2024.06.25
パリ五輪代表選考会を兼ねた第108回日本選手権が6月27日から30日まで、新潟・デンカビッグスワンスタジアムで行われる。日本一の座、そしてパリ行きの切符を懸けた激闘のみどころ【女子トラック編】をチェックしていく。
【日本選手権みどころ】
男子トラック編/混戦の100mは栁田大輝が初V狙う!ハードルはパリ五輪代表へ熾烈、400mに44秒台決着の予感
男子フィールド編/走幅跳・橋岡優輝が2大会連続五輪へ!混戦の走高跳は激しい代表争い、投てきは好記録の予感
女子フィールド編/世界女王・北口榛花が五輪へ弾みつけるか 走幅跳・秦澄美鈴はVで五輪内定、森本、諸田、髙橋の跳躍に注目
五輪代表・田中希実が3種目にチャレンジ
1500m、5000mで日本記録を持つ田中希実(New Balance)は、今年5月のDLユージン5000mで自己4番目の14分47秒69をマークして参加標準を突破。すでにこの種目での五輪代表をつかんでいる。今大会では2年ぶりに800m、1500m、5000mの3種目にエントリーしているが、1500mは5連覇、5000mは3年連続4度目の優勝が懸かる。
5000mはブダペスト世界選手権代表の廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が出場をキャンセルしており、樺沢和華奈(三井住友海上)が田中を追う一番手に挙がる。さらに日本代表経験のある五島莉乃(資生堂)や楠莉奈(積水化学)らもペース次第では五輪出場の可能性を持つ。ワールドランキングで出場圏内につけている山本有真(積水化学)は、どこまで調子を上げられるかに注目が集まる。
1500mでは田中が持ちタイムで2番手以下を大きく引き離しており、連覇は濃厚。あとはセイコーゴールデングランプリで上位に入った後藤夢(ユニクロ)、木村友香(積水化学)、井手彩乃(資生堂)といった面々が田中に挑む。木村は「この種目でパリを狙いたい」と強い覚悟を持つ。
東京五輪代表の卜部蘭(積水化学)は一時期調子を落としていたものの、兵庫リレーカーニバルで3位(4分12秒14)に入るまで復調。U20アジア選手権金メダルのドルーリー朱瑛里(津山高2)が先輩たちにチャレンジする。
田中がエントリーした種目において、唯一挑戦者として挑むのが800mだ。これまでの最高順位は2位(22年)で優勝はまだない。
この種目で注目を集めるのがGPシリーズで3連勝を飾った久保凛(東大阪大敬愛高2)だ。静岡国際で出した高校歴代3位の2分03秒57は今季リストトップに立ち、金栗記念では田中との直接対決で先着するなど、8年ぶり高校生Vの可能性が高まっている。
もちろん、前回Vの池崎愛里(ダイソー)、この種目の第一人者と言える塩見綾乃(岩谷産業)も年長者としての意地を見せたいところ。昨年の学生チャンピオン・渡辺愛(園田学園女大)も優勝争いに絡みそうだ。
中長距離種目以外で五輪が近いのはレベルアップが著しい100mハードル。12秒台を出すだけでは優勝が難しい状況となり、パリ五輪の参加標準記録(12秒77)をも視野に入れた争いになりそう。
今季、最も調子が良いのは前回3位の田中佑美(富士通)。ワールドランキングでも日本人最上位につけ、セイコーゴールデングランプリでは12秒90(-0.6)で2位を占めた。海外転戦も経験し、「競り合っても自分の走りができる」ようになったと話す。好記録で優勝すれば、さらにランキングが上昇することも見込まれ、現在出場圏内にいる田中にとっては、勝負が重要となる。
日本記録保持者の福部真子(日本建設工業)。昨年の日本選手権で4位に終わり、ブダペスト世界選手権を逃す悔しい思いをした。冬は腰を痛めたり、体調面で安定しなかったりが続いたが、木南記念で12秒92(+0.2)、布勢スプリントで12秒99(+1.9)をマークした。ワールドランキングを着実に上げているものの、日本選手権前の段階では出場圏外。予選から標準記録突破狙って、攻めた走りをしてくるだろう。
前回優勝者で、2大会連続五輪入りを目指す寺田明日香(ジャパンクリエイト)は、木南記念の予選で出した13秒10(+0.6)がシーズンベスト。「身体が動いていない。練習でできる動きが出ないのが問題」と語るように、今季は走りが噛み合っていない。布勢スプリントなども欠場しており、本番までにどこまで修正できるかがカギとなる。
今季調子が上がっていなかった青木益未(七十七銀行)は残念ながら欠場を表明。代わって12秒台を持つ清山ちさと(いちご)、大松由季(サンドリヨン)、布勢スプリントで13秒00を出した紫村仁美(リタジャパン)、13秒01の田中陽夏莉(富士山の銘水)あたりがメダル争いを演じそうだ。
五輪代表・田中希実が3種目にチャレンジ
