新し、史上2人目の50秒台突入(50秒95)を果たした。「世紀のライバル対決」の結末は、いかに。
男子もワルホルムを中心に、ライ・ベンジャミン(米国)、アリソン・ドス・サントス(ブラジル)と世界歴代1~3位の選手が万全の状態で本番を迎えそう。45秒台決着の予感すら漂う。
男子110mハードルも、世界歴代2位の12秒81を持つグラント・ホロウェイ(米国)が絶好調。全米五輪選考会ではパフォーマンス世界歴代4位の12秒86をマークした。前回は後半のインターバルをさばき切れずに2位に甘んじたが、初の金メダルを12年ぶりの世界記録(12秒80)更新で飾れるか。
DLパリで女子走高跳の歴史を37年ぶりに1㎝動かす2m10に成功したヤロスラワ・マフチフ(ウクライナ)、男子フィールド最古の世界記録(74m08)を74m35に塗り替えた円盤投のマイコラス・アレクナ(リトアニア)にも、再度の世界新に期待がかかる。
女子マラソンは“世界記録保持者対決”となる。昨年9月のベルリンで2時間11分53秒の驚異的世界新記録を樹立したティギスト・アセファ(エチオピア)、4位までが女子単独レース世界新をマークした4月のロンドンを2時間16分16秒で制したペレス・ジェプチルチル(ケニア)がどんな勝負を繰り広げるか。その他にもハイレベルの選手がそろい、熱戦となりそうだ。
記録、勝負の面では女子スプリントも見逃せない。2大会連続100m、200m2冠の女王、エライン・トンプソン・ヘラー(ジャマイカ)が不在のなか、100mはブダペスト世界選手権1位、2位のシャカリ・リチャードソン(米国)とシェリカ・ジャクソン(ジャマイカ)が「新女王」の座を懸けて激突する。自己ベストはともに世界歴代5位タイの10秒65。そこから突き抜けたほうに、栄冠が輝くことになるだろう。ジャクソンは、世界選手権2連覇中の200mでも初の金メダルと、あと0.07秒に迫った世界記録(21秒34)の更新なるかにも注目が集まる。
また、ライルズに負けじと複数タイトルに挑む選手も多い。その中でも“悲願”に懸けるのが男子中長距離のヤコブ・インゲブリグトセン(ノルウェー)だ。
前回の東京は1500m優勝。翌年からの世界選手権は2大会連続で1500m2位、5000m優勝。3大会連続で金メダルを手にしてはいるが、2冠にはなかなか手が届いていない。この組み合わせでは2004年アテネ大会のヒシャム・エル・ゲルージ(モロッコ)以来、史上3人目の偉業をつかむことができるか。
女子では、シファン・ハッサン(エチオピア)が1500m、5000m、10000m、マラソンの4種目にエントリーした。また、グダフ・ツェガイ(エチオピア)も1500m、5000m、10000mの3種目に登録。複数種目へのチャレンジから、複数タイトルへとつながるだろうか。
今季世界新のマフチフ、アレクナも注目
ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が2017年に引退して以降、陸上界に不在だったスーパースターの座に、ノア・ライルズ(米国)が挑もうとしている。 昨年のブダペスト世界選手権で、そのボルト以来となる100m、200m、4×100mリレーの3冠を獲得。200mは3連覇を達成した。五輪でも同じ快挙を成し遂げれば、ボルトが16年リオ大会で達成して以来の偉業だ。 100mは五輪前最後のダイヤモンドリーグ(DL)だった7月20日のロンドン大会を9秒81(-0.3)の自己新で制覇。200mは一昨年のオレゴン世界選手権で26年ぶり全米新、世界歴代3位の19秒31を出しており、ボルトの世界記録(19秒19)の更新も視野に。 