HOME 国内、日本代表

2024.02.19

五輪内定の池田向希 世界歴代3位の大記録で示した成長の証「ベストな状態でパリへ」/日本選手権20km競歩
五輪内定の池田向希 世界歴代3位の大記録で示した成長の証「ベストな状態でパリへ」/日本選手権20km競歩

24年日本選手権20km競歩で優勝した池田向希(旭化成)

【動画】池田向希パリ五輪代表内定!世界歴代3位の歩き

◇第107回日本選手権20km競歩(2月18日/兵庫県神戸市・六甲アイランド) パリ五輪代表選考会となる第107回日本選手権20km競歩が行われ、男子は池田向希(旭化成)が連覇を果たしてパリ五輪代表に内定した。 「時計はつけずに出ました。どう勝ちきるかだけに集中して、後ろとのタイム差を意識して歩きました」 派遣設定記録(1時間19分30秒)を突破して優勝すれば即内定。ただ、池田はすでに派遣設定記録を突破しているため、3位以内に入れば2大会連続五輪を手中に収める状況だった。 序盤から最強にして最大のライバル・山西利和(愛知製鋼)がハイペースで飛ばした。5kmを19分14秒で通過。その集団に6人ほどがいるなか、「これを生かさないといけない。このペースで15kmまで行くと4、5人残りそう」。 ラスト勝負になれば何が起きるかわからない。「集団の中で余裕を持って歩いて15km以降の削り合いが優勝争いになる」。そう描いており、まさに池田の以前までの持ち味でもある“勝ちパターン”でもあった。 しかし、今の池田は違う。 「6kmあたりで自分が前に出た時に、周囲の反応を見ました。山西さんのペースが1、2秒落ちたところで、レースプランを変更しました。ペースを落とさずに、行けるところまで行く。ここでさらに上げてしまえば、周囲が苦しいのではないか。嫌がるレースをしよう」 自分でレースを組み立て、支配する。これは世界選手権で背中を見てきた山西から学んだことでもある。 池田の描いたように、後ろと一気に差が開く。時計を気にしていなかったが、10kmは38分16秒で通過すると、アナウンスが『世界記録ペース』と騒々しくなる。さすがに「意識しました」。それでも、「まずは落ち着いてゴールすることを第一に考えられたのは昨年よりも成長した点です」と言う。 単独歩となるなか、「ラストは少しペースが落ちた」と反省するも、世界歴代3位、日本人2人目の1時間17分切りとなる1時間16分51秒の大記録を叩き出し、2大会連続五輪となるパリへの切符を勝ち取った。 22年のオレゴン世界選手権では山西に敗れ銀メダルに。その後は練習環境を変え、1人でメニューを組み立てる決意をした。「自立しなければいけない」。特定の指導者を置かず、日本陸連や実業団の合宿で揉まれた。 ただ、基本的には1人で歩いていることから、この日の一人旅での3分50秒ペースも「いつも通り」で突き進めた。いろいろな意見があることは受け止めつつ、「勝つために」選んだ道を信じ、貫いた。 昨年の日本選手権で念願の初優勝。苦しい向かい風でペースアップして揺さぶりをかけて他を圧倒した。ただ、ブダペストに向けては「冬にケガや体調不良があって距離が踏めなかったため」調子を合わせることができずに14位に終わっている。 その反省から「今年は練習を継続すること。身体のバランスを見ながら、マックスを出すのではなく、我慢、我慢と言い聞かせてゆっくりでもいいから長い距離を歩いてきました」。土台を作った上で、世界トップクラスの高速ピッチとスピードを突き詰めてきた。 前回の東京五輪は銀メダルの殊勲も、「次は金メダルを取りたい」と思いを強くした池田。ブダペストでは、競歩にも押し寄せる厚底シューズの波と、“打倒・日本”を掲げてきた欧州勢の強さを目の当たりにした。「そう簡単にメダルを取らせてもらえないと思っています」。 次は集団の中で上げ下げのあるペースやハイラップを刻み、勝負を仕掛けなければならない。ただ、それこそ池田の生きるレースでもある。 「これでパリへのスタートラインに立てました。ここはあくまで通過点。状況を判断できるのが強みだと思っています。余力を残してラスト5km、3kmでメダルの色を決めたい。しっかり準備してベストな状態でパリに臨めば、2大会連続メダル、金メダルが見えてくると思います」 3年前とは違う、日本競歩のエースとして、堂々と花の都へと乗り込んでいく。

【動画】池田向希パリ五輪代表内定!世界歴代3位の歩き

日本人が3人!男子20km競歩世界歴代ランキング上位をチェック!

1位 1時間16分36秒 鈴木雄介(富士通) 2015年3月15日 2位 1時間16分43秒 セルゲイ・モロゾフ(ロシア) 2008年7月8日 3位 1時間16分51秒 池田向希(旭化成) 2024年2月18日 4位 1時間16分54秒 王凱華(中国) 2021年3月20日 5位 1時間17分02秒 ヨアン・ディニズ(フランス) 2015年3月8日 6位 1時間17分15秒 山西利和(愛知製鋼) 2019年3月17日

次ページ:

ページ: 1 2 3

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.03.31

SUBARUの真船恭輔が現役引退「本当に楽しい陸上人生」小山司、小林光二コーチも社業に専念

SUBARUを退部する3名のコメント全文 ●真船恭輔 中学から15年間、陸上競技をやってきました。練習はキツいし、目標に届かず悔しい思いをした場面も多くありました。ですが、中学から実業団までどの年代でもチームメイト、指導 […]

NEWS 【世界陸上プレイバック】―91年東京―国立競技場がルイスに熱狂!マラソン谷口が殊勲の金メダル

2025.03.31

【世界陸上プレイバック】―91年東京―国立競技場がルイスに熱狂!マラソン谷口が殊勲の金メダル

今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。 これ […]

NEWS 京セラの白井明衣が引退 22年にはプリンセス駅伝に出走

2025.03.31

京セラの白井明衣が引退 22年にはプリンセス駅伝に出走

京セラの白井明衣が、3月23日に行われた鹿児島県実業団陸上競技記録会の女子3000mに出場。このレースをもって競技生活を引退することが公式Instagramで伝えられた。 白井は山口・中村女高を卒業後、2020年より京セ […]

NEWS NDソフト ニューイヤー駅伝出場の大倉秀太とケニアと2拠点活動の鈴木太基が退部

2025.03.31

NDソフト ニューイヤー駅伝出場の大倉秀太とケニアと2拠点活動の鈴木太基が退部

NDソフトは2024年度で大倉秀太、鈴木太基の2選手が退部すると発表した。 鈴木は愛知・豊川工高を経て大東大に進学。4年時には全日本大学駅伝で7区4位、箱根駅伝7区9位と3大駅伝に出走している。卒業後はラフィネで活動し、 […]

NEWS 【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第55回「努力でコンパスを大きくする~マラソン強化のDNAを引き継ぐ~」

2025.03.31

【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第55回「努力でコンパスを大きくする~マラソン強化のDNAを引き継ぐ~」

日本でただ一つマラソン部と名乗るチーム その思いを心に宿して、当時マラソン日本記録保持者であり、旭化成のマラソン強化を知る児玉泰介さん(現・愛知製鋼アドバイザー)を慕って、三菱重工長崎に入社。日本でただ一つ駅伝部ではなく […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報

page top