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2024.05.31

【ADIZERO ROAD TO RECORDS追跡】メジャーマラソンを席巻!「ADIZERO ADIOS PRO EVO -1」開発秘話「アイデアの原点はF1マシーン」
【ADIZERO ROAD TO RECORDS追跡】メジャーマラソンを席巻!「ADIZERO ADIOS PRO EVO -1」開発秘話「アイデアの原点はF1マシーン」

「ADIZERO ADIOS PRO EVO -1」開発の携わったパトリック氏

理想のランニングエコノミー生み出す独自設計「ロッカー構造」

そして、「EVO -1」最大の特徴が「ロッカー構造」にある。アディダス社が持つテクノロジーの粋を極めて生み出された、理想の「ランニングエコノミー」を導き出すために設計されたシューズのソールが前足部に向かって湾曲 する“パワーポイント”に独自の設計がある。。

アディダスと契約するトップランナーたち、特に参考にされたのが女性ランナーのフォームのデータを徹底的に検証。地面にもっとも力を伝えられるポイント、シューズ上の『パワーポイント』が「踵側か65%の位置」(パトリック氏)と判断した。

具体的には拇趾球の少し踵よりの位置。これはフラットからフォアフットに接地するタイプの選手が、地面に接地してプッシュする瞬間のポイントと合致する。ランニングフォームにおけるパワーポジションの姿勢になる瞬間に、シューズも同じパワーポジションとなり、選手が地面をプッシュする力をより一層高めることにつながるのだ。

「EVO -1」(左)の特徴である「ロッカー構造」。「ADIZERO TAKUMI SEN 10」と力を生み出すポイントは明らかに違う

さらに、そのポジションからつま先にかけて反り上がるような形状が「エコノミー」を生む。プッシュした瞬間から、つま先にかけて前に転がるような接地が自然と生み出されることで、力の方向が前へと向かう。これが、接地で生み出された力をより前方向へとつなげることとなり、1歩1歩の推進力へと直結するのだ。

ただ、ここまで述べた機能を鑑みると、1歩1歩のストライドが伸びるようなイメージになる。だが、このシューズの狙いは違うという。

「パワーポイントをこの位置に定めたことで、脚の回転(ピッチ)を高めることができます」

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スピードは「ストライド×ピッチ」で生み出され、いかに両方をバランス良く高めるかが重要だ。高反発シューズの誕生でストライドを伸ばすことは、以前よりも確実に実現できているだろう。だが、それを42.195kmという距離をキープし続けることは、簡単なことではない。

一方で、ストライドを伸ばしつつ、ピッチを楽にキープできる状態を作ることができれば、1歩1歩が「最小限のエネルギー」で済む。それは「ランニングエコノミー」における理想と言え、「最小限のエネルギーを使用して一定の速度で走ることができれば、レース後半でより速く走ることができます」とパトリック氏は言う。

ただ、ベルリンにおっけるアセファの激走は、「私たちの想像を超えたものではありましたが」と笑いつつ、「このシューズを世界の舞台で紹介するには、これ以上ない方法でした」。

ドイツ中部、古城の城郭を中心とした歴史あふれる街ニュルンベルク郊外にあるヘルツォーゲンアウラッハに、アディダス社は本社を構える。そこでは創業者アドルフ・ダスラー氏の「すべてはアスリートのために」という理念を引き継ぐ社員たちが、その情熱を傾けてそれぞれの仕事に従事している。

