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2024.05.23

【学生長距離Close-upインタビュー】エースに成長した亜細亜大・片川祐大「箱根はやっぱり走りたい舞台」
【学生長距離Close-upインタビュー】エースに成長した亜細亜大・片川祐大「箱根はやっぱり走りたい舞台」

亜細亜大の片川祐大

後輩の快走が刺激に

高校の2学年後輩、前田和摩(東農大2)の存在も刺激になっている。前田は、金栗記念では5000mに出場し1組1着。5月の日本選手権10000mでは、日本人学生最高(日本歴代5位)となる27分21秒52の快記録で3位に入った。

「金栗の時はたまたま飛行機が(前田と)往復一緒でした。『次は全日本予選(関東選考会)で直接対決だね』という話をしたら『絶対に負けません』などと言われました。まさかあんなに行くとは……。(前田の活躍は)刺激にもなりましたし、自分もできるんじゃないかって思うことができました。負けじと食らいつく走りをしていきたいと思っています」

今季、片川はチームの主将を務める。亜細亜大は第82回箱根駅伝で総合優勝を飾っているが、その4年後の第86回大会を最後に本大会から遠ざかっている。チームとして目指すのは、もちろん15年ぶりの本戦出場だ。

「関東の大学に来たからには箱根駅伝はやっぱり走りたい舞台。“自分がしっかり走れば大丈夫”という精神を持った選手が10人集まって、一人ひとりがその目標に向かっていけば、予選会は良い勝負ができると思う。そういうチームにしていきたい」

本戦出場を逃した過去3大会は1区の10km付近で走路員を務めた。「出走する人を背中で見て、通り過ぎたら終わり。寂しい仕事でした」。本大会に出場がかなった際には、1区を希望するつもりだ。

「集団走が好きだし、テレビにも映りますから。あと、自分の持ち味が朝に強いこと。朝はばっちり起きられるので、良いスタートを切ってチームに流れを作りたい」

これまでは背中で見るだけだった1区で爆走を誓う。

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関東インカレでは3年連続で入賞した片川祐大。存在感を示している

◎かたかわ・ゆうだい/2002年12月26日生まれ、兵庫県川辺郡猪名川町出身。猪名川中→報徳学園高→亜細亜大。自己記録5000m13分41秒72、10000m28分11秒20、ハーフマラソン1時間2分06秒。

文/和田悟志

学生長距離Close-upインタビュー 片川祐大 Katakawa Yudai 亜細亜大4年 「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。39回目は、亜細亜大の片川祐大(4年)をピックアップする。 兵庫・報徳学園高では貧血やケガに苦しんだが、亜細亜大ではじっくりと土台を固めて成長。3年時に5000mで初の13分台をマークすると、10000mとハーフマラソンでも自己新を出した。 今年4月の金栗記念10000mでは日本人トップの5位に食い込み、5月の関東インカレでは男子2部5000mで4位に入るなど勢いに乗る。チームのエースで主将として学生ラストイヤーを迎えており、これまでの歩みや今季の目標などを語った。

金栗記念で日本人トップの快走

高3の夏まで5000m15分台だった男が、今や学生長距離界のトップランナーへと成長を遂げようとしている。 今年4月13日、金栗記念の男子10000mで、ひときわ光る健闘を見せたのが、亜細亜大の片川祐大(4年)だ。 「7月のホクレンディスタンスで27分台を狙いたいが、もともとの自己ベストだと(設定タイムが速い)上の組で走るのが難しい。自己ベストを更新することを考えて走りました」 その狙い通りに、昨年5月にマークした28分27秒51を大幅に更新し、28分11秒20の自己新記録を打ち立てた。目標の27分台は、いよいよ射程にある。 「タイムだけを狙っていたので、まさか日本人トップとは! 驚いています」。こう振り返るように、自身も驚くパフォーマンスで、昨年の日本選手権10000m5位入賞の小林歩(NTT西日本)、吉居大和(トヨタ自動車)にも先着。日本人トップの5位に入る活躍だった。 5月の関東インカレ(2部)では、10000mは入賞を逃したものの、5000mでは終盤まで先頭集団に食らいつき、4位(日本人2位)に入った。同大会では2年時に5000m8位、3年時に10000m5位に入っており、3年連続の入賞。確かな存在感を示している。 片川は「50mが速くなりたい」という理由で中学から陸上を始めた。当初は短距離だったが、「たまたま同級生が速くて……」。100mでは大会に出場することもできなかったという。そこで、400m、1500mと次第に距離を伸ばし、長距離になった。 高校は兵庫の名門・報徳学園高に進学。しかし、高校3年になるまでは5000mで15分を切ることもできなかった。「貧血や故障をひたすら繰り返していた」と言い、駅伝のメンバー争いにも絡めず最終学年に。記録も結果も残せず、「陸上で大学に行くことは無理だろうな」と思っていたという。 さらに、新型コロナウイルスの感染が拡大。高校ラストイヤーで巻き返しを図るつもりが、緊急事態宣言が出され、部活動もままならない。「ここで頑張らないといけないのに、このままでは高校3年間を棒に振ってしまう」という危機感ばかりが募った。

