◇第108回日本選手権(6月27日~30日/新潟・デンカビッグスワンスタジアム)4日目日
第108回日本選手権の4日目が行われ、男女の800mはいずれも若き高校生アスリートが好タイムで頂点に。ともに日本記録保持者や五輪代表経験者を相手にしての激走は、詰めかけたファンの度肝を抜く走りだった。
先に行われた女子は、残り1周を告げる鐘の音とともに久保凛(東大阪大敬愛高2大阪)がトップに立った。バックストレートで大会3冠を目指した田中希実(New Balance)が外側から前に出かける場面もあったが、「残り250mから仕掛けようと考えていたので、焦りありませんでした」と、一気にギアチェンジ。持ち味でもあるラストスパートで、みるみるうちに後ろとの差を広げ、真っ先にフィニッシュに駆け込んだ。タイムも2分03秒13と、2週間前のインターハイ近畿大会でマークした2分03秒50のU18日本記録を塗り替えるレコードとなった。
高校記録(2分02秒57)を持つ塩見綾乃(岩谷産業)が引っ張り、400mは61秒で通過。久保としては59~60秒で通過する想定だったため、目指していた高校記録には届かなかった。「優勝できたことは自信になりますが、記録も狙っていたので、その部分は残念」と、勝てた喜びとともに、悔しさも募る。
それでも、5月の静岡国際など春のグランプリシリーズを含めシニア勢に4連勝。もちろん高校生にも負けずに前半シーズンを駆け抜けた。U18世代では、6月末時点で今季世界リストでも3位、U20でも10位につける。「世界には1分台の選手が大勢いる。高校記録を今年中に塗り替え、来年は日本記録(2分00秒45)。ゆくゆくは田中さんのように、世界を舞台に戦える選手になりたい」と志を高く持つ。
男子は、前日の予選で日本記録に0.07秒と迫る1分45秒82という衝撃のレースを演じた落合晃(滋賀学園高3滋賀)が、再び主役に。U20日本新、そして高校新、大会新を樹立した疲れも懸念されたが、1周目から先頭を引っ張るレースを展開し、1分46秒56で初優勝。それでもなお、「パリ五輪の標準突破(1分44秒70)を目指してやってきたので、それが叶わず残念です」とフィニッシュ後には悔しさでトラックに拳をぶつけた。
「記録を狙う上で1周目を51秒前後では入りたかった」とシニア勢を差し置き、スタート直後から積極的に飛ばしレースを支配。ただ、「自分の感覚としては51秒台で行っているつもり」という1周目が53秒と、1秒あまりの誤差が生じてた。
2周目も最後まで力を振り絞ったものの、タイムは及ばず。レース後には「(51秒で)行けていない時点でもう一段階上の力が必要だった」とつぶやいた。
昨夏、インターハイを大会新記録の1分47秒92で制して以降、今季の目標をパリ五輪出場と決め、ここまで突き進んできた。「今回、日本人が誰も行っていないタイム(1分44秒台)を目指してやってきたからこと、予選の記録にもつながりました。高い目標に挑んでいなければ、今回の優勝も45秒台の記録もなかったと思います」と落合。
パリ五輪の挑戦は幕を閉じたが、得るものの大きかった。この後の目標はまだ決めていないと言うものの、「800mはもちろん、1500mも5000mも、そして駅伝でもしっかり走れるように練習を積んでいきたい」と気持ちが切れることはない。
5000mや10000mとは異なり、世界とやや距離のある800m。新潟を舞台に繰り広げられた高校生の果敢なチャレンジが、その壁をぶち破る起爆剤となる。
文/花木 雫
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
2024.11.21
早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結
2024.11.21
立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
2024.11.17
不破聖衣来が香港で10kmレースに出場 9位でフィニッシュ
2024.11.20
【箱根駅伝2025名鑑】早稲田大学
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.16
2024.11.01
吉田圭太が住友電工を退部 「充実した陸上人生を歩んでいきたい」競技は継続
2024.11.07
アシックスから軽量で反発性に優れたランニングシューズ「NOVABLAST 5」が登場!
-
2024.10.27
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2024.11.21
早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結
11月21日、株式会社コラゾンは同社が展開する麹専門ブランド「MURO」を通じて、早大競走部駅伝部とスポンサー契約を結んだことを発表した。 コラゾン社は「MURO」の商品である「KOJI DRINK A」および「KOJI […]
2024.11.21
立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン
第55回防府読売マラソン大会事務局は、女子招待選手の立迫志穂(天満屋)が欠場すると発表した。調整不良のためとしている。 立迫は今年2月の全日本実業団ハーフマラソンで1時間11分16秒の11位。7月には5000m(15分3 […]
2024.11.20
M&Aベストパートナーズに中大・山平怜生、城西大・栗原直央、國學院大・板垣俊佑が内定!神野「チーム一丸」
神野大地が選手兼監督を務めるM&Aベストパートナーズが来春入社選手として、中大・山平怜生、國學院大・板垣俊佑、城西大・栗原直央の3人が内定した。神野が自身のSNSで内定式の様子を伝えている。 山平は宮城・仙台育英 […]
2024.11.20
第101回(2025年)箱根駅伝 出場チーム選手名鑑
・候補選手は各チームが選出 ・情報は11月20日時点、チーム提供および編集部把握の公認記録を掲載 ・選手名の一部漢字で対応外のものは新字で掲載しています ・過去箱根駅伝成績で関東学生連合での出場選手は相当順位を掲載 ・一 […]
Latest Issue 最新号
2024年12月号 (11月14日発売)
全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会