1500m、5000mで日本記録を持つ田中希実(New Balance)は、今年5月のDLユージン5000mで自己4番目の14分47秒69をマークして参加標準を突破。すでにこの種目での五輪代表をつかんでいる。今大会では2年ぶりに800m、1500m、5000mの3種目にエントリーしているが、1500mは5連覇、5000mは3年連続4度目の優勝が懸かる。 5000mはブダペスト世界選手権代表の廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が出場をキャンセルしており、樺沢和華奈(三井住友海上)が田中を追う一番手に挙がる。さらに日本代表経験のある五島莉乃(資生堂)や楠莉奈(積水化学)らもペース次第では五輪出場の可能性を持つ。ワールドランキングで出場圏内につけている山本有真(積水化学)は、どこまで調子を上げられるかに注目が集まる。 1500mでは田中が持ちタイムで2番手以下を大きく引き離しており、連覇は濃厚。あとはセイコーゴールデングランプリで上位に入った後藤夢(ユニクロ)、木村友香(積水化学)、井手彩乃(資生堂)といった面々が田中に挑む。木村は「この種目でパリを狙いたい」と強い覚悟を持つ。 東京五輪代表の卜部蘭(積水化学)は一時期調子を落としていたものの、兵庫リレーカーニバルで3位(4分12秒14)に入るまで復調。U20アジア選手権金メダルのドルーリー朱瑛里(津山高2)が先輩たちにチャレンジする。 田中がエントリーした種目において、唯一挑戦者として挑むのが800mだ。これまでの最高順位は2位(22年)で優勝はまだない。 この種目で注目を集めるのがGPシリーズで3連勝を飾った久保凛(東大阪大敬愛高2)だ。静岡国際で出した高校歴代3位の2分03秒57は今季リストトップに立ち、金栗記念では田中との直接対決で先着するなど、8年ぶり高校生Vの可能性が高まっている。 もちろん、前回Vの池崎愛里(ダイソー)、この種目の第一人者と言える塩見綾乃(岩谷産業)も年長者としての意地を見せたいところ。昨年の学生チャンピオン・渡辺愛(園田学園女大)も優勝争いに絡みそうだ。 中長距離種目以外で五輪が近いのはレベルアップが著しい100mハードル。12秒台を出すだけでは優勝が難しい状況となり、パリ五輪の参加標準記録(12秒77)をも視野に入れた争いになりそう。 今季、最も調子が良いのは前回3位の田中佑美(富士通)。ワールドランキングでも日本人最上位につけ、セイコーゴールデングランプリでは12秒90(-0.6)で2位を占めた。海外転戦も経験し、「競り合っても自分の走りができる」ようになったと話す。好記録で優勝すれば、さらにランキングが上昇することも見込まれ、現在出場圏内にいる田中にとっては、勝負が重要となる。 日本記録保持者の福部真子(日本建設工業)。昨年の日本選手権で4位に終わり、ブダペスト世界選手権を逃す悔しい思いをした。冬は腰を痛めたり、体調面で安定しなかったりが続いたが、木南記念で12秒92(+0.2)、布勢スプリントで12秒99(+1.9)をマークした。ワールドランキングを着実に上げているものの、日本選手権前の段階では出場圏外。予選から標準記録突破狙って、攻めた走りをしてくるだろう。 前回優勝者で、2大会連続五輪入りを目指す寺田明日香(ジャパンクリエイト)は、木南記念の予選で出した13秒10(+0.6)がシーズンベスト。「身体が動いていない。練習でできる動きが出ないのが問題」と語るように、今季は走りが噛み合っていない。布勢スプリントなども欠場しており、本番までにどこまで修正できるかがカギとなる。 今季調子が上がっていなかった青木益未(七十七銀行)は残念ながら欠場を表明。代わって12秒台を持つ清山ちさと(いちご)、大松由季(サンドリヨン)、布勢スプリントで13秒00を出した紫村仁美(リタジャパン)、13秒01の田中陽夏莉(富士山の銘水)あたりがメダル争いを演じそうだ。200m鶴田玲美は好記録Vで五輪に前進 スプリント2冠目指す君嶋に、御家瀬が迫る
ここまでに紹介した種目以外では、現時点のワールドランキングでパリ五輪出場可能なターゲットナンバー圏内に入る選手はない。また、参加標準記録もハイレベルとなっており、五輪出場には高いハードルが待ち受ける。 その中で、五輪出場の可能性を秘めるのが200mの鶴田玲美(南九州ファミリーマート)だ。今年2月にはニュジーランドでで23秒06(+3.3)をマークしたほか、5月末の中国・重慶では向かい風1.2mで23秒58の2位と海外で好成績を残し、調子に乗る。 ターゲットナンバーに入るには1202点以上が必要だが、日本選手権での優勝(100点)と23秒32(1102点)以内でその条件をクリアできる。他国の状況次第だが、自己記録( 23秒17)に近いタイムを出せば、パリへの道も開ける。 100mは5年前に高3で100mを制した御家瀬緑(住友電工)が好調。6月7日には5年ぶり自己新となる11秒37(日本歴代6位)をマークしている。