2024.03.10
◇名古屋ウィメンズマラソン(3月10日/バンテリンドーム ナゴヤ前スタート―名古屋市内―バンテリンドーム ナゴヤ前フィニッシュ)
パリ五輪MGCファイナルチャレンジを兼ねた名古屋ウィメンズマラソンが行われ、安藤友香(ワコール)が日本人トップの2時間21分18秒で優勝した。
パリ五輪代表入りに必要な設定記録(2時間18分59秒)には届かなかった。だが、それでも安藤は力を出し尽くした。
ペースメーカーは1km3分18秒ペース、フィニッシュ2時間19分15秒で30kmまで引っ張る設定。1月末の大阪国際女子で出した前田穂南(天満屋)の日本記録を更新するためには、30km以降のペースアップが求められる。
厳しい条件の中でのレースだったが、「強い選手たちの力を借りて走ろう」と安藤は、ペースメーカーのすぐ後ろにつけた位置をキープし、鈴木亜由子(日本郵政グループ)、加世田梨花(ダイハツ)とともに集団の中で無駄な動きをしない。
入りの1kmは3分19秒、5km通過は16分28秒までは予定通り。だが、そこから向かい風や細かなアップダウンの影響もあって、パリ五輪の目標ペースを下回っていく。中間点通過は1時間9分56秒。25km過ぎに鈴木が集団から離れ、そして安藤と加世田も26km過ぎに徐々に遅れ始めた。
「ここが一番きつくなった場面」と振り返る安藤。パリが遠ざかりつつあることを実感しつつも、前を見つめることはあきらめない。「加世田選手もいたので、一緒に行こうという気持ちで」走り続けた。
すると、徐々に先頭を争う22年オレゴン世界選手権女王のゴディトム・ゲブレシラシエ(エチオピア)と、23年杭州アジア大会金メダルのユニスチェビー・チュンバ(バーレーン)の背中が近づいてくる。35kmを過ぎて、ゲブレシラシエが途中棄権。チュンバのペースもあきらかに鈍った。
38km過ぎ、安藤はついにトップに並ぶ。そこから後ろについたり、並んだりを繰り返した。「最後は絶対に優勝したい」。その強い気持ちが疲労困憊の身体を突き動かす。
そして、残り700m。安藤がスパートし、チュンバを突き放した。そのまま逃げ切り、万感のフィニッシュ。「パリは行けないけど、7年ぶりに自己ベストを更新し、優勝することができてよかった」。安藤は晴れやかな表情で振り返った。
スズキAC時代の2017年のこの大会で2時間21分36秒の初マラソン日本最高をマークする、衝撃のマラソンデビューを飾った。同年のロンドン世界陸上にも出場(17位)している。
だがその後は、なかなか記録を更新することができなかった。東京五輪もマラソンでの代表入りを逃す。10000mで出場はしたものの、マラソンへの強い思いは消えない。
そこから2020年、22年の名古屋ウィメンズ、23年大阪国際と3レース続けて2時間22分台をマークするなど安定感に磨きがかかった。その間も含めて、「たくさんの人にお世話になった」と振り返り、この日も「一人ひとりの顔が浮かんで今日は走ることができた」と言う。
7年かけて自分を超え、マラソンで念願の優勝も飾った。マラソンでパリ五輪の夢はかなえられなかったが、「今日をスタートにまた新たな気持ちで、次の目標に向けてがんばりたい」と安藤。壁を乗り越えたアスリートの笑顔が輝いた。
安藤友香のマラソン全成績
★=自己ベスト 2017. 3.12 名古屋ウィメンズ 2位 2.21.36 2017. 8. 6 世界選手権 17位 2.31.31 2018. 1.28 大阪国際女子 3位 2.27.37 2019. 3. 3 東京 棄権 2019. 4.28 ロンドン 13位 2.26.47 2019. 9.15 MGC 8位 2.36.29 2020. 3. 8 名古屋ウィメンズ 2位 2.22.41 2022. 3.13 名古屋ウィメンズ 3位 2.22.22 2023. 1.29 大阪国際女子 3位 2.22.59 2023. 3.19 徳島 3位 2.44.57 2023.10.15 MGC 9位 2.27.47 2024. 3.10 名古屋ウィメンズ 優勝 ★2.21.18女子マラソン日本歴代10傑
2.18.59 前田穂南(天満屋) 2024. 1.28 2.19.12 野口みずき(グローバリー) 2005. 9.25 2.19.24 新谷仁美(積水化学) 2023. 1.15 2.19.41 渋井陽子(三井住友海上) 2004. 9.26 2.19.46 高橋尚子(積水化学) 2001. 9.30 2.20.29 一山麻緒(ワコール) 2020. 3. 8 2.20.52 松田瑞生(ダイハツ) 2022. 1.30 2.21.18 安藤友香(ワコール) 2024. 3.10 2.21.33 鈴木亜由子(日本郵政グループ)2024. 3.10 2.21.42 細田あい(エディオン) 2022.10. 2RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.02.22
三浦龍司が圧巻スパートで優勝 井川龍人は2年連続2位/日本選手権クロカン
2025.02.22
【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)
-
2025.02.21
-
2025.02.21
-
2025.02.21
-
2025.02.21
2025.02.17
日本郵政グループ女子陸上部 「駅伝日本一」へのチームづくりとコンディショニング
2025.02.16
男子は須磨学園が逆転勝ち! 女子は全国Vの長野東が強さ見せる/西脇多可高校新人駅伝
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
2025.02.02
【大会結果】第77回香川丸亀国際ハーフマラソン(2025年2月2日)
2025.02.02
大迫傑は1時間1分28秒でフィニッシュ 3月2日の東京マラソンに出場予定/丸亀ハーフ
-
2025.02.14
-
2025.02.09
-
2025.02.02
-
2025.01.26
-
2025.01.31
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.02.22
三浦龍司が圧巻スパートで優勝 井川龍人は2年連続2位/日本選手権クロカン
◇第108回日本選手権クロスカントリー(2月22日/福岡・海の中道海浜公園) 来年1月の世界クロスカントリー選手権(米国・タラハシー)の代表選考を兼ねた第108回日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(10km)はパリ […]
2025.02.22
【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)
【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日/福岡・海の中道海浜公園) ●男子10km 1位 三浦龍司(SUBARU) 28分24秒 2位 井川龍人(旭化成) 28分25秒 3位 塩尻和 […]
2025.02.22
今年も福岡でクロカン日本一決定戦! 日本選手権&U20日本選手権クロカンに有力選手が多数出場
第108回日本選手権クロスカントリー、第40回U20日本選手権クロスカントリーは今日2月22日、福岡・海の中道海浜公園の1周2kmのコースを舞台に行われる。 日本選手権は男子が10km、女子が8kmで争われ、男子にはパリ […]
2025.02.21
編集部コラム「奥が深い」
毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]
2025.02.21
ひらまつ病院にニューイヤー駅伝3年連続出走の三田眞司が加入 「チームの最高順位に貢献」
ひらまつ病院は2月16日付で、サンベルクスに所属していた三田眞司が加入したと発表した。 29歳の三田は神奈川県出身。光明学園相模原高では3年時に全国都道府県対抗男子駅伝4区9位と力走。国士大では3年時に全日本大学駅伝で3 […]
Latest Issue
最新号

2025年3月号 (2月14日発売)
別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