2024.03.15
「SENOBIRU(セノビル)」のブランド名でジュニアアスリートを応援するサプリメントなどを展開する株式会社エメトレ(代表取締役社長・千明哲治)が今年2月で創立10周年を迎え、新たに女子アスリートのパフォーマンスをサポートするサプリメントを世に送り出した。名付けて「アスレディ(AthReady)」。バレーボール選手だったエメトレの女性社員と、女子100mハードルの寺田明日香(ジャパンクリエイト)及び専属栄養士らが共同開発。実際に無月経や月経不順、それに伴う疲労骨折で悩んできた女子選手ならではの視点が、画期的なサプリメントを生み出した。
「生理が止まってラッキー」と楽観視、疲労骨折から一度は引退
北海道・恵庭北高時代、女子100mハードルでインターハイ3連覇の寺田明日香は「どれだけ食べても太らなかった」が、高校を卒業して地元の強豪クラブチームで世界大会を目指していた21~22歳の頃、空気を吸っているだけで太る、みたいな時期を迎えたという。毎日の食事には気を遣い、お弁当のご飯も少なめに。コーチからは「それしか食べないから練習ができないんだ」と言われ、周りに人がいる時は無理やり食べたが、すぐに陰で、食べたものを吐くようになっていった。
そのうちに月経が止まった。でも、高校時代から生理痛や経血量の多さに悩まされてきた寺田は、「生理が来なくてラッキー。このままでいいじゃん」と楽観視。しばらくして、左足甲の中足骨を疲労骨折した。
「日本代表を目指しているチームなのに、日本選手権で予選落ちするような私は、もうここでやっている意味がない」。寺田は自分自身を責め、2013年6月の日本選手権で予選敗退した後、陸上の道から離れて上京した。
辛くてもごまかしながら練習、「あの時、もっと身体を大事にしていれば」
アスレディの開発に携わった株式会社エメトレの佐藤葉月さんも、学生時代に「生理が来なくてラッキー」と思った1人だった。中学1年から大学4年までバレーボールをやっていたという佐藤さん。兵庫県立小野高時代には県選抜の代表メンバーに選ばれ、高2の時は岡山国体への出場も経験している。
体調の変化に気づいたのはJOC(ジュニア・オリンピック・カップ)のメンバーと一緒に練習をしていた中3の頃。「普段から生理不順で、2週間出血が続くこともありましたし、その後無月経も経験して、高校生になってから左脚のスネと足の甲、2ヵ所の疲労骨折をしています」。
学生時代には腰の疲労骨折もあった佐藤さんだが、「無月経や疲労骨折などのケガを抱える仲間は何人もいて、そこに向き合わないといけない、という感覚が一切なかった」と言う。練習は休めない。誰にも相談できない。「だから、本当にごまかしながら、痛みを我慢して練習しました」。脚のスネは治らないまま、骨が故障した時の形で固まっている。「今は後悔しています。あの時、もっとかけがえのない自分の身体を大事にしていれば良かったな、って」。
女性アスリート特有の悩みを経験した2人がタッグを組んで生まれたサプリメント
東京に来てから結婚、大学進学、出産とめまぐるしく生活環境が変化する中で、寺田は2020年に東京で開催されるビッグイベント(コロナ禍で2021年に延期)に向けて、まず7人制ラグビーで競技復帰。「ラグビーで日本代表入りは無理かな」と見切りをつけると、2019年には陸上界に戻り、第二の現役生活をスタートさせた。「走るのが嫌いになって(陸上を)辞めたのに、ラグビーをやっているうちに『走りたいな』と思ったんです。走るのは楽しい、って」。

女子100mハードルで日本人初の13秒突破をはじめ、これまで4度も日本記録を樹立している寺田。今夏のパリに向けて「参加標準記録(12秒77)は絶対破れる」と頼もしい ※写真は2023年の実業団・学生対抗陸上競技大会
復帰して1年目に早くも100mハードルの日本新記録を樹立し、現在もこの種目の第一人者として後輩たちを牽引する寺田と、同世代でやはり子を持つママの佐藤さんが縁あって巡り会えば、意気投合するのにそう時間はかからなかっただろう。
「エメトレさんとは子供向けサプリメントのセノビルからご一緒させていただいているのですが、ある時『女子アスリート向けのサプリメントができませんかね』という話をしたら、『今、こういう話が出ているところです』と」(寺田)。まさに、その話を社内で提案していたのが、カスタマーサクセス事業部マーケティング課に所属する佐藤さんだった。
「自分の過去の経験があったので、女子アスリートのコンディションを整えて、パフォーマンスを向上できるような商品を開発し、これから活躍する女子アスリートにもっと輝いてほしい!女性として輝き続けてほしい!という願いと、指導者や保護者の方も女子アスリートの健康課題について理解を深めて向き合い、サポートしていただけるように、企画立案しました」と佐藤さん。
文部科学省が定義する女子アスリートの三主徴「エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」は、2人が経験した生理や骨、栄養に由来する問題で、寺田は「私が欲しいものと佐藤さんがやりたいこと、作りたいものがマッチして出来上がった商品がアスレディです」と話す。