米国を拠点にし、経験も積んだ。日本選手権でも〝5年ぶり〟の歓喜が訪れるかもしれない。 ただ、いずれの種目でもディフェンディングチャンピオンとして君嶋愛梨沙(土木管理総合)が立ちはだかる。世界リレー直前に脚を少し痛めて代表を辞退したが、その後の布勢スプリント100mで優勝を飾り、不安を払拭。大舞台での強さを見せつけられるか。 若手では昨年のインターハイ100m、200m2冠の山形愛羽(福岡大)に注目。日本学生個人選手権では100m11秒41、23秒53と自己新を連発し、その勢いで初の日本選手権のタイトルも視野に入れる。また、世界リレー代表の青野朱李(NDソフト)、三浦愛華(愛媛競技力本部)にも力がある。 400mは岩田優奈(スズキ)が今季リストトップ。久保山晴菜(今村病院)も前回チャンピオンとして簡単に負けるわけにはいかない。過去2度の優勝経験があり、リレーの日本代表として牽引してきた松本奈菜子(東邦銀行)は、肉離れからの回復状況次第となりそうだ。 400mハードルではブダペスト世界選手権代表の山本亜美(立命大)と宇都宮絵莉(長谷川体育施設)の一騎打ちか。山本は静岡国際で57秒16と今季のタイムで一歩リードし、4連覇に照準を合わせる。対する宇都宮は海外転戦を経ての参戦。55秒台での優勝争いに期待したい。 トラック種目最初の決勝となる3000m障害は齋藤みう(日体大)、西山未奈美(三井住友海上)、吉村玲美(クレーマージャパンTC)の三つ巴の争いが予想されている。 パリ行き、さらには来年の東京世界選手権を占う上でも重要な一戦。4日間、新潟での熱戦の模様はライブ配信されるほか、NHKでも放送される。 ◇パリ五輪代表内定条件 ・参加標準記録+優勝 ・各種目最大3人 ※後日選考の優先順位=ワールドランキングで出場権獲得+3位以内(※早期内定者のいる種目は上位2位) ◇テレビ中継 1日目/6月27日(木) NHK BS18:00~20:00 2日目:6月28日(金) NHK BS 18:30~19:30/NHK総合 19:30~20:42 3日目:6月29日(土) NHK総合16:30~18:43 ※17:59~18:05はサブチャンネル 4日目:6月30日(日) NHK総合16:30~18:43 ※17:59~18:05はサブチャンネル
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.03.28
-
2025.03.28
-
2025.03.28
2025.03.23
女子は長野東が7年ぶりの地元V アンカー・田畑陽菜が薫英女学院を逆転/春の高校伊那駅伝
-
2025.03.25
2025.03.02
初挑戦の青学大・太田蒼生は途中棄権 果敢に先頭集団に挑戦/東京マラソン
2025.03.02
太田蒼生は低体温症と低血糖で途中棄権 「世界のレベルを知れて良い経験」/東京マラソン
-
2025.03.23
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.03.29
齋藤みう3000m障害で9分41秒57 自己ベスト4秒以上更新して日本歴代6位、学生歴代2位
第319回日体大長距離競技会初日が3月29日、神奈川・横浜市の同大学健志台キャンパス競技場で行われ、女子3000m障害で齋藤みう(日体大4)が日本歴代6位、学生歴代2位の9分41秒57をマークした。 齋藤のこれまでのベス […]
2025.03.28
【世界陸上プレイバック】五輪ボイコットきっかけに創設!クラトフヴィロヴァが女子400mと800mで今も大会記録に残る2冠 日本は室伏重信ら出場も入賞ゼロ
今年、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪大会を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。これま […]
2025.03.28
【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山﨑りりや Yamasaki Ririya 鳴門渦潮高3徳島 高校アスリートをフォーカスするコーナー。年度末を迎えますが、振り返ってみれば、2024年度は高校生による日本記録樹立を […]
2025.03.28
3泊4日の全国高体連合宿終了! 「高め合える仲間がいっぱいできた」 来年度は宮崎で開催予定
大阪・ヤンマースタジアム長居を主会場に行われた2024年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月28日、3泊4日の全日程を終えた。全国から集まった選手たちは交流を深め、試合での再会を誓った […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報