2024.07.23
富士通は7月23日、男子20km競歩世界記録保持者の鈴木雄介が7月末日をもって、現役引退ならびに退職することを発表した。
鈴木は石川県辰口町(現・能美市)出身の36歳。小学生の時に、兄が陸上のクラブチームに入ったのをきっかけに、陸上を始め、最初は長距離を専門に活動。競歩が盛んな地域だったこともあり、中学2年から専門的に競歩の練習を始め、3000m、3km、5000mで日本中学最高記録を残すなど、早くから才能を開花させた。
小松高では1年からインターハイで2位に入り、3年時には日本一に輝いたほか、05年世界ユース選手権と翌年の世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得。国際的な活躍を見せていた。世界選手権は09年ベルリン大会で初出場を果たしてから、11年テグ大会で8位に入賞。12年ロンドン五輪にも出場している。
15年全日本競歩能美大会では今も世界記録として残る1時間16分36秒の世界記録を樹立。五輪実施種目では日本人男子としては50年ぶりの快挙でもあった。
だが、以降は恥骨のケガやオーバートレーニング症候群などに苦しむようになり、15年8月の北京世界選手権に出場するものの途中棄権し、その後は長く競技会から離れることも多くなった。
それでも18年5月に競技復帰すると、翌19年の日本選手権50km競歩で3時間39分07秒の日本記録(当時)を打ち立てて優勝。さらに、9月のドーハ世界選手権では競歩史上初の世界大会金メダルを手にした。
同大会の成績により2020東京五輪の代表にも内定したが、開催が延期された21年にコンディションを理由に出場辞退を発表している。
その後は23年の東日本実業団で競技に復帰。9月の全日本実業団選手権10000m競歩で7位に入ったのが最後のレースだった。
鈴木は引退にあたり「いつまでも競技を続け、富士通陸上競技部に残りたいという気持ちも強くありました。一方で以前から、引退後は指導者になりたい、お世話になった陸上界や競歩界へ自分の経験を還元したいと考えており、2月の日本代表選考競技会にも出場できなかった現実を鑑み、引退して次の道に進むことを決意しました」と自身の気持ちを発表。
「競歩ブロックはもちろんのこと、多くの種目で世界に活躍する選手がいる環境で、切磋琢磨しながら活動できたことは、とても刺激的で幸せな経験でした」と綴り、印象に残ったレースとして、世界記録を樹立した全日本競歩能美大会と金メダルを獲得したドーハ世界選手権を挙げた。
身体の状態から引退レースなどを行う予定はなく、今後は新潟アルビレックスランニングクラブに所属し、指導者としての道に進む。今後、競歩の強化を始める新潟食料農業大のコーチとして活動することを明らかにした。
鈴木雄介の引退コメント全文
このたび、富士通株式会社および富士通陸上競技部を退職・退部することといたしました。 次のキャリアに向けた準備期間が必要となったため、急なご報告となりました。 長年お世話になったチーム、会社を離れることはとても寂しく、いつまでも競技を続け、富士通陸上競技部に残りたいという気持ちも強くありました。一方で以前から、引退後は指導者になりたい、お世話になった陸上界や競歩界へ自分の経験を還元したいと考えており、2月の日本代表選考競技会にも出場できなかった現実を鑑み、引退して次の道に進むことを決意しました。 私は2010年に入社し今年で15年目となります。本当に長く競技をさせていただいたという思いとともに、富士通に入社できたこと、そして今村文男コーチ(競歩ブロック長)にご指導いただいたことは、競技人生の中で一番の幸運であったと感じています。私の入社時、競歩ブロックには森岡紘一朗さん(現競歩ブロックコーチ)、川﨑真裕美さん、大利久美さんなど日本を代表する方々が在籍しており、先輩方と練習することで、自分自身の競技力を各段に向上させることができました。その後も森岡さんに届くように、そして超えられるようにと背中を追いかけてきたことが、後年の飛躍につながったと考えています。 また、競歩ブロックはもちろんのこと、多くの種目で世界に活躍する選手がいる環境で、切磋琢磨しながら活動できたことは、とても刺激的で幸せな経験でした。世界大会では、競歩だけでなく他ブロックの先輩方ともご一緒することができ、とても心強かったことを今でも覚えています。 競技人生を振り返ると、国際大会も含め数多く出場し、どのレースにもそれぞれ思い出はありますが、やはり2015年の全日本競歩能美大会20km競歩で世界記録を樹立できたことと、2019年のドーハ世界陸上50km競歩で金メダルを獲得できたことに対しては深い思い入れがあります。特にドーハ世界陸上では、世界記録樹立後の故障により2年以上競技ができなかった期間があり、復帰に向けてご尽力いただいた方々、中でも大会に向けて練習や合宿でサポートをしてくださった高野善輝コーチ(現長距離ブロックコーチ)と多くの苦楽を共有し、そのうえで金メダルという最高の成績を収めることができたことが、数年経った今でも良い思い出として残っています。 一方で、良い思い出ばかりではなく、恥骨の故障やオーバートレーニング症候群といった長引く苦難の時期もあり、波乱万丈な競技人生だったとも思います。ただ、そんな状況でも、周りの方々からは「いつも応援しているから頑張って」というお言葉をいただき、大きな活力となりました。富士通社員の皆様や、地元の方々からのご支援・ご声援のお陰で、ここまで諦めずに、世界一になりたいという夢を追いかけることができたと思っています。そして、ずっと支えていただいた今村文男コーチをはじめ、スタッフの皆様には、感謝してもしきれない気持ちでいっぱいです。 できれば節目となるレースに出場し、引退のご報告をと考えておりましたが、そこまでの状態にはなく、このコメントをもって代えさせていただきます。今後は新潟アルビレックスランニングクラブに所属し、新たに競歩選手の育成・強化をスタートする新潟食料農業大学でコーチとして活動していく予定です。お世話になった方々へ直接お礼をお伝えする機会が持てず、申し訳ない気持ちもありますが、またどこかでお会いした際には、選手時代にいただいた多くのご支援を、次世代の選手に還元していく姿をお見せできればと思います。 長い間ご支援・ご声援をいただき本当にありがとうございました。
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