2024.07.01
◇第108回日本選手権(6月27日~30日/新潟・デンカビッグスワンスタジアム)4日目
パリ五輪代表選考会を兼ねた日本選手権の4日目が行われ、大会のフィナーレを飾った男子100mに出場した桐生祥秀(日本生命)は、10秒26(-0.2)の5位に終わった。
「一生懸命、全力で走って負けました。順位はもちろん悔しいですが、こんなにワクワクした感じで日本選手権の決勝のスタートラインに立てたのはいつぶりか。結果がついてきていればさらによかったですが、今の力は出し切りました。終わってみて、『もっと足が速くなりてぇ~』って思いましたね」
日本人で初めて100m10秒の壁を破り、五輪でもメダルを手にするなど、これまで多くの栄誉を手にし、また挫折も味わってきた。
レース後にこんな清々しい表情を見たのはいつぶりだろう。「コーチやトレーナーとも、次にレース後に泣くときは、チーム桐生全員が、心の底から良かったなと思えるレースをした後と決めています。今回のレースを振り返り、気持ちの面でも体調面でも次につながるレースでした」。
体調不良にも襲われ、アキレス腱の痛みにも悩まされ、もう走れないのではと思ったことも1度や2度ではなかった。そんな苦しみを乗り越え、「大会前にしっかり3週間練習ができ、何の不安もなくレースに臨めた。今回、予選や準決勝で落ちていたらという思いもありましたが、決勝に残って全力を出し切れたことは次につながる」と、そこには以前の闘争心、ライバルと競いながら9秒台を目指したスプリンターの姿があった。
まだまだ本格的なスピード練習も積めておらず、前日の2レースを経て、身体も筋肉痛だったと打ち明ける。負けた悔しさもあるが、それ以上に“まだやれる”感覚を日本選手権の決勝という舞台で取り戻すことができた。
個人での五輪への道は遠のいた。それでも桐生ならやってくれる。ファンをワクワクさせる走りを見せてくれる日もそう遠くないはずだ。
文/花木 雫
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