逆境がターニングポイントに

ただ、そんな逆境が片川にとってのターニングポイントになった。 「緊急事態宣言が出て、一人でやらないといけない時も故障していたのですが、どうしてか分からないんですけど、少しずつ故障をしなくなりました」 練習が継続してできるようになると、9月の5000mの記録会では自己記録を一気に30秒以上更新する14分34秒21。初めて15分切りを果たし、その記録会ではチームトップにもなった。 初めて駅伝のメンバーを勝ち取ると、兵庫県大会の4区で2位。12月には5000mで14分26秒95まで記録を伸ばした。 「陸上を本気でやるなら、関東の方が強い選手が集まる。関東で勝ってこそ、やりがいも出てくる」 高校の恩師・平山征志先生がこう話していたこともあって、片川は関東の大学を志すようになった。一度は諦めかけた陸上の道だったが、両親に頭を下げて、大学で競技を続ける許しを得た。 [caption id="attachment_131366" align="alignnone" width="800"] 4月の金栗記念の男子10000mで日本人トップの5位に入った片川祐大[/caption] 「学業と競技を両立できるところを考えて」指定校推薦で亜細亜大への進学を決めた。大学の同期はもちろんスポーツ推薦で入学した選手ばかり。入寮するにあたっては佐藤信之監督に直接電話をして許可を得たという。 「授業料免除もないですし、両親には周囲以上に負担をかけている。それでも送り出してもらったので、関東まで来て適当に陸上をやるなんてことはありえない。そう思っているので、自分に厳しくできていると思います」 覚悟を決めた片川は大学でも成長曲線を描き続けた。ハーフマラソン(1時間2分6秒)、20km(58分48秒)の亜細亜大記録、5000m(13分41秒72)と10000m(28分11秒20)の亜細亜大日本人最高記録を持つチームのエースとなった。  現在は、佐々木悟コーチに練習メニューを組んでもらい、一人で練習を行うことが多いという。スピード型の留学生、ジョンソン・モゲニ(2年)とも別メニュー。「8割、9割の力でひたすら練習をこなしていくのが自分に合っている」と言い、じっくりと土台を固めてきたことが好記録につながっている。

後輩の快走が刺激に

高校の2学年後輩、前田和摩(東農大2)の存在も刺激になっている。前田は、金栗記念では5000mに出場し1組1着。5月の日本選手権10000mでは、日本人学生最高(日本歴代5位)となる27分21秒52の快記録で3位に入った。 「金栗の時はたまたま飛行機が(前田と)往復一緒でした。『次は全日本予選(関東選考会)で直接対決だね』という話をしたら『絶対に負けません』などと言われました。まさかあんなに行くとは……。(前田の活躍は)刺激にもなりましたし、自分もできるんじゃないかって思うことができました。負けじと食らいつく走りをしていきたいと思っています」 今季、片川はチームの主将を務める。亜細亜大は第82回箱根駅伝で総合優勝を飾っているが、その4年後の第86回大会を最後に本大会から遠ざかっている。チームとして目指すのは、もちろん15年ぶりの本戦出場だ。 「関東の大学に来たからには箱根駅伝はやっぱり走りたい舞台。“自分がしっかり走れば大丈夫”という精神を持った選手が10人集まって、一人ひとりがその目標に向かっていけば、予選会は良い勝負ができると思う。そういうチームにしていきたい」 本戦出場を逃した過去3大会は1区の10km付近で走路員を務めた。「出走する人を背中で見て、通り過ぎたら終わり。寂しい仕事でした」。本大会に出場がかなった際には、1区を希望するつもりだ。 「集団走が好きだし、テレビにも映りますから。あと、自分の持ち味が朝に強いこと。朝はばっちり起きられるので、良いスタートを切ってチームに流れを作りたい」 これまでは背中で見るだけだった1区で爆走を誓う。 [caption id="attachment_131365" align="alignnone" width="800"] 関東インカレでは3年連続で入賞した片川祐大。存在感を示している[/caption] ◎かたかわ・ゆうだい/2002年12月26日生まれ、兵庫県川辺郡猪名川町出身。猪名川中→報徳学園高→亜細亜大。自己記録5000m13分41秒72、10000m28分11秒20、ハーフマラソン1時間2分06秒。 文/和田悟志

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