2024.07.08
7月7日、七夕の日に女子やり投でパリ五輪代表の北口榛花(JAL)が欧州へと飛び立った。ここからパリ五輪、そしてダイヤモンドリーグと秋までノンストップで戦い抜く。
出国前の空港内で北口に“サプライズ”が待っていた。関係者が用意した4つの日の丸には、「世界一めざしてがんばってください」「70m!」「全力で」など、たくさんの応援メッセージがつづられていた。
そのうちの2つは、北口の母校・北海道教育大附属旭川中学校の後輩たちからのもの。そしてあとの2つは、埼玉県新座市にある新堀小学校と東野小学校から贈られた。一見、「なぜ埼玉の小学校?」と思うかもしれないが、実はこんな縁がある。
昨年のブダペスト世界選手権で金メダリストとなった北口。オフシーズンだった秋から冬にかけて新堀小学校に1回、東野小学校に2回、サプライズで訪れていたという。
きっかけはコロナ禍にさかのぼる。
北口のケアを担当している治療院「SSSA(スリーエスエー)」は、解剖学を専門とする元筑波大准教授の足立和隆先生にアドバイスをもらいながら『解剖学的立位肢位』に基づいて治療を施している。
その足立先生と治療院をつなげたのが、東京有明医療大学の小山浩司先生だった。北口の実践例も含め、治療の効果測定。そして論文に落とし込んでいるのが人物である。
しかし、コロナ禍のさなかに姿勢についての論文をまとめるにあたり、どうしても統計を取るのが難しい時期があった。苦心している時に、治療院に通っている小学校教員で、その縁もあって北口とも交流がある村田聡子先生が勤務先(当時は新堀小学、現・東野小学校)の校長先生に掛け合ってくれ、快諾してくれたのだという。
小山先生は『姿勢』の大切さを伝える特別授業をするために2つの小学校を訪問。その際にサプライズゲストとして、世界一になった北口が一緒に訪れた。
姿勢の授業がメインの内容。もちろん、姿勢の大切さも子どもたちは一生懸命学んだが、それ以上に北口の言葉が心に深く刻まれた。「北口選手の授業ではなかったんですけど」と小山先生が苦笑いするが、北口が「志を持つこと」「夢を持つこと」「あきらめないこと」といった言葉は、幼心にストレートに響き、目を輝かせた。
今回、図らずも“北口先生の授業”を受けた子どもたちが、パリ五輪に向かう北口に向けて応援メッセージをしたためた。子どもたちは真剣な表情でメッセージを書いていた。
「すごい選手が来てくれてビックリしました」
「北口選手をきっかけにやり投に興味を持ちました」
「志を持つことが大切だと話されていたのが印象に残っています」
「すごく大きかった。すごい選手が本当に来てくれてうれしかった」
「姿勢と夢を持つことが大切だよと言っていました」
当時の思い出を話し、「北口選手頑張ってください!」「応援しています!」「金メダルを取ってまた学校に来てください!」と応援メッセージを寄せてくれた。子どもたちから預かった日の丸を両校の先生たちが空港に持参。直接手渡し、思いを届けた。きっと北口の背中を押してくれるだろう。
表には出ていなかったが、オフシーズンでもメディア・イベント出演に多忙な日々を過ごしてた中でも、お世話になった人たちのもとへと足を運ぶ。北口らしいエピソードだった。
パリ五輪の女子やり投は日本時間の8月7日の夕方に予選、8月10日深夜の2時40分に決勝が行われる。北口はお世話になった多くの人たちへの思いをやりに込め、パリの空にビッグスローを放つ。
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