2024.06.21
6月21日、富士通は所属する競歩の髙橋英輝が20日付で引退したことを発表した。
髙橋は岩手県花巻市出身の31歳。小学校ではサッカー部、中学校ではソフトテニス部だったが、陸上の大会前になると特設された陸上部に所属し、長距離ランナーとして大会に出場した。
花巻北高入学後は陸上部に入部し、2年生から競歩を始めると、その年のインターハイ東北大会で4位、秋の新潟国体では5000m競歩で5位入賞を果たす。翌年にもインターハイ、国体ともに4位と結果を残した。
教員志望だったこともあり、地元の岩手大教育学部に進学。日本インカレや全日本競歩高畠大会でも活躍した。練習量を増やすと20km競歩にもチャレンジし、大学卒業直前の日本選手権では1時間18分03秒の日本記録(当時)で初優勝を果たしている。
15年4月に富士通に入社して以降は、日本のトップウォーカーとして数々の国際大会にも出場。五輪は16年リオ、21年東京と2大会連続で代表に選出され、世界選手権には15年北京大会から昨年のブダペスト大会まで5大会連続での出場を果たした。また、日本選手権では史上初の5連覇(15~19年)を含む6度の優勝を飾り、20年11月の順大記録会で出した10000m競歩37分25秒21は今も世界最高記録として残る。
髙橋は引退にあたり、「刺激を受けることの出来る環境にいられたことは、とても幸せな経験でした」とコメント。「猛暑中行われた真夜中のドーハ世界陸上や、土砂降りの中での日本選手権競歩大会など、たくさんあって語りきれませんが、どのレースも自分にとっては忘れられない思い出です」と綴るなか、東京五輪が最も深く記憶に残っているレースとして挙げた。
今後は地元・岩手に戻り、高校時代から志望していた教員への道に進むことも発表。「ゆくゆくは、自分にとって大切な存在となった陸上競技・競歩に関わり、次の世代の選手たちに、これまで自分がしてもらってきたことを返していければと考えています」とこれからの思いも明かした。
髙橋英輝の挨拶全文
このたび、6月20日をもちまして富士通陸上競技部を退部・退社することといたしました。 2015年に富士通に入社し、富士通陸上競技部に所属したことで、世界で戦う先輩や同期、後輩の選手たちと共に過ごし支え合い、練習やレースで競い合えたこと、異なる種目のチームメイトとも関わり、刺激を受けることの出来る環境にいられたことは、とても幸せな経験でした。 10年目のシーズンをこのチームで迎えることができ、職場の方々やチーム関係者の皆さん、苦しい時に支えてくれた信頼できる仲間と呼べる人たちがたくさんできました。思い出がたくさん詰まったチームを離れるのはとても寂しく、躊躇する気持ちもありましたが、これから自分自身が新しい場所で成長するために、周囲の方々と相談し、次の一歩を踏み出すことを決めました。 猛暑中行われた真夜中のドーハ世界陸上や、土砂降りの中での日本選手権競歩大会など、たくさんあって語りきれませんが、どのレースも自分にとっては忘れられない思い出です。その中でも一番深く記憶に残っているのは、自分にとって陸上競技キャリアの集大成にしたいという思いで臨んだ2021年の東京2020オリンピックです。出来る準備はすべてやり尽くしたもののコンディションを整えることができず、1時間27分29秒で32位という結果でした。それでも応援してくれた人たちから「がんばっているところを見て元気が出た」という言葉をいただき、次こそは笑顔でゴールする姿を見せたいという思いで競技に向き合うことができました。どんな結果になったとしても最後まで自分のベストを尽くす大切さを、応援してくださる皆様から教えていただいたことは、競技を通して得られたかけがえのない経験の一つです。 東京2020オリンピックが終わってからは、次のパリ2024オリンピックに出場し、笑顔でゴールすることを目標に取り組んできました。しかし、今年に入り自分自身のパフォーマンスのベースが下がってきたことも実感していました。パリ2024オリンピックの選考会となった日本選手権競歩大会でゴールすることができずに挑戦を終えたとき、次の目標に向けて最初の一歩を踏み出したいという気持ちが強く心に浮かびました。 10年間ずっと気にかけてくださり、応援・サポートしてくださった職場の皆さん、国際大会で思うようなレースができず、上手くいかない時も常に私に向き合い、課題をどうクリアするかを一緒に考えてくださった今村文男コーチはじめスタッフの方々、故障で思うような歩きができない時やレース前の不安な夜に、夜遅くまでサポートしてくださったトレーナーの方々、苦しくて挫けそうになる時、隣に立って前を向き、競い合ってくれた競歩チームの仲間たち、こうした方々のおかげで、ここまで精一杯続けることができました。また、どんなときも応援いただいた中・高・大学時代の指導者の方々、地元岩手県から応援してくださる方達、いつもレースを見に来てくれ、ビデオを撮りながら応援し続けてくれた家族にも感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。 今後は、地元である岩手県に戻り、教員として新しい一歩を踏み出す予定です。 シーズン途中での引退となり、これまでお世話になってきた方々に直接ご報告する機会が持てないことは心残りですが、次に皆様にお会いできた時には、これまで鍛えてきた自分なりの「歩型」で、未来に向けて歩みを進めている姿をお見せできるよう頑張りたいと思っています。そしてゆくゆくは、自分にとって大切な存在となった陸上競技・競歩に関わり、次の世代の選手たちに、これまで自分がしてもらってきたことを返していければと考えています。 10年間温かいご声援とサポートをくださりありがとうございました。
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.16
上海ハーフに前回8位の太田蒼生、國學院大・上原琉翔、青学大の黒田然らエントリー
-
2025.04.15
-
2025.04.14
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.12
-
2025.04.12
-
2025.04.12
-
2025.04.12
-
2025.04.13
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.03.23
-
2025.04.01
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.16
上海ハーフに前回8位の太田蒼生、國學院大・上原琉翔、青学大の黒田然らエントリー
4月20日に行われる上海ハーフマラソン(4月20日)のエントリーが発表されており、プロランナーとなった青学大卒の太田蒼生(GMOインターネットグループ)が登録した。太田は青学大時代、4年連続で箱根駅伝に出走。3年時は3区 […]
2025.04.16
ダイヤモンドリーグ第1戦厦門に110mH泉谷駿介と村竹ラシッドが登録!サニブラウン、三浦龍司、豊田兼もエントリー
世界最高峰のダイヤモンドリーグ(DL)第1戦となる厦門大会(中国/4月26日)のエントリーリストが発表された。 男子110mハードルには、ブダペスト世界選手権5位の泉谷駿介(住友電工)と、パリ五輪5位の村竹ラシッド(JA […]
2025.04.16
人間スポーツ科学科を持つ公立高校が「O2Room®」を導入、スポーツコンディショニングの授業に活用
全国区で活躍する部活動もサポート 2016年に創立100周年を迎えた大阪の伝統校でもある府立桜宮高等学校。1980年にこれまでの普通科に加え大阪府内では初めてとなる体育科を新設し、さらに1999年にはスポーツ健康科学科を […]
2025.04.16
「Tokyo:Speed:Race」に太田智樹、近藤亮太、前田穂南、小林香菜らがエントリー! 海外トップ選手も参加 5月3日に神宮外苑で開催
アシックスは4月16日、さまざまなレベルのランナーが自己ベスト更新に挑戦できるレースイベント「Tokyo:Speed:Race」(5月3日)に出場するエリート選手のメンバーを発表した。 同大会はロードレースでは初となるペ […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)