前回王者のラモント・マルセル・ジェイコブス(イタリア)、ジャマイカ選手権で今季世界最高の9秒77をマークして優勝したキシェーン・トンプソン、2位のオブリク・セヴィル、ケニー・ベドナレク(米国)、フレッド・カーリー(同)らがライバルとなる100mが偉業への最大の難関となる。だが、それを乗り越えれば3冠がいよいよ現実味を帯び、意欲を示す4×400mリレー決勝に登場となれば、母国のレジェンド、カール・ルイスが1984年ロサンゼルス大会で果たした「4冠」すらも可能だ。 男子100決勝は8月5日午前4時50分(現地時間4日午後9時50分)、200m決勝は8月9日午前3時30分(現地時間8日午後8時30分)、4×100mリレーは8月10日午前2時47分(現地時間9日午後7時47分)、4×400mリレーはトラック&フィールド競技の男子最終種目として8月11日午前4時(現地時間8月10日午後9時)に実施予定。新たな歴史の誕生となるか。 世界新記録誕生の可能性を見ると、男子棒高跳のアルマンド・デュプランティス(スウェーデン)がその筆頭となる。 24歳にして、記録、タイトルを欲しいままにしてきた、まさに“棒高跳の申し子”。今季屋外初戦だった4月のDL厦門で、自身8度目の世界新となる6m24に成功するなど、今季も好調だ。連覇はほぼ間違いなく、パリの夜空にどれほどの高さのバーをかけ、それを越えるか焦点となるだろう。 対して、白熱のライバル対決から大記録誕生なるかに注目が集まるのが、男女400mハードルだ。前回の東京では、男子はカールステン・ワルホルム(ノルウェー)が史上初の45秒台(45秒94)、女子はシドニー・マクローリン(米国)が51秒46とそろって世界新Vを飾っている。 そこから、さらに記録を短縮しているのがマクローリンだ。22年のオレゴン世界選手権では女子初の51秒切りとなる50秒68、その記録を全米五輪選考会で50秒65にまで短縮した。23年に結婚してマクローリン・レヴロンとして挑む3度目の五輪では、夢の50秒突破すら視野に入る。 ただ、それを阻まんと、フェムケ・ボル(オランダ)も調子を上げている。7月に世界歴代2位の自己ベスト(51秒45)を一気に0.5秒更新し、史上2人目の50秒台突入(50秒95)を果たした。「世紀のライバル対決」の結末は、いかに。 男子もワルホルムを中心に、ライ・ベンジャミン(米国)、アリソン・ドス・サントス(ブラジル)と世界歴代1~3位の選手が万全の状態で本番を迎えそう。45秒台決着の予感すら漂う。 男子110mハードルも、世界歴代2位の12秒81を持つグラント・ホロウェイ(米国)が絶好調。全米五輪選考会ではパフォーマンス世界歴代4位の12秒86をマークした。前回は後半のインターバルをさばき切れずに2位に甘んじたが、初の金メダルを12年ぶりの世界記録(12秒80)更新で飾れるか。 DLパリで女子走高跳の歴史を37年ぶりに1㎝動かす2m10に成功したヤロスラワ・マフチフ(ウクライナ)、男子フィールド最古の世界記録(74m08)を74m35に塗り替えた円盤投のマイコラス・アレクナ(リトアニア)にも、再度の世界新に期待がかかる。 女子マラソンは“世界記録保持者対決”となる。昨年9月のベルリンで2時間11分53秒の驚異的世界新記録を樹立したティギスト・アセファ(エチオピア)、4位までが女子単独レース世界新をマークした4月のロンドンを2時間16分16秒で制したペレス・ジェプチルチル(ケニア)がどんな勝負を繰り広げるか。その他にもハイレベルの選手がそろい、熱戦となりそうだ。 記録、勝負の面では女子スプリントも見逃せない。2大会連続100m、200m2冠の女王、エライン・トンプソン・ヘラー(ジャマイカ)が不在のなか、100mはブダペスト世界選手権1位、2位のシャカリ・リチャードソン(米国)とシェリカ・ジャクソン(ジャマイカ)が「新女王」の座を懸けて激突する。