新潟・デンカビッグスワンスタジアムで行われた第108回日本選手権男子200m決勝。鵜澤翔羽(筑波大)が20秒43(+0.2)で2連覇を飾った。2008年北京五輪4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に、そのレースを振り返ってもらった。
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全体としては、鵜澤飛羽選手が2枚ぐらい上手の位置にいるな、と感じたレースでした。ただ1人、予選から決勝へタイムを引き上げられたこともそう。コンディション云々ではなく、引き上げられた事実からそう感じます。
とはいえ、鵜澤選手も本来の走りというわけではないように見えました。5月中旬のセイコーゴールデングランプリで、フィニッシュ後に頭を打ったことで脳震盪を起こし、その後はトレーニングを中断せざるを得なかったようです。
そのため、身体が少し重い印象を受けました。動きのキレがある感じではなく、記録を狙うレースの形を作れていないという印象。フォームもまだまとまり切っていないようでしたが、それでも、決勝でしっかりと上げられる力は素晴らしいのがあります。
決勝のライバルとなる上山紘輝選手(住友電工)が9レーン、飯塚翔太(ミズノ)が8レーンで、6レーンの鵜澤選手は内側から2人を見ることができる位置。コーナーで「思ったよりも近い」と感じたようですが、それは2人の位置をしっかりと意識して走れていたという証拠です。
ただ、本来であれば標準記録(20秒16)を突破できる水準の選手。今の標準記録は世界の準決勝で戦うレベルですから、それができる選手だと思います。まだ代表内定には至っていませんが、ほぼ確実と言える状況の中で、パリ五輪本番を見据えてどこまで引き上げることができるか。今の流れを見ると、決して簡単なことではないかもしれませんが、学生らしい若さと勢い、その中でもバランスを取れる選手ですから、期待をしたいと思います。
五輪のターゲットナンバー内にいる上山選手、飯塚選手は、最低限の結果は残せたと言えるでしょう。
上山選手はアジア大会金メダル、日本代表のリレーの主要メンバーを務めてきた経験、成果を生かしたなと感じました、今季の流れは決して良くない中で、しっかりと2位を確保できる。「必ず走るよね」という再現性を高められていると思うので、今後はそれ20秒2~3に引き上げられれば、世界との戦いが近づいてくると思います。
飯塚選手は、何か不安要素があったのかと感じさせるようなレースになってしまいました。前半で少なくとも上山選手に並ぶ走りをしてくるかと思いましたが、逆に鵜澤選手に後れを取る展開。そこから4位まで持ってきたのはさすがですが、表彰台は少なくとも抑えるべきレースだったと思います。
ともに、ワールドランキングではボーダーライン上となるため代表入りは予断を許さない状況ですが、五輪出場が決まったとしたら力を出し切るレースを見せてほしいと思います。
200m全体を考えるなら、シニア、学生選手がファイナルで高校生に入る隙を与えない勝負を見せる。そんな格付けを示せるレベルの日本選手権であってほしいです。
一方でトップについては、日本の歴代でも標準記録を上回る記録を出せているのは4人だけ。そのピラミッドの頂点はもっと引き上げる必要があります。その一番手である鵜澤選手、上山選手、飯塚選手の間に、今回は水久保漱至選手(宮崎県スポ協)が割って入りましたが、記録の面では上位3人との間には0.2秒の開きがあるのが現状です。
その差を埋められる選手を増やし、全体で高みを目指してほしいと思っています。
◎高平慎士(たかひら・しんじ)
富士通陸上競技部一般種目ブロック長。五輪に3大会連続(2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン)で出場し、北京大会では4×100mリレーで銀メダルに輝いた(3走)。自己ベストは100m10秒20、200m20秒22(日本歴代7位)
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