そして、最新のテクノロジーと、アスリートたちのさまざまなデータと感覚のフィードバックを駆使して開発されるギアの数々は、まだまだ世界を驚かせるに違いない。

文/小川雅生

昨年9月のベルリン・マラソン女子。27歳のティグスト・アセファ(エチオピア)が衝撃的な世界新記録を打ち立てた。「2時間11分53秒」。従来の記録が2時間14分04秒で、その更新幅2分11秒というのは、世界記録レベルではおよそ考えられない水準だ。 その時に注目されたのが、彼女が着用していたシューズ。アディダス社がこのレースに向けて開発した「ADIZERO ADIOS PRO EVO -1(以下EVO -1)」である。 その後、このシューズを着用した選手が世界のロードレースを席捲した。春のメジャーマラソンでは、4月22日のロンドン女子でペレス・ジェプチルチル(ケニア)が女子単独レース世界新の2時間16分16秒をマークしたのをはじめ、7秒差、8秒差で2位、3位ながら同じく女子単独レース世界新となったアセファ、ショイシリン・ジェプコスゲイ(ケニア)も「EVO -1」を着用。男子を2時間4分01秒で制したアレクサンダー・ムティソ(ケニア)、1週間前のボストン覇者のシサイ・レンマ(エチオピア)もそうだった。 国内で注目を集めたのは、正月の箱根駅伝。青学大の2区で区間賞に輝いた黒田朝日と、同3区で日本人初の1時間切り(59分47秒)という激走を見せた太田蒼生が着用し、第100回大会優勝の原動力となっている。 アスリートのパフォーマンスに与える影響がますます大きくなるシューズの開発競争は、年々激しさを増す。その中でこれほどのインパクトを与えた「ADIZERO ADIOS PRO EVO -1」の秘密とは? 4月27日に開催された「ADIZERO ROAD TO RECOEDS 2024」取材の際、開発担当であるアディダス社の ナヴァ・パトリック(Nava Patrick)氏に取材する機会を得た。するとパトリック氏は「アイデアの原点はF1でした」と語る。 「F1マシンはレースに勝つために、不要なものをすべて取り除きます。できるだけ速く走るために、重量を最小限に抑えるのです」 これこそが、「EVO 1」開発にあたってのコンセプトだった。そして、「ランナーをできるだけ速く走らせる」と追求したものが「ランニングエコノミー」の向上であり、そのために重要な要素として「軽さ」「エネルギーリターン(反発力)」「ロッカー構造」を挙げた。 マラソンの42.195kmに必要な耐久力をキープしつつ、まさにF1マシンのように余計なものをそぎ落とす。アッパーはメッシュタイプを採用し、軽量化とホールド感を確保。さらに、「可能な限り軽量で、弾力性を保つ」を実現できるフォーム材を使用したことで、4枚のカーボンプレートと合わせて高い反発力も備えたソールが完成した。 加えてその表面には、「信じられないほど薄くて軽い」というリキッドラバーで高いグリップ感も備える。これほどの機能がありながら、138g(27cm片足)という超軽量化を成し遂げたことは驚異的と言えるだろう。

理想のランニングエコノミー生み出す独自設計「ロッカー構造」

そして、「EVO -1」最大の特徴が「ロッカー構造」にある。アディダス社が持つテクノロジーの粋を極めて生み出された、理想の「ランニングエコノミー」を導き出すために設計されたシューズのソールが前足部に向かって湾曲 する“パワーポイント”に独自の設計がある。。 アディダスと契約するトップランナーたち、特に参考にされたのが女性ランナーのフォームのデータを徹底的に検証。地面にもっとも力を伝えられるポイント、シューズ上の『パワーポイント』が「踵側か65%の位置」(パトリック氏)と判断した。 具体的には拇趾球の少し踵よりの位置。これはフラットからフォアフットに接地するタイプの選手が、地面に接地してプッシュする瞬間のポイントと合致する。ランニングフォームにおけるパワーポジションの姿勢になる瞬間に、シューズも同じパワーポジションとなり、選手が地面をプッシュする力をより一層高めることにつながるのだ。 [caption id="attachment_137050" align="alignnone" width="800"] 「EVO -1」(左)の特徴である「ロッカー構造」。「ADIZERO TAKUMI SEN 10」と力を生み出すポイントは明らかに違う[/caption] さらに、そのポジションからつま先にかけて反り上がるような形状が「エコノミー」を生む。プッシュした瞬間から、つま先にかけて前に転がるような接地が自然と生み出されることで、力の方向が前へと向かう。これが、接地で生み出された力をより前方向へとつなげることとなり、1歩1歩の推進力へと直結するのだ。 ただ、ここまで述べた機能を鑑みると、1歩1歩のストライドが伸びるようなイメージになる。だが、このシューズの狙いは違うという。 「パワーポイントをこの位置に定めたことで、脚の回転(ピッチ)を高めることができます」 スピードは「ストライド×ピッチ」で生み出され、いかに両方をバランス良く高めるかが重要だ。高反発シューズの誕生でストライドを伸ばすことは、以前よりも確実に実現できているだろう。だが、それを42.195kmという距離をキープし続けることは、簡単なことではない。 一方で、ストライドを伸ばしつつ、ピッチを楽にキープできる状態を作ることができれば、1歩1歩が「最小限のエネルギー」で済む。それは「ランニングエコノミー」における理想と言え、「最小限のエネルギーを使用して一定の速度で走ることができれば、レース後半でより速く走ることができます」とパトリック氏は言う。 ただ、ベルリンにおっけるアセファの激走は、「私たちの想像を超えたものではありましたが」と笑いつつ、「このシューズを世界の舞台で紹介するには、これ以上ない方法でした」。 ドイツ中部、古城の城郭を中心とした歴史あふれる街ニュルンベルク郊外にあるヘルツォーゲンアウラッハに、アディダス社は本社を構える。そこでは創業者アドルフ・ダスラー氏の「すべてはアスリートのために」という理念を引き継ぐ社員たちが、その情熱を傾けてそれぞれの仕事に従事している。 そして、最新のテクノロジーと、アスリートたちのさまざまなデータと感覚のフィードバックを駆使して開発されるギアの数々は、まだまだ世界を驚かせるに違いない。 文/小川雅生

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