自己ベストはともに世界歴代5位タイの10秒65。そこから突き抜けたほうに、栄冠が輝くことになるだろう。ジャクソンは、世界選手権2連覇中の200mでも初の金メダルと、あと0.07秒に迫った世界記録(21秒34)の更新なるかにも注目が集まる。 また、ライルズに負けじと複数タイトルに挑む選手も多い。その中でも“悲願”に懸けるのが男子中長距離のヤコブ・インゲブリグトセン(ノルウェー)だ。 前回の東京は1500m優勝。翌年からの世界選手権は2大会連続で1500m2位、5000m優勝。3大会連続で金メダルを手にしてはいるが、2冠にはなかなか手が届いていない。この組み合わせでは2004年アテネ大会のヒシャム・エル・ゲルージ(モロッコ)以来、史上3人目の偉業をつかむことができるか。 女子では、シファン・ハッサン(エチオピア)が1500m、5000m、10000m、マラソンの4種目にエントリーした。また、グダフ・ツェガイ(エチオピア)も1500m、5000m、10000mの3種目に登録。複数種目へのチャレンジから、複数タイトルへとつながるだろうか。3連覇に挑むキプチョゲ、クルーザー、キピエゴン、ティアム
東京からパリはイレギュラーの3年スパンとなったが、4年に1度が基本の五輪において、連覇はもちろん、3連覇となると至難の業とも言える。しかも、それがマラソンとなれば言わずもがなだ。その快挙を狙うのが、エリウド・キプチョゲ(ケニア)だ。五輪は04年アテネ大会に初登場し、これが5回目。前半2回はトラック種目で臨み、5000mでアテネは銅メダル、北京大会は銀メダルだった。初の金メダルはマラソンで初出場した16年リオだった。 マラソンで20戦16勝という驚異的な勝率を残し、2019年には非公認ながら人類初の2時間切り(1時間59分40秒2)を果たした、マラソンの神様。39歳にして、またその輝かしいキャリアに新たな勲章を刻もうとしている。 このほか、3連覇に挑むのが男子砲丸投のライアン・クルーザー(米国)、女子1500mのフェイス・キピエゴン(ケニア)、同七種競技のナフィサットゥ・ティアム(ベルギー)の3人。 クルーザーはケガの影響で6月末の全米五輪選考会が今季屋外初戦だったが、22m84をプットし、今季リストトップ(23m13)のジョー・コヴァクス(米国)を抑えて優勝した。キピエゴンは7月7日のDLパリで、自身の世界記録を0.07秒更新する3分49秒04を樹立。ケガの影響で出遅れていたが、一気に調子を上げてきた。ティアムは欧州選手権で約2年ぶりの七種競技に挑み、6848点で快勝した。3連覇達成となれば、それぞれの種目で史上初の快挙となる。 また、女子ハンマー投には3連覇中のアニタ・ヴォダルチク(ポーランド)もエントリーした。8月8日で39歳となる世界記録保持者。今季ベストは72m92にとどまっているが、女子の個人種目では史上初となる4連覇の権利を有している。また、女子100mのシェリーアン・フレイザー・プライス(ジャマイカ)は、五輪の通算メダル獲得数が8個。リレーを含めて2つ伸ばすようだと、マリーン・オッティ(ジャマイカ)を抜き、11個のアリソン・フェリックス(米国)に次ぐ歴代2位となる。 その他にも、男子では世界記録保持者のラメチャ・ギルマ(エチオピア)と世界大会3連覇中のソフィアン・エル・バッカリ(モロッコ)が激突する3000m障害、好記録が続出している400m、800m、走幅跳、三段跳、女子では100mハードル、走幅跳などでハイレベルの争いが展開されそう。競歩も近年は高速化が進み、初実施の男女混合競歩リレーを含めて激戦予想だ。 見どころ満載の11日間、歴史的瞬間を見逃すな。
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