「アスレディ」を共同開発した寺田(右)と株式会社エメトレの佐藤葉月さん。寺田が欲しいもの、佐藤さんがやりたいこと、作りたいものがマッチして出来上がった
話し合いを重ね、共同開発を進めていく上で、寺田が特にこだわったのが、自身も悩んだことがある貧血へのアプローチと飲みやすさ。1包8グラムあたり3,000㎎含有のコラーゲンは筋や腱の側面からアプローチ。2,000mg入っているクエン酸は疲れたカラダをサポートしたり、女性アスリートが不足しがちな鉄分が一緒に摂取可能だという。皆で試飲を繰り返した末に決まった味は、すっきりと飲みやすいレモン味。
佐藤さんは「摂取のタイミングや量は人それぞれで構いませんが、オールインワンのサプリメントで、水やお湯に溶いてジュース感覚で飲めるので、まずは毎日継続して摂ってほしいです」と話す。競技者である寺田自身も安心して飲めるように、「インフォームドスポーツ」の認証を取得している。女子アスリート向けサプリメントとして、「インフォームドスポーツ」を取得したのはアスレディが日本初だという。
商品名のAthReadyは「Athlete(アスリート)」と「明日香(あすか)」から取ったアスと、「Ready(準備)」「Lady(女性)」を意味するレディを組み合わせた造語。発売日は2024年1月14日で、寺田の34歳の誕生日と重ねた。100mハードルのパイオニアで、日本人で初めて13秒の壁を突破した寺田。
後輩たちの躍進で代表争いのライバルは多いが、開発に携わったアスレディを心強い味方にして、「まだまだ記録を縮めていきますよ」と意気高らかだ。
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AthReady 公式ホームページ
文/小森貞子
※この記事は『月刊陸上競技』2024年4月号に掲載しています
「生理が止まってラッキー」と楽観視、疲労骨折から一度は引退
北海道・恵庭北高時代、女子100mハードルでインターハイ3連覇の寺田明日香は「どれだけ食べても太らなかった」が、高校を卒業して地元の強豪クラブチームで世界大会を目指していた21~22歳の頃、空気を吸っているだけで太る、みたいな時期を迎えたという。毎日の食事には気を遣い、お弁当のご飯も少なめに。コーチからは「それしか食べないから練習ができないんだ」と言われ、周りに人がいる時は無理やり食べたが、すぐに陰で、食べたものを吐くようになっていった。 そのうちに月経が止まった。でも、高校時代から生理痛や経血量の多さに悩まされてきた寺田は、「生理が来なくてラッキー。このままでいいじゃん」と楽観視。しばらくして、左足甲の中足骨を疲労骨折した。 「日本代表を目指しているチームなのに、日本選手権で予選落ちするような私は、もうここでやっている意味がない」。寺田は自分自身を責め、2013年6月の日本選手権で予選敗退した後、陸上の道から離れて上京した。辛くてもごまかしながら練習、「あの時、もっと身体を大事にしていれば」
アスレディの開発に携わった株式会社エメトレの佐藤葉月さんも、学生時代に「生理が来なくてラッキー」と思った1人だった。中学1年から大学4年までバレーボールをやっていたという佐藤さん。兵庫県立小野高時代には県選抜の代表メンバーに選ばれ、高2の時は岡山国体への出場も経験している。 体調の変化に気づいたのはJOC(ジュニア・オリンピック・カップ)のメンバーと一緒に練習をしていた中3の頃。「普段から生理不順で、2週間出血が続くこともありましたし、その後無月経も経験して、高校生になってから左脚のスネと足の甲、2ヵ所の疲労骨折をしています」。 学生時代には腰の疲労骨折もあった佐藤さんだが、「無月経や疲労骨折などのケガを抱える仲間は何人もいて、そこに向き合わないといけない、という感覚が一切なかった」と言う。練習は休めない。誰にも相談できない。「だから、本当にごまかしながら、痛みを我慢して練習しました」。脚のスネは治らないまま、骨が故障した時の形で固まっている。「今は後悔しています。あの時、もっとかけがえのない自分の身体を大事にしていれば良かったな、って」。女性アスリート特有の悩みを経験した2人がタッグを組んで生まれたサプリメント
東京に来てから結婚、大学進学、出産とめまぐるしく生活環境が変化する中で、寺田は2020年に東京で開催されるビッグイベント(コロナ禍で2021年に延期)に向けて、まず7人制ラグビーで競技復帰。「ラグビーで日本代表入りは無理かな」と見切りをつけると、2019年には陸上界に戻り、第二の現役生活をスタートさせた。「走るのが嫌いになって(陸上を)辞めたのに、ラグビーをやっているうちに『走りたいな』と思ったんです。走るのは楽しい、って」。 [caption id="attachment_129583" align="alignnone" width="800"]


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